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コロナ禍に誕生したロックバンド、Midnight 90'sが語る「僕」や「君」を描かない理由

Rolling Stone Japan / 2022年12月26日 19時0分

Midnight 90's

東京を拠点に活動する4人組ロックバンドMidnight 90s(ミッドナイト・ナインティーズ)が2022年12月24日に1stミニアルバム『Night Ryder』を発売する(タワーレコード限定販売)。90年代後半生まれのメンバーで2021年に結成され、The Strokesの曲名をモチーフにしたバンド名を冠する彼ら。『Night Ryder』に収録された楽曲は、一聴すると奇を衒わずストレートな楽曲、演奏にスタンダードなロック、ポップスだが、繰り返し聴くうちに独特の世界観がにじみ出る歌詞とサウンドとの絶妙な”ズレ”のようなものが気になってくる。

佐久間 龍之介(Vo.Gt)名雪 光星(Gt)の2人に、バンド結成の経緯から2022年12月17日に下北沢近松で行われた初めてのワンマンライブ〈Midnight 90s ONEMAN LIVE「巣立ちの朱鷺 音楽は死なず」〉のこと、さらに”ギターソロ飛ばして聴く問題”についてもどのように思っているのか訊いてみた。

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―Midnight 90sを結成する前には、それぞれどんなことをしていたんですか?

名雪光星(Gt / リーダー):僕はもともと楽器はやっていたんですけど、バンドはMidnight 90sがほぼ初めてです。最初は僕とベースとドラムで始めて、ボーカルを探しているときに、たまたま佐久間と出会って、一緒にやることになりました。

佐久間 龍之介(Vo.Gt):僕はずっとスケートボードをやっていたんですけど、コロナで外出禁止になっちゃったので、家でできる遊びを探しているときに、「ちょっとギターをやってみようかな」ってギターを始めてからバンドの音楽を聴くようになって、曲も作るようになったんです。それをYouTubeに投稿していたら、名雪君と出会ってバンドに加入することになりました。

―ネット経由で知り合って結成するというのが今っぽいですね。佐久間さんは急にギターを始めたみたいですが、「この曲を弾きたい」みたいなことはなかったんですか。

佐久間:とりあえずカッコイイことをやりたいなと思って、「まずギターかな」って。ピアノだと大きくなっちゃうんで(笑)。

名雪:ははははは(笑)。僕はもともとサッカーをやっていたんですけど、音楽はすごく好きだったので、大学に入ってから新しいことをやってみようと思って軽音サークル入ったのがきっかけです。

―最初に会ったときはどんな話をしたか覚えてます?

名雪:最近はバンドの話もよくするようになったんですけど、佐久間君と会ったときはまだ彼がギターを始めて2年目ぐらいだったので、僕が自分の好きなバンドを教えたりしていました。

佐久間:その頃から、全然知識もないまま本当に見様見真似で「この曲のコードを使ってみよう」とか適当に曲を作ってました。ちゃんとした曲になってなかったんですけど(笑)、曲になったことが嬉しくて、それを誰かに聴いてもらいたいっていう承認欲求みたいな気持ちでYouTubeに上げていたところ、名雪君に見てもらったんです。

―名雪さんは、YouTubeで見たときにどこが気に入ったんですか?

名雪:オリジナルの曲はそこまで聴いてなかったんですけど、Vaundyのコピーとかをしていたのを聴いて、すごく声が良いなと思いました。佐久間も自分たちがネット上に上げていたトラックを聴いて気に入ってくれて、スタジオに入ったのが最初ですね。

佐久間:最初は、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の曲をやった覚えがあります。

名雪:自分が、アジカンの「N.G.S」をやろうって言ったんです。そういう感じのギターロックをやろうっていう思いがあった気がします。



―バンドを組むと色んな目標ができたりすると思うんですけど、そもそもどうしてバンドを組んでこうして続けて行こうと思ったんですか?

名雪:大学からギターを始めて、最初は楽しければいいかなと思ってやっていたんですけど、途中からバンドをやってる先輩に、「どうせ新しいことを始めたなら、大学4年間で終わらせるのはもったいない」って言われて。そのときから、バンド活動により興味を持つようになって、コロナ禍ぐらいから本格的に動き出した感じです。

佐久間:自分は曲を作って上げていたものの編曲とかDTMの技術もないので、作った曲を弾き語りじゃなくて色んな楽器を使ってバンドサウンドにして世の中に出したいっていうのが、僕がバンドを組もうと思った理由です。

―バンドに興味を持つようになってからはどんなアーティストの曲を聴くようになったんですか。

佐久間:最近は洋楽も邦楽もギターがメインの音楽が好きです。

―スケボーって、ミクスチャーロックとかヒップホップとか音楽とも関わりのあるカルチャーですよね。そういうのはあんまり関係なかったですか?

佐久間:いや、そのカルチャーには結構影響を受けていて、曲を作る前はずっとラップ、ヒップホップを聴いていました。バンドを始めてからもスケボーのカルチャーとかファッションは好きで、例えばYogee New Wavesとかはスケーターからも好まれる音楽をやっているので、今でもすごく好きです。

―名雪さんはどんなアーティストから影響を受けているんですか?

名雪:自分はアークティック・モンキーズがすごく好きで、音作りとかに影響は受けてますね。

―なるほど、ギターにそういう感じは出ていてソロを弾きまくってますよね。「最近の若いリスナーはギターソロを飛ばして聴く」っていう話題がありましたけど、あんまりそこは共感しない?

名雪:今ここまでギターソロを弾くバンドってあんまりいないと思いますけど、僕も「ギターソロはいらないんじゃないか」ってすごく思うんですよ(笑)。自分的にはバンドの4人で間奏を埋めたいと思うんですけど、結局曲作りをするとなぜかギターソロパートが絶対あるようになってしまうんです(笑)。これからは、そこをギターソロ以外で何かやってみたいと思ってます。

―曲を聴くと、新しいことをやろうというよりは、スタンダードなロックやポップスを作っていくことにこだわりがあるのかなと思いました。

佐久間:そうですね。バンドを始めてから色んな音楽を聴いたんですけど、例えばスピッツみたいな、誰にでも好まれる歌メロとフレーズっていうのが、今自分が一番やりたいことなのかなって感じています。

名雪:佐久間の作る曲がすごく良いんですけど、メンバーは好きなバンドがそれぞれにあって、結構バラバラなものを持ち込んで好きなように各々がやるという作り方をしていて。それがハマっている気がします。全員が同じ方向を向くと、既存の曲に近いものになってしまうと思うんですけど、みんなそういう話をせずに作っているので、Midnight 90sらしさみたいなものがそこで出せれば良いなと思っています。

―取材には参加していないですが、ベースのゆうさんとドラムの石川響さんはどんな音楽が好きな方々なんですか。

佐久間:ベースのゆう君は、OKAMOTOSとか結構ベースが動くバンドが好きですね。ドラムの石川君はSiMとかマキシマム ザ ホルモンみたいな激しいバンドが好きだと思います。



―なるほど、確かにバラバラですね。その4人で作った1stミニアルバム『Night Ryder』はどんな作品にしようと思って作りましたか?

佐久間:『Night Ryder』は、今まで作ってきた曲の集大成を僕たちなりの色で出せればいいかなと思って作りました。収録曲は今まで自主制作で出してきた曲に新しい曲を何曲か入れています。

―今作で一番古い曲ってどれですか?

佐久間:「青い太陽よ」です。これが人生で初めて作った曲で、本当に見様見真似で作った感じです。Aメロはちょっとネガティブな感じで、サビではじけるように意識して作りました。

―名雪さんは、Midnight 90sはどんなことを歌っているバンドだと思ってますか。

名雪:客観的に歌詞を聴いて思うのは、あんまり自分を大きく見せない歌詞が多いと思うんです。等身大の中で、聴いている人たちに元気を与えられる曲というか。めちゃくちゃ頑張れって応援しているというよりは、「今のままで大丈夫」っていうイメージは曲を通して感じています。

―こういう話はバンド内でします?

名雪:一切しないですね(笑)。

佐久間:歌詞もパートの一部だと思っているのであんまり話したことがなかったですけど、そう思ってたんですね(笑)。

名雪:はははは(笑)。どういう歌詞なのか気になることもありますけど、佐久間が思っていることとか、考えていることにそんなに口を出したくないというか。そこはお任せしてありのままに好きなことを歌ってくれたらいいし、それを自分たちが勝手に解釈してギターを付けるみたいな感じです。

―アルバムは「午前二時」から始まりますが、これはどんなときにできた曲ですか。

名雪:これは自分がやりたいことを全部やっていて、一番好きな曲です。

佐久間:タイトルは「午前二時」なんですけど、特にその時間に何があるとかではなくて。大人になる瞬間というか、思春期って何をしてもつまらないし、何をしてもムカつくみたいな、「この怒りをどこにぶつければいいんだ」っていう自分の憤りを書いた曲です。

―「本当の音」や「迷子のまま」も、大人になる過程や内面の変化が描かれているように聴こえます。

佐久間:「本当の音」は、 ”それでもいいんだよ”って、背中を軽く押すような曲です。「迷子のまま」も応援する曲だと思っているので、そういう意味で自分の中では「午前二時」の感じとは全然違っていますね。



―アルバムには、ほぼラブソングがないですよね。かといって過剰に自分語りしているわけでもなくて、それが全体的に不思議な印象も受けました。それは、佐久間さんが作る曲は自分の感情をそのまま描くというよりも、言葉に色んな工夫を凝らしてアウトプットしているからなんじゃないかと思いますが、いかがですか。

佐久間:そうですね。歌詞はすごくこだわっていて、最近書いた「Location」は一番気に入っているんです。メロディも歌詞もリズムも、全部自分がやりたいことができたなと感じています。

―すごくポップな曲ですが、メロディはどんなイメージで書いたんですか?

佐久間:色んな曲を参考にしたんですけど、一番大きいのはさっき話に出たYogee New Wavesです。

名雪: 2年間一緒にいて思っていることなんですけど、佐久間って結構繊細なタイプなので、そこがすごく歌詞に反映されていると思っていて。曲を聴くと、めちゃくちゃ明るくもなくて、かといって暗いわけでも無いっていう微妙なバランスに、佐久間の人間性が出ているなと感じます。

―それは、接しているうちに「ああ、だからこういう曲が出来るんだな」って感じるものがあった?

名雪:曲を聴いているときと、接しているときと両方あります。歌詞を聴いてるときに、「もっとストレートに言えばいいのに」って思ったときがあったんです。自分が結構ハッキリしているタイプなので、白黒つけない感じの歌詞に疑問を持ったのがスタートで、それで佐久間と接しているうちに、「こういうのが佐久間らしい歌詞なのかな」って思うようになったんです。

―例えば曲のどんなところに出ていますか?

名雪:「迷子のまま」の歌詞には顕著だなと思います。繊細な悩みを歌にしていると思います。思春期なら、恋愛とか失恋は結構大きな悩みじゃないですか? でも佐久間の歌は大人になるときの葛藤とか、大人になった後の悩みとか、ちょっとスケールが違うというか、方向が違うというか。「そういうところで悩むんだ」っていうところが、佐久間らしいなと思います。

佐久間:ストレートに伝える曲も今後作れたらなって、初めてのバラード「きれいな花のような日々」を作ったんです。この曲は今、名雪君が言ったようないつもの自分が出ているんですけど、最後はストレートに言いたいことを言えたと思っています。

―綺麗なバラードですけど、すごいエモい感じも出てますよね。綺麗なメロディだけどギターは歪ませているというのが、このバンドの特徴の1つなんじゃないですか。

名雪:この曲、最初は歪ませる予定はまったくなくて。最後まで綺麗なままで終わらせようと思っていたんですけど、「綺麗すぎてるな」と思って、レコーディングの段階で急遽歪ませたんです。特にサビのところとか、強めに歪ませてます。バラード自体作ったことがなかったし、歌詞も佐久間にしては珍しいなと思っていて。今の若い人に刺さりそうな曲だなと思います。



―お2人も十分若いですけど、10代に刺さる曲とかも意識するわけですか。

名雪:全部の世代に届いて欲しいなとは思ってます。

佐久間:最初は、正直若い人から人気が出たら嬉しいなと思っていたんですけど、最近はより上の世代も巻き込めたらと思ってます。ミスチルとか桑田佳祐さんとかを聴いている世代の人たちにも自分の音楽を届けたいと思ってます。もちろん、最近のトレンドはマストで取り入れたいと思っていて、プラスアルファで年齢の方たちも楽しめる曲ができたらなと思います。

―今、10代の音楽のトレンドってどんなところで知るんですか? TikTokですか?

佐久間:TikTokもチェックしてますけど、1番はTwitterの「日タグ」ですね(「#日曜日だし邦ロック好きと繋がりたい」)。それでみんなどういうバンドが好きなのか常に調べてます。

―そういうことはバンドで共有してるんですか? 「今はこういう音楽がきてる」とか。

名雪:いや、一切してないです(笑)。

佐久間:ははははは(笑)。

名雪:自分はあんまり調べたことが無くて、ひたすら好きな曲を聴いている感じですね。ただ、「こういう曲をやりたい」っていうことはお互いに話したりはします。

―名雪さんが他にこだわった思い入れのある曲はありますか?

名雪:「カタクリ」は個人的に好きな曲です。最後の盛り上がりとかは、どうやったら良いかすごく考えました。自分はギターリフが好きなので、どの曲にもどこかしらリフは入れようと思っているんですけど、中でもこの曲は好きなリフです。

―この曲ではトレモロ奏法をやっていて、この曲以外にも出てきますよね。そこにアークティック・モンキーズやガレージサウンドが好きなところが出ている印象です。

名雪:そうですね。自分はファズとトレモロはめちゃくちゃ使うんですけど、その2つを使っているバンドってなかなかいないのかなって。いても、飛び道具で使うぐらいだと思うんですよ。そこは結構こだわってますね。

―そこまでこだわったギターソロが飛ばされたら嫌ですよね?

名雪:そうですね。でも時代的にしょうがないのかなって(笑)。

佐久間:ははははは(笑)。

―いやしょうがなくないでしょ(笑)。聴いて欲しいですよね?

名雪:もちろん聴かせたいんですけど、4人でMidnight 90sだと思っているので。今は自分がギターソロとかリフで目立つ曲が多いので、今後は違った感じの曲も作って行きたいと思っています。



―「愛舞」(あいまい)はどんなテーマで書いた曲ですか。

佐久間:この曲は、ダサい男の恋愛ソングを意識して書きました。「あの子から見られた」とか、ちょっとしたことで喜んでしまうという曲です。

名雪:ライブの定番曲にしたいなと思って、アップテンポで頭に残るクサいフレーズみたいなリフにして盛り上がれるように作りました。



―全体的に、曲には「君」とか「僕」っていう言葉が出てこないですよね?

佐久間:それはすごく意識してますね。実生活の経験や行動よりも、気持ちの変化とかその場所の空気とかを感じ取って欲しいという思いで書いてます。

―ラブソングは今後もあまり書くつもりはないですか。

佐久間:正直自分の中ではそうなんですけど、バンドとして絶対必要にはなってくると思うので、今後は書くことがあると思います。

―2022年12月17日に下北沢近松〈Midnight 90s ONEMAN LIVE「巣立ちの朱鷺 音楽は死なず」〉で初めてのワンマンライブが行われますね(記事掲載時終了)。タイトルにはどんな意味を込めたんですか。

名雪:自分たちがこのワンマンでもう1つ新しいステージに登るための第一歩という意味と、巣立ちをしても大人になったら帰って来る”朱鷺(トキ)”のように、原点を忘れないという意味でこのタイトルをつけました。

―初めてのワンマンライブにして既にソールドアウトになったそうですが、どんなライブしたいですか?

佐久間:今回のライブは、配信やCDにも入れてない曲をやったり新しい試みをするんですけど、自分たちの集大成というか、来てくれたお客さんに成長した姿を見せられたらと思っています。

名雪:初めてのワンマンで、16曲ぐらいやるのも初めてなので、挑戦的な意味もあります。バンドの2年目の目標がワンマンのソールドアウトだったので、この2年間の集大成を見せたいと思います。

―では最後に、バンドとしての夢を教えてください。

名雪:武道館に立ちたいです。

佐久間:まずはクアトロでワンマンライブをしたいです。そこから武道館を目指したいですね。


<リリース情報>

Midnight 90s
1st mini album『Night Ryder』
2022年12月24日(土)リリース
¥2,500(税抜)
取扱い店舗:タワーレコード
渋谷 / 新宿 / 名古屋パルコ / 梅田NU茶屋町 / オンライン
タワーレコードオンライン購入リンク:https://tower.jp/item/5619027/Night-Ryder

Midnight 90s
3rd EP 『afternoon』
配信リンク https://linkcloud.mu/0b38f376 

https://twitter.com/midnight__90s


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