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無知すぎる保守派が嘲笑の的に ピンク・フロイド「虹ロゴ」を巡る「狂気の騒動」

Rolling Stone Japan / 2023年1月28日 6時30分

1973年にリリースされた、ピンク・フロイド『狂気』のカバー(Photo by MICHAEL OCHS ARCHIVES/GETTY IMAGES)

英国を代表するプログレッシブ・ロック・バンド、ピンク・フロイド(Pink Floyd)が『狂気』リリース50周年記念ロゴを公表。「Wokeに走った」とレインボーロゴに怒り心頭の保守派に対し、熱心なファンたちはどんな反応を見せたのか?

アーティストのギルバート・ベイカーが製作したレインボーフラッグがクイア解放のシンボルとして最初に使われたのは1978年、サンフランシスコでのパレードだった。ピンク・フロイド8枚目のアルバム『狂気』(原題:The Dark Side of the Moon)がリリースされたのはその5年前、1973年だった。プリズムに差し込んだ光が虹を描くアートジャケットは、デザイナーの故ストーム・ソーガソンがピンク・フロイドの有名なライトショーにオマージュを捧げたものだ。

そして2023年。伝説的なバンドが歴史に金字塔を打ち立てた作品の50周年を迎える中、誤った情報を仕入れたごく少数のファンが、2つのカウンターカルチャーを混同して勝手に怒り狂っている。今月19日、ピンク・フロイドの公式Facebookに50周年の記念ロゴが発表されるや、レインボーのデザインが指しているのはバンドの代表作のジャケットではなく、LGBTQへの団結だと思い込んだファンから怒りのコメントが相次いだ。

Pink Floyd updated their profile picture to celebrate the 50th anniversary of the Dark Side of the Moon, and the replies are… something. pic.twitter.com/e4zNZ2KGOS — Travis Akers (@travisakers) January 20, 2023
※ツイート訳:『狂気』50周年を記念してピンク・フロイドがプロフィール画像を更新……コメント欄は一見の価値あり。(トラヴィス・エイカース @travisakers)

「だよな、ピンク・フロイドのファンはいつも『ピンク・フロイドがもっとゲイだったらよかったのに』って言ってるもんな」と、ある男性はコメントしている。「気色悪い」と述べているのは、新型コロナウイルスの真実を騙るミームをプロフィール画像に使っているユーザーだ。「昔はよく聴いてたけど、もうやめた。なんでもかんでもゲイのプロパガンダだらけだ」

Twitterではレインボーバッシングはそこまでひどくなかったが(むしろ50周年記念デラックスボックスセットの300ドル=約39000円という価格が争点になっていた)、あるユーザーはバンドが「完全に体制化して、大きな政府の支持に回った」と批判した。

Most famous group that wrote song against the establishment & big government has gone full establishment & pro big government. Thankfully theyre no longer writing songs, theyd go broke. Somewhere they lost their way. —  con (@Con___c0n) January 20, 2023
※ツイート訳:体制や大きな政府に抵抗する曲を書いたもっとも有名なバンドも、完全に体制化して大きな政府の支持に回った。幸い彼らはもう曲を書いていないから、一文無しでしょうね。どこかで道を誤ったのよ。(コン @Con__c0n)

保守派「えせファン」を嘲笑う大喜利大会

だが、冷静な人々やメディアがこうした無知な反応を失望交じりに受け止め、質の悪いネット荒らしやFoxニュースに毒された忘れっぽいベビーブーマーのせいだと受け止めている間に、波はさぁっと引いていった。年代・経歴を問わずピンク・フロイドの熱心なファンが、嘲笑を大量投下して同性愛嫌悪者を葬り去ったのだ。Facebookのスレッドは、こうした人々を「えせファン」(Fake Fans)と呼ぶコメントであふれ返った。バンドの音楽がいかに反権威主義的で左寄りかを指摘する声も多かった(『狂気』収録曲の大半を手がけたメンバーのロジャー・ウォーターズは、2017年のツアーでトランプをバッシングして一部の観客を怒らせた)。

「若いころに鉛系塗料の破片を食べ過ぎたピンク・フロイドのファンはすぐ見分けられるね」とは、ジェシーというユーザーのコメントだ。バークリーというファンは、「レインボーにアンチな人が、ピンクに反応しないなんて驚きだよ。『フロイドは男性の名前なんだから、ブルーにするべきだ!』とかさ」と揶揄した。「俺たちに教育はいらない」という歌詞への言及があふれんばかりににじみ出ている。

中には、いたいけな右派が受けた屈辱を逆手に取って、騒ぎに加わらずにはいられない者もいた。「よくやった、ピンク」と、ダニエルというユーザーは小ばかにしたように語った。「これでファンが1人減った。地元のレコード店で50セントで手にした時から、50年間ずっとこのアルバムを聴いてきたのに。たまたまアルバムジャケットを見たことがなかっただけだ」。茶目っ気たっぷりなポールというユーザーのコメントは、「ピンク・フロイドがWoke(社会の不平等に警鐘を鳴らす運動)に走るなんて信じられない。これから往年のイギリス人アーティストの中で聴けるのは、クィーン、デヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョン、ジョージ・マイケル、ジューダス・プリースト、モリッシー、リッチー・ブラックモアズ・レインボーだけだな」

事実、アンチファンをパロったコメントが瞬く間に増えたために、後からスレッドに加わったユーザーは本気とジョークを見分けるのに苦労したほどだ。しまいには、カルチャー戦争の猛者を小ばかにする同志を攻撃する始末。ロンダという女性も、「皮肉まじりの投稿をしているみんな、本当のバカを見つけにくくなってるわよ!」と指摘している。

ということでご安心を。お分かりの通り、ピンク・フロイド軍団は相も変わらずオープンで寛容な一方、今もレインボー賛成の姿勢を崩していない。むしろ『狂気』50周年記念ロゴより、自分たちも歳を食ったなぁと嘆くファンのほうがずっと多い。サイケ時代への郷愁が漂う中、おそらく本当の意味でのスキャンダルは、バンドがギャラを約束せずにアニメーターに新たなミュージックビデオを作らせようとそそのかしていることではあるまいか。

ちょっとした騒ぎがないとロックできないなんて嘆かわしい。『ザ・ウォール』はアメリカとメキシコの国境をテーマにしたコンセプトアルバムだ、などと言い出す輩が出てきた時には、またここでお会いしましょう。

【関連記事を読む】ピンク・フロイド『狂気』知られざる10の真実

Say it with me kids, "unpaid labor isnt going to help your career and your livelihood" https://t.co/D4MVRQnbYh — Derrick Malik Johnson (@DerrickMalikJo) January 20, 2023
※ツイート訳
【下】次世代アニメーターの皆さん、ピンク・フロイドのミュージックビデオ制作コンテストにご参加ください。代表作『狂気』に収録されている10曲のどれでもOKです。応募方法や詳細はリンク先をチェック。(ピンク・フロイド公式 @pinkfloyd)
【上】チビッコのみんな、さあご一緒に。「無賃労働はキャリアや生活のためになりません」(デリック・マリック・ジョンソン @DerrickMalikJo)

From Rolling Stone US.

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