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オカダ・カズチカが語る、サッカーW杯・格闘技の熱狂、2023年の新日本プロレス

Rolling Stone Japan / 2023年1月1日 12時0分

オカダ・カズチカ(Photo by Mitsuru Nishimura)

新日本プロレスにとって、いや、日本のプロレス界において年間最大のビッグマッチである1.4東京ドーム大会「WRESTLE KINGDOM 17 in 東京ドーム」がいよいよ間近に迫ってきた。今大会は2022年10月1日に死去した新日本プロレスの創設者であるアントニオ猪木の追悼大会として開催され、そのメインイベントを務めるのはIWGP世界ヘビー級選手権試合、オカダ・カズチカ VS ジェイ・ホワイトである。

【写真を見る】オカダ・カズチカ 撮り下ろしポートレート

創立50周年を迎えた2022年の新日本プロレスにおいて、オカダは常にリングの中心に立ちながら激闘を繰り広げ、団体を牽引。東京スポーツ新聞社選定「2022年度プロレス大賞」では通算5回目となるMVPと3年ぶり4度目となる年間ベストバウト(VSウィル・オスプレイ戦)を受賞した。新日本プロレスの50周年とアントニオ猪木の訃報を経て、オカダ・カズチカは今何を思い、見つめながらイッテンヨン東京ドームのメインに立つのか。その胸中に迫った。



―プロレス大賞MVPとベストバウトおめでとうございます。率直な手応えとしてはいかがですか?

MVPに関してはこれで5回目の受賞になるので、特別感はあまりないですが嬉しいです。東スポの方にも言われたんですが、喜び方もだんだん薄くなっているようで(笑)。

―(笑)。自分が獲って当然という気持ちもある?

確かに2022年は特に「僕がMVPじゃなければ他に誰も獲れないでしょう」という思いがありましたから。もちろん嬉しさはありますけど、自信があった分、「やった、獲ったぜ!」という感じではないんです。ライバルがたくさんいれば嬉しさは倍増していたと思いますけど、2022年はそんなことなかったかなと思います。

―ただ、新日本プロレスの創立50周年というメモリアルイヤーにプロレス界の顔として1年を終えたという矜持はあるのかなと。

そこはそうですね。新日本プロレスの50周年をしっかりと盛り上げてこられたんだなと思います。そこを評価していただいてのMVPだとも思いますし、猪木さんにもいい報告になるんじゃないかなと思いますね。

―あらためて、オカダさんにとって、そして新日本プロレスにとってどのような1年だったという体感がありますか?

2022年は特に新日本プロレスの偉大さを肌で感じる1年でした。たくさんのOBの方たちに参戦していただき、ここまで選手が集まる団体のすごさを感じました。50周年という節目のタイミングで中心選手として戦えたのも嬉しかった。ただ皆さんの存在が大きくて、「本当に僕がチャンピオンなのかな?」と思うこともあったりして(笑)。でもこれが50周年の醍醐味かなって。

―オカダ・カズチカは常に中心にいなければならないというプレッシャーを自分に課してるところはないですか?

いや、プレッシャーは感じてないですね。プロレスに関しては何をやっても正解に辿り着く自信がありますから。

―曇りなく断言できるのが素晴らしい。

僕が新日本プロレスに入門したときはいわゆる低迷期でした。当時はプロレスリング・ノアの勢いもすごかったですし、全日本プロレスは武藤(敬司)さんを中心に外国人選手も多く参戦して盛り上がっていた。そのなかで新日本プロレスを俺が変えてやるんだという気持ちは強くありました。

―アメリカ遠征からレインメーカーとして凱旋帰国したのが2012年のイッテンヨン東京ドームでした。以降、オカダさんがここまで揺るがない矜持を持てているその要因はどこにあるのでしょうか?

やっぱり経験が大きいと思います。ただ、プロレス以外の現場だと緊張しますよ(笑)。TVに出演したり、人前で話してくださいと言われたら「えー」と思ってしまう。でもリング上にいれば、本当にいろんなことを経験したので。むしろリング上で経験してないことはないと思うくらい。

―パブリックイメージとしては順風満帆な道のりを歩んでいると思われている部分もあると思いますが、決してそんなことはないですよね。たとえば2017年、柴田勝頼選手がオカダさんとの激闘の果てに大ケガを負ってしまったことは今も重く受け止めていると思いますし、あの試合はプロレスの厳しさ、怖さを観客にもダイレクトに伝えるものでもあったと思います。

そうですね。振り返れば、正直、「なんで僕にここまで試練を与えられるんだろう?」と思ったこともあるんですが、それ以上にいろんな場面で厳しさや感動も含めてプロレスというものの本質を体感させてもらっていると思います。

―今のオカダさんは、それこそ猪木さんがそうであったようにいかに世間にプロレスのすごみを届けられるかという視点に立っているとも思います。2022年はサッカーW杯の盛り上がりも悔しい思いで見ていたのではないかと想像します。

悔しくなる部分はありますよね。W杯もすごいと思いましたし、「THE MATCH」での那須川天心選手VS武尊選手もすごいなと思いました。そう思うと今のプロレスってにわかファンが少ないように思えるんです。僕はそこが大事なような気がしていて。盛り上がっているから観てみよう、行ってみようという人たちを今後増やしていけるように話題提供をしていきたいなと思っていますね。

―そのためには何が必要だと思いますか?

W杯や「THE MATCH」を観て、その場所にいるということが重要だなと思ったんです。観客が「あの場所にいたんだよ」と自慢したくなる気持ちというか。だからこそ、プロレスもそういった価値のある戦いを見せていかないといけない。観ていて楽しいのはもちろんですが、そこにプラスαで価値を付加していくことが今後の肝になってくるのかなと思いますね。もちろんリング上で魅せることを一番大事にしていますけど、今はそれだけではダメだとも思っていて。正直、真壁(刀義)さんや棚橋(弘至)さんがTVに出始めた当初は、彼らにTVは任せて僕はリング上での戦いに集中すればいいと思っていました。でも、自分自身もいろいろな番組に出て存在を知ってもらった上でプロレスをしないとダメだという考えに変わったんです。


Photo by Mitsuru Nishimura



考えが変わったきっかけとは?

―考えが変わったきっかけはあったんですか?

中邑(真輔)さんが退団したくらいですかね(2016年)。危機感がありました。中邑さんもAJスタイルズも抜けて。このままでは絶対にダメだなとそのタイミングで思えました。

―中邑さんの新日本プロレスラストマッチでオカダさんが見せた涙は今でも記憶に残ってます。

僕は入場前から泣いてましたから(笑)。

―凱旋帰国した直後は冷徹なイメージが先行していましたが、近年は涙や笑顔も含めてヒューマニスティックな一面が前に出るようになった印象があります。

あまり笑ったりしてなかったんですけど、数年前の新日本プロレスのパンフレットに僕がめちゃくちゃ笑顔の写真が使われていたんですよ(笑)。そこで「笑ってもいいんだ」と思って。そこから笑うようになりました。中邑さんのときは本当に寂しくて泣いてただけですけど、そのほかにも棚橋さんに東京ドームで負けて泣いたりとか、柴田さんとのことでも泣いたし、そう考えるとちょいちょい泣いてますね(笑)。でも涙は自然に出ちゃうものですからね。実は僕、新闘魂三銃士(棚橋弘至・中邑真輔・柴田勝頼)の3人全員に泣かされてるんですよね(笑)。


Photo by Mitsuru Nishimura

―2022年は後楽園ホールなど一部の大会で声出しが解禁になった大会を経て、そして来たるイッテンヨン東京ドームではいよいよ選手名コール、決めゼリフ、ブーイングなどプロレス観戦におけるほとんどの発声が解禁されます。

50%の観客制限はありましたが、後楽園ホールでの声出し解禁はすごく嬉しかったし、「これがプロレスだ」と改めて感じました。あとは、プロレスファンのマナーの良さというか、行いの良さが今回のイッテンヨン東京ドームの歓声緩和に繋がったと思うんです。コロナ禍を気にせず声を出していたら、きっとこの結果にはならなかったと思うし、ファンの皆さんの協力のおかげでこういった結果が生まれたと思います。声が出せるところが少ない中で、今回の東京ドームでは声出しOKと言われたので、たくさん声を出して、ストレス発散をしに来場していただきたいなと思っています。

―やはり歓声のない大会、特にドームはあまりに寂しいですよね。

2021年、2022年の東京ドームは寂しかったですね。歓声もないですし、拍手だけ。動員数も昔の低迷期を思い出すような結果でしたし。ただお客さんも応援したいのにできないというもどかしさを感じていたと思います。だからこそ今回は溜め込んでいたものを発散してほしい。2023年以降、プロレスが先導する形で世の中を変えていけたりしたら面白んじゃないかなと思いますね。「プロレスがやっているんだから他もできるんじゃないですか」という提案をしたい。本当にお客さんのおかげでここまで来れましたから。2年間拍手だけで応援してくれたからこそ繋がるものがここから生まれると思ってます。だからこそ、2023年のイッテンヨンはすごい大会になるんじゃないかなと思います。


海外にも見せつける「新日本プロレス」のブランド

―話は変わりますが、あらためてアントニオ猪木さんの訃報をどのように受け止めましたか?

猪木さんの訃報を聞いたときはイギリスにいましたが、本当に頭が真っ白になったというか。新日本プロレスの50周年は猪木さんが登場して、ハッピーエンドという気持ちがありましたから、「嘘でしょ?」って。その言葉しか出てきませんでしたね。

―2022年3月1日に日本武道館にて開催された50周年の旗揚げ記念興行で猪木さんが登場することを誰もが期待していました。

やっぱり「炎のファイター」をかけて入場してきて欲しかったですよね。そして、「1,2,3ダー!」で50周年を締めてもらう、そういうことを勝手に思い描いていましたから。それが叶わなくなったんだなっていうのは寂しかったです。最後にお会いしたのは2020年の「Number」での対談でした。でも、あのときは対談のテーマも決まっていたので、もっと他の話もしてみたかった。なので、僕もタイミングが合えばお会いしたいと思っていたんですが、いま考えると会ってなくてよかったかなとも思います。最後にお会いしたのは元気な猪木さんでしたし、それで良かったのかなって。痩せてしまった猪木さんと会っていたらイメージが変わっていたかもしれないし、体調の悪い猪木さんがリングに上がらなくてよかったとも思います。やっぱり猪木さんには、花道を歩いてきて欲しいし、元気にリングインして「1,2,3ダー!」を言って欲しいですもん。きっといつでも天国から見てくれていますし、プロレス界のいい状況を見てもらえればいいかなと思います。

─最後に猪木さんにもしお会いできていたらどんなことを話したかったですか?

先ほどの話にもありましたけど、猪木さんがどのように世間と戦っていたか。猪木さんの時代ってプロレスはすごく人気があってすごく恵まれていたと思っていたんですけど、そんな猪木さんでも他のものと戦っていたじゃないですか。プロ野球の勢いがすごい中で、プロレスも同じようにスポーツ紙で扱ってもらえるように尽力していたり。そのためにどういうことをしたのか、どういう考えで何をしたのか、そういうことが聞いてみたかったです。猪木さんとのお話の中からそのヒントをいただきたかった。いまであればSNSでこういうことをやれば面白いんじゃないかとか。猪木さんは変わっていると思うからいろんな発想をお持ちだったと思うんです。きっと「そういう考え方があるのか」とか「なるほど」と思えることを話してくれたと思うんです。


Photo by Mitsuru Nishimura

―2023年の元旦にはプロレスリング・ノアが日本武道館興行を開催します。そのメインを飾るのはグレート・ムタVS Shinsuke Nakamura(WWE)=中邑真輔。この試合はイッテンヨン東京ドームのメインを務めるIWGP世界ヘビー級選手権試合、オカダ・カズチカ VS ジェイ・ホワイトとの間接的な戦いという側面もあると思います。

正直、ネームバリューだけで言ったら勝てないですよね。プロレスの歴史の中でまだこんなに夢のようなカードがあるのかと思うくらいすごいカードだと思うんですけど、リング上の戦いで言えば僕たちの方がレベルは高いと思っていますから。確かにネームバリューでは負けますけど、新日本プロレスのイッテンヨンのメインの方が絶対にレベルは高い。そういう意味では僕らの方が上から見てるところがあるのかなって。さらに今回のイッテンヨンはすごいカードが多く並んでいる中で、全選手がメインイベントを喰ってやるって気持ちが絶対あると思うんですよね。僕自身、メインじゃないときには必ずメインより面白い試合をやってやろうと思っていました。だけど今回はメインイベント、IWGP世界ヘビー級のベルトをかけた新日本のメインの戦いなので、みんなの気持ちを受けて立つ覚悟を持ってます。プロレスについて何も知らない人でも楽しんでもらえる戦いになるんじゃないかなと思っています。

―今年のイッテンヨンのカードはここ数年と比較してかなり攻めている印象があります。

そうですね。ここ数年のイッテンヨンとは異なった大会になると思います。外国人選手もたくさん参戦しますし、ジュニアのタイトルマッチの4WAYもすごく楽しそうだなと思うし、武藤さんの新日本ラストマッチが50周年と重なっているのもすごいなって。

―全世界に訴求するパッケージとしての魅力が今年のイッテンヨンにはありますよね。

そうですね。ケニー・オメガの試合が決定したことで海外のファンの人たちが観たいカードになっていると思いますし、もともと新日本自体も海外から注目されている団体ではあるので。コロナ禍でなかなか海外に行けなかったりしたんですけど、2022年くらいから僕も頻繁に海外に行けるようになり、「新日本プロレスはまだまだこれからいくぜ!」ということを改めて海外に見せつけないといけないと思います。















闘魂・ストロングスタイルという「概念」を知る者たち

―相手のジェイ・ホワイトにはどんな思いがありますか?

プロレスファンの方ならジェイ・ホワイトのすごさというものをご存知かと思うんですが、彼はいまいちばん油が乗っている時期だと思うんです。僕自身、2019年のマディソン・スクエア・ガーデンの試合でしか勝ったことがない相手ではあるんですが、G1 CLIMAX 32の覇者としてしっかり戦いたい。新日本プロレスらしい戦いをして、猪木さんに勝利を届けたい。きっと今回のイッテンヨンはいろんな方たちが観にきてくれると思うんですよね。猪木さんの追悼大会でもありますし、武藤さんの新日本ラストマッチ、いろんな戦いを観にきてくれた人たちが集まってくれた中で、最後に新日本プロレスのメインの戦いというのをしっかり皆さんにお届けして、プロレスが面白いなと思ってもらえる戦いにしたいと思っています。

―新日本プロレスのすごみを見せつける試合をする。

それはジェイにもあると思うんです。一見するとのらりくらりと戦っているような感じがあると思うんですけど、最近のジェイと戦ってみるとやけに気合いが入っているんです。いつもならリング上で喋って挑発してというところがあるけど、今回はそうじゃない。言葉にするのは難しいけれど、ジェイ自身も「俺が変えてやる」という気持ちがあるんだなと感じます。彼もヤングライオンから育っていますし、道場の雑用からいろんなことを経て、いまのポジションがあると思うので。やっぱり他の外国人選手とは違いますよ。

―新弟子時代を日本で過ごした外国人選手はやはり違いますか?

道場育ちだと全然違いますね。絶対にジェイにも闘魂やストロングスタイルという概念は叩き込まれていると思う。やっぱりヤングライオンでの戦いや先輩との戦いで入ってきていると思います。だから他の外国人選手は違うんですよ。今回のメインイベントはお互いが背負う、異なる闘魂同士の戦いというか、ふたりとも猪木さんの血は流れていますからね。その血というものはもしかしたらセミファイナルで試合するウィル・オスプレイやケニー・オメガには流れてないかもしれない。

―あらためて、イッテンヨンに向けて読者へメッセージをいただけたら。

今回のイッテンヨンはいろんなプロレスが観れると思うんです。武藤さんのラストマッチ、IWGP女子王座戦、、外国人選手の戦い、ベルトを賭けた戦い、そしてメイン。どこか音楽フェスのようで、いろんな戦いがあると思うので興味がない方でも来てもらえたら嬉しいです。僕は立場上メインがどうだこうだ言ってますけど、メインじゃない試合が初めて見た方には響くかもしれないし、それこそ「女子の選手可愛かったね」とそこからハマっていく方もいるかもしれないし、なんだかんだベテランの武藤さんの試合がまるで昔の音楽を聴いているような感覚で感動するかもしれない。いろんな響き方をする大会だと思いますので、もしよかったら会場に来てもらって会場の雰囲気を楽しんでいただきたいなと思います。そして、なんと言っても声が出せますから! ぜんぜんプロレスを知らなくても、選手の名前を呼んだりして、ストレス発散してもらうでもいいと思います。その中でプロレス好きの方には、プロレスを観て楽しんでいただきたいですし、僕の戦いを観てもらえれば、プロレスがいいなと思ってもらえる自信はあるので。今回はバラエティに富んだ試合がいくつもありますからね。フェスのように楽しんでいただきたいです。


Photo by Mitsuru Nishimura

アントニオ猪木追悼大会 WRESTLE KINGDOM 17 in 東京ドーム~闘魂よ、永遠に~
日時:2023年1月4日(水) 14:45開場 17:00開始
場所:東京ドーム
公式サイト:https://www.wrestlekingdom.jp/

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