高木祥太が語る、一平くんとの対話から見えてきた「BREIMENの原点」
Rolling Stone Japan / 2023年1月23日 22時0分
BREIMEN・高木祥太が話を聞きたい人を招いて対話する連載『赤裸々SESSIOONe presented by Rolling Stone Japan』。前回はポルノグラフィティ・岡野昭仁とKing Gnu・井口理という豪華ゲストを迎えたが、今回お呼びしたのは能勢一平(39歳・一般男性)。「え、誰?」と思ったあなた、正しいリアクションです。そもそもこの企画は「どんな人にもドラマがある」「いろんな生き方がある」という高木の人生観やBREIMENの音楽の根底に流れる人間愛をもとに、社会的立場や肩書き、職業など関係なく様々な人との対話をお届けすべくスタートしたもの。
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今回は高木が小学生の頃から多大なる影響を受けてきた”一平くん”の常識から少し逸脱した人生をお伝えする。二人の対話の中では高木の最たる原点に触れることができて、これまでのインタビューでは見えてこなかった視点から「なぜ彼が今BREIMENという音楽をやっているのか」を知ることができた。
※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.21」に掲載されたものです。
「世の中の仕組みから解脱して生きている人」
高木 一平くんは、お兄ちゃん的な存在になるのかな。俺が小学6年生……いや違う、もっと前?
一平 少年時代だね。
高木 2、3年生くらいか。一平くんはそのとき何歳?
一平 20歳くらい。
高木 もう40になった?
一平 3月で40になる。会ったとき、祥太は礼儀正しいメガネっ子サッカー少年だった。
高木 一平くんの今の肩書きって何になるんだろうね?
一平 何者でもないんですけど(笑)。
高木 みんな何者でもないからね。
一平 まあ、株式会社MIONの取締役。
高木 それは何をやってる会社なんですか? 俺は知ってるんだけど……でも人って、なんとなくの認識で繋がってるじゃん? だから意外と一平くんが今何をやっているのかって俺も説明できない。
一平 そうだね。今は音楽のレコード、楽器、オーディオを売ったり。最初はTechnicsのターンテーブルとかギターをドイツに輸出していて。祥太にもそこでお手伝いしてもらったよね。
高木 バイトしてた。お金なさすぎて(笑)。今回「赤裸々SESSIOONe」に一平くんを呼びたいと思ったのは、いつもよくしゃべってる人から改めてカメラを置いてかしこまった感じで話を聞くと、意外と俺が知らなかったその人を知れることがあるなと思ってて、その基準でいいなと思ったのが一平くんで。一平くんとは本当に長い付き合いだから改めて話を聞いてみたいなと思ったのと、一平くんは肩書きも仕事の歴史も謎じゃん?
一平 俺もわかんない(笑)。
高木 そうだよね。今でこそ取締役になってるけど、俺的には世の中のいろんな仕組みから解脱して銭を稼いで生きている人というか。いわゆる日本社会の生き方みたいなものと、俺らも乖離してるしこの「山一」(高木の兄弟や友人など仲間たちが集まる場であり、本企画の撮影場所。詳しくは「Rolling Stone Japan vol.19」「Rolling Stone WEB」掲載の「赤裸々SESSIOONe vol.0」にて)に来てる人みんな乖離してるんだけど、その中でそれを会社化してやってるのは俺の周りで一平くんくらいだから。しかもなんなら今給料を払ってる。払ってる相手も、俺の周りの脱線してる人。それもすごいと思うし、話を聞いてみたいと思ったという感じかな。
社会常識から外れたものを「面白がれる星」
一平 祥太と会ったときはスタジオやってたかな。「STUDIO24」という古いスタジオ。
高木 もうなくなった?
一平 なくなっちゃった。コロナで。
高木 そっかあ。
一平 最初そこでアルバイトしてて。自分もバンドをやってたから「ドラム練習できんじゃん」っていうだけで入ってみたんだけど。それが20代最初の頃だね。そこに祥太とかみんなを呼んで。
高木 そこから店長やったよね?
一平 そう。潰れる潰れないのときに、元オーナーさんから「何とかなんない?」って話があって、それまでただのバイトだったんだけど経営者になって。蓋を開けてみたらめっちゃ赤字で。「何これ?」みたいな。スタジオを継いだのと同時に輸出の仕事も始めて、そっちの仕事がだんだん忙しくなってきて、最初は自分1人でやってたところを祥太とかがお手伝いしてくれて。ハマイバくん(2025/映像ディレクター)も来てくれたし。いろんなバンドの子たちにお手伝いしてもらって、今だいぶ大きくなりました。それでどんどん忙しくなったからスタジオは別の人に譲渡して。ざっくり言ったらそんな感じ。
高木 ざっくり分けるとそうなんだけど、その中にさ、転々としたやつあるよね?
一平 港とか? 本牧の埠頭でトラックにはねられたりしてたんだよ(笑)。
高木 ははははは(笑)。やってたよね。
一平 それは話すと……ダークすぎる世界だよね。
高木 ちょっと聞きたいけどね。
一平 なんで入ったかって、スタジオのみんなの給料が足りないから、出稼ぎみたいな状態で。そこに行ってバイトして、みんなの給料を払ってた。
高木 やばすぎる。
一平 だって金ないんだもん。最初スタジオが赤字だから自腹切ってやってたし。
高木 他にもバイトやってたよね?
一平 治験とか。入院してるとお金が入るっていうね。
高木 だから一平くんは「あ、そんなバイトあるんだ」って、色々知ってるイメージ。
一平 ラーメン屋さんとか、たこやき屋さんとか、派遣とか。意味わかんない川崎の工場みたいなところに送り込まれて、重たい箱があるんだけど「何?」って聞いてもわかんなくて、それを運ぶのをずっとやるっていう。あとはめちゃくちゃ凍ってるデカい段ボール箱を5個くらい積んで、それを後ろに投げるとか。
高木 (笑)。どういうこと? 凍ってるの?
一平 俺も何してるかわかんないんだけど(笑)。そういう意味不明な仕事をやってた。でもそれは音楽のためだよね。
高木 そうだよね。しかもそれをスタジオに払ってたんだよね。
一平 とにかくシフトの融通が効くバイト。バンドやってる人、そういうの多いじゃん? テレアポやる人とか多いけど、俺は変なところに行っちゃった。
高木 俺が一番長く続いたのは障害者の介助のバイトだった。向き不向きもあるけど、俺はすごく楽しかったから。時間の融通もわりと効くし。
一平 俺は身体がすげえ丈夫で、全然寝なくても食べなくても動けたから、身体を使って働いてたのかな。
高木 でも面白い、みたいなのもあったんじゃない? そういうのを面白がれる星なんだと思う。
一平 そうだね。変な人しかいないから。
高木 変な人と仲良くなるじゃん? 「変な人」の定義も難しいけど。社会常識みたいなところではない基準で人付き合いができるから。俺、一回も一平くんに怒られたことがないし、一平くんが人に怒ってるのを見たことがない。それは、そういう仕事ができる理由のひとつにある気がする。
一平 ないね、たしかに。怒ったことないです。そういうことを経て、ユウちゃん(代表取締役)の友達がドイツの店で売りたいってことで輸出するようになって。最初はハードオフとかヤフオクで買ってまとめて包んで送るみたいなことをやってて、だんだん膨らんできて今に至った感じかな。レコードは、ここ何年も山下達郎とかあの周りのシティポップがかなり高額だし。最近は他のジャンルのアーティストもじわじわと。細野(晴臣)さんとか、あの辺のミュージシャンが絡んでるようなものをみんな掘り下げていってる感じがあって。あと昔のアイドルとかも最近だいぶ上がってきた。
高木 そもそも日本よりあっちの方がレコードの需要がある?
一平 全部の国、というと変だけど、いろんな国であるんじゃないかな。もともとはドイツから世界に送ってたのが、今は日本から世界のあちこちに発送してる。今、月30万枚くらい入荷してるかな。
高木 え! そんな規模なの? 楽器もだよね?
一平 そう。日本の楽器は人気あると思う。中古の市場で言ってもやっぱり綺麗。みんなきちんと使うからね。それは楽器に限らないかもね。車とかも綺麗だと思う。フェンダージャパンとかも日本だと安く買えるけど、海外だとちょっと高い。日本の人はUSAとか好きだけど、ジャパンもちゃんとしてるじゃん?
高木 ちゃんとしてるよね。
一平 ちゃんとしたジャパンをちゃんとメンテナンスすると、海外の人は喜んで買ってくれるかな。あとシンプルに円安はあると思う。クオリティに対して値段は安いんじゃないかな。
「小学生の頃の深夜セッションを超えられない」
高木 僕と一平くんの出会いのきっかけを話すと、まず、中田くんというノイズミュージシャンがいて。中田くんは音大出身で、音大の先生がうちの母親と友達で、どういう経緯かは俺もよくわかんないんだけどいつの間にか中田くんがうちの実家に住んでたんだよね。で、一平くんは中田くんの友達だったんだよね。
一平 そう。中田くんは当時スタジオでバイトしてた。
高木 あ、STUDIO24でバイトしてたのか。
一平 それで祥太の実家に遊びにいくようになって。
高木 あともう一人ジロウくんと、3人がよくうちに来ていて。その3人が中田くんの部屋でアングラ系のAVを見てて、そこに俺とケンタとリュウタ(高木の弟たち)も入って「すごいな」みたいな感じで見たよね(笑)。
一平 ひどいよね(笑)。
高木 いわゆるエッチなAVじゃなかったよね?
一平 じゃなかったね。もはやAVではないね。実験映像みたいな。
高木 それだけ俺、すごい覚えてるんだけど(笑)。音楽を始める前の小学生のときに、3人とSTUDIO24でセッションしてたんだよね。セッションに楽器もできない小学生を呼ぶことが面白いんだけど。
一平 当時MDかテープで録音してたんだけど、録音を回しながらリュウタを閉じ込めて(笑)。そしたらリュウタが、録音回ってることを知らずに、スタジオの中で一人で叩いたり叫んだりしてて。
高木 その音源やばそうだね! めちゃくちゃ面白そう。要は、音楽始める前のセッションって知識も何もなくて。俺らは音楽一家だったけどまったく英才教育を受けてないから。俺もなんとなく覚えてるけど、そのときのセッションを超えられない気がしてる。初期衝動よりも前の衝動だから。「音楽やってみたい」とかじゃなくて、なんかよくわかんないお兄さんたちに連れてこられて「ワーッ!」ってやっただけ。原始人が初めて音楽に出会うときみたいなセッション(笑)。
一平 そう。もう「音出していいよ」っていうだけで。面白かったね。
高木 面白かったよね。いわゆる俺らが今やってるジャムセッション、ファンクのセッションとかじゃなくて、何も決まりがない。ゼロだよね。
一平 俺もドラムを始めたのが遅くて最初はわからなかったから、カリンバとか民族楽器にピックアップをつけてエフェクターをたくさん繋いで、ただノイズを出すみたいな。それをスタジオで子どもたちに聴かせて、みんなで「ギャー!」とか言って(笑)。
高木 ははは(笑)。でも記憶に残ってる。俺も楽しくて。別に楽器が上手くなるとかそういうベクトルじゃない。その場にいてなんかわかんないけど音を出すっていう。
一平 衝動が生まれてたね。
高木 衝動でしかなかった。それが高木三兄弟の初めての実演でしょ。
一平 そうだね。でもベースですらないもんね。
高木 むしろ主にドラムで。打楽器が一番本能的にいけるんだよ。ベースとかギターも面白かったけどね。別にコードとかじゃない、ただ「音出る」みたいな。しかも深夜にやってたよね?
一平 深夜だよ。ご両親にご理解があって(笑)。
高木 うちの親たちは「いってらっしゃい」って言ってたってことだよね(笑)。
見た目で「ジャンル感を悟られたくない」
高木 俺が幼少期の頃は、ずっと衝動的なことをやってたね。映像作家さんと映像の企画もやったりして。そのあと小6で俺ら家族がスペインに行って、中学のときはずっとサッカーをやってたから、そんなに一平くんと会ってなかった気がする。
一平 ちょくちょく会ってたけどね。
高木 もっと会うようになったのが高校生からで。俺が高2からベースを始めて、すぐに一平くんとバンドを組んだんだよね。名前忘れちゃった。
一平 フィッシュオン?
高木 あ、フィッシュオン! 高校の軽音部に入ってたから校内でコピーバンドもやってたんだけど、同じくらいのタイミングでフィッシュオンを始めて。それはドルサイナっていうスペインの民族楽器を吹く諏訪ちゃんと、俺のベースと、一平くんのドラムと、アコーディオンと、ギター。
一平 ホームレスのミヤシタくん。
高木 そう! ホームレスのミヤシタくんっていうギタリストがいて。インストバンドでオリジナルを作ってたんだよね。しかもメインがドルサイナ。結構変だったよね? 民族系……なんだろうね? アイリッシュとかもあるけど。
一平 変だった。不思議な曲が多かったね。
高木 フィッシュオンで遠征も行ったよね? あと新宿MARZとかでドイツのバンドと対バンしたよね。
一平 やったね。
高木 そうやって俺がベースを始めてから改めて一平くんと会うようになって、いっぱい音楽を教えてもらったんだよね。
一平 余ってたYAMAHAのベースをあげた気がする。
高木 BBだ! 俺今それ友達に貸してるんだよ。
一平 どんどんみんなに回していって。
高木 今思えば、一平くんに教えてもらった音楽がその後の俺の方向性にかなり関与してるというか。そのときにタワー・オブ・パワー、ジャミロクワイとかブラックミュージック寄りのものと、ライトニング・ボルト、ジョジョ・メイヤー、クリス・デイヴとか、メジャーなブラックミュージック系からアングラなものまで幅広く教えてもらって。全部好きだったんだけどベースに関してはブラックミュージックに傾倒していったから、今思えばかなりきっかけだった。俺がCharaさんを好きなのも一平くんの影響だわ。
一平 そうだね。Charaと祥太が一緒にやったとき、本当に感動したよね。びっくりしたもん。
高木 だから音楽はかなり直接的に影響を受けてるし、俺、高校のときにピアスを全部で10個くらい開けたんだけど、これも一平くんに影響を受けたね。
一平 同じ位置に開けてたよね。
高木 そう。俺がよくつけてる龍みたいなピアスも、一平くんがつけててかっこいいなと思って、一平くんが左耳だから俺は右耳にしようって。一平くんも片側だよね?
一平 そう、片側。
高木 俺めっちゃ一平くんに影響受けてるわ。タトゥーもさ、俺こっち(右腕)にしか入ってない。
一平 俺こっち(左腕)にしか入ってない(笑)。
高木 俺が半分マンになろうと思って右半分にしか施さないって決めたのは、一平くんに影響受けてたんだ。
一平 俺も半分マンになろうと思ってたから。
高木 ビジュアルも結構影響受けてるわ。
一平 俺、すっげえ変な格好してた。髪もめちゃ長くて。
高木 ここ数年で綺麗目になったけど、昔はジャンルレスだったよね。やっぱりビジュアルって、ジャンル感が出るじゃん? 好きな音楽だったり。でも俺の中でジャンル感を悟られたくないっていうのがあって。たとえば俺の今の格好でファンクをやってるとはあまり思わないじゃん。そういう考え方は無意識に一平くんから影響を受けてる気がする。
一平 俺もそう思ってる。祥太が言ったみたいに、出したくないのよ。ちゃんと会社とかやってるけど、ちゃんとしてる感を出したくない。
高木 わかるわかる。悟られたくないよね。むしろちょっと騙したいみたいなところもある。
一平 わかるわかる。
高木 「ジャンルレス」という部分は影響を受けてる。
Photo by renzo masuda(GROUPN)
「一平くんはずっと周りを助ける思考」
高木 この企画の主役は一平くんだから。俺じゃない! もっと一平くんの話が聞きたい。
一平 ローリングストーン誌でよくわかんない人が出てくるって、すごいよね。
高木 それが面白いじゃん。
一平 たしかに。雑誌読む人って音楽好きな人だよね。俺も音楽好きでやってきたけど、別に音楽で成功してるわけじゃなくて。でもそういう人の方が多いじゃん? バンドマンの成れの果てで音楽では食えてない人とか、音楽に関わることをしているうちに今に至っちゃったという人。俺みたいに、音楽をずっと頑張ってやってきたけど芽が出なかった人っていっぱいいるからね。昔は30歳になって芽が出なきゃやめるとか、そういう人もいっぱいいたけど。やめなきゃいいのにって思う。
高木 最近はドラム叩いてる?
一平 叩いてる。
高木 そう、そうなんだよね。いつも思うんだけど……まあ実際は難しいんだけど、多くの人が音楽をやめていっちゃう。でも音楽だけで稼がなくても、続けていればセッションもできるし。
一平 そうだね。こうやって仕事して思ったのは……バンドを仕事みたいなテンションでやっていたら、もうちょっといけるところがあるのかなって思うけど、いろんな人がいるじゃん? 自分の思ってる音楽を形にしたい、別に売れなくてもいい、とにかく何か出したいという人もいれば、売れて認められたい、有名になりたいという人もいるし。何が成功かよくわからないんだけど。
高木 本当にそうだと思う。俺は多分、そのどっちでもない感じにいる。
一平 プロで食えてる人って今どれくらいいるのかも知らないけど。
高木 俺も一平くんから3万円借りてるから。今日も返せない、すみません。
一平 全然いつでもいいんで(笑)。困ったら貸しますよ。
高木 一平くんはずっと周りを助ける思考だなって感じる。事業としてはちゃんと成功してるんだけど、一平くんが豪遊してるのを見たことがない。
一平 これはもう、それぞれの性質があるんじゃないかな。俺は別に自分がそうしようって選んでるわけじゃなくて、ただそうしちゃってるだけだから。今もう物理的にほしいものもあんまりないし。あとは若い子にあげたい。もうおじいちゃんはいいなと思って(笑)。
高木 俺はずっともらいものの人生だなと思ってて。いろんな人からもらってきたんだけど、特に一平くんから色々もらってる気がする。楽器とか服とか。
一平 そうだね。わざわざあげようとしてるわけではないけど、気づけばあげてたかな。コロナとかあったりして今若い子がハードモードな気がするし。あげられるものがあるならもうあげちゃえって感じ。
高木 一平くんの今の会社には、立ち上げのときもいたけど、コロナで金ないときもバイトしてたし。ケンタ、リュウタもそうだし、ハマイバもやってたし、ソウちゃん(So Kanno。BREIMENのDr)、純平(藤井純平。BREIMENのマネージャー)もやったよね。周りほぼみんなやってたくらい。本当にそれは助けてもらってた。
一平 みんな仲良く楽器やレコード触ってね。あのとき、そういう場所があってよかったと俺も思ったね。
好きなことを我慢してまで長生きしてどうする?
高木 最後に、一平くんが人生において大切にしてることとか、豊かさや幸せの価値観を。
一平 何だろうね……もっとみんな好きにすればいいと思う。もう何でもいいじゃんって。今何やったって色々うるさいじゃん。だからもっと好きにしていいんじゃないって思う。先が不安な世ですけど、そもそも何歳まで生きたいの?って思っちゃって。もっと今、我慢しないで好きにやればいいのになと思う。
高木 いつまで生きられるかもわかんないしね。
一平 音楽もそうだよね。別にやめるやめないじゃなくて続ければいいし。売れたいなら売れればいいし、売れなくても好きなものを作りたいならとことん作ればいいし。とにかく好きにやればいいんじゃないかなと思ってる。「いい」とか「悪い」をとても言われるけど、「好き」と「嫌い」だけでいいんじゃないかなって。
高木 同じ。というか、影響を受けてる。
一平 本当、好きなことをやればいいと思ってる。祥太もね、多分、有名になると色々言うやついるじゃん。
高木 はいはい。
一平 別に何でもいいんじゃない、と思う。好きなことをやってるんだったら。好きなことを我慢してまで長生きしてどうする?って、最近特に思いますね。
高木 それを体現して生きてるよね。
一平 いやでもまあ、難しいよね。今「レビュー文化」というか、どこを見てもレビューがある中でやっぱり気にしちゃうから、好きだけで動きづらいのはすごくある。
高木 人からの評価とか、人からどう見えてるのかがより目につくようになったよね。それはずっと存在していたものだとしても。
一平 俺、「いい」とされるものが好きじゃないパターンが結構多いから。「好きなもの」と「いいとされるもの」のズレは考えちゃう。好きを取るべきだなと思いながらも、いい方にいかなきゃいけないときもあったり、いいとされるものを自分で掴んじゃうときもあったり。もっと好きなものだけを選びたいんだけど難しいなっていうのはある。それは音楽だけじゃなくて。
高木 全部のことに言えるよね。
一平 服も食い物も仕事もそうだね。やりたいならすぐにやればいいし、嫌ならすぐにやめればいいって、いつもみんなに言ってるんだけど、自分もなかなかそうできないっていうのはある。
高木 そうだね。でも、やっぱり面白い人だなって思った。改めてこうやって話を聞いてみると……「人それぞれにドラマがある」といえば安っぽい言葉になるんだけど、でも実際そうだと思う。世の中で日の目を浴びる人たちしかインタビューとか聞けないじゃん。でも全然そうじゃないけど面白い人って無数にいると思う。
一平 そうだね。いろんな生き方があるなって、すごく思う。
高木 あと俺は一平くんからだいぶ影響を受けてるんだなって思った。だから呼べてすごくよかったです。
Text&Editor = Yukako Yajima
BREIMEN
常軌を逸した演奏とジャンルにとらわれないスタイルで注目を浴びる5人組オルタナティブファンクバンド。2022年5月リリースされたポルノグラフィティ・岡野昭仁とKing Gnu・井口理のコラボナンバー「MELODY(prod. by BREIMEN)」では高木祥太(Vo&Ba)が作詞作曲を手掛け、メンバー全員が演奏・編曲を担当。同年7月に3rdアルバム『FICTION』をリリース。
https://brei.men/
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