ジャマイカ新世代レゲエ・アーティストが語るバックグラウンド 3月にツアー8公演で来日
Rolling Stone Japan / 2023年3月13日 20時0分
今レゲエ・ミュージックの中で起きている新しい動き。その中で特筆すべきなのが、リラ・アイケの存在だ。レゲエの本場ジャマイカでは、2010年代後半からレゲエ・リバイバルのムーブメントが盛り上がっているが、そのムーブメントをリードする一人、Protojeが主宰するIn.Digg.Nation Collectiveの一員として楽曲を発表。コロナ禍の2020年にはEP『The ExPerience』で、アメリカのRCAよりインターナショナル・デビューを飾り、瞬く間にレゲエ・ファンのみならず幅広い音楽ファンを魅了することとなった。
リラの音楽は、オーセンティックなレゲエをベースにしながらも、ヒップホップ、R&B、ソウル、ダンスホールの要素もあって、懐かしさと最先端が同居するタイムレスな音楽になっている。リリックには様々なエモーションやメッセージが込められているのだが、何よりも極上のシルキー・ボイスで歌われる美しい歌によって、ちょっとレベルの違う音楽体験を得ることができる。そのリラが3月には全8公演のジャパン・ツアーで来日する。来日直前となるリラのインタビューを紹介したい。
―もうすぐ来日ツアーですが、ライブはどんな感じになりますか?
リラ・アイケ 最近1WULDというサウンドを始めたんだけど、日本人はレゲエのカルチャーもサウンドシステムも大好きだっていうのは聞いてるから、私も自分のサウンドシステムでライブをやりたいと思ってる。日本に行くのは初めてだし、今までずっと行きたかったところだから、観光もしたいし、クールなところに行ってヴァイブスも感じたい。
―2020年にリリースしたEP『The ExPerience』は、リラ・アイケの存在を世界中に知らしめた名盤となりました。EPをリリースした後は、どのような変化がありましたか?
リラ・アイケ 『The ExPerience』はコロナ禍にリリースされたから、ツアーもできなかったし、グローバルなプロモーションも思ったほどできなかった。正直ここまでこのEPが成功するとは思ってなかったんだよね。それに、いろんな人たちから、コロナ禍であのEPを聴いてどれだけ救われたかっていう話もたくさんされた。それでコロナ禍が収束して、ツアーができるようになると、みんなよく曲を聴いてくれてたこともあって、ライブをやるとスゴいことになってて。私にとって一番大切な経験は、私の音楽をみんなとシェアすることで、曲をリリースした時は誰もが入り込めなくても、ステージでライブをすればそこにいる誰もが入り込める。今はやっと自分の音楽をライブでみんなとシェアできる時が来たっていう感じ。それにコロナ禍が終わって、みんな楽しみたくてしょうがなくなってる感じもするんだ。
―今実際にライブをやってみて、手応えはどうですか?
リラ・アイケ ライブは最高! 私もみんなも3年間待ったわけだから。みんなが一つになれるし、エネルギーもスゴいし、待ち望まれてたんだなっていうのもスゴくわかる。2月終わりにジャマイカでProtoje主催のLost in Time Festivalがあったんだけど、スゴく素敵なショーになった。私のライブの時もみんなが一緒になって歌ってくれたから、素晴らしい経験になったね。
―Lost in Time Festivalのライブ映像を観ましたが、リラは完全に会場をロックしましたね。
リラ・アイケ この日は全体的に見ても、素晴らしいショーになったと思う。多くのアーティストが一堂に介して、それをみんながジャマイカで観れるという意味でも、久しぶりのショーになったし。それに私の家族にとっては、その日が初めて観る私のライブになったんだよね。
―そうなんですね。そう言えば、元々リラが音楽を好きになったきっかけは、ママが家で聴いていたレゲエやR&Bだったんですよね。
リラ・アイケ ママは大の音楽好きだから、そのおかげで私の音楽の世界はスゴく広がった。ママはよくソウル・ミュージック、R&B、ヒップホップ、ポップを聴いてたし、ゴスペル・ミュージックも聴いてた。もちろんレゲエもダンスホールも聴いてた。いつもママに「この曲は誰が歌ってるの?」って質問してたし、自分でもいろいろ調べてた。初めてガーネット・シルクを聴いた時も、初めてローリン・ヒルを聴いた時もそう。ガーネット・シルクとローリン・ヒルは私が一番大好きなアーティストだから。
―その日のステージ衣装もカッコ良かったですね。
リラ・アイケ 私は衣装も重要だと思ってるから。ライブというのは総合的な体験だし、私がみんなとシェアしたい経験は、音楽だけでなく、ビジュアルも含めたすべてだから。だから衣装も大好きだし、衣装デザイナーのような、音楽以外のクリエイターとコラボするのも大好きだから。
音楽は世代を重ねて変わっていくもの
―EP『The ExPerience』以降にリリースした曲についても聞かせてください。いろいろな曲があるし、どの曲も音楽スタイル、リリックのトピックが異なりますよね。これらの曲を作る時、どのようにサウンドとエモーション、メッセージを結びつけています?
リラ・アイケ 私は曲を作る時、常にチャレンジしたいと思ってる。違うジャンルにトライしたいし、新しい音楽スタイルにもトライしたい。もちろんレゲエ・ミュージックは私が一番好きなものだし、私のハートと魂がそこにあるのには間違いない。でも私は小さい時からいろいろな音楽を聴いて育ったから、どんな音楽からもインスピレーションをもらえる。例えば「Dinero」という曲があるんだけど、元々は『The ExPerience』に入れるかどうか迷ってて。でもその時はもっと実質的なメッセージを音楽に込めたいと思ってたから、私がお金について歌ってるような曲はEPには収録しなかった。その後、録り終わったデモをスタジオでいろいろ聴いてた時に、Protojeから、この曲を違うサウンドでやってみようって言われて。それで、Koffeeの「Throne」も手がけたプロデューサーがトラックを持ってきたんだけど、それがかなりカッコ良くて。そこでこの曲は形になったというわけ。「True Love」という曲では、自分を大切にすることを歌っていて。コロナ禍の時は、人々に対して音楽で何ができるのかが私にとっては重要だったから、この曲が生まれた。「Wanted」という曲は、オーガニックなルーツ・レゲエ・ミュージックで、ピュアなヴァイブスの曲になってる。私のやるレゲエは100%純粋なレゲエとは言えないかもしれないけど、それはそれでかまわないと思ってる。今は2023年だし、ボブ・マーリーがいた時代とは違う。音楽は世代を重ねて変わっていくものだし、様々なインスピレーションを受けて進化していくもの。私は今までに自分が吸収したもの、受けたインスピレーションを、自分の音楽として形にしていきたいから。
―「Batty Rider Shorts」という曲では、幼児虐待について歌っていますよね。
リラ・アイケ あの曲も私にとってはスゴく重要なメッセージを持つ曲で。幼児虐待は実際にあちこちで見てるものだし。あの曲を出した1ヶ月後には、ジャマイカで2人の女の子が行方不明になる事件があって、あの曲と大きくリンクすることになった。音楽は楽しむためにあるけれど、同時に、音楽はエデュケートするためのものだとも思っている。
―今年はニュー・アルバムのリリースも控えているんですよね。
リラ・アイケ 今も制作中なんだけど、夏にはリリースできると思う。私の曲作りも進化してると思うし、客演にも注目してほしい。私がずっと共演したかった人たちに参加してもらってるから。アルバムにはいろいろな影響が入ってるし、いろいろなジャンルのサウンドがあって、レゲエはもちろん、R&B、アフロビートの要素も入ってる。間違いなくエモーショナルな内容のアルバムになると思う。曲を書いたのはコロナ禍だし、私自身いろいろな問題を乗り越えなくてはいけなかったから、メンタル的にも、エモーション的にも、いろいろなトピックに書くことになった。一方で、音楽的にはスゴく美しいものになってると思う。
―Protojeはリラにとってメンター的な存在だと思いますが、音楽アーティストとしてどのような影響を受けましたか?
リラ・アイケ Protojeは間違いなくメンターだよね。私がまだ何も音楽を発表してなかった頃、キングストンに行って、そこでジャム・セッションをして、カラオケで歌うようになって、私の歌声が話題になったことがあった。Protojeは最初に私に音楽アーティストになることを決意させてくれた人で、その後の私のキャリアの中でもずっとサポートしてくれてる。普通、私のような女性アーティストだと、どのように売り出して、どのように金儲けをするのかが戦略になるんだろうけど、彼はもっと崇高なビジョンを持っていて、私にとって何がベストなのかを考えて、きちんと私を導いてくれてる。私がアイデアを持って彼のところに行くと、彼には音楽の知識も豊富にあるから、最高の形にしてくれるし、常に私のペースに合わせて動いてくれる。それで私自身も常にいろんな音楽を聴いて、どこからでも、何でも吸収することができてるんだと思う。
―2023年のプランは?
リラ・アイケ なるべくたくさん曲を発表していきたいし、何よりも日本に行くのが楽しみ。日本にはDJとクリエイティブ・ディレクターと一緒に行くんだけど、二人とも日本は初めてだから、みんなで楽しみにしてる。私はスゴくクリエイティブな人たちに囲まれて仕事をしてるから、このエネルギーを早くみんなとシェアしたい。すでにステージ衣装も考えてるから、それを披露するのも楽しみ。日本に行った後は、ツアーでヨーロッパに行って、その後はバンドを連れてヨーロッパに行く。今年は忙しくなると思うけど、世界中に行って、音楽とヴァイブスを多くの人たちとシェアできるのを楽しみにしている。
―日本ツアーはずいぶん前からアイデアとしてはあったんですよね。
リラ・アイケ そうそう。EP『The ExPerience』を出したタイミングで日本に行きたかったんだけど、コロナ禍になってしまって。ただ、私はもっと音楽的に成長したかったというのもあったから、逆に今日本に行くのは完璧なタイミングなのかもしれない。
―日本のファンにメッセージはありますか?
リラ・アイケ 私の来日を楽しみにしてる人にはスゴく感謝してる。私の音楽をみんなとシェアしたいし、世界中にもっとポジティビティ、もっと光を与えたいと思ってる。とにかくみんなに楽しんでほしい。
Lila Ike JAPAN TOUR 2023
3/17(金) 茨城 VIBES
3/18(土) 大阪 SUNHALL <SOLD OUT>
3/19(日) 広島 MUGEN5610
3/20(月) 千葉 STAR NITE
3/21(火) 埼玉 HEARTS <SOLD OUT>
3/24(金) 熊本 NAVARO
3/25(土) 千葉 ROUTE14
3/26(日) 横浜 THE BRIDGE <SOLD OUT>
Lila Ike
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