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My Little Loverの2年ぶりビルボード公演、色褪せない楽曲と真摯なメッセージ

Rolling Stone Japan / 2023年1月30日 17時15分

My Little Loverのakko(Photo by Masanori Naruse)

My Little Loverのakkoが1月23日、東京・Billboard Live TOKYOにて『My Little Lover ☆ acoakko live winter quartet』を開催した。

【画像を見る】『My Little Lover ☆ acoakko live winter quartet』ライブ写真(全7点)

本公演は、akkoが2006年から行なっているアコースティックライブ「acoakko」の最新版。これまでもMy Little Lover(以下マイラバ)の珠玉の名曲たちを、音数を絞り込んだアコースティックかつオーガニックなアレンジで披露してきた人気企画である。同会場では2020年11月、デビュー25周年のアニバーサリーライブもこの名義で行われており、それからおよそ2年ぶりのステージとなる。なお、本公演に先がけ1月17日(火)には大阪・Billboard Live OSAKAでのライブも行われた。

筆者が見たのは、この日20時半よりスタートした2ndステージ。今回のサポートメンバーは、EXILE TAKAHIROや坂本真綾、DREAMS COME TRUEなど様々なアーティストのライブやレコーディングに携わってきた扇谷研人(ピアノ)、秦基博や元ちとせらのサポートも務めた伊藤ハルトシ(ギター、チェロ)、そしてBank Bandのパーカッションも担当した経験のある藤井珠緒(パーカッション)という、「acoakko」としては初の編成である。


Photo by Masanori Naruse


Photo by Masanori Naruse

定刻となり、まずはマイラバ通算5枚目のアルバム『FANTASY』(2004年)の冒頭に収録されたタイトル曲から。流麗なピアノのイントロに導かれ、無垢で透明感あふれるakkoの歌が会場内に響き渡る。小林武史による、捻りの効いたコード進行と練り上げられたメロディラインは、このシンプルなアンサンブルだとより一層際立つ。続く「Shiny Shoe」も『FANTASY』収録曲。チェロからアコギに持ち替えた伊藤がリズミカルにコードをかき鳴らし、藤井のカホンが歩調を合わせると、客席からは自然発生的にハンドクラップが鳴り響く。akkoはグロッケンシュピールを時おり叩きながら、まるでスキップするような軽やかなメロディを朗々と歌い上げた。

”信じられてたもの全てウソでも/時計の針は容赦なく進み続ける”と歌う「予感」は、akkoがマイラバをソロプロジェクトとして再開後、初めてリリースしたアルバム『akko』(2006年)に収録された楽曲だ。おそらく当時の彼女の心境を託したものだが、コロナ禍で様々な「喪失」を経験してきた私たちの心にもその歌詞は深く染み渡る。目まぐるしく転調を繰り返すかなり入り組んだ楽曲だが、そうとはあまり感じさせないのは、てらいのないakkoのボーカルスタイルによるところも大きいのだろう。


Photo by Masanori Naruse

オリジナルアレンジはピアノ主体だった「悲しみよ今日わ」(『FANTASY』収録曲)を、アコギをフィーチャーしたボサノヴァアレンジで聴かせた後、マイラバの隠れた名曲「スロウな恋」へ。これは、2002年にリリースされたセルフカバーアルバム『organic』に収録された唯一の未発表曲で、NHK BS2で放送されたテレビ番組『新・真夜中の王国』にも使用されていた。懐かしくもどこか寂しげなバロック調のメロディを、チェロのカウンターフレーズがそっと引き立てる。

そして、聴き慣れたイントロがアコギから爪弾かれると、場内が静かに沸き立つのを感じる。マイラバ最大のヒットとなった3rdシングル「Hello, Again 〜昔からある場所〜」だ。ジェンダーレスなakkoの声で歌われる、どこかスコティッシュ〜アイリッシュな空気を纏ったメロディは、この楽曲が収録された1stアルバム『evergreen』(1995年)のタイトルをそのまま体現しているかのよう。しかも、”泣かないことを誓ったまま時は過ぎ/痛む心に気が付かずに僕は一人になった”、”生きて行こうどこかでまためぐるよ/遠い昔からある場所”という歌詞は、リリースから30年近く経ちそこに込められた意味がより一層強く心に響く。

楽曲に込められた真摯なメッセージ

ライブ後半はアップテンポな楽曲が続く。「理不尽な世の中でいろんなものが降りかかってくるけど、そんなことに惑わされず軽やかに生きてほしいなと思って作った曲です」と紹介したのは、通算8枚目のアルバム『そらのしるし』(2009年)に収録された「ちいさなロマンス」。ビートルズの「Day Tripper」を彷彿とさせるリフが印象的なナンバーだ。”今日という一日はどれだけ素敵な日になる?/君がどれだけ笑顔を魅せるか次第です!”と歌われる歌詞は、「笑顔の連鎖」をキーワードに活動を続けるakkoにとってマニフェストともいえるものだ。

続く「Survival」は、アメリカ同時多発テロの翌年にリリースされた15枚目のシングル。軽快なモータウンビートに乗せて歌われる歌詞は、当時アメリカで暮らしていた小林武史の心境が反映されており(”昨日のミスも9月の朝も/きっと乗り越えてゆく”)、「歌詞を書く時には多かれ少なかれ世界平和へのメッセージを込めている」と以前インタビューで語っていたakkoにとって、原点といえる曲なのかもしれない。


Photo by Masanori Naruse

そして、マイラバの2ndシングル「白いカイト」(1995年)へ。セカンドラインビートに乗って歌われる、高揚感溢れるメロディに再び客席からはハンドクラップが。間奏ではメンバー全員でソロを回すなど(akkoはピアニカを演奏)、楽しそうに演奏する4人の姿にこちらの頬も緩む。

間髪入れず、”一人一人が世の中にとって宝物だろうけど/人間が病の器だってとても分かる気がする”と歌う「ちいさな魂」を披露。「私は大きくて立派なことはできないし、マザー・テレサではないけれど、小さなことを、大きな愛でもってコツコツ積み重ねていくことはできます。そのためにも、自分自身に向き合って大切にしていかなければいけないことをつくづく思います」と挨拶し、雄大なフォークナンバー「アイデンティティー」を歌って本編を終了。鳴り止まぬアンコールに応え、「風と空のキリム」でこの日のライブを締めくくった。

その時その瞬間に込められた「思い」は、時を経て違う輝きを放つこともある。生きていれば、目の前の道を進み続けていれば、再び巡り合う縁もある。My Little Loverの色褪せない楽曲と、そこに込められた真摯なメッセージに耳を傾けながら、そんなことを考えていた。


Photo by Masanori Naruse

【画像を見る】『My Little Lover ☆ acoakko live winter quartet』ライブ写真(記事未掲載カットあり)


〈セットリスト〉
01. FANTASY
02. Shiny Shoe
03. 予感
04. 悲しみよ今日わ
05. スロウな恋
06. Hello, Again 〜昔からある場所〜
07. ちいさなロマンス
08. Survival
09. 白いカイト
10. ちいさな魂
11. アイデンティティー
※アンコール
12. 風と空のキリム

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