1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 音楽

SZA独占インタビュー 「理想的な女性」になることをやめた理由

Rolling Stone Japan / 2023年1月18日 17時30分

SZA(Photo by Jacob Webster)

SZA(シザ)の2ndアルバム『SOS』が、全米アルバム・チャート5週連続1位を獲得。約5年半の時を経てリリースされた今作は、前作『Ctrl』を上回る反響を集めている。そんな彼女への独占取材が、米ローリングストーン誌のポッドキャスト「Rolling Stone Music Now」で実現。独特な歌い回しとハスキーな歌声、生々しく赤裸々な歌詞でSNS世代の声を代弁し続ける彼女は、約5年ぶりのアルバムをどのような想いで制作したのか? インタビューの模様をお届けする。

※本記事は昨年12月18日、米ローリングストーン誌にて初出



―SZAの『SOS』は注目すべきアルバムであり、各種ストリーミングで1位を獲得。SZAはこの時代においてジャンルの垣根を越えるアーティストと言えるでしょう。R&Bのアーティストとして認知されていますが、彼女はその範疇に止まりません。最新作では、初めてラップに挑戦し、内面を赤裸々に綴った歌詞が特徴的です。前作から5年経った今、彼女はオーディエンスからの反応に対して、とても怯えていたとのこと。インタビューの最初に、アルバムリリース当初、彼女の両親がサポートに来ていたことを語ってくれました。

SZA:(自宅に)実は両親が来てくれてるの。もしアルバム(『SOS』)の評判が悪かったとして、私がおかしくなってないか心配して。でも、良い意味で想定外だった! 今は一緒に出かけたりして、家族との時間を過ごしているわ。

―ええ、アルバムはかなり良い評判ですね。既に2000万人以上のオーディエンスがあなたのアルバムを聴いています。

SZA:でも、いまいちピンときてないの。


シングル「Kill Bill」は、SZAにとって最高位となる全米ビルボード・シングル・チャート初登場3位を記録

―2014年もしくは2015年だったと思うのですが、Afropunk Festivalに出演していた時から、ずっとあなたの曲を聴いていて……。

SZA:本当に? 嬉しい! そのフェスは私のお気に入りだったの。

―そのフェス以降、2014年くらいから熱心に聴いていましたが、『Ctrl』のリリースはとても話題になり、私も含めてオーディエンスは夢中になりました。そこから今回のアルバムリリースに至るまでは長い道のりだったようですが、いかがでしょうか。

SZA:ええ、その通り。自分でも行き先がわからなかった。その状況から抜け出せるかすら、確かではなかったの。今いるポジションを維持できるものなんてないと思った。私は周囲からの期待や、噂されることが苦手なの。誰も私に期待しなきゃいいのにって思ってるくらい。世間の評判が怖くて、いつも心のどこかにその不安が潜んでる。少なくとも、まだ私が精神的におかしくなっていないことに感謝すべきね。

―あなたが初めて歌うことを決心した時、何を求め、何を望み、どうなることを予想していましたか。

SZA:何か素敵で、面白いことが起こりそうって思ったの。ずっとサンティゴールドが好きなんだけど、彼女は自分の言葉を持っていて、全てがユニーク。当時は、黒人の女性がクリエイティブなフィールドにあまりいなかったから、とても苦労したと思う。彼女のことはずっと尊敬してる。あと、リトル・ドラゴンのユキミ・ナガノも。彼女のショーは魅せ方もとてもかっこよくて、今まで観てきた中で一番だって言える。彼女のショーを観たときに、パフォーマンスを通して楽しい時間を共有できたら、どんなに幸せだろうって思った。やりたいことをやって世界を旅することができたら幸せだろうなって。

商業的な人気がほしいとは一度も思ったことがない。自分らしくあり続ければ、正しい場所に導かれるって信じてる。一方で、私が周囲に期待されているものって何なのか、自分に問いかける瞬間が必ずある。ステレオタイプのイメージどおりに振る舞うべき?って、自問自答を繰り返してるの。




―特に、その問題に直面している若い黒人女性は多いと思います。『SOS』の音楽性について、伝統的なR&Bというよりは、抽象的な印象を受けました。服装や髪型といったビジュアル面でも、ステレオタイプに囚われない自由さを感じます。アルバムカバーで、あなたはホッケーのジャージを着ていますね。そういう大胆さに私たちは魅了されています。私の質問は、あなたは自分に対して、こうなりたいという理想像はあるのでしょうか。新しいアーキタイプをつくることは、あなたにとってチャレンジングなことでしょうか。

SZA:そういう理想像は何もなかった。私が出てきた当初、(シンパシーを抱いたのは)たしかジェネイ・アイコ、ティナーシェ、FKAツイッグスくらいだった。でも彼女たちの肌の色は、私より明るくて、痩せていて、そのうちの一つすら私は持ち合わせていなかった。面白い音楽を作りたいっていう気持ちはあったけど、その気持ちだけじゃダメなんだって学んだわ。オーディエンスの反応も「あいつは誰だ」とか「どうしてここにいるんだ? ジェネイを連れてこい」っていう感じだった。私は彼女のオープニングを務めたことがあるんだけど、あれは本当に辛かったわ。きっと、みんなはCEOのパンチ(Punch)に色々言ってたと思う。

ただ私自身は、容姿に関して全く疑問を持ってなかった。200ポンド(約90キロ)の体重で、バギーな格好をして、創造性を持って表現することの何がいけないのって。外見で判断する人なんていないだろうって思ってたの。でも、現実は私の考えと違ったみたい。体重が減って、周囲の反応が驚くほど変わって、その重要性を思い知った。私の音楽は変わっていないのにね。容姿は商業的に受け入れられるための一つの要素なんだっていう現実を突きつけられた瞬間だった。今でも、どうあるべきか迷うことがある。きっと「露出」や「女性らしさ」を求めていて、私がその通りにすれば「そうそう、これだ」ってみんなが納得することは想像できるけど。ホッケーのジャージ姿の私や、バギーな格好でSNL(「サタデー・ナイト・ライブ」)に出演する私を見て、どう思われてるかは正直なところわからない。でも、「SZAはこうだ」っていうバイアスを持ってほしくないって思ってる。だって私はずっと自分らしくいたいし、音響的にも他の面においても、いつでも自由自在に変化し続けたいから。



―あなたは全てのアルバムで、それを実践していると思います。私にとって、あなたの音楽の魅力の一つでもあるのですが、人生において大きな不安を抱えているような表情を持つ一方で、驚くほど恐れを知らない強さも併せ持っている。この二項対立をどのように維持しているんでしょうか。

SZA:私にとって、アイディアはアイデンティティより強い力を持ってる。クリエイティビティは、ある事柄から「解放されたい」という気持ちがヒントになっていて、解放されるまでやり続ける――それは、アイデンティティとは関係ないと思っている。アートも、アイディアを生み出す原動力の一つ。頭に浮かんだイメージを気に入ったら、実行しないと気が済まないの。曲を作っている中で、私に対する期待やバイアスとの向き合い方はやっぱり難しい。R&Bのアーティストって思われてるかもしれないけど、伝統的なR&Bの文脈の曲を作るのは怖いの。今そういったサウンドを求められているかどうかわからないでしょ。ただ、私のやりたかったことが自然と形になった時には、そういった不安が払拭されるの。今までほとんど全ての曲は、この感覚を頼りに作ってきたわ。

―サンティゴールドの名前を挙げていましたが、何年か前に、彼女もカテゴライズされることに対する不信感や、肌の色で音楽のジャンルを定義し、枠に押し込めようとする風潮に囚われることなく、完全な自由を手に入れたいと話していたことを思い出しました。だから、あなたが彼女のことに触れる理由は納得できます。もう一つ聞きたいのは、歌詞について、自己表出とも、大胆で率直ともいえる歌詞から、あなたは全く恐れを知らないように感じるのですが、いかがでしょうか。

SZA:私は一つのことをずっと続けられないの。ADHDについても薬の服用はしてないから、生活にも支障をきたすことがあったりするんだけど。5年間アルバムの制作をしても退屈しないためには、まったく違うことをやって気分転換をしなきゃ続けられない。歌詞についても「このフレーズには飽きた」とか「これはさっき言ったし……」って思うことがよくある。だから、今までに言っていないこととか、一般的に秘密にしておきたいことを書いたりするの。BBL(ブラジリアンバットリフト手術)のこととか、元彼との色々とか……たとえ恥ずかしいことでも、気後れするようなことであったとしても、別に内緒にしておく理由はないでしょ。不思議だけど、自ら恥ずかしい話題を晒すことって唯一退屈しないの。

5年かけて気づいたこと「私は私のままでいい」

―ビッグプロジェクトは完成までに何年もかかるものですが、映画監督のジェームズ・キャメロンが『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』について語っていたことを思い出しました。このアルバムもリリースまでに数年かかっていますが、時には何もうまくいかない、何も思いつかないといった状況に陥るときがあると思います。あなたにとって、そういった状況はありましたか。また、そこから脱出するプロセスはどういったものでしょうか。

SZA:ええ、何度も陥るわ、もう何もやりたくないって。実は先週までそうだった。私はレーベルに連絡したの。「無理にリリースせずに1月に延期したい。まだ出せない」って。でも延期はできないって言われたから、私も引き下がらずに文句を言ったりしてた。トラックリストを作成していた時も、つまらないし、最低っていう気持ちに何度も陥った。カバーの良いアイディアが思い浮かばなかったり、うまくいかない時は、カバーデザインは無しにした方がましだって思ったりもしてたの。酷い時は、投げやり状態――何もかも終わってほしい、私の実力なんてこんなもんだ。みんなが私の音楽を嫌いになっても仕方ない、もう音楽なんかやらないってね。よくエンジニアには「インドに行って、僧院に住んで、沈黙を貫いて過ごそう」って話してるの。冗談に聞こえるかもしれないけど、心の準備はいつもできてるのよ。でも同時に、色んな不安が渦巻いてくる。もし計画通りにいかなかったらどうしよう? これからどうやって生きていく? そんなことして何の意味がある? 全く不健康な思考のループだっていうことはわかってる。これは、セラピストと相談して対処しないといけないことの一つなの。

アルバムについて言えば、まだリリースから1週目でしょ、5年経たないと本当の良さはわからないわ。『Ctrl』の時もそうだった。リリース当時は全く評判にならなかったのに、最近になって評価されるようになったの。今回のアルバムがどう評価されるのかは、まだ何とも言えないけど、少なくとも現時点でうまくいってることは嬉しいわ。




―以前ジェイ・ヴェルサーチ(『SOS』のプロデューサー)と話した時、彼は世間の評価をチェックすることに反対していました。そのことについて彼と話したことがありますか。

SZA:ええ。SNSは一切見ないようにしてるし、評価もチェックもしないって彼と話したわ。だから知ってるのは、友達から聞いたことくらい…….あと、ファンページはチェックしてる。始めてからもう7年にもなるし、彼らのことは信頼してるの。世間の意見はどうかわからないけど、一番大事なことは、ベストを尽くしたって胸を張って言えることだと思ってる。世間の評判に真実はないでしょ? 他人が思い描く私と、本当の私は違うんだから。もしそう思えなくなったら、一旦活動をやめてもいい。彼らはそれも理解してくれている。私にとってのノイズを取り除いて、精神面での健康を気にしてくれているの。

―このアルバムを聴いていた時に、全ての曲はロマンスにおける経験とプロセスについてだと思ったのですが、あなたにとってロマンスが重要なキーワードになっていますか、それとも何か他のことがテーマになっているのでしょうか。

SZA:何曲かは、世間からの嘲笑やネットの中傷に対する批判がテーマになってるわ。対照的に、何も意味しない曲もあるし、祖母が私に言った言葉がテーマの曲もある。彼女の死を受け入れることとか、あとは元彼についてもね。このアルバムは、失恋がインスピレーションになっている部分もあるけど、それよりも「理想的な女性」になることをやめた影響の方が大きいと思う。私は長い間、本当の自分とは全く違う、理想的な女性になろうとしてた。もちろん、人には親切に振る舞ってきたけどね。今の自分を受け入れ、学んで、追い求める――新しい人生のチャプターに辿り着いて、理想を目指す必要はないって思えるようになったの。もし、誰かが私のことを「意地悪で気難しい人」と言ったとして、果たして、それが真実かどうかなんて誰にもわからないでしょ。そういった評判に反論できる精神の強さを身に付けた。例えば、私のことを今まで出会った人の中で一番良い人って評価する人がいる一方で、私のことを大嫌いって評価する人もいる。でも、みんな違う感じ方をするのが人間だし、それが自分らしさでもある。だから、誰かが定義した物差しで判断しないようにしたの。特に、インターネットにはそういった基準で評価された情報が溢れている。例えば、誰かが世界を変えるためにやっていることは、他の誰かにとって悲劇を生んでるかもしれないでしょ。そういう意識を持つべきだと思う。

母がセントルイスで育ったことについて話してくれたことがあるけど、彼女は「良い女性」でいなきゃいけなかった。それは肌の色による偏見で、周囲とトラブルを起こしたくなかったから。でも私は、それはおかしいって思う。彼女たちには、自由に生きる権利があるはずでしょ。それができないような社会なんて馬鹿げてるし、うんざりよ。私は私のままでいいし、みんなにもそうであってほしい。だってみんなはすでに素晴らしくて、理想なんて誰かが勝手に作り上げたものにすぎない。それぞれの個性を持って生きていくことに意味があるの。

リゾとの共演、ロックソング制作の背景

―「F2F」についてですが、グッド・シャーロットやアヴリル・ラヴィーンに近いサウンドで、ロック色の強い作品となっていますね。リゾがボーカルとして参加していますが、彼女とコラボレーションした話について教えてください。きっと、この曲以外にもレコーディングされたと思うんですが。

SZA:ええ、その通り。彼女は他の曲にも参加してるわ。とても良い時間だった。友達としてもアーティストとしても、私たちはお互いを理解し合えたの。彼女は幅広い音楽のテイストを持っているし、型にはまっていないというか、むしろ周囲のことなんて全く気にしていないし、自由だった。そんな彼女と一緒にいるのが楽しかった。スタジオに彼女が来た時は「よし、面白いことをやろう」って思えたの。たくさんのロックソングを作ったわ。アルバムに入ってる曲のフックは、過去にやってきた悪いこととか、酷いことの数々……酷いわね(笑)。でも、どこかかっこよく聞こえたりして。そういったことを美化せずに、そのまま吐き出したの。結局、私はこういうスタイルが好きみたい。特にこのアルバムではね、「私」のすべてよ。



―今回のセッションでは、何曲くらい録音しましたか。

SZA:たぶん5、6曲かな。

―それはもうEPと言えますね。

SZA:そうね。ロックソングがほとんどだけど、それぞれムードが違うの。今のところはどうしようか決めてない。もう一回作り変えようかとかも思ったりするけど、何年もアルバムを作っていなかったから。曲に関して言えば、私にとって新しい時代の始まりだと思ってる。シンプルでありながら、オーケストラ調のサウンドも好きだけど、もっとディープな部分に積極的にアプローチしたの。

―アルバム制作に関して、選曲についてはかなり試行錯誤したと伺いました。誰と、どのような議論が繰り広げられたんでしょうか。

SZA:私とロブ(Rob Bisel)、パンチ、コーディー(Cody Fayne)で、どんな構成がベストかについて議論したわ。パンチはアルバムのアプローチに対して、かなり強いこだわりがある。夜中に彼から「君は大きな間違いをしてる。こうした方がいい」って連絡があったときは、内心ショックだった。私はもうお手上げ、彼の好きなようにすればいいって開き直ってたわ。ロブに関しては、曲が長いからカットする必要があったんだけど、「そこをカットしたら台無しだろ、それはできない」って言われたり。「Boy From South Detroit」については、Twitterでは評価が良かったし、私は気に入ってたけど、ロブはアルバムに入れたくなかった。パンチにいたっては、この曲のことを全く気にもしてなかったわ。だから別のバージョンに入れようって話してるの。「Joni」も同様。「PSA」は「Blind」に似ているから退屈だっていう理由で却下されたり……こういったやりとりが永遠に続いたわ。パンチはこういった分野のエキスパートだけど、私は不得意。私がわかることは、どんな曲を作りたいかだけ。アルバムの構成の良し悪しはわからないけど、自分らしいって思えたらそれで良いでしょ。構成が終わったあとに全体を通して、これは5年間の私の歴史だって思えた。どうなるかはわからないけど、何か確信を感じたの。


Photo by Jacob Webster

―アリーナツアーが控えていますね。アリーナツアーは今回が初でしょうか。

SZA:そうよ。とても緊張してるわ。

―そういった大きなツアーでは、あなたに対する(こういうパフォーマンスが観たい、これを演奏してほしいといった)要求が強いオーディエンスも多くいると思いますが、そのような状況をどう受け止めていますか。

SZA:どんなシチュエーションであれ、楽しみたいと思ってるわ。だって、5年間も私のパフォーマンスを待っていてくれたのよ! きっとうんざりしたはず……みんなが私をここまで導いてくれた。未発表の曲でも、アルバムの曲でも、過去の曲でも関係なく、相応しいと思う曲を披露して、今まで経験したことのないようなスペシャルな時間をつくりたいの。それが私のゴールよ。本当にワクワクしてるし、ステージでパフォーマンスができる喜びは、何にも代え難いこと。ストリーミングで配信されて、SNSで批評されるよりも、はるかに価値のあることでしょ。エネルギーに溢れた瞬間を共有して、みんなの人生を豊かにできるなんて、まるで魔法みたいじゃない!

From Rolling Stone US.



SZA
『SOS』
配信中:https://SZAsmji.lnk.to/SOS

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください