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My Little Loverのakkoが語るライブへの想い、困難な時代に伝えたいメッセージ

Rolling Stone Japan / 2023年1月10日 20時0分

My Little Loverのakko

1995年にシングル『Man & Woman/My Painting』でデビュー以来、数多くのヒット曲を世に送り出してきたMy Little Loverのakko。2020年5月1日にはデビュー25周年を迎え、同年11月にBillboard Liveで行われたアニバーサリー公演も好評を博した彼女が、1月17日(火)に大阪、1月23日(月)に東京の各会場で開催される「My Little Lover ☆ acoakko live winter quartet」で、再びBillboard Liveに帰ってくる。

2006年から行われているアコースティックライブ「acoakko」では、これまでも珠玉の名曲たちを、音数を絞り込んだオーガニックかつアコースティックなアレンジで披露してきた。今回新たにパーカッションも加えたステージは、一体どのようなものになるのか今から期待が高まる。

さらに、「世界平和」を目標に掲げ、環境へ配慮したツアーグッズの制作など自身のライフスタイルに根差した活動をマイペースに続けるakkoは、対立や分断が止まらない今の世界をどう見ているのか。2年半ぶりのライブを前に、その思いをじっくりと語ってもらった。


2020年にビルボードライブで開催された前回公演「My Little Lover ☆ acoakko live, Happy 25th Anniversary」のライブ写真

─akkoさんのセルフプロデュースによる「acoakko」を、そもそも始めたきっかけについて改めてお聞かせ下さい。

akko:もう随分前なので記憶も曖昧なのですが……(笑)。ソロ活動を始めてしばらく経ったある年(2007年)に、アコースティックセットの「acoakko」とバンドセットの「bandakko」を、同じタイミングで同時に何カ所か回ったことがあったんです。感触として、そのときの「acoakko」がすごく面白くて。キーボディストとギタリストと私の3人だけで、どこまでやれるか追求することに夢中になったんです。そこからオリジナル曲をアコースティック編成でアレンジし直すなど、「acoakko」ならではのサウンド作りがいつしかライフワークのようになっていきました。

─今回の参加メンバーについてもお聞かせいただけますか?

akko:実は今回は新メンバーなんですよ。というのも、「acoakko」を結成当初からずっと一緒にやってきた森俊之さん(ピアノ)がスケジュールの都合で難しくなり、代わりに扇谷研人くんという素晴らしいキーボディストに入ってもらって。ギターとチェロを弾く伊藤ハルトシくん、それから「acoakko」としては初の試みでパーカッションを入れることになり、藤井珠緒さんにお願いしました。

─これまで様々な編成でMy Little Loverの楽曲を演奏してこられたと思うのですが、続けていく中で何か気づくことはありましたか?

akko:My Little Loverの楽曲って、基本的には小林武史さんが作詞作曲をされているから、当時の私にとってはかなり「大人の歌」だったんです。その理解の仕方というか、歌詞の捉え方みたいなものは年齢を重ねる中で少しずつ変わってきているように思います。それに、自分が弾き語りでも表現するようになってみると、とにかく転調が多くて難しい楽曲ばかりなんですよ(笑)。それって、歌っているだけではなかなか気づかないところだなと。

─例えば、どの曲でそれを感じますか?

akko:「遠い河」(1998年)という、My Little Loverの2ndアルバムに収録された楽曲があるのですが、最後どんどん転調していくんですよ。1番が終わって大サビへ行って、転調して歌ってまた転調してっていう。そのコードを覚えるのが本当に大変でした(笑)。もちろん歌っていても転調していることは分かっているんですけど、実際に演奏してみると難しいことに気づかされる。「Hello, Again 〜昔からある場所〜」も、サビで転調するのでギターで弾くと非常にややこしくて(笑)。「こんなギターを弾いてたのか、すごいな」と当時のメンバーのことを思い出したりもしましたね。




─もともとakkoさんは音大に在籍されていたそうですが、その時の経験は「acoakko」をやるようになってから生かされている部分などありますか?

akko:それはあると思います。ただ、クラシックってオタマジャクシ(譜面)の世界じゃないですか。ポップスの現場は、例えばコード譜だけが書かれた紙を渡され、そこからヘッドアレンジやインプロで曲を仕上げていくわけで、その差というのはものすごく大きいのですが。

─ライブにはリアルタイム世代のファンはもちろん、その子供たちの世代も足を運ぶようになったと思うのですが、その辺りはライブをされていて実感するところはありますか?

akko:お子さんを連れてライブに来られる方も時々いらっしゃるので、それはすごくありがたいことだなと思います。いまだに初期の曲をCMで使ってもらったり、カバー曲として取り上げてもらったりしたことで知ってもらえたのかなと。いずれにせよ、小林武史さんの作る楽曲の力が大きいと思います。

心がけてきたのは「無心」で歌うこと

─akkoさんのボーカルは、歌い上げるようないわゆる「ディーヴァ」スタイルとは対照的な、無垢な魅力があるといいますか。楽器の一部のように歌をアンサンブルに溶け込ませるからこそ、聴き手は感情を乗せやすかったのではないかと思っています。最近そういうスタイルの歌い手も多くなってきて、マイラバはある意味「先駆者」だったのではないかとも。

akko:良くも悪くも、自分は何も狙っていないんですよね(笑)。とにかく、無我夢中でやってきたことの結果なので、だからこそ聞いてくださった人の近くにそっと寄り添うことができたのかもしれない。きっと計算されたものだと面白くないんだろうな、と思うのは、今もライブの時に「無心」で歌えた時に反響が大きい気がしていて。出来るだけそういう気持ちで歌えるように心がけてはいますね。

─「無心」ですか。

akko:経験を積めば積むほど、人って頭で考えてしまいがちだと思うんですよ。歌なんて特に、そういう作為的なものがない方が、心も洗われると思う。「あれ? 今私は一体何をしていたんだっけ?」と思えるくらい心を「空(くう)」に近づいた時こそ、多くの拍手をいただいたり、泣きながら聞いてくれている人がいたりするんです。なので、「無心」という状態を常に一番大事にしなければいけないなと思っていますね。

─すでに身についてしまったものを、あえて外していくのはなかなか勇気が要りますよね。

akko:歌っている人が気持ち良くなりすぎてしまってはいけないんじゃないかと。レコーディングでもそう。さっき「楽器の一部のように歌をアンサンブルに溶け込ませる」と言ってもらいましたが、まさにそう。楽器の一部になりたいと思いながら歌っていますね。もちろん、言葉はすごく大事にしたいし、それを届ける工夫も練っていますが。


2020年にビルボードライブで開催された前回公演「My Little Lover ☆ acoakko live, Happy 25th Anniversary」のライブ写真

─デビュー25周年のアニバーサリーだった2020年には、Billboard Liveにて11月にライブを行いましたよね。緊急事態宣言は開けたとはいけコロナ禍の真っ最中。当時はどんな心境だったのでしょうか。

akko:やっぱり、マスクをしているお客さんの前で歌うことが、頭では分かっていたけど実際に目の当たりにするとすごく寂しい気持ちにはなりました。その時はとにかく、コロナ禍でも「やれるならやりたい」と。もともと予定していた5月が延期になってしまったモヤモヤも残っていましたし、自分の中でライブのイメージも出来ていたんです。

─当時は何が正しくて、何が間違っているかももはや分からない状態でしたしね。

akko:どんな行動をとったとしても、批判を受けただろうし。とにかく生で演奏したものを、直に聞いてもらうことの喜びはミュージシャンにとって何物にも替え難く大切なことなので、やらせてもらえてよかったと思っています。

音楽って、人の心を励ましたりハッピーにしたりするのが役目じゃないですか。それを届けることが、私たちミュージシャンの「務め」だと思うので、とにかく誰かの役に立ちたいという気持ちもありました。世の中は本当に暗いニュースも多く、不安なこともたくさんあるので、そんな中で今回ライブができることに大きな喜びを感じています。今回はリクエストを募ったり、明るめの楽曲を中心にセレクトしたりして。これからメンバーと詰めていく予定なのですが、セットリストの大体はもう決まりました。

─今回もakkoさんは楽器を弾くのですか?

akko:実を言うと今まさに悩んでいるところなんです(笑)。今は楽器を弾くのが楽しいし、Billboard Liveにあるピアノが本当に素晴らしくて、それを弾ける喜びも十分あるのですが、上手なプロの弾き手と一緒なのでどうしようかなって。

─そこは「お楽しみ」という感じですかね。ちなみにBillboard Liveにはどんな思い出がありますか?

akko:とにかく、いるだけで気持ちの良い空間ってなかなかないと思うんですよ。もちろん音響も素晴らしいですし、美味しいお酒や食事を楽しみながらゆったりと音楽を楽しんでもらえたら嬉しいですね。そういえば以前、大好きなリアン・ラ・ハヴァスのライブをBillboardで見たのですが(2013年)それもめちゃくちゃよかったです。

─普段はどんな音楽を聴いているのですか?

akko:私、犬の散歩によく行くので、その道すがらいろんな音楽を聴いています。最近はジョン・バティステとマディソン・カニングハムがめちゃくちゃお気に入りですね。やっぱりR&Bとか、ポップかつオーガニックな楽曲が好きです。




環境問題への取り組み、今こそ伝えたいメッセージ

─ライブの話に戻ります。グッズも毎回凝っていますよね。

akko:そうなんです。今回も作ったんですよ。再生ポリエステルを使うなど、環境にも配慮したオリジナルポーチを3種類と、ワッペン、ステッカーのセット。前からオーガニックコットンのオリジナルマスクも販売していて。

─再生ポリエステルやオーガニックコットンを用いるなど、環境に配慮した取り組みは以前からされていたのですか?

akko:それも20年以上前なんです。娘が生まれた時に、子どもが食べても平気な石鹸が存在することを知ってびっくりしたんですよ。いろいろ調べてみると、植物由来で、添加物など一切入っていないので舐めても大丈夫だという。それ以前から無農薬野菜などに興味はあったのですが、まず家の洗剤が全て天然素材のものに替わり、食材も無農薬や無添加物のものになっていって。

しかも環境問題に関連する書籍に手を伸ばしていくうちに、さまざまな疑問が生まれてくるんです。「これって地球にいいのかな?」「これ、排水溝に流してしまって大丈夫なのだろうか?」「こんなゴミの捨て方では生態系に影響があるのでは?」って。実は今、生ゴミをコンポストする「土づくり」にもハマっているんです。最高に面白いですよ(笑)。それでハーブを栽培しているのですが、普通の土で栽培するよりもしっかりしているし、香りも強いんです。

─ここ数年は政府レベルでもSDGsの取り組みを本格的に行っているようにも見えますが、以前から関心を持つakkoさんは何か思うところありますか?

akko:やれることって、個人レベルでもたくさんあると思うんです。ゴミの分別もそうですが、ゴミを減らす努力をしたり、そのためには環境に悪いものを買わない努力をしたり。今、SDGsはちょっとしたブームになっていますが、それがちゃんとライフスタイルに根付くようにならなければ、とは思いますね。とにかくすべての人が、思いつくことを手当たり次第やってほしいです。

─経済成長と環境維持の両立は人類の大きな課題ですし。

akko:例えばファストファッションがあれだけ安いのは、その価格の影で辛い思いをしている人たちがいる現実があるわけです。それこそドキュメンタリー映画にもなっていますし(『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』など)、インターネットなどでいくらでも情報を集めることができます。そういう現実にまず向き合って、それでも買うのかどうかを考えてほしいですね。

─最終的な判断は個人の問題ですが、まずは「知ること」が大切なのかなと僕も思います。そういったメッセージは、ツアーグッズ以外の部分でも発信されていますか?

akko:それこそ「acoakko」をやり始めて、オーガニックコットンかプレオーガニックコットンでしかグッズを作っていなくて。なぜ、そういう素材を使っているかの説明をMCで毎回しっかりアナウンスしています。毎回それをやっていたら、ついにスタッフがフリップボードまで作ってくれたので、学校の先生みたいに説明していた時期もありました(笑)。

─へえ!

akko:なので、今でもものづくりをする時には必ずその背景を調べるように心がけていますね。

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─以前のインタビューで、目標は「世界平和」を掲げていました。今、世界はそれとは全く反対の方向に進んでいますが、そのことについてはどのように考えていますか?

akko:本当に、世界情勢のことを考えると辛すぎますよね。自分は相変わらず世界平和を願っていますし、歌詞を書く時にそういうメッセージを多かれ少なかれ必ず込めています。1月のライブでは、とにかく喋ろうと思っているんですよ。ここ数年、MCを避けていた自分がいたんです。Billboardは2ステージで時間も限られていますので、あんまり喋るよりも、そのぶん曲をやった方がいいんじゃないかという気持ちもあったので(笑)。でも、今回は気持ちが楽になるというか、ちょっと緩まるような話をしたいと思っています。

─こういう状況だからこそ、あえてそういう話題を選びたいということですね。

akko:まずは気持ちを軽やかにして、その上で、自分にできることを精一杯やることが大事。そういうメッセージを伝えることができたらいいなと思っていますね……なんて、自分にプレッシャーをかけてしまいましたが。

─(笑)。そういえば、2013年に『はなちゃんのわらいのたね』という絵本を出したときは、笑顔が連鎖していくことの大切さをメッセージにしていました。

akko:「笑顔の連鎖」という言葉は、ファンの方たちの間でもすごく印象に残ってくれたみたいで。会うたびに「『笑顔の連鎖』、やってますよ!」と声をかけてくださるんですよね。なので、そのメッセージも引き続き大切にしていきたいです。


My Little Lover ☆ acoakko live winter quartet

2023年1月17日(火) ビルボードライブ大阪
[1st stage] 開場16:30 / 開演17:30 [2nd stage] 開場19:30 / 開演20:30
サービスエリア¥8,400 カジュアルエリア¥7,900
詳細・チケット購入はこちら

2023年1月23日(月) ビルボードライブ東京
[1st stage] 開場16:30 / 開演17:30 [2nd stage] 開場19:30 / 開演20:30
サービスエリア¥8,400 カジュアルエリア¥7,900
詳細・チケット購入はこちら

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