Hana Hope × HONNE対談 共鳴し合う両者の出会い、世界へ羽ばたくために大切なこと
Rolling Stone Japan / 2023年3月6日 17時30分
デビュー前からテイ・トウワやROTH BART BARONといったアーティストとの共演を果たし、大きな注目を集めていたZ世代のアーティストHana Hopeが、ロンドン出身の2人組エレクトロ・ポップ・デュオHONNEをプロデュースに迎えたニューシングル「We've Come So Far」をリリースした。
この曲は、HONNEが作詞・作曲およびプロデュースを担当。HONNEらしいミニマルかつソウルフルなトラックと、その上をたゆたうように歌うHana Hopeのボーカルが印象的。そのチャーミングな雰囲気から一転、サビでは壮大で高揚感あふれるウォール・オブ・サウンドが展開されるのも聴きどころの一つだ。3月15日には待望のデビューアルバム『HUES』をリリース予定のHana Hopeと、今夏のサマーソニック出演も決定したHONNEの2人に、今回のコラボについて聞いた。
─HanaさんはHONNEの音楽についてどんな印象を持っていましたか?
Hana:私はずっとHONNEのファンでした。曲は「Location Unknown」が好きで、特にライブバージョンがお気に入り。それと、「no song without you」はチルなサウンドとメロディが大好きです。
アンディ:すばらしいチョイス! 「Location Unknown」のライブバージョンはツアー中にブルックリンで録ったんだ。ピアノとボーカルだけだけど、全てがうまくいったよ。「no song without you」も、我ながらよくできてる曲だと思う。何時間も悩んでできたのではなく、自然と思い浮かんできた曲という点でも気に入っているんだ。
─HONNEのお二人は、Hanaさんの歌声を聴いて、どんな印象を持ちましたか?
アンディ:僕が初めて聴いたHanaの曲は「Sentiment」でした。とても感銘を受けましたね。ハープのサウンドがとても美しいし、曲を聴いたときにビョークを思い出したんです。
Hana:ありがとう! 両親がビョークの大ファンなので、私も好き。
─コラボをするにあたって、事前に3人で話し合う機会はあったのですか?
アンディ:まずはお互いに打ち解けあえたらと思ってZoomでカジュアルなチャットをしました。もし同じ国に住んでいたら、直接会ってお茶でもしながら話せたんだけど…………それは次回だね!
─実際に話してみてお互いどんな印象を持ちました?
Hana:私は正直、ちょっと緊張していました。なので、過去のHONNEのインタビューを見て心の準備をしていました。
ジェイムズ:確かに、最初はお互いにぎこちなかったよね(笑)。
Hana:お話しする前から優しそうな印象があったけど、実際に話してみても同じように思いました。私は新人なので、お二人がどんなことを期待していたのかはちょっと分からなかったけど、歓迎してくれているのを感じることができたので。
ジェイムズ:大切なのは、相手と一緒にいて居心地がよいかどうかだよね。僕らは「クールなポップスター!」みたいな振る舞いとかできないし…………イギリスから出てきたただの田舎者だからね。音楽を作るのと、人と会うことが好きっていう、ただそれだけ。…………あれ? 何を言いたかったのか分からなくなってきた(笑)。
アンディ:(笑)。初めてリモートで話したときHanaは16歳だったよね。もう17歳になったんだ。君に出会えたことは、とても光栄だよ。声ももちろん大好きだし、一緒に制作ができることが楽しかった。
「We've Come So Far」制作背景、歌詞に隠されたストーリー
─今回のコラボ楽曲「We've Come So Far」の歌詞は、アンディが持っていたモチーフを膨らませていったのですか?
アンディ:この曲は、僕と妻の若かりし頃から今に至るまでの道のりについて歌ったものなんです。僕らは18歳の頃からずっと一緒で、かれこれ15年の月日が経ちました。まさに「Weve Come So Far」という曲のタイトル通りですね。彼女と出会った頃の僕は、自分が何を求めているのか、誰と一緒にいたいのかすら分からない状態だったんです。でも結婚してからは、いろいろなことがあっても常に二人で乗り越えてきて、その幸せを今は実感しています。普段はリリース前の音源を妻に聴いてもらうことなんてないのだけど、今回ばかりは聴いてもらいました。とても気に入ってくれたので、妻のお墨付きと言っていいでしょうね。
Hana:そんな歌詞の方向性を、16歳が歌っても自然な内容に少しだけ変えました。過去のことを歌っているけど、私たちの世代にも届くものになったと思います。その人が大人かどうかに関係なく、みんなそれぞれの「過去」を経験しているはずだから。
アンディ:そうだね。歌詞は僕と妻の長いリレーションシップがモチーフになっているけど、人によっては凝縮されて1週間で経験することかもしれない。どんなに長い間続いていることでも、物事は常に変化するものだから。きっと何かしらの「共感」を得られるんじゃないかなと。
─二人のパースペクティブが混じり合ったことで、時間軸が多元的になったというか。
アンディ:まさにその通りです。HONNEとしていつも心がけているのは、自分たちの音楽をみんなと共鳴させること。音楽の中にみんなのそれぞれの人生を映し出せたらいいなと思っているし、それができたら「いい曲」の証です。
─良いリレーションシップを他者と築いていく上で、大切なことってなんでしょう。
アンディ:良い質問ですね(笑)。僕はいつも「努力」が必要だと思っています。今の時代は諦めることがとても簡単だし、みんな簡単に諦めすぎじゃないかなと。努力したことがある人ならきっと分かってくれると思うけど、愛は複雑で時間がかかるものなんです。
ジェイムズ:僕もちょっといいですか?(笑) 実は今度、8年間付き合っている彼女と結婚するんだけど…………。
Hana:おめでとう!
ジェイムズ:ありがとう。今年8月にイギリスで結婚式をして、12月に彼女の母国カンボジアでも式を挙げる予定です。今のリレーションシップの話だけど、昨今はSNSを通してみんなの「一番良い瞬間」が頻繁に流れてくるじゃないですか。でも、それって「リアル」でもなんでもないんです。もしSNSの投稿が事実だとしたら、みんな5つ星のホリデーを過ごしていることになるし、絶望なんて感じたことがない人ばかりになる。子どもたちはみんな、完璧な親に育てられ…………もちろん、そんなのありえない(笑)。でも、そういう「加工されたリレーションシップ」ばかり毎日見ていると、「どうしてみんなは完璧なのに、自分は違うんだろう」と思い込むようになってしまう。でもアンディが言ったように、愛には努力と忍耐が必要ですし、コミュニケーションが何より大切なのだと思いますね。
Hana:特に家族の関係ではコミュニケーションが一番大事だと私も思う。正直に話すことも、毎回ちょっとした喧嘩をしないための大事な要素じゃないかな。ただ、喧嘩をすることを通して学ぶこともあるからな…………正直なところ、良いリレーションシップの正解は分からないかも。
ジェイムズ:すぐに分かるよ!
─正直に話す、つまり本音(HONNE)が大事ということですね(笑)。ちなみに「本音」は英語でどう訳されるんだろう。
アンディ:簡単にいえば「True feeling」になるのかな。でも日本語の「本音」には、もうちょっと深い意味も含まれていると思う。対義語の「建前」は、内心とは別の表向きの意見という意味でしょう? 僕らはその2つの言葉が好きなんですよ。初めて知ったときからとても興味深かったし、そのシンプルな日本語を英語で説明するには時間がかかると思いましたね(笑)。
「We've Come So Far」ジャケット写真
─曲の話に戻りましょう。トラックはどのように作っていったのですか?
ジェイムズ:どうだったかな……ちょうど『Love Me/Love Me Not』(2018年発表の2ndアルバム)を作り始めた頃だったから、かなり時間が経っているんですよ。これはテクニカルの話だけど、DAW(デジタルオーディオワークステーション)をApple LogicからAbleton Liveに変えたんです。そのことは、僕らにとって新しいインスピレーションになりましたね。
─Abletonで作ったのは「Weve Come So Far」が初めてですか?
ジェイムズ:ええ。たしかロサンゼルスからの帰りの飛行機で、アンディから「みんなAbletonを使っているから僕らも使おう」と言い出したんですよ。「そうしないと負け組だ」って(笑)。彼は、すでに使い方を知っていたから、僕は飛行機の中でずっとチュートリアルを見ていました。
─Hanaさんは「Weve Come So Far」のトラックを聴いてどう思いました?
Hana:とても明るくて、希望を与える曲だと思いました。曲全体の流れも印象的だったし、特にレイヤーされたコーラスパートがとても美しくて。実際に歌うのは大変だったけど、全ての過程を楽しみながらできました。
─Hanaさんの歌が入った音源を聴いたお二人の感想は?
アンディ:感動しましたね。確かステムデータを朝に送ったと思うんだけど、歌入れに1日はかかると思ったら数時間後に「できた!」って連絡が来て。
ジェイムズ:Hanaは優秀なシンガーです。ピッチを完璧に合わせられる才能があるから、きっとエンジニアは退屈でしょうね(笑)。
Hana:私もHONNEの制作現場に身を置くことで、音楽に対して新しい向き合い方を教えてもらったような気がしています。発見がたくさんあったし、曲をもっとよくする方法も学ぶことができた。例えば、遠くで歌うのと近くで歌うことでハーモニーが変わることとか、とても勉強になりました。
HONNEからHana Hopeへ、世界で活躍するために大切なこと
─ところでHONNEのお二人は、これまでBTSのRMやカリード、サム・スミスといったグローバルに活躍するアーティストたちとコラボレーションをしてきました。そんなお二人から見たHanaさんのポテンシャルやオリジナリティはどんなところにあると思いますか?
アンディ:Hanaのボーカルは壊れてしまいそうな儚さがあって、そこがオリジナリティだと思いました。僕らは力強いボーカルが苦手なんですよ。ちょっと今の言い方は意地悪だったかな(笑)。もちろん、そういうアーティストが必要なのは分かっています。僕自身もレコーディングする時、うまく歌おうと意識し過ぎて逆にうまくいかなかったことが何度もありました。伝えたい感情が入ってないというか……ジェイムズと一緒にやり始め、もう少し優しく静かに歌えばいいと気づいたんですけどね。
ジェイムズ:HONNEを結成する前は、アンディの声の優しさに気づかなかったんです。でも、HONNEを結成してから、あるとき彼がマイクを片手に前かがみに座って歌いだしたことがあって。その瞬間「この声だ!」と叫んでいましたね。
HONNEがプロデュースを担当したRMの楽曲「Closer」
─BTSももちろんそうですが、ここ最近はBLACKPINKやミツキ、リナ・サワヤマといったアジア系のアーティストが世界的に活躍しているなと思います。
アンディ:彼らが注目されるまで、こんなにも時間がかかったこと自体は問題ですよね。要するに、西洋の音楽がずっとシーンを独占していたということだから。僕にとって音楽はインターナショナルな言語の一つで、たとえ日本語を話せなくても、音楽を通して何が起こっているのかを理解できます。アジアのアーティストたちが人気を博するのに、これだけの時間がかかったのは残念だけど、単なるトレンドにならず、流れが続けばと思うね。
ジェイムズ:素晴らしいアーティストたちが、扉を開いてくれました。「こんな素晴らしい音楽に、どうして今まで知らなかったんだろう?」って、ようやくみんなが気づきはじめたと思いますよ。
─それにはインターネットの力も大きかったですよね。
アンディ:間違いなく。僕ら(の成功)もインターネットのおかげですよ。
ジェイムズ:インターネットがなきゃ、音楽で生きていけてないしね(笑)。
─ちなみに今、注目しているアジアのアーティストはいますか?
アンディ:逆に、僕らに教えてくれないか?
Hana:私はあまりトレンドをチェックしていないけど、K-POPは最近ずっと人気だよね。
ジェイムズ:ねえ、NewJeansっていう新しいグループを知ってる?
Hana:うん、知ってる!
ジェイムズ:かなり若いよね。信じられない。音楽はとてもかっこいいんだ。まだ出てきたばかりなのに、Spotifyには約2200万人のリスナーがいるんだよ?
─彼女たちのように、Hanaさんが今後グローバルに活躍していく上で必要なことといえば?
ジェイムズ:僕らはまず40曲ほど作って、信頼している人たちに意見を求めたところ、「まずは良い曲をたくさん作ることが大事だ」と言われました。さらに、一緒に楽しめる人を見つけることや、楽しみながら熱中すること、周りの人に影響されないことも大事なのだなと。自分で作曲した曲を「素晴らしい」と思えたらそれでいい。それが僕の人生ですからね。
アンディ:長いキャリアを続けていく上で、信じられる仲間を持つことはとても重要だと思います。自分たちの音楽を楽しむこともね。
ジェイムズ:それらを軽視して、3週間のツアーバスを最悪なムードにしちゃう人って結構いるんだよ……ひどいよね。(笑)周りにエネルギーを与えるタイプの人と奪うタイプの人がいて。僕の父が言っていたのだけど、人間は4つのタイプに分類できる。まず 掛け算のタイプは、みんなのアイディアやエネルギーを奪ってどんどん成長していく。足し算のタイプは何も奪わないで、ただ与える、引き算のタイプには、気をつけたほうがいい。何も持ってこないし、とにかく否定ばっかりするんだ。で、4つ目は何だったかな……思い出そうとしてるんだけど出てこないや。
─(笑)。今後、もしコラボレーションをする機会があるとすれば、どんなことをやってみたいですか。
Hana:チルソングを一緒に作ってみたい。車で聞けるような感じの曲がいいな。
アンディ:ああ、僕もそのアイディアには賛成だよ。やってみよう。Hana、今は東京にいるの? 僕らは8月に東京に行く予定なんだ。何かおすすめの場所はある? 例えば、土曜の朝起きて、親友と出かけるなら、どこに行く?
Hana:そうだな……もうなくなっちゃったんだけど、私の家から5分くらいの場所にとってもいいドッグカフェがあったの。
ジェイムズ:そういえば、下北沢のお好み焼き屋さんに行ったことを覚えているよ。店に僕らのサインが飾ってあるはず!
Hana:私もお好み焼きは大好き。二人とも、お寿司は好き? 目黒駅のそばに回転寿司屋さんがあって、目の前で捌いてくれるからとても新鮮だし、そんなに高くないの。
アンディ&ジェイムズ:いいね!
Hana Hope
1stアルバム『HUES』
2023年3月15日リリース
「We've Come So Far」
配信リンク:https://lnk.to/WeveComeSoFar
Hana Hope
2006年東京都出身。2020年伝説のレコーディング・スタジオ、音響ハウスの映画「Melody-Go-Round」に出演、テーマソングを歌う。2021年には細田守監督の映画「⻯とそばかすの姫」で声優デビュー。2022年2月に、シングル「 Sentiment / Your Song 」でデビュー、国内外における数多くのプレイリストやチャートに入り話題のニューカマーとなる。11月3日、加藤登紀子 × 江﨑文武の手による待望のセカンド・シングル「きみはもうひとりじゃない」、そして自身の作詞・作曲による「16 - sixteen」をリリース、同日には表参道wall & wallにて初のソロ・ライブを開催。同年12月14日にはサード・シングル「それでも明日は」(作詞:柴田聡子 作曲: UTA)を発表。本作は、2023年1月公開の映画「あつい胸さわぎ」の主題曲である。これまでに日立、ソニー・コンピューター・サイエンス研究所、花王、JR東日本などのコマーシャル・ソング歌唱、ナレーションなども行っている。17歳とは思えない表現力、という評価を集める Hana Hope は、デジタルネイティブなZ世代。小さな枠にとらわれることのない幅広い音楽性を表現する、新世代のフィーメール・シンガーである。
Hana Hope Litlink:https://lit.link/hanahope
HONNE
UKロンドン出身。ボーカル/プロデューサーを務めるアンディ(Andy)と、マルチプレイヤー/プロデューサーのジェイムス(James)からなる2人組エレクトロ・ポップ・デュオ。
ユニット名の由来は日本語の「本音(ほんね)」。言葉の意味を気に入り、まさに自分たちの作っている曲を表しているとのことで命名された。2014年、1st EPをインディーズレーベルからリリース。同年、アトランティック・レコーズと契約し、これまでに3枚のアルバムをリリース。また、BTSのRMやKhalid、Sam Smith, 88RisingのNikki, BEKAらグローバルに活躍するアーティストと数多くコラボレーションし、彼らが次にプロデュースするアジアのシンガーとしてHana Hopeとのコラボが実現。2023年、SUMMER SONICへの出演が決定した。
https://www.hellohonne.com/
SUMMER SONIC 2023
2023年8月19日(土)、20日(日)
千葉 ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ / 大阪 舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
※HONNEは8月19日・東京、20日・大阪に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/
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