コールドプレイのガイ・ベリーマンが語る、ファッションへの真摯な想い
Rolling Stone Japan / 2022年12月6日 17時30分
コールドプレイのベーシスト、ガイ・ベリーマンがクリエイティブディレクターを務めるブランド「APPLIED ART FORMS」(以下AAF)の最新コレクションが、11⽉23⽇より東京ドーバー ストリート マーケット ギンザ2階で展開されている。
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ビンテージのミリタリーウェアやワークウェアからインスパイアされつつ、厳選された素材と高度な構造によって作られたAAFのアイテムは、どれもシンプルで機能美にあふれたデザインが特徴。ショップにはコートやフィールドジャケット、オーバーサイズフーディーなどが並び、単体としてはもちろん、それぞれのアイテムをレイヤードする楽しさも提案している。コールドプレイのメンバーとして音楽に専念するまでは、大学の機械工学や建築学でインダストリアルデザインを学んでいたガイ。「供給過多」と言われ、ファストファッションの環境への配慮などが問題になっている昨今、なぜガイはファッション業界に身を投じたのか。AAFに対する熱い思い入れを語ってもらいつつ、気になるコールドプレイの近況なども聞いた。
─あなたはAAFのクリエイティブ・ディレクターだそうですが、具体的にどのような形で関わっているのでしょうか。
ガイ・ベリーマン:AAFは、主にビジネス周りを担当しているフランク、デザインを担当しているマルセルの3人で立ち上げたファッションブランドです。少数精鋭で運営しており、僕はマルセルと共にブランドコンセプトからデザイン、テキスタイルのディテールに至るまで全てに関わっています。僕はミュージシャンとして身を立てる前、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで機械工学を専攻し、そのあと建築学に変更しました。音楽が仕事のメインになってからは、いわゆる「インダストリアルデザイン」の世界からすっかり遠ざかっていましたが、ここにきて再び自分を鍛錬するような場所にコネクトしてみたくなったのです。
─AAFのブランドコンセプトを教えてください。
ガイ:僕はビンテージのミリタリーウェアが大好きで、40年代〜60年代にアメリカ軍やイギリス軍、フランス軍などが製造していたウェアを以前からずっとコレクションしていました。その実用性にインスパイアされた服作りが基本のコンセプトですね。もちろん、ミリタリーウェアとはいえファッション性も当然重要ですし、人間の体にいかにフィットするか、快適であるかも求められる。そういったことを考えながら作っていますね。
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─ミリタリーウェアに魅力を感じるのはどうしてでしょうか。
ガイ:ご存知のように、ミリタリーウェアは具体的な目的があって作られているため、機能性に優れているところが最大の魅力です。男女問わず特定の状況において、それがどう機能するのかがとことんまで突き詰められている。素材は耐久性に富み、保温や保湿に長けてなければならないし、柄や色合いに関しては、例えばカモフラージュが必要なウェアも存在します。そういう、さまざまなタスクに応えるために作られた「機能美」に僕は惹かれるのでしょうね。
製造技術・素材、日本に注目する理由
─日本の製造技術にも着目しているとか。
ガイ:クオリティを追求する上で重要だったのは、素材の選び方や縫製でした。その意味で日本の製造技術や素材選びにかけるパッションに、僕らチームはみんなリスペクトと憧れを持っています。ブランドを立ち上げる過程でイタリアやポルトガルにもいい工場がいくつか見つかりましたし、AAFの拠点であるアムステルダムにもいい仕事をしてくれる工場はあるのですが、日本は文化の基盤にクラフトマンシップがある。そのことを僕らは以前からずっと感じていました。
─実際に服を作る上で特にこだわったことは?
ガイ:とにかく長く着られること。そのためにはクオリティを重視し、トレンドは追わないことも決めました。街を歩けばロゴのインパクトやデザインの奇抜さ、色の派手さをアピールするショップがたくさん並んでいます。でも僕らが目指したのは、サスティナビリティを重要視する気持ち。5年、10年を経ても楽しんで着用してもらいたいという思いです。
ファッション業界では通常年に2回、春夏と秋冬にコレクションを更新させるのですが、僕らAAFはそういう概念で動いていません。今ここで展開しているアイテムの中には、ローンチした時に作ったものも混じっていますし、選択肢を増やすために追加したアイテムもある。作ったものを数年そのまま据え置きにしつつ、必要に応じて色を変えることもあるかもしれない。こういう展開の方が健全なのではないかと考えています。出した時だけプロパーで売って、あっという間に値下げして、どんどん回していかなければならないような状況に関心がないんですよね。
─実際、ファッション業界はファストファッションを始め「供給過多」が問題となっており、環境破壊とも無関係ではない。
ガイ:その通りです。
─そんな中で、私たちはファッションに対してどんな認識でいるべきだと思いますか?
ガイ:とにかく買う量を減らし、質の良い服を長く使うこと。みんなとにかく「安いから」「流行っているから」という理由で服を買いすぎて、それを捨てすぎていると思う。サスティナビリティの観点から考えると、やっぱりそれは不健全だと僕は考えています。
─ちなみに、バンドでの曲作りとAAFでの服作りは共通する部分などありますか?
ガイ:少数のチームで連携しながら一つの作品を作っていくという意味では、AAFでやっていることも、バンドでやっていることもプロセスとしては似ていると思います。そう、AAFでの活動はソロアーティストではなくバンドに近いものがあるかもしれない。決してソロ活動ではなくて。自分はバンドを25年以上やってきたわけだから、そういうチームワークでものを作ることが好きだし自分に向いているのだと思います。
「分かる人にはわかる」という感覚を大切にしたい
─あなたの国イギリスには、例えばパンクファッション、モッズ、ゴシックなどジャンルと音楽が強烈に結びついているじゃないですか。音楽とファッションは昔から強い結びつきがありますが、AAFのデザインには音楽からのインスピレーションも含まれていますか?
ガイ:基本的に音楽とファッションは、自分の中では分けて考えています。ただ、カート・コバーンが着ていたモヘアのカーディガンにインスパイアされて作ったアイテムがありますね。今回は持ってこなかったのですが、そんなふうにミュージシャンのファッションスタイルなどが、形を変えて自分の服作りに反映されていることは他にもあるのかも。そういえばパンクの連中も、モッズもみんなアーミージャケットやアーミーコートなど、ミリタリーウェアを取り入れていますね。
─音楽のジャンルごとにファッションコードが存在するのは、ある種「ユニフォーム」的な意味合いがあるのでしょうね。特にミリタリーウェアには、みんなでお揃いの出で立ちをして士気を高めたり、帰属意識を強めたりする力があるのだと思います。
ガイ:確かに。「同じものを分かっている者同士」という感覚を共有するというか。AAFの場合は、例えばそのアイテムが生まれるまでのストーリーやそもそもの起源などに興味がある人たちが「仲間」になるのでしょうね。特に日本はミリタリーウェアに関心を持っている人が伝統的に多い気がしていて。この近所にも、ビンテージのミリタリーウェアを専門に扱っているショップがいくつもあるのを知っています。非常にニッチだと思いますが、「分かる人にはわかる」という感覚は大切にしたいですね。
─ところで、ガイが来日したのは5年ぶりでしたっけ。
ガイ:そうです。ずっと来たいと思っていました。バンドはまだ『Music of the Spheres』ツアーが続いている状況ですが、コロナ禍の影響でまだ会場探しもままならず、日本公演の予定が組めなくて。これはバンドメンバー全員を代表して言えることですが、日本で演奏するのが僕らは大好きなので、その時を楽しみにしています。
─それは楽しみです。滞在中、少しは羽を伸ばせました?
ガイ:昨夜は六本木の『ABBEY ROAD Tokyo』に行ったんですよ。そこでパロッツ(世界的に有名な、ビートルズのコピーバンド)のライブを見たのですが、最高でした。彼らはパーフェクトですよ。
<INFORMATION>
ドーバー ストリート マーケット ギンザ
住所:104-0061東京都中央区銀座6-9-5 ギンザコマツ西館
電話: 03-6228-5080
営業時間:11:00-20:00
定休日:不定休
URL: https://ginza.doverstreetmarket.com
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