米大学生4人刺殺事件、現場で犯人が発した一言「大丈夫、助けてあげるから」
Rolling Stone Japan / 2023年1月18日 6時45分
2022年11月13日の早朝に起きた米アイダホ州でアイダホ大学に通う4人の学生が刺殺された事件で、ワシントン州立大学の大学院生ブライアン・コーバーガー容疑者(28)が12月30日に出身地のペンシルベニア州で逮捕され、捜査当局が重要情報を公表した。
2023年1月5日(木)に公開された宣誓供述書によると、コーバーガー容疑者(28歳)は犯行現場のナイフのさやに証拠となるDNAを残していたとみられる。警察が携帯電話のデータと監視カメラの映像を駆使して、犯行当時に現場付近で目撃された車と容疑者を結び付け、逮捕に至った。
【写真を見る】「遺体の一部は油で揚げて食べた」
コーバーガー容疑者は逮捕されたペンシルベニア州からの身柄送還に同意し、5日アイダホ州裁判所に初出廷した。逮捕されたのは12月30日で、アイダホ州モスコー警察が捜査を開始してから6週間が経過していた。デサレス大学を卒業し、ワシントン州立大学大学院で犯罪学を学んでいたコーバーガー容疑者は、2022年11月13日未明にアイダホ大学の学生だったケイリー・コンサルベスさん(21歳)、マディソン・モーガンさん(21歳)、ザナ・ケルノドルさん(20歳)、イーサン・チャピンさん(20歳)を殺害した罪に問われている。
コンサルベスさん、モーガンさん、ケルノドルさんはアイダホ大学学友会のメンバーで、他に2人の女子学生と共同生活をしていた。ケルノドルさんと交際していたチャピンさんは、殺害当時にケルノドルさんと一緒に寝ていた。捜査官はコーバーガー容疑者が犯罪学や殺人を研究していたことを突き止めたが、動機や学生との何らかの関係があったかについては公表していない。11月以来、警察当局からは事件に関する詳細がほとんど公表されず、インターネット上では殺人犯の身元について議論や憶測が飛んでいた。判事が報道禁止令を出して警察や弁護士がマスコミと共有する情報量を制限したため、アイダホ州当局は現在も情報を非公開としている。5日に公開された1ページの宣誓供述書も、一部が黒く塗りつぶされていた。
凶器はまだ発見されていないものの、5日に公開された宣誓供述書によると、警察は「Ka-Bar」「USMC」と刻印が推されたナイフの革製のさやを発見。さやの留め金から男性のDNA痕が検出された。
11月13日午前11時58分ごろ、女子生徒の1人が意識不明になっているというルームメイトの緊急通報を受けて警察が現場の住居に向かった。警察が現場に到着したところ、遺体が発見された。5日に公開された宣誓供述書によると、D.M.という名のルームメイトは、夜中に何度か目が覚めて寝室のドアを開けたと警察に供述した。そのうち1度はモーガンさんの部屋から泣き声がして、「大丈夫、助けてあげるから」というような男の声が聞こえたという。午前4時17分ごろ、3度目にドアを開けたときに「黒い衣服とマスクを被った」背丈5フィート10インチほどのもじゃもじゃ眉毛の人物を見た、とD.M.は警察に供述した。通報があったのはそれからおよそ7時間後だった。当局は犯行現場で、Vansのスニーカーに類似したダイヤモンド型の靴跡も発見。D.M.が証言した容疑者の経路と一致した。
モスコー警察は捜査の過程で、事件と関連があると思しき白のヒュンダイ・エラントラを特定すべく市民に協力をあおいだ。4日午前にABCニュースが報じたところでは、コーバーガー容疑者は父親が運転していた同種の白いセダンに乗車していた際にインディアナ州警察に止められたが、警告だけで見逃してもらえたそうだ。
「車を止めた時点では、アイダホ州の事件の容疑者について何も情報はありませんでした。身元情報も、犯行現場付近で目撃されたと報じられていた白のヒュンダイ・エラントラのナンバープレートに関する具体的な情報もありませんでした」と、インディアナ州警察はABCニュースに語った。
宣誓供述書によれば、容疑者の車両追跡は動画映像を使って行われた。最後に確認されたのは11月13日午前4時20分、ワレンタ・ドライブを南方向に走行しているところだった。この道路はワシントン州プルマンに続いており、約10マイル離れた2つの大学の街を行き来するのによく使われていると警察は指摘した。ワシントン州立大学および複数のカメラに映った映像には、ナンバープレートがはっきり見えないものの、1台のセダンが犯行時刻前後に付近を行き来しているようすが収められていた。警察は大学に登録されている2014~2016年型の白のエラントラをしらみつぶしに調べ、そのうち1台がコーバーガー容疑者名義であることを突き止めた。登録書に記載された住所は、容疑者の車が最後に確認された監視カメラから3/4マイル先だった。コーバーガー容疑者はD.M.が供述した容疑者の特徴とも一致していた。
当局いわく、携帯電話の履歴やデータを駆使した結果、コーバーガー容疑者が事件前日の朝に現場付近を訪れていたことが確認された。携帯電話の位置情報によれば、コーバーガー容疑者の携帯電話は11月13日午後に少なくとも3回現場付近にあった。つまり、彼は犯行後に現場に戻っていたと思われる。警察がコーバーガー容疑者の自宅の捜査令状を入手したところ、コーバーガー宅のごみから見つかったDNAが犯行現場に残されていたDNAと一致したため、逮捕令状が出された。
警察によれば、コーバーガー容疑者は2022年秋にプルマン警察のインターンに応募していた。提出したエッセイには、「地元警察当局が公安業務でデジタルデータをより効果的に回収・分析できるよう」サポートしたい、と書かれていた。
コーバーガー容疑者は第1級殺人罪4件および重大住居侵入罪1件で起訴され、終身刑または死刑が求刑される可能性もある。ローリングストーン誌はコーバーガー容疑者の公選弁護人に連絡したが、弁護人は裁判所の報道禁止令により声明を発表することができなかった。アイダホ州の法律では、公正な裁判に支障がおよびかねない情報が外部に漏れないよう、報道禁止令が出される。
「今回の殺人事件は地元コミュニティを震撼させました。逮捕されても若い学生たちが戻ってくるわけではありません。ですが、刑事司法で正義が必ず果たされると信じています」と、フライ署長は6日に発言した。「念を押すと、事はまだ終わってません。まだ始まったばかりです」
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