GOJIRAが語る、進化/変化するヘヴィミュージックへのこだわり
Rolling Stone Japan / 2022年11月18日 18時30分
現代ヘヴィ・ロックの最重要バンドのひとつとなったGOJIRAがアルバム『Fortitude / フォーティチュード』を引っ提げて2022年11月、日本に来襲する。
【動画を見る】GOJIRA「Sphinx」ミュージックビデオ
1996年にフランスで結成、エクストリームかつプログレッシヴなサウンドで世界を蹂躙してきたGOJIRAの久々の来日。2015年の「LOUD PARK」フェスティバルでの凄まじいステージ・パフォーマンスは伝説となっている。精力的なツアー、グラミー賞ノミネートなどを経てさらに巨獣化を果たした彼らがライブに込めるメッセージは、人類の未来に向けた警告だ。
日本上陸まで待ったなし。バンドのドラマー、マリオ・デュプランティエが語った。
ー2015年の来日以来、GOJIRAを取り巻く環境は大きな変化を迎えてきました。グラミー賞ノミネート、世界を股にかけたツアー、新型コロナウイルス、ヒトデの化石がバンドから名付けられるなど、さまざまな出来事がありましたが、あなた達はどのように変化しましたか?
前回日本でプレイしてから良いことも悪いこともあったけど、どれもバンドの結束を強くすることになった。より一体感を強めた、新鮮なライヴ・パフォーマンスを出来るようになったよ。日本でヘッドライナー・ツアーをするのは初めてなんだ。前回プレイしたときは鮮烈なインパクトがあった。みんな礼儀正しく丁寧なのに、ライヴでは首を振って拳を突き上げて、クレイジーになるんだ。あのエネルギーの昂ぶりを再び感じられるのは嬉しくてたまらないね。これまで7枚のアルバムを出してきたし、新旧取り混ぜたショーになるけど、新作『フォーティテュード』が軸となる。俺たち自身が誇りにしている作品で、ライブでさらに高まっていくんだ。「ボーン・フォー・ワン・シング」や「アマゾニア」は今やGOJIRAのショーに欠かせない重要な曲だよ。
ー『フォーティテュード』は2021年4月に出て、もう1年半経っていますが、アルバムの曲はライブでどのように変化したでしょうか?
『フォーティテュード』の曲は可能な限りキャッチーな音楽性を志したんだ。もちろん俺たち流に、だけどね。過剰にテクニカルだったり実験的になることを避けている。ただ、GOJIRAはツアー・バンドなんだ。ライブで毎晩演奏するごとに少しずつ変化していく。自分たちで書いた曲であっても、ファンからの反応を得ることで、新しい発見や新しい表現手法がいくつもある。それが”進化”なのか、ただの”変化”なのかは人それぞれ解釈が異なるだろうけど、俺自身はベクトルが前方に向かっていると考えているよ。
ー前作『マグマ』(2016年)も素晴らしいアルバムでしたが、ひとつの方向を突き詰めていく作風でした。『フォーティテュード』ではより曲ごとに多彩なアプローチを取っていますが、ライブで演奏するのはどちらがやりやすいでしょうか?
演奏テクニックの面ではどちらが簡単でどちらが難しいということはないけど、『マグマ』の音楽は、特に兄貴(ジョー・デュプランティエ/Gt, Vo)と俺にとっては精神的に重いものがあることは確かだ。母親を亡くして大きな打撃を受けた。それが音楽に反映されている。彼女は俺たちが信じる道を進むことを応援してくれたし、自信を与えてくれた。寛大で哲学的でポジティヴで、他の誰とも異なる母親だったよ。『マグマ』の音楽にはダークな翳りがあるけど、それと同時に、愛情と感謝が込められているんだ。「ストランデッド」や「シルヴェラ」は彼女について歌った曲ではないけど、アルバムの空気を象徴する曲だし、ライブでプレイするとき特別なエモーションが込められているよ。『フォーティテュード』は新しい世界に向かって一歩を踏み出すアルバムだし、攻撃性はあっても、より開放感のあるサウンドだ。そんな異なったスタイルがひとつのショーに共存することで、ダイナミックな起伏が生まれるんだ。
作曲のプロセスについて
ー今年(2022年)、新曲「Our Time Is Now / アワ・タイム・イズ・ナウ」を発表しましたが、いつレコーディングしたものですか?
「アワ・タイム・イズ・ナウ」は 『フォーティテュード』のセッションでレコーディングした曲だ。すごく良い曲で気に入っていたけど、アルバムの流れに収まらなかった。それでアメリカのNHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)がゲームソフト『NHL 23』のサウンドトラック用に未発表曲が欲しいと言ってきたんで、提供することにしたんだ。
ーあなたもホッケーをやったり、NHLを観戦しますか?
フランス人はみんなサッカーやテニスに夢中で、ホッケーは比較的マイナースポーツというイメージがあるね。俺も一度もやったことがないけど、ちょっとテレビで見るだけでもエネルギーと熱狂が伝わってくるし、北米地域のツアー・マネージャーがNHLの大ファンだよ。いろんな層のリスナーにゴジラの音楽を好きになってもらいたいんで、クールな機会だと考えたんだ。
ー「アワ・タイム・イズ・ナウ」は1曲単位のシングルとしてリリースされましたが、ロックやメタルの世界では今でもアルバムという単位が重視されています。あなた達はアルバムを発表し続けることにこだわりはありますか?
俺が41歳で他のメンバーは年上だから、アルバムがひとつの周期として身体に染みついている。始まりがあって真ん中があって終わりがある、そんな流れが好きなんだ。今後シングルやEPも出す可能性はあるし、YouTubeやTikTokを使ってリスナーを開拓していくこともビジネス的に大事だけど、 これからもアルバムは俺たちの表現の重要な一部であり続けるよ。ジョーのジャケット・アートワークもアルバムの音楽をさらに高めている。
ー曲作りはあなたとジョーでやっているそうですが、どのような作業プロセスですか?
ひとつのスタイルがあるわけではなく、曲ごとに異なった書き方をしている。ジョーと俺でひとつの部屋でジャムをやることもあるし、俺がリフやドラム・パターンを口ずさんだり、クリスチャン(アンドルー/Gt)とジャン=ミッシェル(ラバディ/Ba)を加えた4人でアイデアを付き合わせて組み立てていくこともある。ルールは存在しないよ。
ー『フォーティテュード』が発表されてから1年半が経ちますが、新作の構想などはありますか?
うん、既に曲作りを始めているんだ。まだギター・リフやビートの断片的なアイデアを書き溜めているところだけど、『フォーティテュード』と同様にパワフルでありながら、異なったタイプのエネルギーが込められている。コロナ禍によって世界は一変したし、それを反映して俺たちの音楽も変わったんだ。GOJIRAはアルバム作りに時間をかけるタイプのバンドだ。KoЯnやスリップノットは2年ごとに新作を出しているけど、俺たちはそうはいかない。まだいつアルバムを完成させられるか分からないけど、決して怠けているわけではないからね(笑)。自分たちの内面に深く潜行していくには、時間がかかるんだよ。それに常にシーンで顔を出しているのでなく、たまに消え去って、再び現れる……というのが好きだね。とにかく最高にクールな作品をファンに聴いてもらいたいし、焦らずじっくり作っていくつもりだ。
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日本のenvyのライブが素晴らしかった
ーGOJIRAはヘヴィ、オルタナティヴ、メタル、エクスペリメンタルなどいろんな呼ばれ方をされてきましたが、プログレッシヴとも言われることがあります。プログレッシヴ・ロック、特にフランスのアーティストで好きなものはありますか?
アルセストは”プログレッシヴ・ロック”なのかな?彼らは独自の世界を築いているよね。あとフランス出身だったらスウォーマゲドンが気に入っていて、頭の中でループで鳴っているよ。ただ俺たちはオールドスクールだし「よし! 新しいバンドをチェックするぞ!」というより、ついトゥールやパンテラ、デス、モービッド・エンジェルなどに手を伸ばしてしまうけどね。でも新しい世代のバンドにも素晴らしいものがある。こないだ日本のenvyが俺が住むビアリッツでライブをやって、観に行ったけどすごく良かったよ。
ーGOJIRAと同じフランス出身で、あなた達のアルバム・タイトルと同じ名前を冠するマグマは日本でも人気があり、2022年10月にジャパン・ツアーを行ったばかりですが、彼らの音楽には親しんでいますか?
マグマはフランスでは伝説的なバンドで、ミュージシャンだったら誰もが知っているし、尊敬されている。あまり深くアルバムを聴いているわけではないけど、1990年代ぐらいにライブを観て、その世界観、音楽、エネルギーに圧倒されたよ。なかなか同じフェスに出演する機会がないけど、ぜひまたショーを体感してみたいし、会って話してもみたい。
ー元々GOJIRAという日本の怪獣の名前はゴリラとクジラを合体させたもので、あなた達は環境保護団体シー・シェパードを支援するEPをレコーディングするなどしていますが、クジラへの想いを教えて下さい。
俺たちが育ったフランス南西部は高くそびえ立つ山と広大な海が拡がる、自然に恵まれた地域なんだ。都会ではなく森林もある、のどかな場所だよ。クジラは山や海のように、自分を取り巻く巨大な自然の一部だ。日常的に見かけるわけではないけど、重要な位置を占める存在だった。子供の頃は外で遊んでいたし、それが普通だった。現代の世界では、その普通だと思っていたものが破壊されようとしている。環境破壊や森林火災はこれまでになく深刻だ。そんな現状に対してメッセージを発信することは、バンドの義務だと考えているよ。
ーあなたの住むビアリッツ市の紋章にもクジラがいますね。
うん、ビアリッツはスペイン国境に近い町で、かつては捕鯨と漁業で栄えていたんだ。現代では環境保護の観点から捕鯨はしていないけど、紋章はその名残なんだよ。
ー2011年に制作されながらハード・ディスクのクラッシュでデータが壊れて、その後ずっと修復中だという『シー・シェパードEP』は2017年ぐらいに”発表される可能性がある”というニュースが流れましたが、今後リリースされる予定はありますか?
ゴメン、ずっと作業が止まっているんだ。デヴィン・タウンゼンドとメシュガーのフレドリック・トーデンダルが参加した「Of Blood And Salt」はウェブで公開したけど、あと3曲が未発表だ。まだタイトルはないんだよ。1曲はスーパー・ヴァイオレントでスーパー・デス・メタルなんだ。あとプログレッシヴでチルなパートのある曲、それからすごくエモーショナルでドラマチックな曲の、合計4曲になる。ランディ・ブライ(ラム・オブ・ゴッド)、マックス・カヴァレラ(ソウルフライ)、アンダース・フリーデン(イン・フレイムス)がゲスト参加しているんだ。俺たちにとっても重要な作品だし、いつかリリースしたいね。
日本のファンのためにエキサイティングなショーをやる
ーあなたの生まれたバイヨンヌ、現在住むビアリッツは共にフランス南西部バスク地方の主要都市ですが、バスク紛争はあなた達にどのように影響を及ぼしましたか?
バスク分離独立運動はバスク語を話す人々が中心だったし、真っ只中にいたわけではなかったんだ。俺たちの母親はアメリカ人で、父親はボルドー出身のフランス人(画家のドミニク・デュプランティエ)だった。バスク語は一言、二言ぐらいしか話せないよ。それに俺たちが育ったオンドルは厳密にはバスクではないんだ。30分ぐらい離れたところで暴動が起こったりしたけどね。ただ、それでも彼らの意思は強く伝わってきた。そのエネルギーから影響を受けたと思うね。幸い今では停戦しているし、安心して暮らすことが出来るよ。
ーバスク出身のメタル・バンド、モナークは来日したこともありますが、面識はありますか?
もちろん! モナークのギタリスト、シラン・カイディンは俺が13、4歳ぐらいの頃、学校の親友だったよ。一緒にデス・メタルを聴いたり、つるんでいた。モナークの他のメンバーも同じ学校だったんだ。15歳ぐらいの頃から、彼らは政治や社会に対する意識が高かった。俺は16歳の頃、彼らの勧めでベジタリアンになったんだ。
ーあなたは現在でもベジタリアンですか?
厳密なベジタリアンではないけど、積極的に肉を食べることはない。1週間に1度ぐらい、出された料理に混ざっていたら食べるぐらいかな。ジョーはヴィーガンで、動物は一切口にしないんだ。
ー豆腐や天ぷらなど、日本には豊かな野菜食文化があるので、きっと食事を楽しむことが出来ると思います。
ハハハ、日本のファンのためにエキサイティングなショーをやって、その後は日本料理でディナーにするよ。最高に楽しみにしている。ライブ会場で会おう!
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【関連記事】歴代最高のメタルアルバム100選
<INFORMATION>
新曲「Our Time Is Now / アワ・タイム・イズ・ナウ」
ワーナーミュージック・ジャパン
配信中
https://japan.lnk.to/P5cmmDpA
アルバム『Fortitude / フォーティチュード』
発売中
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-18421
https://rrjapan.lnk.to/Gojira_Fortitude
https://wmg.jp/gojira/
<来日公演情報>
GOJIRA
JAPAN 2022
大阪:11月24日(木)Zepp Osaka Bayside
東京:11月25日(金)豊洲PIT
公演詳細ページ:
https://www.creativeman.co.jp/event/gojira22/
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