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NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDが語る、12年ぶりのアルバム、NITROの表現を司るもの

Rolling Stone Japan / 2023年1月20日 20時30分

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND

オリジナルメンバーであったS-WORDが2020年1月に脱退し、7人での新体制となったNITRO MICROPHONE UNDERGROUND(以下、NITRO)が、約12年ぶりとなるニューアルバム『SE7EN』を昨年12月に突如リリースした。先行シングルとして発表されていた「FIRE」、「Choose One」、「ケモノミチ」などを含む全10曲のフルアルバムは、相変わらずな尖ったスタンスを貫きながら、確実に進化した今のNITROがダイレクトに詰め込まれた素晴らしい作品となった。

【動画を見る】NITRO MICROPHONE UNDERGROUND「ケモノミチ」ミュージックビデオ

今回のインタビューではMACKA-CHIN、DELI、XBS、BIGZAMの4人に集まっていただき、アルバム『SE7EN』の制作の舞台裏から今の彼らの姿勢やグループ内の変化、そして来月、2月8日に渋谷・Spotify 0-EASTにて開催されるアルバム『SE7EN』のリリースライブについても語ってもらった。

―まず、今回のアルバム『SE7EN』の制作がどのように始まったのかを聞きたいんですが、2019年にグループとしての活動を再開した時には、すでにアルバムを作るっていう話はあったんでしょうか?

BIGZAM そうっすね。

DELI なんか作ろうみたいな話にはなってたけど、実際あの頃に制作したものは今のアルバムには入ってないですね。

―では、具体的に『SE7EN』はどのように始まったんでしょうか?

XBS 多分、去年の春ぐらいじゃないですかね?

DELI ダラダラとやってて、「そろそろどうすんの?」みたいな話になって。

XBS 配信シングルで「ナンカナイノカヨ」とか「ALGO」とか出てて。その流れで「アルバムとしてパッケージしよう」っていう話になった気がします。

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND「歩くTOKYO」
※活動再開後のオフィシャルシングル第1弾



―トラックに関して、今回、結構攻めてるように感じたんですけど、そういう意識はありました?

DELI いつも攻めてるつもりなんですけど(笑)。

BIGZAM でも、そんな攻めてるのばっかっすかね?

―特に「ALGO」とか「FIRE」、「ナンカナイノカヨ」とかのシングル曲は結構攻めた感があるかなと。逆にDJ WATARAIプロデュースの「ケモノミチ」はオーソドックスな感じでしたけど。

DELI 単純に格好良いからやってみようって使ったトラックがちょっと攻めてる感が強いから、そうなってるだけで。攻めようって攻めたわけではないと思うんですけど。逆に「ケモノミチ」はこういう感じのでみたいにトラックを依頼して。



MACKA-CHIN 今回は結構投げやりっていうか適当ですよ。プロデューサーにもらったトラックを超放置しちゃったり。ASIAN STARがフックを歌ってる曲とか、本人に断りもなくアルバムに入ってないみたいな。

DELI そんなのあったっけ?!

BIGZAM 曲名はちょっと忘れましたけど、ありましたね。

―今回、S-WORDが抜けて初の7人体制でのアルバムとなったわけですが、何か変化っていうのはありました?

DELI どうなんだろ? 俺はそんなに大きくは変わってないと思う。ただ、今後、7人でライブをやることを考えたら、「7人の曲があったほうがいいよね」みたいな話はあったかも。アルバムのタイトルも『SE7EN』なわけだし。最初っからコンセプチュアルにやったわけじゃないけど、7人でやることを想定して作った曲もあると思いますよ。

―ちなみに今回のアルバムの10曲中、7人全員の曲って何曲ぐらいあります?

BIGZAM 「ALGO」、「歩くTOKYO」、「FIRE」、「On the corner」の4曲ですね。

―「On the corner」みたいなレゲエの曲ってNITROとしては初です?

MACKA-CHIN NITROはレゲエの現場ではよく遊んでたけど、レゲエの曲はやってないと思って提案して。実は今回のアルバムは、みんなそれぞれ仲良いプロデューサーにオファーして、1曲ずつ持ち寄って。持ってきた人がイニシアチブ取って、1曲まとめ上げるみたいなのをしていて。



―それはどういった経緯で?

MACKA-CHIN さっきも言ったように、トラックをもらったまま途中で終わっている曲がいっぱいあって。フックで止まっちゃたりとか、「これ一人しか歌ってないし、やめる?」みたいな曲とか結構あって。それだと何も進まないから、みんなでプロデューサーを持ち寄ろうみたいな。だから、俺も知らないプロデューサーいたもんね。BIGZAMが連れてきた二人とか。

BIGZAM DJ MARZとLO$CATっすね。DJ MARZは昔、俺がLAにいた時によくLAに来てたやつで。その後もインスタで連絡を取ってたんだけど、久々に再会したので話を振って。LO$CATもLAに住んでたことがあって、その時は会ったことなかったけど、三茶とかで繋がって、実はDABOくんとも知り合いで。

MACKA-CHIN 俺が持ち込んだのが「ナンカナイノカヨ」のNUMBと「On the corner」で。MaL(PART2STYLE)に「ニュールーツみたいな感じのレゲエを」って、3曲ぐらいもらって。そこから1曲選んで、俺がイニシアチブ取ってるんで、「じゃあド頭、自分から行きます!」みたいな感じで、ワンバース目を入れて。「FIRE」はSUIKENがタイプライターからトラックを貰ってきたから、SUIKENが一番最初に歌って、フックもあいつが仕切ってる。SUIKENが主導の曲とか、昔のNITROでは考えられないし、結構レアじゃない?とか思う。









NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDが伝えたいこと

―リリックに関しては、言いたいこととか姿勢みたいなのは、前と変わらないなと思って。特に社会に対する反抗心みたいなものは今まで通り強く感じたんですが、NITROとして伝えたいものの変化とかってありましたか?

BIGZAM う~ん……。

DELI 変わらないし、あんま今までと違うことはそんなに出来ない。

MACKA-CHIN 変わんないかな。NITROは適当です。

―けど、NITROになるとスイッチが入っちゃうみたいのは今もあるんですか?

BIGZAM ありますよね。常に反抗しちゃいたい。

MACKA-CHIN みんなソロのほうが真面目なんじゃないの?

BIGZAM ソロのほうが真面目で、NITROになると……。

MACKA-CHIN 超適当。けど、最近、ソロを出してちょっと思ったことは、俺はやっぱり自分の言いたいことがないと音楽は作れない。自分が言いたいことなくなったら、ラップを書けないと思う。だから、みんなのそれぞれのバースは自分が言いたいことなんだと思う。まあ、それって当たり前だけど。 みんなの言いたいことが、例えば社会に対してなのか何なのか分かんないけど、リリックでそのまんま表現されてると思う。

―社会への反抗心っていう意味では、「Choose One」のフックでGORE-TEXが「とどまるか、抗(あらが)うか」って歌ってますね。

MACKA-CHIN それって「Yes? or No?」みたいなことだよね。今の若い子たちみたいなストレートな感じではなく、そうやって考えさせたり、なんかちょっと比喩表現だったり。それは俺たちが先輩から引き継いでいる、日本語ラップのしきたりみたいなのがあるのかも。馬鹿っぽいストレートさみたいのは、やっぱり僕たちには無いと思うし、それぞれの生き様みたいなのを言葉遊びでお洒落に表現してるのがNITROだと思う。 だから「何言ってるかわかんない」ってみんなに言われるのかもしんないけど。でも、そういう「何言ってんの? こいつら馬鹿じゃないの?」っていうところを楽しんでってとこなんじゃないかな?



DELI 俺も好きなラッパーがなんか正しいこととか、自分のためになることを言ってくれると思って聞いたりしないもんね。「こいつ次何言い出すんだろう?」とか「また、こんな馬鹿なこと言ってる」とか。それでも十分買う価値はある。

MACKA-CHIN 音楽っていうよりは、NITROは結構アート志向で。なんでもありじゃない世の中で、なんでもありなのは芸術だけみたいな。俺たちはそこに近い表現方法かもしれない。意識はしてないけど、それを本能で表現しちゃってるっていうか。だから、アパレルやったり、アートワークに河村康輔が絡んだりして。音楽以外の表現も含めて、 NITROとしては芸術を表現してるっていう感じに近いんじゃないかな? そこを狙ってるわけでもないんだけども、そういう風に見られるのが、多分、俺たちは一番居心地がいい気がする。

―今回、アルバムと先行シングル3枚のジャケットのアートワークを河村康輔さんに頼んだのどういう経緯なんでしょうか?

MACKA-CHIN ビデオの監督とアートワーク、あと曲名。大抵、この3つは誰もアイデアが無くて、いつもどうしていいか分かんないですよね。それでXBSが動いて。

XBS 2019年に復活した時からそうだったんですけど、クリエイトで絡む人たちを若い才能ある人たちにお願いしたいみたいなところがあって。「LIVE19」のビデオをCEKAIのプロダクションで、 木村太一が監督したっていうのもその流れで。

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND「LIVE19」
※2019年の活動再開時にゲリラ発表した曲(公式リリースは無し)



DELI 「ALGO」もそんな感じだもんね。

XBS 「ALGO」の時にはDensuke28でPV撮ったりとか。そういう流れの中で、今回提案して実現したのが河村康輔だったっていう感じですね。

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND「ALGO」
※昨年リリースされた先行シングルの一つ



―本人にはどういう風にオーダーしたんです?

XBS 今回、クリエイティブディレクターに飯田昭雄君に入ってもらってて、彼からお願いしたっていう感じだったんですけど。それこそ『SE7EN』っていうタイトルしか言ってなかったのか? 多分、普通に考えたら難しい話だったとは思いますね。

DELI けど、結果的には出来上がりとしてはすごく良い感じじゃないっすかね。


マイクレリーの化学反応

―今回のアルバムを通して思うのは12年ぶりのアルバムっていうブランクみたいなのはあまり感じなくて。もちろん、今の若いヒップホップのアーティストの子たちと同じではないと思うけど、現在進行形な感じはあって。自分たちではアルバムの出来をどう思ってます?

MACKA-CHIN 普通、一つのアーティストをずっと追いかけていると、前のアルバムと比べて「今回はここが成長した」とか「今はこんな感じか?」みたいなってありますよね。けど、NITROに関してはそれがなくて。あんまり成長してないし、進化もしてない。時が止まってるっていうか。けど、それはポジティブな言葉で言えば「またこんな感じか」って。

―けど、もし何も進化してなかったら、実際はすごく古臭く感じると思うんですよ。本当に昔のままだったら「またこんな感じか」っていう風には絶対にならないと思うんで。

MACKA-CHIN あ~、なるほどね。でも、みんなが音楽をやり続けてたわけじゃないじゃん。だから、どうなんでしょうね?

―必ずしもコンスタントに音楽を続けてなかったのに、今もこの感じをアルバムを出せてるのはすごいなと。

MACKA-CHIN やっぱり、それがデビュー当時から言われてた、マイクレリーの化学反応だと思うんだよね。ヒップホップならではの、ラップでマイクを回してくみたいな楽しさみたいなのがNITROには常にあるから。今って昔と比べてグループが増えてると思うけど、それは多分、マイクリレーが楽しいからなんじゃないかな。

―最初にシングルでリリースした「REQUIEM」から数えると今年で25年で。もう四半世紀経ってるわけですけど、NITROにとって変わんないこと、変わったことって何でしょうか?

DELI 俺は色々変わったと思うけどね。だって俺、最初のインタビューにたしか1時間以上遅れてたのに、今日は全員時間通り集まってるじゃないですか。

MACKA-CHIN SUIKENとかは「なんでもありじゃなきゃ、NITROっぽくねえ」ってずっと最後まで言ってたな。何の曲の時だっけな? テーマ決めんのとかも「それ決めちゃったら面白くねえし、NITROっぽくねえ」みたいなことはよく言ってた。

DELI それっぽいことは俺もマネージャーに何回か言ったことあるよ。「NITROって、今まであえてちゃんとやってこなかったんだから、あんまりちゃんとやんないほうが良いよ」って。やったことないんだから、出来るかどうかも分かんないけど。今回も「ちゃんとやんのやめない?」みたいな感じはあった。

MACKA-CHIN ちゃんとやっちゃうと、みんな嫌がっちゃう。天邪鬼の集まりだし。例えばライブ前に円陣組むみたいなのは寒いって思っちゃうので。

DELI ちゃんとやったら絶対みんな崩し始めるもんね。そうすると終わんなくなっちゃうから。

BIGZAM 潰し合っちゃう(笑)。

MACKA-CHIN 相変わらず舐めてんですよ。大人や社会を。「おちょくって超適当でやっちゃってます」みたいな。適当にやっちゃってるのに説得力があって、真面目なやつが文句言えない。「ざまあ見ろ」みたいな。そういうパンキッシュみたいなところはあるんじゃないかな。ただ、俺たちは歳を取ってしまって、1日が早いじゃん。放置すると本当にずっと放置されちゃう。だから、「日にちを決めよう」とか「何時からにしよう」とか、そういうところからようやく始めている。

―そうしないと、アルバム1つ出来ないと。

MACKA-CHIN 今回のレコーディングのスタジオ管理なんて全部、BIGZAMだもん。エンジニアの手配からスケジュールも全部。それって凄くないっすか? アートワークと物販とかは全部、XBSがやってて。アーティストが主導というか、友達がやれることをやるみたいな、そういう感じじゃないかな?

―2月8日のO-EASTでのライブですけど、どのような感じになりそうでしょうか?

MACKA-CHIN アルバムのリリースライブだから、新曲のお披露目会って感じで。

DELI あとはワンマンだから、それなりのボリュームは必要なんで。それをどうしようかっていうのを話し合っていて。

MACKA-CHIN 新曲を軸に新旧を織り交ぜてみたいな感じじゃない? それと新体制の7人で、また新しいことをNITROを見せるっていうとこだよね。分かりやすい言い方するならば「新しい”NITRO 2.0”を見てくれ」みたいな感じかな。まあ、全然そんなことはしないんですけど。

―(笑)。

DELI やっぱ、NITROのファンってコアな人が多いから、やっぱりその辺は色々みんなでこれから考えて。『SE7EN』を気に入ってくれた人はもちろんだけど、まだ『SE7EN』を聞いてない人でも楽しめるような、そんなライブになると思います。

※メンバーの新型コロナウイルス陽性反応が確認されたため、2月8日に予定されていました「Brand New Album "SE7EN" Release Live」は中止となりました。

https://instagram.com/nitromicrophoneunderground
https://twitter.com/nmu_tokyo
https://nitro-tokyo.online/





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