TAKUROが語る、コロナ禍で生まれたGLAY16枚目のアルバム『FREEDOM ONLY』
Rolling Stone Japan / 2023年3月28日 20時0分
日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2023年2月はGLAYのTAKUROを1カ月間に渡り特集していく。
FM COCOLO J-POP LEGEND FORUM 案内人・田家秀樹です。今流れているのは去年の12月14日に発売になりましたGLAYのTAKURO さんの3枚目のソロアルバム『The Sound Of Life』の1曲目「Sound of Rain」です。今月の前テーマはこの曲です。
関連記事:GLAY・TAKUROがスティーヴ・ルカサーと対面「音楽の世界で自分たちらしくあるために」
今月2023年2月の特集は、GLAYのTAKUROさん。GLAY のデビューは1994年、来年が30周年。平成の音楽シーンのど真ん中を駆け抜け、歴史に残る数々の記録を打ち立てたモンスターバンドのリーダー、そしてギタリスト。人々に愛される名曲の数々を産んだ希代のソングライターであります。1971年生まれ、昭和世代ですね。今51歳、今年52歳です。
田家:今週は2021年、令和3年10月に発売になったGLAYの16枚目のオリジナルアルバム『FREEDOM ONLY』について伺っていこうと思います。先週の『NO DEMOCRACY』と今週の『FREEDOM ONLY』は密接な繋がりのあるアルバムのようにも思っていましたけど。
TAKURO:音楽的な意味で言うと、その時々のいい曲をって感じなんですけど、気持ち的には同じ時代の空気の上で出来ている気がしますね。
田家:2019年10月に『NO DEMOCRACY』が出て、2021年10月に『FREEDOM ONLY』が出た。わずか2年ですもんね。わずかになるのかな?
TAKURO:このぐらいのキャリアのバンドで2年おきっていうのは早い方じゃないですかね? 毎年シングルを出すとか、やる気があって仕方がないもんね。今、曲作りをやめても、これを世に出さなくていつ出すの?って気持ちの曲がアルバム10枚分ぐらいありますよ。その時々の時代の空気をちょっと付け加えるぐらいで、ぜひ皆さんにお聞かせしたいっていう曲。今年52歳で、GLAYがどれぐらいまでやれるかわからないけど、せめて今あるあいつらだけは世に出してあげたい気はしますね。
田家:今あるものを出しているだけで何年も経っちゃうくらい曲数があると。
TAKURO:ずっとアルバムのことを考えてます。『FREEDOM ONLY』をリリースした瞬間から、次のアルバムのことを考えていますね。
田家:『NO DEMOCRACY』はTAKUROさんが言葉にこだわったアルバムって事前情報があって。『FREEDOM ONLY』はTAKUROさんの優しさみたいなものをどう伝えたいかメンバーが考えたって話がありましたね。
TAKURO:コロナが始まり、コンサートで声を出しちゃいけないとか規制が多い中、最初はもっとロックでシンガロングとコールアンドレスポンスできるアルバムを作ろうと思ったんだけど、今これを出したところで切ないし、むなしいよねって。だったら家で聴いて楽しめる優しいアルバムがいいなと思った。もしかしたら、優しくて、寄り添えるような曲がGLAYの音楽を知ってる人たちに今必要なのかもしれないと思って。
田家:アルバムの話を伺う前に、出たばかりの新曲を聞いていただこうと思います。2月15日発売、「THE GHOST」。
田家:61枚目のシングル『HC 2023 episode 1 - THE GHOST/限界突破-』。両A面シングルですね。「限界突破」はTERUさんの詞曲で、「THE GHOST」は曲がJIROさんで、詞がTAKUROさん。
TAKURO:黄金コンビです(笑)。
田家:今までのGLAYのシングルとはかなり違いますね。
TAKURO:かなり違いますね。定期的に曲出しをするんですけど、メンバーが1曲ずつ出す「G4シリーズ」っていう企画があって、今回episode 1、episode 2ということで春と秋にわかれちゃうんですけど4曲並べたとき、この曲の可能性が光り輝いていて。レコーディングを進めていくなかで、ギターのアレンジの件でHISASHIにロスから電話をしたんですよ。仕事話が終わって雑談になったんですけど、JIROが優勝だよねってHISASHIが言ったんです。あの曲はやられたよねって。メロディアスであるとかトレンドであるとか、そういうことじゃなくて、GLAYの4人の中でやられた!って瞬間が何年かに1回あるんですけど、やられた。JIROさん、またGLAYの新しい扉を開けていただきありがとうございましたっていう。キャリア30年近くをなぞるでもなく、手ぐせでもないサウンドを出せるって幸せだなと思いながらギターを弾いていました。
田家:これも新しいGLAYの感じがしましたけどね。
TAKURO:そうですね。コロナ禍におけるレコーディング環境の変化が本当に吉と出たパターンですね。僕自身もロサンゼルスに引っ越していましたし、リモートレコーディング的なものを本格的に始めようというときのコロナ禍だったから。スタジオでの顔つき合わせて、ああでもないこうでもないっていうのが駄目な時期で。GLAYのいいところは、そんな中でもやれることをやればいいんじゃないか、今まで通りの必勝パターンのレコーディングじゃなくても面白味を見つけていこうってところで。それこそTERUがぜひやりたいクリエイターさんいるからってことで、Tomi Yoくんに直接DMを送って快諾をいただいて。そこからデータのやり取りで曲ができていくっていう。僕はずっとコンピュータが苦手だったので、スタジオに集まってじゃーんが好きだったけど、おかげで自分の作曲家としての幅も広がった気もするし、Tomi Yoくんのアレンジは本当に素晴らしくて、まさに伝えたいことを音で表現してくれた。そういうような経緯で、そこからリモートでの交流が加速していって 『FREEDOM ONLY』に至るっていう、
田家:リモートだからできたアルバムでもあった。そこに緊急事態宣言っていう世の中の動きみたいなものも反映されているんでしょう。
TAKURO:そうですね。その時代がどれぐらい続くかわからなかったので、もし3年だったらこうしよう、5年だったら、10年だったらってずっと考え続ける日々でしたね。
田家:3年5年10年という、あるタームが頭にあった。
TAKURO:僕らが東京に出てきた理由は、GLAYでライブを続けたいから職業にするしかないっていうことで函館から出てきので。バンドが一番楽しめるのはやっぱりライブでしたから、それができない状況の中で、3年できなかったらこういった活動をしなきゃな、5年だったらなるべくメンバーのモチベーションが下がらないようにファンの人たちにGLAYの音楽を届けられるようにって。そういうのをずっと考えている時期でしたよね。
田家:でも10年っていうタームはすごいですね。
TAKURO:アルバムが2年に1回だとして、ツアーは長くやりたいし。そうすると5年なんてあっという間ですよね。
田家:なるほどね。そういう時間のターム、サイクルで動いてるバンドなんだってことを改めて確認する、そんなタイミングにもなったってことですね。
TAKURO:今までもおぼろげながらしてきたプランを、コロナに入ってからよりじっくり駒を進めていくことを意識しながら活動するようになっていますね。
田家:そういうアルバムの中に、こういう曲が入っておりました。アルバム『FREEDOM ONLY』の2曲目「Hypersonic」。
田家:平成21年10月発売、GLAYのアルバム『FREEDOM ONLY』の2曲目「Hypersonic」。これは思いがけなかったですね。
TAKURO:思いがけないのは歌詞ですよね?
田家:はい。これは最初からこういう詞だったんですか?
TAKURO:そうですね。デモの段階で仮歌詞を乗せるんですけど、ある種バンドとしての余裕みたいなものもそうだし、GLAYしかできない、こういう曲が少なくなったなって。みんな真面目で破綻がないなって。誰にもう共感されないような歌詞を堂々と歌う人、出てこないかなとずっと思って。それこそ「うっせぇわ」とか聞いたときに、おお!すげえ歌詞だな、でっかい十字架背負うね、いいぞって。
田家:なるほどね。
TAKURO:GLAYを結成したときからずっとある種、詞の部分においてはこういった十字架を背負う曲をやるべきだと思っていて。当たり障りない曲はやりたくない。いろんな意味でね。誰かを傷つけるかもしれないという覚悟でもって、自分も同じだけ傷ついて初めて作品と言えるんじゃないかとはずっと思っています。誰も傷つけないって、何も言ってないみたいなところだし、人が一歩踏み出せば足の裏にはいろんな小動物とか昆虫とかいるわけでしょって。デビュー当時にこの曲を出したらまだ違うと思うんだけど、2021年にGLAYが出したとき、圧倒的好意で受け取れられるだろうとわかっていましたね。
田家:みんな喜んでくれるだろうと。
TAKURO:喜んで楽しんでくれるだろうなって。ただ、TERUのキャラクターだったり、バンドの関係性が30年近くかけて浸透している上でのジョークってとっても難しくて。その国の背景とか、その人の普段の立ち振る舞いによってジョークにもなりうるし、ただの悪口にもなったり、ただの冷やかしにもなったりなんだけれども、俺はやっぱり曲とバンドはある意味一心同体であってほしいなと思うし、曲だけが売れても駄目だし、バンドだけが有名で曲が知られないのは駄目だし。そういうような思いでやっているので、こういった実験性のあることはこれからもやっていきたいですよね。
田家:この詞を見たときにTERUさんは何ておっしゃったんですか?
TAKURO:何にも言わない。ああ懐かしいねって。デモ自体は10年15年ぐらい前にあったので、サビで歌われてる小橋の習性みたいなものは、そのまま。それを汗かきながらシャウトするっていう、すごいメンタルだなと思ったけど。自分の名字をね。嫌がらないし。
田家:GLAYのボーカリストに徹しているということでもある。
TAKURO:まず他のバンドだったら嫌だよこんなのって思うだろうし、恥ずかしいし、くだらないよって言われるかもしれないし。くだらないことをでっかい音でやるのがいいんじゃないっていう。その気持ちはメンバーもわかってくれたのか、特に反対もされず。
田家:アルバム4曲目の「FRIED GREEN TOMATOES」も20年前の曲だったんでしょ。
TAKURO:そうですね。でも、GLAYにおいて、いつできたかってことは、あまり重要ではないと思います。デビュー当時から5年前の曲、3年前の曲、平気で入れていて。むしろその曲が出るタイミングの方を重視していたりするかな。
田家:なるほどね。膨大にあるわけですもんね。
TAKURO:膨大にある中で、いまメンバーが楽しめるもの、メンバーが思いっきりやれるもの、GLAYとしてのメッセージがちゃんと伝わるものというチョイスの仕方をするので。いつできたってことは僕らは問題にしないですね。
田家:コロナという世の中がどうだったのかと見える曲がアルバムの3曲目に入っていました。「Winter Moon Winter Stars」。
田家:これは歌とギターのデモテープをHISASHIさんに上京してきたときみたいにアレンジしてくれって言われたって話がありました。
TAKURO:いや、もっとシンプルに「LUNA SEAみたいにしてくれ」って(笑)。当時上京してきてHISASHIの家にも入り浸りで、今日はBY-SEXUALのシングル発売するから買いに行こうとか、LUNA SEAのライブビデオが手に入ったぜみたいな感じで2人で見てかっこいいなって言ってたんですよ。GLAY風にアレンジすればGLAYっぽさって出ちゃうんだけど、たまにコピーバンドみたいなことをやりたくなる。INORANくんとSUGIZOさんのアンサンブルの感じとか、今LUNA SEAのコピーバンドをやるわけにいかないから、でもLUNA SEAっぽい感じでやったら燃えるという。なんだろうね(笑)。
田家:何でしょうね(笑)。
TAKURO:やっぱりバンドマンなんでしょうね。バンドキッズというか。まさにジョン・レノンが復活第一発目の『ダブル・ファンタジー』の中でエルヴィスの真似しながら「スターティング・オーヴァー」を歌うみたいな、あの気持ちがスッゴイよくわかる。アーティストと呼ばれたり、表現者と呼ばれたり、いろんな言い方はあるけれど、どこまで行っても演奏するのが楽しくて集まっているような4人なので。かつて自分たちが燃えた誰々風のスタイルをたまにやるとバンドが楽しいというか締まるというか。
田家:みんなその頃の自分たちになって同じように楽しむ。
TAKURO:これ誰々っぽいね、このフレーズって、ゲラゲラ笑いながらやるっていう。それを許すバンドであってほしいなと思う。
田家:そういう中に「山手通り12月の追憶 テレビからはコロナのニュースばかり」って、とっても時事的な歌詞が入ったりしてて、これは意図的に使われてるわけでしょ。
TAKURO:曲の中で、永遠みたいなものを歌うのもいいと思うんですけど、その時代が過ぎたら古くなるものに興味があって。例えば99年のアルバムの中に入ってる「Savile Row 〜サヴィル ロウ 3番地〜」の「ケイタイは便利だね」とか。その究極が「ポケベルが鳴らなくて」って曲だと思うんだけど、今は言わないけど、こんな時期あったねっていう。そういうある意味、思い入れを再生するような曲もすごく好きで。だから「受話器を握り締め」とかわざと入れたりします。高校の頃、彼女と話すんだったら線がついた電話、受話器を持つしかなかったんで。そういう時代性は積極的に入れる方だと思います、僕は。
田家:『NO DEMOCRACY』はそういうアルバムだったわけですもんね。
TAKURO:これからも多分、昭和なら昭和、平成なら平成を歌うとき、そこのアイテムみたいなものは入れていきたいなと思っています。
田家:この曲はどうだったんでしょうか? アルバムの9曲目、「Holy Knight」。
田家:さっきの「BAD APPLE」とこの「Holy Knight」に、コロナ禍のある種の不条理感みたいなものがあるような気がしましたけどね。
TAKURO:この曲と「BAD APPLE」である種の音響としてのGLAY、音の定位とか登場する楽器たちが際立っている。この曲に関しては割と舞台を書いたような気持ちですね。僕は舞台が好きで、何だったら音楽のコンサートよりも芝居を観に行くことが多いんです。シェイクスピアがあったり、様々な国の様々な時代の舞台がある中で、イメージを膨らませていって書くと歌詞もわりと口上っていうのかな。愛だ恋だとかじゃない歌詞になりますね。
田家:そうやって思い浮かべた具体的な情景ってのがあったんですか?
TAKURO:ありますね。どの国もあるんですけど、まるで安いカラオケの映像のような、そういうのが頭の中にあって。それを音にしていくことが多いんですけど、この曲はさっき言ったような、いわゆる音響にこだわるGLAYとしての作品になっていますね。
田家:これはロスに移ったり暮らしたりしてることとは関係ありそうですか?
TAKURO:いや、そういう意味で言うと「Satellite of love」って曲があるんですけど、それと同時期に作ってて。ツアー先で作ってたんですよ。ちょうど押井守監督と組んでアニメーションを作ることでいろいろ曲作りをHISASHIとしてたんですね。その時に長岡(新潟県長岡市)でこの曲のデモを作っていて。押井守監督のやつだから、仮タイトルが「長岡守」だったんです。
田家:あははは。
TAKURO:「長岡守」としてしばらくいじって。先ほど言ったようにコロナになり、今出すチャンスのような気がしたので、改めてこれを引っ張り出して。YOW-ROWくんというHISASHIがやりたかったクリエイターの人たちと組んで作り上げました。
田家:この曲の前に8曲目、スペイン語の「Tiny Soldier」って曲があって、あれとは何の繋がりもないんですね。
TAKURO:繋がりはないです。むしろ「Tiny Soldier」の方がロスのいわゆるラジオでかかる曲、あと子供たちが流す曲ですね。GLAYが今まで出してこなかった重低音だけで十分に間が持つっていうか。もう顔の濃い俳優のような、絵いっぱいに顔が広がれば10秒何も言わなくても持つみたいな。イメージ的な話ですけど、「Tiny Soldier」に関しては完全にロスで聞いた音楽体験が色濃く出てますね。
田家:スペイン語というのも。
TAKURO:やっぱ向こうはテレビをつけると、英語かスペイン語かに変えられるぐらいの文化なので。こういう言葉の響きも面白いなと。
田家:2021年10月に出たアルバム『FREEDOM ONLY』11曲目「祝祭」。「FREEDOM ONLY」って歌詞が出てきます。
TAKURO:そうですね。これはアルバムの中でクライマックスというか。自分の心の奥に踏み組み込んだ曲で、すごく気に入ってます。
田家:これの入り口は何だったんですか。
TAKURO:すごく不思議な話ですけど、この後にまた身近な戦争という意味ではウクライナへの軍事侵攻があって、民主主義が改めて問われるようなるちょっと前に『NO DEMOCRACY』が出たりして不思議なリンクを感じるんですけど、ある意味、人間の愚かさに失望もしていたし、でも心のどこかで希望を見いだしてもいて。人に期待している自分もいて。どうして人は最後の最後に間違えちゃうかなって。自分もそうですよ。最後の最後にくだした決断がそれまで全部ひっくり返しちゃう間違った判断だってこともあるんですけど、自戒の意味を込めて曲になりました。
田家:例えば世界のどこかにこういう出来事があってみたいなニュースが入り口になったりしてたんですか。香港のデモがあったりとか。
TAKURO:強力なイメージが頭の中にあって。今もそうですけどウクライナの街が破壊されて、憎しみを憎しみで返すという選択をする人もいるだろうけど、そうでなく自分が大人になったときにはこんな愚かなことをしないぞって心に決める少年少女がいっぱいいるだろうなって。そういう希望を託しての楽曲ですね。
田家:『FREEDOM ONLY』という言葉は最初にあったんですか? それとも書いているうちに出てきた?
TAKURO:カーペンターズの「青春の輝き」の中に、「自由というものは、あなたがさよならを言う手助けにしかならないよ」があって、自由を手に入れたら、そっからは責任もついてくるし、決断もしなければいけないし、そこには出会いと別れが繰り返される。20代30代の頃に書いてきた自由、それこそ尾崎豊が歌ってきた自由とはまた違う解釈を40代に入ってしだした。自分が当たり前だと思っていたものをもう1回再検証するような作業が、大人になればなるほど繰り返されていきますね。
田家:「全ての兵士が武器を置くとき」っていうのが、果たして来るんだろうかって思いながらこの曲を聞くと違った今の歌に聞こえますもんね。間違えないで欲しいなと思いながら2023年が始まりましたが、アルバム『FREEDOM ONLY』はこういう曲で終わっておりました。これが先週も今週も先々週も話をしてきたことですね。原点がここにあったりするんではないかということでお聞きいただきます、「桜めぐり」。
田家:これはTERUさんのデモテープがそのままという話は、アルバムをお聴きになった方はどなたもご存知だと思うんですけど。
TAKURO:まさに加藤和彦と山本コウタローとBUCK-TICKのフックが入った、自分の趣味満載の曲です。よく許したなと思います、他のメンバーも。ロックバンドを目指す人たちでこんな曲いやなんじゃないきっと。ロックバンドに在籍してるメンバーであればあるほど。
田家:バンドメンバーがTAKUROさんのやりたいこと、気持ちを形にしようって納得して提案したという話がありました。
TAKURO:ありがたい。本当に。もう足向けて眠れないですよね。
田家:TERUさんは『FREEDOM ONLY』について、GLAYの自分史だって言われていました。
TAKURO:コロナ禍になって一つ発見があって。今まで作ってきた自分たちのアルバムも、デモテープ曲のかけらもずっと聞いてたんですよ。その中でこんな曲があったのか、今この曲やりたいモードだなとか、GLAYができてから16歳から今に至るまでの作品ないしは作品のかけらを見直して作り上げたのが『FREEDOM ONLY』。僕にとっても心の振り幅で言ったら「Hypersonic」を作った25とか、「FRIED GREEN TOMATOES」の35とか、そういう長い歴史の中で作り上げたから広くて深いですね。このアルバムに関して僕らにとって。
田家:さっきの「祝祭」があって、今回の『The Sound Of Life』があって、 「Pray for Ukraine」に繋がっていくという言い方もできるんでしょうかね。
TAKURO:うーん。生きていて、日々社会との繋がりを意識すればするほど、何かしら予言めいたもの、予知めいたものはあるんでしょうね。そっちの方に生きてきたとも言えるし。僕が音楽を通じて何を伝えたいのかが年々明確になって行くなと。その反面、片想いの切なさみたいな曲もまた作ってみたいなという気持ちに今なってます。次のアルバムは、あまりテーマを広げないでやっていきたいなと思うんです。特に令和になってからの5年間はすごく心の旅をしていたなと。世界を見て回ってそれを曲にしてきたなって感じはしますね。
田家:来週は、まもなく始まりますツアーのことなども伺うと思います。来週もよろしくお願いします。
TAKURO:よろしくおねがいします。
流れているのは、この番組の後テーマ竹内まりやさんの「静かな伝説」です。『FREEDOM ONLY』というアルバムタイトルを見たとき、いいタイトルだなと思ったんですね。2019年が令和元年で、様々な国の若者たちの出来事の中で最も衝撃的だったのが香港でした。2019年から2020年。自由を求める学生と、自由を認めない・自由を許さない権力のぶつかり合いがあって、結局、香港から自由を求める若者たちが一掃されてしまって、2021年香港から自由という言葉が抹殺されましたね。香港だけではなくミャンマーでもそういう民主化と軍事政権という血生臭い争いが始まって、何の武器も持たない人のところに軍隊が爆弾を落としていく言葉にできないような光景がずっと繰り広げられた。
そして、2022年、ついに国と国との衝突が始まってしまったわけですね。ウクライナ戦争。TAKUROさんが先週の『NO DEMOCRACY』の話をしたときに言っていましたけど、今地球上で自由と非自由という国を比べると、自由を選べない国の方が増えているのが現実でもあるわけで、21世紀が始まったときには思ってもいなかったような時代になっている中で、改めてGLAYの作品を聴いてみようと思ったりもしました。そして彼はどんなことを思いながら作品を作っていたのか。来週はGLAYのこれまでと、これからをちょっと駆け足でお聞きしていこうと思います。
<INFORMATION>
田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp
「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
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