Mori CalliopeとJP THE WAVYが語る、異色コラボの裏側
Rolling Stone Japan / 2023年2月10日 20時0分
「ホロライブEnglish」に所属するVTuberでありつつ、2022年にはユニバーサル ミュージック内のレーベル、EMI Recordsと契約を結びメジャーデビューを果たしたMori Calliope。英語と日本語を交えたセンス溢れるリリックと、”死神”という彼女の世界観、日本のラップ作品にも影響を受けたという柔軟なフロウを駆使し、バーチャルな存在ながらも、リアルないちラッパーとしての立ち位置を確立しつつある。
【写真を見る】豊洲PITでワンマンライブも敢行
そんななか、満を持して昨年リリースされたメジャー1stアルバム『SINDERELLA』は、”10個の大罪(10 Deadly Sins)”をテーマに据えた意欲作だ。どこを切り取ってもパワフルなMori Calliopeの情熱が伝わってくるが、収録曲の一つ、「Im Greedy」は気鋭のラッパー、JP THE WAVYを迎えたユニークな一曲。JP THE WAVYもまた、映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』に楽曲を提供したり、海外ラッパーらともの頻繁にコラボレートするなどワールドワイドに活躍するアーティスト。その二人がいかにして「Im Greedy」を作り上げたのか? 今回は、両名による貴重なコラボ・インタビューが実現した。
−今回は、アルバム『SINDERELLA』にも収録されている楽曲「Im Greedy」について伺いたいと思います。プロデュースを手掛けたのは、日本で活躍するラッパーのJP THE WAVYさん。まず、この曲のコンセプトはどのように決めていったのでしょうか。
Mori Calliope 「物欲について、あからさまに歌ってみる曲はどうだろう?」と思っていたんです。でも、それだとありきたりだなあと思って。わたしたち人間は、モノを買うと興奮するし、それがラグジュアリーなモノだったら尚更ですよね。私も、大体3カ月に一度くらいは高級ブランドの服などを時々買っていますが、買ったものはとても大切に扱っているんです。大切なのは、その欲望を自分が受け入れること。でも、そんな自分を甘やかしすぎてはダメ。貪(greedy)なことは悪いことではないし、「自分にはそんな欲望はない」という素ぶりをしている人はただ偉そうなだけだと思う。それが、この曲のそもそものアイデアでした。
ーこの楽曲をプロデュースしてください、と依頼を受けた時、JP THE WAVYさんは率直にどんなお気持ちでしたか?
JP THE WAVY Calliopeさんサイドから連絡をもらって、実際に曲を聴いたらめちゃめちゃ面白いなと感じたんです。日本語を第一言語としていないからこそのリリックのユニークさがあって、まさに「こういうのが聴きたかった!」と。なので、「じゃあ、(プロデュースを)やってみようか」と決めて。
ーもともと、こうしたVTuberのシーンは注目していましたか?
JP THE WAVY いや、僕は全然分かっていなかったんですけど、母国語ではない日本語でラップをやっていて、しかもこうしたVTuberという形で曲を発表している……って新しすぎるし、時代を感じますよね。個人的に、こうしたアーティストが出てくることはいいことだと思ってます。
ー逆に、Calliopeさんは前々からJP THE WAVYさんのことを知っていた?
Mori Calliope はい。自分がアンダーグラウンドで活動していた頃からJP THE WAVYさんの作品はよく聴いていました。私が遊びに行ったイベントでもWAVYさんの曲はよく掛かっていたし、「Cho Wavy De Gomenne」が流行った時は、多くのDJがクラブその曲を掛けていましたね。WAVYさんがプロデュースしてくれると言うことで、前からシーンにいる先輩たちからも「おめでとう」と言ってもらえましたし、私自身もとても感謝しています。まるで夢が叶ったみたいだし、昔の自分に「こんなことが叶ったよ」って教えてあげたい気持ち。
ー実際に、リリックを考えてレコーディング……というプロセスを経ていったのかと思うのですが、リリックを書くにあたってWAVYさんが意識した点はありますか?
JP THE WAVY Calliopeさんの歌詞って、日本語だけど、僕たちからしたら少し聞き馴染みのない言い回しとか、単語の使い方がユニークじゃないですか。僕が作ったことによって、より日本語っぽいリリックになってしまうと面白くなくなってしまうなあと思ったので、Calliopeさんのオリジナリティに寄せたリリックにしたいな、と思いながらリリックを書いていきました。かと言って、俺らしさがなくなるとつまらなくなっちゃう。そのバランスを考えながら曲を作っていったのは楽しかったですね。あと、日本人以外でも知っているような日本のフレーズを使うことに気をつけていました。
Mori Calliope WAVYさんが参加してくれて、やっと「Im Greedy」がうまくまとまったという感じなんです。というのも、普段の私だったら「ここまで言ってもいいのかな?」とちょっと恥ずかしくなってしまうようなところも、WAVYさんが、きちんと表現してくれて、とてもリアルなリリックに仕上がったと思います。中途半端はなくて思いっきり書いてくれたんだな、と思って。そういう正直で堂々としているところ、尊敬しています。
Mori Calliope
メンターとの出会いで進化したラップ
ーCalliopeさんは、生身のアーティストではなくVTuberという形で活躍しているアーティストです。WAVYさんにとって、バーチャルタレントをプロデュースするという点はいかがでしたか?
JP THE WAVY そこに対する難しさとかやりづらさは特に感じなかったですね。依頼をいただいた時も「JP THE WAVYらしくやってほしい」と言ってもらえたので、自分の曲を作るような感じで挑みました。たとえば、アニメのキャラクターのテーマ曲を書いてくれ、というような依頼だと、自分のことよりもそのキャラクターの設定に合わせて作らなきゃいけないわけですけど、Calliopeさん自身はキャラクターというよりも生身のアーティストなので、あくまでも自分の曲にCalliopeさんらしさをちょっと足す、みたいな感じで進めていきました。
ーフラットな感じで、プロデュースにあたった、と。
JP THE WAVY はい。何よりも、Calliopeさんがラップもうまくて日本語もうまいので、そこが大きかったです。レコーディングの時もめちゃめちゃ真面目で、肺活量もちゃんとあって。
Mori Calliope レコーディング・セッションの最初の方は、自分のフロウとWAVYさんのフロウが合わず、苦労したんですよ。たとえばスタッカートの部分とか。セッションの間、WAVYさんのチームが、もっとトラディショナルなビートを使った”ラップの仕方”を教えてくれたんです。
ー基本的なラップのやり方を、改めて学ぶ機会にもなったんですね。
Mori Calliope これまで、私自身はラップをやっているからといって「ヒップホップ」をやっているわけではないと発言してきたんです。ラップ自体は、どんなジャンルの音楽にも乗せることができる、でも、ヒップホップは自分で体現していくものじゃないですか。だから、今回こうしてメンターの方――特に日本のヒップホップ・シーンにいる方ーーに出会えたことはとてもよかったです。
JP THE WAVY でも、そもそもCalliopeさんはラッパーとしての資質みたいなものが最初から備わってるんですよね。早口で英語でラップするところも、いきなりサラッとやり始めて「えー」みたいな。みんなで「うま!」って驚きました。むしろ「俺から教えることは何もありません」みたいな(笑)。日本語の発音とかも、逆に完璧にはしてほしくなかったので、Calliopeさんらしいままやってもらったんです。
ー「Im Greedy」の中で、特に気に入っているパートはありますか?
Mori Calliope 私もファンも、「I love cheese」というところが好きですね。お金のことを「チーズ」と呼ぶのは昔からあるスラングだから、このリリックはマフィアのボスが手下たちに対して命令しているようなイメージがあって(笑)。あと、「チーズ」そのものもネットミーム的な食べ物なんですよね。だから、ストリーミングのライブで歌うと、画面がチーズの絵文字だらけになっちゃうんですよ。
ーCalliopeさんご自身が、VTuberとして活動していてよかったなと感じるのはどんな時ですか?
Mori Calliope プライバシーを守れることですかね(笑)。それと、家でも仕事ができるという点。何年間も、夜明けと共に起きて職場に行く、という生活をしてきたので、「そんな日々も終わったんだ」と思うとすごく嬉しいです。それに、VTuberの世界はいつも何かが起こっているような状態だし、「つまらないな」と感じる瞬間は1秒もないです。
JP THE WAVY VTuberのシーンはもっと大きくなっていくんじゃないかなと思っています。だから俺も、もっと勉強しなきゃですね。今後も、VTuberのアーティストと何か一緒に出来たら面白いと思いますし、僕が二次元に行ってライブする……みたいな企画が実現できたら面白そうだなと考えています。
アルバム『SINDERELLA』についてMori Calliopeが語る
ーここで改めて、Mori Calliopeさんのアルバム『SINDERELLA』についても少しお話を聞かせてください。「sin(罪)」という単語を忍ばせたタイトルもユニークだと思ったのですが、アルバム全体のコンセプトは?
Mori Calliope アルバムで表現しているのは、人間が犯す「罪」にまつわるストーリーなんです。どの曲も個性に溢れていると思うし、英語が分からなかっとしても、聴くだけでそれぞれの曲が何を表しているのかが伝わると思います。全て違う色を持つ曲だし、みんなに共感してもらえるポイントも多いと思います。少なくとも1曲は、自分のプレイリストに追加したくなると思う。
ー2022年7月にはメジャーデビューも経験し、初のワンマンライブも行いましたが、ファンからの反響などはいかがでしたか?
Mori Calliope メジャーEPをリリースした後、私が予想していたよりもずっとDead Beats(Mori Calliopeのファンの総称)の声をたくさん頂いて嬉しかったですね。メジャーレーベルと契約することは大きなことですし、それをお祝いしたいんだというみんな気持ちがとっても伝わってきました。昨年のEP『SHINIGAMI NOTE』はメインストリームのリスナーも増やせれば、という思いで作った作品なんです。だから、自分の”コンフォート・ゾーン”からも一歩踏み出さなきゃと思っていました。ファンも、そのことは分かってくれているのでホッとしています。前と比べて、私の曲は少し変わって聴こえると思うけど、それは成長してより良くなっているということ。同じような曲を何度も作るのは嫌だし、ファンはこれまでの曲も聴いて楽しむこともできるわけだし……。今後も、テクニカルな面やテーマ的な部分を突き詰めて行く面、アーティストとしてはどちらも成長させていきたいなと思っているので、どんどん頑張っていきたいです。
ー今後、Calliopeさんがアーティストとして達成したい目標はありますか?
Mori Calliope アニメやゲームに楽曲提供をしたいと思っています。これは前から何度も言ってきていることなんですけど。でも、これまでにたくさんの目標を叶えてきたので、そろそろこの夢も実現間近なんじゃないか?と思っています!
【関連記事】Mori Calliopeが語る、クリエイティブの源泉と活動における哲学
<INFORMATION>
Major 1st ALBUM『SINDERELLA』
Streaming/DL:https://lnk.to/mc_sinderella
CD:https://lnk.to/mc_sdl_ec
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【インタビュー】東京・江戸川をレペゼンするラッパー、RUNE999が語った過去、そして現在
PR TIMES / 2024年11月28日 10時0分
-
今市隆二とØMIが語る、三代目 J SOUL BROTHERS『ECHOES of DUALITY』全曲解説
Rolling Stone Japan / 2024年11月25日 17時0分
-
¥ellow Bucksが語る、引き算で核心を捉えるラップ、地元凱旋ライブの意味
Rolling Stone Japan / 2024年11月18日 10時0分
-
MIKOLASとSKY-HIが語る、豪華セッションの制作舞台裏
Rolling Stone Japan / 2024年11月11日 12時0分
-
SKY-HI、Novel Core、CHANGMOが語る、日韓コラボレーションの狙いと意味
Rolling Stone Japan / 2024年10月31日 12時0分
ランキング
-
1倖田來未 下積み時代に共に営業していた超人気歌手とは 「凄いハッピーな子だから」励まされステージへ
スポニチアネックス / 2024年11月28日 13時8分
-
2「嫌な形で耳に残る」中丸雄一代役の後輩CM音楽が不快、“悪くは言いたくないけど”拭えない残念感
週刊女性PRIME / 2024年11月28日 11時0分
-
3既婚者・子持ち男性が“異性混合グループ”で遊ぶのはアリ?ナシ? ミキティが“目から鱗”の神回答
スポニチアネックス / 2024年11月28日 11時33分
-
4池田エライザ「海に眠るダイヤモンド」女優を輝かせる“塚原あゆ子マジック”でトップ女優の仲間入りへ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月28日 9時26分
-
5平野紫耀Number_iのバーター扱いIMP. 汚名返上にタッキー動く
東スポWEB / 2024年11月28日 5時4分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください