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甲本ヒロトが語る成功の考え方、さかなクンとの交流からアントニオ猪木への想い

Rolling Stone Japan / 2023年1月20日 19時0分

甲本ヒロト(Photo by Jumpei Yamada)

ザ・クロマニヨンズが16枚目のオリジナルアルバム『MOUNTAIN BANANA』を2023年1月18日に発売する。冒頭から強烈なビートによる「ランラン」「暴走ジェリーロック」「ズボン」が続き、「カマキリ階段部長」「でんでんむし」「一反木綿」と気になるワードをテーマにメロウだったりフォーキーだったりと変化球で聴かせ、後半はマイナー調でシリアスさも感じさせる等、怒涛の展開で「何だかわからないけど、カッコイイし面白い!」という曲が詰まった傑作だ。

今作について、ボーカルの甲本ヒロトにインタビューを行った。アルバムについての取材ではあるものの、きっと彼はいつもと変わらないはず。。そこで今回は、アルバムのことのみならず、先行シングル「イノチノマーチ」でジャケットイラストを手掛けたさかなクンとの交流や、デビュー前のバイト先「珉亭」での松重豊との知られざるエピソード、新曲をメンバーに発表するときの方法、写真撮影、還暦を迎えること、そしてアントニオ猪木について。多角的にさまざまな話を訊かせてもらった。

関連記事:甲本ヒロトが語る「あきらめる力」と「夢は叶う」の意味

―ザ・クロマニヨンズのニューアルバム『MOUNTAIN BANANA』が2023年1月18日に発売されます。16枚目のスタジオアルバムになりますね。

うわ~、16枚目。ビックリしますね。

―毎回「作品にコンセプトはない」というのがクロマニヨンズですが、前作では『SIX KICKS ROCK&ROLL』という企画を行いました。今回はどんなことを考えて作品を作りましたか?

コンセプトはなかったですけど、売り方ですよね。作り方としてはコンセプトもないし、変わらない。前作のときも、いっぺんにドーンと作って全曲出揃った状態でそこから1枚目のシングルを切り始めたから。今回も作り方としては同じです。ツアーが終わった、ちょっと休んだ、スタジオに集まった、「さあやろう」「できた」。そんな感じ(笑)。

―曲作りに悩むこともあまりないですか。

どうだろうなあ? 別にアルバムのために曲を作ったことはないし、曲がなければ出さなきゃいいんだし。バンドって、ツアーをやってなかったらなんもやることがないから、「集まってレコーディングしよう」ということになりますよ。そんな普通の流れです。曲はもともとあるから、録音するだけです。

―あ、曲作りは常にしているということですか?

あんまり作るっていうイメージじゃないんですけど、なんかあるんです。

―じゃあ、曲のことを思い浮かべても、どうやってできたのかわからない?

まったくわからない(笑)。散歩してたりお風呂で頭を洗ってるときに、鼻歌で歌ってるんですよ。「あれ? なんだっけこの歌? あ、新曲じゃん!」みたいな。それこそ、ランドセル背負った子供が、でっかい声で歌ったりしてるじゃないですか? あんな感じです。


あああ


―アルバム収録曲から「イノチノマーチ」(NHK E テレ「ギョギョッとサカナ★スター」総合「超ギョギョッとサカナ★スター」主題歌)が先行シングルでリリースされましたが、この曲もテレビの主題歌として書き下ろしたというわけではないのでしょうか。

この曲もそういうわけじゃないんです。僕はさかなクンがもともと大好きで、ずっと前に僕の方から「会わせてください」って言って対談したんです。それで話してみたら思った以上の感動があって、もっと好きになって。そこからときどき連絡を取り合うようになって、「新しい番組をやるんだけど、主題歌を頼めないかな」って、ちゃんとした形で話を振っていただいて。そのときに、「イノチノマーチ」はあらかたあったんです。特に〈水の中 地図の外〉というところはずっと鼻歌で歌っていたりしたので、「あ、この曲はピッタリかもしれない」と思ったから、「やります!」って引き受けて。それをちゃんと仕上げたのがこの曲です。



―アルバムのジャケットは今回も菅谷晋一さんが手掛けていますが、シングルの「イノチノマーチ」は、さかなクン描き下ろしのジャケットイラストですね。

そうなんですよ。クロマニヨンズのジャケットはずっと菅谷君がやってるから、今回のシングルも菅谷君でという話は当然あったんだけど、前に一度だけ菅谷君のジャケットじゃなかったことがあって。それはシングル「ギリギリガガンガン」(映画『ワルボロ』の主題歌として2007年8月15日リリース)のときに、西原理恵子さんが描いてくれたんです。「あのパターンが有りだったら、今回はさかなクンも有りかも」ということになって。さかなクンは年中ずっと絵を描き続けているということも知っていたので、「できればそれを1枚わけていただけませんか?」っていう感じだったんだけど、ちゃんと描き下ろししてくれました(魚になったクロマニヨンズのメンバーが描かれている)。


さかなクンが描き下ろした『イノチノマーチ』ジャケットイラスト


あああ


―さかなクンは絵本も出していますもんね。ところで、映画『さかなのこ』はご覧になりましたか?

観ました。その前に、『さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜』(映画原作となった自叙伝)を読んだら、いろんな人に勧めなきゃっていうぐらい良かったんですよ。その後に、この本をきっかけに映画になったということを教えてもらって観ました。のんさんが良かったですね。

―良かったですよね。男性でも女性でもないような感じで。

のんさんは女性だけど、あの役はのんさんじゃなかったらできなかったんじゃないかなって、終わってから思わせてくれるような良さだった。

―本を読んだり映画を観たりすると、楽しそうなさかなクンの人生にも色々あって深いんだなって思いました。

深いかどうかはわかんないけど(笑)。一途な感じが良いなと思う。努力してるっていう感じじゃないんですよね。「こういう風にしかできない」って振る舞った結果が今のさかなクンだっていうことが、余計に人を感動させるんですよね。

―映画の中ではお母さん役を井川遥さんが演じていますが、お母さんがあんな感じで接してくれたから今のさかなクンがあるのかなって。

世の中のお母さんたちもみんな同じにするのは大変だと思う。だから僕は、あんな風に応援できなかったとしても、完全にやめさせてしまわないことだと思う。その子が魚が好きなんだったら、「まあ、いいか」ってほっておくぐらいの感じで。それでもさかなクンは、今のさかなクンになってたと思う。

―さかなクンと音楽の話をしたりしますか? 最近どんな音楽を聴いているとか。

いや、そういう話はしないけど、最高におかしかったのは、吹奏楽の話ですよ。本当に水槽があると思って行ってみたら、みんなラッパを吹いていたっていう(笑)。本人に会うと、それが本当の話なんだなってわかる。僕はやっぱり魚の話をたくさん聞くのが楽しいんです。さかなクンが「ヒロトさんは普段昆虫とかも好きなんですよね? 魚にはこんなのがいるんですよ」って言うから「虫だったら似たやつがこういうことやってるよ」って話したりすると余計面白い。生き物はみんな同じだなって。


あああ


―ヒロトさんが小さい頃に好きでやっていたことで、周りの人に応援してもらったり反対されたりした覚えはありますか。

「ロックバンドをやる」って言ったら親から大反対されましたよ。だけど今思えば、僕の言い方が良くなかったんだと思う。あまりにも無謀なことだったから今なら納得できるし、僕がレコードを聴くことを止められなくて良かった。「うるさい」とは言われたけど、「聴くな」とは言われなかったから。

―「言い方が良くなかった」というのはどういうことですか?

バンド経験もなかったし、ギターを持ったこともなかったし、何もやったことがなかったんですけど、中学3年のときに突然「日本の法律では義務教育は中学までですよね? 中学を卒業したら僕は家を出て1人で東京に出てバンドをやるから。仕送りもいらない」って言ったんです。そうしたら親が「バンドをやるって言ったっておまえ、やったことあるのか? ギター弾いたことあるのか? 歌作れるのか? 歌ったことあるのか?」って。僕は「全部ないよ。でもやるから。中学卒業したら東京行きます」って言ったら大反対された(笑)。

―何を言ってるんだと。

そう。「おまえ、言ってることがおかしいよ。行ってどうすんだ?」って言われたから、「なんとでもなるよ。駅のホームで寝りゃあいいんだろ」って。

―歌もギターも練習するから、とは言わなかったんですか。

言わない。「できるのか?」って言うから、「できる。日本一になる」って言った。自分でもよくわからなかったけど、ただ確信があったんです。最終的には、大学に行くって受験して上京して、大学にはすぐに行かなくなった。僕は大学に行かなくなるのはわかってたから、学費は全部自分でバイトして出すから、入学金も返すから貸しといてくれって。それで実際入学金も返せたし、学費も全部自分で払うようにして。結局、払えないから大学は除籍になったんですけどね。



―その頃、下北沢の中華料理店「珉亭」でアルバイトしていたわけですね。

そうそう。結構何年間もやってたよ。(当時)あそこは日雇いだったんです。だから、前日の夜に電話して、「あの~、金ないから行ってもいいですか?」って言うと、「おお、何時でも良いからこいよ!」って言われて、適当な時間に行って皿洗いとかしてると、ポケットにお札が入ってるんです。「今日の分だよ」って、何千円か入ってる。それで、次の日からずっと行かなくたっていい。

―それでしばらくしてお金がなくなると、また行って働くんですか?

そう、だからバンドマンとか役者が集まってた。


あああ


―「珉亭」で俳優の松重豊さんと一緒だったことは有名ですよね。

確か、2人が「珉亭」に入ったのは同じ日だったんですよ。向こうは博多から来ていて、僕は岡山から。「東京で何すんの?」って訊いたら、そのとき豊は「映画を作りたい」って言ってた。映画を撮る練習をしていて、学生時代に自主映画を作るっていうから、何か手伝えるか聞いたら「主役を頼む」って言われて(笑)。

―えっそうなんですか?

うん、少しだけ出たよ。その作品は完成しなかったけどね。でもロケとかやったし、面白かった。

―ヒロトさんは演技をしてみたいという気持ちもあったんですか?

いや、全然思ってない。豊がやるなら協力するっていうだけです。

―逆に、松重さんが音楽のことで関わったことってあるんですか?

当時僕がやっていたバンドがザ・コーツって言うんですけど、その映画の中で、豊がザ・コーツで歌うっていうシーンがあった。だから、お互い役を交代したんです。僕が役者をやって、豊がボーカルをやるっていう(笑)。

―すごい! それってどこにも公開されてないですよね?

されてないね。

―そんなことがあったんですね。松重さんとは今も交流がありますか?

うん、連絡は取り合えるよ。でも向こうがすごく忙しくなっちゃってるしね。

―お互い、上京してきて大成功しましたね。

大成功っていうか……ちょっと前に久しぶりに会ったときに、「俺たち最初から大成功してたじゃないか」っていう話をしたんだよ。「俺たち、東京に何しに来た? 俺はバンドをやりに、豊は映画を作りたいって言いながら演劇の世界に入っただろ? やりたいことやったじゃん。バイトしながらでもやれてたじゃん。あれが成功じゃん」って。だからずっと成功してる。バンドをやることがゴールであって、役者にとって舞台に立つことがゴールじゃないですか? その後、ギャラをなんぼもらったとか、そんなのはおまけですよ。

―そこで夢が実現できているから、そこから先はずっとおまけみたいなもの?

ずっとゴールに立ってます。でも、演奏が終わった時点でまた振り出しに戻るんですよね。だからまたステージに行く。


あああ


―最初におっしゃったように、ツアーが終わってまた振り出しから始めようと思ってレコーディングに向かうわけですか。

いや、意識はしてないよ? でもやりたいことっていうのは、バンド演奏なんです。それは意識をしようがしまいが、本当にそうなんですよ。だから、ほっとかれたらそりゃやるよ、やる(笑)。

―曲も作れない、ギターも弾けないというところから始まったわけですけど、前回のインタビューのときはブルースハープを一生懸命練習して身に着けたという話を聞かせてもらいました。

そう、それはね、親にバンドを反対されてから、こっそり1人でやってた。「これだけは隠れてできる」と思って。それしかやることないんだもん。

―今は曲がいつの間にかできているっておっしゃいますけど、最初はどうやってオリジナル曲を作るようになったんですか?

高校3年のときに友だちがバンドをやっていたんだけど、高校が割と進学校で、まわりがみんな受験勉強を始めて、バンドが歯抜けになっていくんですよね。それで友だちのバンドのボーカルが抜けたので、「ヒロトはたしかロックよう聴きよるよな。うちのバンドで歌ってみる?」って声を掛けられて、夏休みの自主コンサートか何かの穴埋めで僕は2、3曲歌うことになったんです。それが最初なんだけど、「やってもいいけど、俺はオリジナルしか歌わんよ」って言って。1曲も作ったことないのに(笑)。

―普通、穴埋めなんですから「この曲歌って」って言われますよね?

言われたけど、「でも俺はオリジナルやるから」って言って。「曲持っとるん?」「ん? つくればええんじゃろ?」って、それで1曲作ったんです。もちろん、何もできないから鼻歌で。そしたらギターの人がコードを拾ってくれて、僕は鼻歌をそのまんまマイクを持って歌って、それをバンドが合わせてくれて、1曲できた。でもそれだけじゃ曲が足りないから、カバー曲もやろうって言って。そのバンドはハードロックバンドだったんで、ディープ・パープルとかカバーしましたよ。

―ええっ!? ヒロトさんがディープ・パープルを歌ってるの見てみたいですよ。「スモーク・オン・ザ・ウォーター」とか歌ったんですか?

いや、たしか「チャイルド・イン・タイム」だったと思う。あの曲長いんだよね。でも、「どうせカバーするなら、ロックンロールやろうよ」って言って、「ブルー・スエード・シューズ」とかもやったよ。ハードロックバンドなのに(笑)。

―全然方向性が違う(笑)。

後で聞いたら、マーシーも初めてやった曲は「ブルー・スエード・シューズ」だって言うから、「同じだよな~!」って。

―なるほど。じゃあそこから、曲は鼻歌で作るようになったんですね。

そう、今でもそんな感じです。鼻歌です。

―そういえば、80年代に雑誌でブルーハーツのレコーディング風景が記事になっていて、スタジオでみんなの前で新曲を発表するって書いてあったんですよ。そのときの写真でヒロトさんがギターを弾きながら歌っているのを初めて見たんですけど、写真のキャプションに「この瞬間がすごく恥ずかしいんだよな」とか書いてあった覚えがあるんです。今はどうですか?

今も恥ずかしいよ(笑)。ギターは東京に出てきてだいぶたってから質屋にぶら下がってたモーリスのギターを1万円ぐらいで買ったんですよ。ギターは今でもちゃんとは弾けないんだけど、なんとなく自分の曲にコードを付けられるようにはなったんです。だからブルーハーツの頃はコードを付けた状態で、曲をスタジオに持って行くようになった。でも全然詳しくないから、3コードだったり多くても5つだったりするんだよ。テンションコードとかわかんないし。未だに僕の曲のコードが少ないのは、コードを知らないからです。

―本当ですか? でも鼻歌で歌った曲が3つとか5つのコードに収まらないこともあるのでは?

なんとかなるんですよ。だいたいコードを5つ使えばなんとかなる。

―曲の発表の仕方は変わらないですか?

今もそんな感じです。だから僕はゆっくりしかギターを演奏できないんですよ。ゆっくり手元を見ながらポロンと弾いてボソボソっと歌うから、みんなは「ゆっくりな曲なのかなあ」って思うわけ(笑)。それこそ、「(超ゆっくりギターを弾く振りで)暴~走~ジェリー~ジャーンジャーン」みたいな感じでやるから、みんなは「どうするつもりなんだろう?」って聴いているんだけど、「これを100倍の速さで演奏してくれ」ってみんなに頼む(笑)。

―ははははは(笑)。それで演奏ができたら、その速さで歌うんですね。

そうそう。みんながコードとメロディを覚えたら、「じゃあいくぜ! ワンツースリーフォー!」ってやる。僕はぶっとんだ爆裂曲を作るんだけど、弾けないからみんなの前ではゆっくり演奏して聴かせるんです。


あああ


―アルバムには前半からリズムが強烈な爆裂ナンバーが並んでますけど、今回はヒロトさんの曲が7曲で真島さんは5曲ですね。いつも半分ずつですけど、今回は何か理由があるんですか?

途中までは6曲ずつで行ってて、僕は「イノチノマーチ」をアルバムから外してたんです。あれはさかなクンの番組にピッタリだから、最初はシングルで出すつもりもなくてシングルのカップリング曲にしたらお客さんは「あ、ここで聴けるんだ」って喜ぶぞって思ってたんですよね。だけど6曲ずつあったのが、なんだかんだでマーシーが「俺、この曲やめようかな」って、まあ話せば長くなることが色々あったんですよ(笑)。それで「俺、今回5曲ね」って言うから、「ええっそうなの!? 1曲足りないじゃん。じゃあ「イノチノマーチ」入れるしかない」ってそこに差し込んで、「じゃあシングルもこれにする?」っていう流れがあってそっちに行った。流れっていうのは乗った方が良くて、今回乗ったらこうなりました。

―「イノチノマーチ」はシングルがステレオMIX、アルバムはモノラルMIXが収録になってますね。

僕は「イノチノマーチ」をカップリングとして用意してたから、カップリング曲が足りなくなって、じゃあ「さぼりたい」をステレオMIXでやったら面白いんじゃないかっていうことで、どうせなら2曲ともステレオMIXを作って、これでシングルとアルバムを両方買ってもらおうという魂胆です(笑)。

―(笑)。そういう流れがあったんですね。

そう。だから、今となってはいかにもタイアップを付けたシングル盤に見えるけど、じつは全然違うんですよ。

―なるほど、それはお話を訊かないとわからないことでした。今回通して聴いていて思ったんですけど、後半にマイナー調で緊張感のある曲が集まってますよね。「もうすぐだぞ! 野犬!」以降は、楽しいですけどシリアスなムードにも聴こえます。

ああ~、マイナーコードをよく使っているかもしれない。でも後半に集まっているというのは初めて気が付いた。確かにそうだね。自然な流れでこれが良いと思って並べたので、そういう風に分析はしてなかったです。

―「さぼりたい」「心配停止ブギウギ」という、どちらも真島さんの曲で終わりますが、〈心配するのは もうやめた〉という内容を心肺停止にかけて歌うというのが面白いです。

ははははは(笑)。「さぼりたい」も、名曲だと思う。



―アルバムタイトルの『MOUNTAIN BANANA』は曲名にも歌詞にも出てこないですよね。

いつもそうです、曲とは関係ないです。僕たちはアルバムという作品を作るということはしないんです。アルバム用に作ったり持ってきた曲じゃなくて、曲はただそこにあるんです。それで録音して発表するときに、まとめて12曲入りのものをボンと出すんですよ。それにタイトルを付けるのは大変なんですよ。

―どこから出てきた言葉なんですか?

どこからも出てきてないです。メンバーの中で適当な言葉を言うんですよ。それが採用になる。

―じゃあ誰が言った言葉かも覚えていない?

覚えてるけど、それは言わない(笑)。誰でもいいし、なんでもいいし。


あああ


―このタイトルと曲を菅谷さんに投げて、このジャケットが完成したんですね。今回は本物のバナナの皮を立てたりしたんでしょうか。

これね、本物のバナナの皮じゃないんだよ。でっかいオブジェ(30cmほどの高さ)をちゃんと作ってる。毎回、何かを作ってくるから。でも皮に見えるよね? 上手だね(笑)。菅谷君からジャケットが出来たって連絡があって見せに来るんだけど、出来上がりの作品だけ持ってくればいいのに、オブジェも持ってくるんだよね。だからすげえ荷物なの、毎回(笑)。

―アートワーク関連でいえば、オフィシャルカメラマン柴田恵理さんによる展覧会『柴田恵理 写真展 ザ・クロマニヨンズ PHOTO EXHIBITION』が行われていました。ヒロトさんは写真を撮られることにどんな思いを持っていますか?

いやあ、嫌いですね。みんな嫌でしょう、それは。毎回嫌です(笑)。

―そうなんですか。展覧会にあったライブ写真とかを見ると「カッコいいなあ」って思いますけど。

あれは、しばえりの作品なんですよ。誰が撮ってもああなるわけじゃないです。僕らはただの被写体で、ゴッホにとってのひまわりです。誰が描いてもひまわりがあんな風になるわけないじゃん(笑)。

―写真を見ても、自分の中で10代の頃から見てきた甲本ヒロト像は変わっていないんですけど、敢えて訊かせてください。2023年で還暦を迎えますね。

ああ~、最近よく言われるわ(笑)。なんともないですけどね、たぶん何もしないと思うし。そもそも自分の毎年の誕生日を忘れてますから(3月17日)。人の誕生日をお祝いするのは好きなんだけど、自分のお祝いはなんか嫌なんだよね。でも最近こうやってよく言われるから、僕は素敵だなと思う70歳ぐらいの先輩に会って飲んでるときに、「還暦のとき、言われた?」ってときどき訊くようになった。でもみんな、「言われるけど何もしてない」って言ってる。照れくさいとかじゃなくて、どうでもいいんです。例えば成人式に行ったかっていうと、どうでも良かったから行ってもいないし意識もしなかったし。

―じゃあ、30代、40代、50代も別に区切りは意識していなかった?

してなかったけど、マーシーが僕より少し先に誕生日を迎えるじゃないですか? だからからかうネタにはする。よくからかってたなあ……ああそうか、それと同じことを僕は今されているんだ(笑)。

―からかってないです、リスペクトしかないです(笑)。この流れで聞くのも何ですが、2022年を振り返ると一番大きな出来事だったのが、やっぱり……。

ああ、猪木さん?

―そうです。どうしてもヒロトさんに猪木さんのことを訊いておきたいと思いまして。特に記憶に残ってる試合ってどんなものがありますか?

そりゃいっぱいあるよ~。8.8の藤波さんとの試合もそうだし、IWGPのホーガン戦でエプロンサイドで舌出して提供クレジットが流れる中で番組が終わって行った、あのときはもう眠れなかった。はぐれ国際軍団との抗争の中で髪の毛を切られてブチ切れた猪木さんとか。あのときもテレビ見ながら大騒ぎしてた。あと巌流島も。楽しかったなあ。

―たくさんありすぎますよね。そんな猪木さんがとうとう旅立ってしまいました。

猪木さんは僕の中でファンタジーだからなあ……プロレスはファンタジーなんですよ。話はちょっと飛んでしまうけど、僕の中でプロレスはキン肉マンの世界が目の前に現れるのと同じぐらいのファンタジーなんです。だから僕にとってプロレスラーは超人なんです。猪木さんが亡くなったということは、非常にショッキングで寂しいし悲しいというのはあるけれど、バッファローマンは死んでも帰ってきたもん。そんな気がして、どこかで救われてるんです。超人は死んでも人に夢を与え続ける。猪木さんはそのぐらいまでいってるじゃないですか? 人を超えた超人ですよ。本当はどうか知らないよ? でも僕はそう思ってるんです。超人が1人、天国へ行った。でも「また帰ってくるかもな」って思わせてくれてるから、へっちゃらです(ニッコリ)。


<リリース情報>



ザ・クロマニヨンズ
シングル『イノチノマーチ』
2022年12月14日発売
CD:BVCL-1262 ¥1000+税
○初回仕様のみ紙ジャケット仕様
=収録曲=
1. イノチノマーチ 
2. さぼりたい

ザ・クロマニヨンズ
『イノチノマーチ』
完全生産限定盤 7inchアナログ盤:BVKL-22 ¥1,200+税
=収録曲=
Side-A. イノチノマーチ 
Side-B. さぼりたい

ザ・クロマニヨンズ
アルバム『MOUNTAIN BANANA』
2023年1月18日発売
CD:BVCL-1263 ¥2913+税
〇初回仕様のみ紙ジャケット仕様
完全生産限定アナログ盤:BVJL-58 ¥2913+税
○60年代フリップバックE式盤を可能な限り再現。180g重量盤採用
=収録曲=
1. ランラン
2. 暴走ジェリーロック
3. ズボン
4. カマキリ階段部長
5. でんでんむし
6. 一反木綿
7. イノチノマーチ
8. ドラゴン
9. もうすぐだぞ! 野犬!
10. キングコブラ
11. さぼりたい
12. 心配停止ブギウギ

<ツアー情報>

全国ツアー「ザ・クロマニヨンズ ツアーMOUNTAIN BANANA」
2023年2月2日(木)東京都・Zepp Haneda(TOKYO)
2023年2月5日(日)東京都・たましんRISURUホール(立川市市民会館)
2023年2月12日(日)石川県・金沢市文化ホール
2023年2月19日(日)愛知県・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2023年2月23日(木・祝)宮崎県・都城市総合文化ホール 大ホール
2023年2月25日(土)佐賀県・鳥栖市民文化会館
2023年2月26日(日)福岡県・北九州芸術劇場 大ホール
2023年3月4日(土)埼玉県・狭山市市民会館 大ホール
2023年3月5日(日)千葉県・浦安市文化会館 大ホール
2023年3月11日(土)秋田県・あきた芸術劇場ミルハス 中ホール
2023年3月12日(日)宮城県・トークネットホール仙台(仙台市民会館) 大ホール
2023年3月18日(土)岡山県・岡山市民会館
2023年3月19日(日)鳥取県・米子市公会堂
2023年3月21日(火・祝)広島県・東広島芸術文化ホールくらら 大ホール
2023年3月24日(金)京都府・ロームシアター京都 メインホール
2023年3月26日(日)兵庫県・神戸国際会館 こくさいホール
2023年3月30日(木)東京都・中野サンプラザ ホール
2023年4月1日(土)新潟県・新潟市民芸術文化会館・劇場
2023年4月8日(土)栃木県・栃木県教育会館
2023年4月9日(日)神奈川県・カルッツかわさき
2023年4月15日(土)香川県・レクザムホール(香川県県民ホール) 小ホール
2023年4月16日(日)大阪府・大阪城音楽堂
2023年4月23日(日)静岡県・静岡市民文化会館 中ホール
2023年4月29日(土・祝)北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)

ザ・クロマニヨンズ オフィシャルサイト http://www.cro-magnons.net

あああ

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