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edhiii boiが語る、今を塗り替えるジャンルレスな音楽、濃密な第一章

Rolling Stone Japan / 2023年3月22日 20時0分

edhiii boi(Photo by Kentaro Kambe)

edhiii boiが1stアルバム『edhiii boi is here』を完成させた。edhiii boiを紹介する上で「高校1年生」であることや「ラッパー」という肩書き、「SKY-HI主宰のBMSG所属」という前置きをあまりしたくはない。とにかく聴いてみてほしい。小学生の頃からダンススタジオやラッパーのスタジオで過ごしていた彼は、今も恐ろしいほどの吸収力でセンスとスキルを磨き上げて、本人の言葉を借りると「ジャンルも年齢も関係のない音楽」を生み出そうとしている。

【写真を見る】edhiii boi撮り下ろしカット

彼自身がどういう人生観を持ってアーティストとしての道を駆け抜けていきたいのかという自己言及が確実に、でもユーモラスに、表現されている1stアルバム『edhiii boi is here』。新しいアーティスト像を確立させようとしているedhiii boiの登場を祝福したい。



―デビュー時の初インタビューから約1年が経ち、そのあいだにリリースを重ねて、大きなステージにもたくさん立たれてきたと思います。前回「日記のように曲を書く」ということ言っていて、1stアルバム『edhiii boi is here』の8曲にも1年のいろんな経験や感情、意志が出ていると思うのですが、edhiii boi(以下、edhiii)さんにとってこの1年はどんなものであったと体感してますか。

edhiii boi:とにかく長かったですね。制作、ライブ、フェスとか、丁寧に時間をかけてやることがすごく多かったので。ライブにしても何カ月も前からリハーサルを行ったり、とにかく時間を作ってやることが多かったです。アルバムも夏前には動き出していたので、「やっとここまできたなあ」という感じがします。

―それだけ一つひとつ作り込んでやってきたということですよね。そもそもedhiiiさんは制作スピードが早くて、きっと曲の破片やデモは山ほどある中で、どういう基準でこの8曲を厳選していったのでしょう。

edhiii boi:とにかく1曲1曲に集中してパワーを注ぎ込みました。今までは短い時間でどれだけ自分の曲を増やして可能性を広げられるかを考えていたのですが、今回のアルバムに関しては、時間をかけて1曲ごとに注ぎ込むことを頑張りました。夏前からは一切他のデモ曲を作らずに、とにかくこれらの曲だけ――「NO」「Forever Friend」は完成していたので、この6曲に懸けて制作をしていましたね。RECしては聴いて、ミックスしてはアレンジ入れて、みたいな感じで楽しかったです。

—リリックに関して私が思ったことでいうと、前回の取材のときは、自分を前に出した、いわゆるヒップホップ的なものはみんながやっていることだからこそあえて違うことやりたい、と言っていたけど、そういったリリックも書くようになったことで。

edhiii boi:以前インタビューしていただいたときは多分、まだedhiii boiとして曲を作っていなかったんですよね。edhiii boiという名前になって1年過ごして、意識もちょっとずつ変わってきて、ちゃんとedhiii boiとして生きて新しい人格で音楽ができるようになりました。edhiii boiを伝えていこうという意識が出てきたので、そういう意味では変わったのかもしれないです。

―少し言葉を変えると、edhiii boiとして歌いたい人生観や意志が固まりつつあるからこそ、それを堂々と歌えるようになったし、自分のことを歌ってもオリジナリティが出るという自信もついたんじゃないかなと。それはこのアルバムから感じたことで。

edhiii boi:そうかもしれないです。ライブをするのがすごく楽しみですね。edhiii boiとして作った曲を初めてできるのが楽しみです。


「edhiii boi is here」に込めた信念

―1曲ずつ聞いていければと思うのですが、まず1曲目「edhiii boi is here」。edhiiiさんは、日記的な出来事をファンタジーや空想と掛け合わせながら、曲に浮かぶ景色や感情を広げていく書き方が面白いなと思うのですが、まさにこの曲は、edhiiiさんがアーティストとしてどんな信念をもって、どんな勢いで道を切り拓いていきたいのかが、戦隊ヒーロー的な描写の中でしっかりと伝わってくるユニークな仕上がりになっていると思いました。

edhiii boi:想像力を働かせられる歌詞を作りたいというがずっとあって。想像できるけど実際には絶対にない、みたいな歌詞を入れたかったので、何個か面白いところが作れたのかな。”深夜0時から開始始まる人生ゲーム”とか、結構気に入ってます。完成してからもずっと自分で聴いています。今日来るときも聴いていました。これを作っている時期は90年代ロックとか、昔の音楽を掘って聴いていたりした時期で。KMさんからいただいたビートを聴いたときに他の曲もロックで揃えても面白いかなと思ったんですけど、ジャンルがバラバラなものを入れたほうがアルバムとしては面白いのかなと思っていろんな曲を混ぜました。



―edhiiiさんのベースにあるのはヒップホップだと思うんですけど、どういうふうにヒップホップと向き合っているからこそサウンドが異なる8曲を作りたいと思ったのだといえますか。

edhiii boi:ぶっちゃけ、ヒップホップをまったく今考えてなかったですね。

―あ、へえ!

edhiii boi:このアルバムを考えているときにヒップホップ意識はまったくなく。ジャンルをなくしたくて。

―なるほど!

edhiii boi:そうなんですよね。「edhiii boi is here」はヒップホップオルタナティブロックみたいな感じだし、「不思議な国のアリス」はハイパーポップみたいな感じもあり。本当にジャンルのない曲を作りたかったんです。ヒップホップ意識がありそうなものでいうと、「NO」くらいじゃないですかね。

―それこそラップに縛られる必要もないし。

edhiii boi:そうですね。「edhiii boi is here」を作ってるときはバンドに憧れていた時期だったんですよね。この曲が決まる前から「バンドしたいな」と思ってて、日高さん(SKY-HI)にもちょっと言ったりしてたんですけど(笑)。そういうときにちょうどKMさんとやれることが決まったので、じゃあもうKMさんに叶えてもらうしかないなと思ってこれを作って。本当は7分ぐらいのギターソロを作りたかったんですけど、さすがにちょっと違うかなと思って(笑)。

―ぜひライブバージョンではやってください(笑)。ラップのフロウに関しても崩しているようなところがあるし、たとえば「宇宙」はヒップホップやラップだけでもなく、かといってもちろんオーソドックスなバラードにはなってないし。

edhiii boi:そうですね。「宇宙」は特に、ジャンルは関係ないよね、というのを出せましたね。この時期、ポスト・マローンとかも好きなので、歌いたくて入れました。

―なるほどなあ。SKY-HIさんのインタビュー(Rolling Stone Japan 2月号掲載)で憧れや理想のひとりとしてヤングブラッドの名前が挙がっていて、Novel Coreさんにとってもそうだと思うんですけど。

edhiii boi :僕も出しづらくなってきました(笑)。

―かぶるのが嫌いなedhiiiさんにとってはそうですよね(笑)。でもやっぱりああいうスタイルが今の時代、かっこいいですよね。

edhiii boi :そうなんですよね。今日もピンクの靴下履いてきたんですけど(笑)。時代を生きていない感じがすごくかっこいいんですよね。令和を生きてない感じが。令和なんて日本にしかないですが(笑)。あの感じがかっこいいんですよね。

―とは言っても、edhiiiさんとしてはやっぱり誰も発想しないことをやり遂げたいという気持ちが強いんじゃないですか。

edhiii boi:そうですね、誰もやってなさそうなことをやりたいですね。たとえばSUSHI BOYSさんの「死んだら骨」という曲が、MVもすごく好きで。「不思議な国のアリス」とか、「死んだら骨」を聴いてインスピレーションもらいました。dodoさんとかもそうなんですけど、とにかく人と被らないことをやっている人が本当に大好きです。


Photo by Kentaro Kambe


この時期にしか書けなかったこと

―最も他人とかぶらないものとは自分自身の生き様であるからこそ、さっきも言ったように、このアルバムにはedhiiiさんの人生観がこぼれ落ちていることが興味深くて。たとえば3曲目「Only God Knows」は、”楽して生きる生き方とか無いから/残酷なんだこの世界は/もしかしたら生まれる前に/全て決まってた道/単なる神のゲームだとしてもいい”というリリックにドキッとしました。

edhiii boi:”ウイルス”とかコロナ禍のことではあるんですけど、”楽して生きる生き方”というのは別にコロナとかではなく、単純にそういう生き方はないなと思って。どんな職業にしても、楽をしては何もできないよねって。”生まれる前に全て決まってた道”とかは、小さい頃から少しミステリアスな子だったのかもしれないんですけど、そういうことをすごく考えていました。ずっと誰かに見られてるとか、高い空から誰かに見られてて「操られてるんじゃないかな」とか。小さい頃からずっとそういうことを考えていたので、単純に思ったことを歌詞に書いてますね。



―一言で言ってしまえば、人生簡単にはうまくいかない、という考えがこのアルバムにはたびたび滲み出ていますよね。

edhiii boi:そうですね。この時期少し気持ちが落ち込んでいたので(笑)。「edhiii boi is here」が書けなくて気持ちがイライラしていて、この時期は他の曲を作らないと決めていたのでストレスを曲で解消できなくて。今までストレスは曲を作って解消していたんですけど、それができないので溜め込んじゃってイライラしていて。コロナウイルスの状況にしてもそうだし、動きづらかったりしたことをかたどって書いたという感じですね。

―「自分はここに収まらないぜ」という野心みたいなものが曲やステージ上の佇まいから見える気がして、それもedhiii boiの迫力になっていると思っていて。「Only God Knows」のフックはライブやフェスの光景が浮かんできますが、この1年、しんどかったことや悔しい想いをしたこともありました?

edhiii boi:ありましたね。夏とか結構大変でした。”笑った 叫んだ 殴った また転んだ 泣いた バカにした 歌詞にして 歌った”も、去年のことを言ってるかな。楽しいことも嬉しいこともあったし、でも失敗もしたし。そう思うと「NO」とか懐かしいなあ。

―「NO」は今の自分とは全然違う感じがします?

edhiii boi:全然違います。なんか、恥ずかしいですね。元気に生きてる中学生っていう感じです(笑)。



—でもこれはこれでいい味がありますよね。

edhiii boi :日高さん本当にありがとうございます、という感じです。「Forever Friend」もそうで、この時期にしか書けなかったことを形にして残してくださったのはめちゃくちゃ嬉しいことですね。「ハタチとかになって自分の曲を聴いたときに思い出せるように残しておこう」って日高さんに言われて、そのときは「恥ずかしくて聴かないよ」と思っていたんですけど、「こういうことを感じていたんだろうなあ、懐かしいなあ」と思ったりして。当時は自分の中で大きな問題だったことを、今は「全然小さいことじゃん、そんなこと気にしなくてよくない?」と思うこともあったり。歌の力かもしれないけど。



―その時々の自分を歌で残せるって素晴らしいことですよね。

edhiii boi:素晴らしいことだと思います。

―前回のインタビューでは上京後、「エレベーターが逆」とか「自転車買った」とかそういう日常的なことを書きたいと言っていたけど、「TOKYO」ではしっかりとかましてきましたよね。

edhiii boi:そのチャリ、売っちゃいましたね(笑)

―そうなんだ(笑)。

edhiii boi:これは東京に上京してすぐに書いた曲だと思います。歌詞の中の”あいつが言ってた 人生は一回”というのは、YOSHIくん――直接的に面識があったわけじゃないんですけど……。

—YOSHIさんはedhiiiさんにとって憧れの人でした?

edhiii boi:いや、もう、絶対に会いたいなと思っている方の1人でした。ちょうど「TOKYO」を作っているときにニュースで知って、その日にYOSHIくんへの思いを長文でメモに残してこの曲にはYOSHIくんのことを入れたいなって。



―edhiii boiとして歌うべきトピックが色々あったからこそ堂々と自分を出す音楽を作るべきタイミングだったんだなと思うし、「edhiii boi第一章」をこのアルバムに濃く刻んでいますよね。

edhiii boi:ありがとうございます。このアルバム、面白いなあ。


Photo by Kentaro Kambe


歌い方を変えている理由

―そんなアルバムを締めくくる「Flower」も、ポップパンク的なギターイントロから始まるけどリズムやフロウ、声がユニークで、温かさの中でもしっかりと自分を表明するもので。

edhiii boi:聴いている人に好きに想像してもらいたいのであんまり言いたくはないんですけど、”君”というのは全部過去の自分のことを言っているんです。もう今までの自分とは”最後のさよなら”――これはedhiii boiという名前が決まったことで、「edhiii boi」という気持ちだけで作るから、最後のさよならをするという意味。”君が持っている色のついたその鉛筆で””つまらない日常に色とコントラストを”というのは、もともと持っていた夢のことで。もともとやりたいことが多かったんですよね。そのときのことを思って、edhiii boiになって悩んでることもいろんな発想力とかで塗り替えてあの頃を思い出させてよ、みたいなことを言っています。結構好きですね、この曲。歌ってて楽しいです。Kosuke(Crane)さんと出会えたのも大きかったですね。



―前回のインタビューで「近い歳の子に聴いていただけたら嬉しい」という言葉もありましたけど、この曲は特に同世代に対して「一緒に上がっていこう」みたいな想いもありますか?

edhiii boi:まだその実感はないかもしれないですね。年齢って本当に関係ないなと思っています。Kosukeさんにしても友達にしても、みんな年齢バラバラで、みんなで好きなことやっていこう、みたいなスタンスでいます。

―このアルバムは8曲それぞれボーカルスタイルが異なるし、1曲の中でも多彩な声を使い分けていますが、この1枚を作る中で自身のボーカルスタイルや声色についてはどういう意識がありました?

edhiii boi:僕、G-DRAGONが一番好きで。G-DRAGONって曲によって全然歌い方が違うんですよ。あと、アーティストになりたいって言い始めたときからずっと、母親から「じゃあ曲を作る度に歌い方を変えてみたら?」「まっすぐやってるのもかっこいいけど、曲によってその人のキャラクターに入り込むくらいやった方が面白いと思うよ」と言われて。そこからいろんな歌い方で歌うようになりました。レコーディングするときにブースに入っていろいろやってみて、「あ、この歌い方面白いかも」って発見したり、「じゃあこの曲はこう歌おうか」みたいなことを意識しています。自分の中で1番、2番目くらいに大事にしないとなと意識していることです。あとライブによっても歌い方を変えてますね。

―あともうひとつアルバム全体について聞くと、クレジットを見るとKosukeさん、KMさんと、あともうひとり、ネオンジェネシスせきちゃんの名前が多くありますよね。

edhiii boi:「Flower」、「edhiii boi is here」以外の曲は全部タイプビートから作っていて、ネオンジェネシスせきちゃんさんに打ち直しをお願いしています。「TOKYO」に関しては、せきちゃんさんにビートを打ち直ししていただいてからドラムの音色を変えたり、自分で作ったキックの音色を使ったり、その作業もすごく楽しいです。「不思議な国のアリス」も、女の子が「イェイ!」みたいに言ってる声はもともと男の人の低い声だったんですよ。それをSpliceというソフトで拾ってきて、ピッチエフェクターで音程を上げて歪ませて入れました。そういう音の制作の部分でも楽しかったです。

―そういった細かい遊びの音が散りばめられているのもこのアルバムの面白さだと思いました。

edhiii boi:もし次アルバムを出す時は今回のアルバムとは全然違うことをやりたいです。

―それがedhiii boiですよね。自分がやりたいことも変わり続けるし、誰も発想しないことをやり続ける。このアルバムをもって、今年はどういう活動がしたいですか?

edhiii boi:ライブがしたいですね。もっと歌いたいし、ファンの人に聴いてもらいたいですし、いろんな年齢層の方に聴いてもらいたいです。

【関連記事】edhiii boiが語る、ラップとの出会い、SKY-HIの導き、音楽への愛情

<INFORMATION>


1st album
『edhiii boi is here』
edhiii boi
BMSG
発売中
https://bmsgv.lnk.to/eb_is_here

1. edhiii boi is here
2. 不思議な国のアリス3. Only God Knows4. TOKYO
5. NO
6. 宇宙(ソラ)
7. Forever Friend
8. Flower

初回生産限定盤:CD + BD
品番:POCS-23912
価格:3,850円(税込), 3,500円(税抜)

通常盤:CD品番:POCS-23031
価格:2,200円(税込), 2,000円(税抜)
 
◆初回盤BD収録内容:2022年4月27日(水)Amazon Music Studio Tokyoにて行ったAmazon Music BREAKTHROUGH JAPAN Liveのライブ映像 + Music Video 「NO」「Forever Friend」(トータル約45分収録予定)



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