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伊東健人が語った自分にとっての幸せ、ソロアーティストとして始まりのEP『華灯』

Rolling Stone Japan / 2023年4月1日 12時0分

伊東健人

声優・アーティストとして活躍する伊東健人のトークイベント『伊東健人「華灯」発売記念スペシャルトークセッション』が、2023年3月27日(月)代官山 蔦屋書店3号館2階 SHARE LOUNGEにて行われた。

このイベントは、昨年2022年9月21日に川谷絵音プロデュースの楽曲「真夜中のラブ」でソロアーティストとしてデビューした伊東健人の1st EP『華灯』が2023年2月15日にリリースされたことを記念して行われたもの。会場には30分以上前から入場列を作った50名の熱心なファンが集合して主役の登場を待ちわびていた。

20時になり、アナウンスに呼びこまれて客席後方から伊東が登場すると、大きな拍手で迎えられた。「こんばんは、伊東健人です。今日はよろしくお願いします! みなさん、開場の10分前ぐらいには全員集まってくれていたと聞きました。イベントが始まってから「すいません」って駆け込んでくる方がいらっしゃるからと思ったんですけど、みなさん類友ですね。僕の人間性が正直だからでしょうか(笑)。素晴らしいです、本当にありがとうございます」

早々に集まってくれたことを感謝すると、代官山蔦屋について触れつつ挨拶。

「オープン当初からたまに来る場所だったんですけど、東京にたまにあるおしゃれな蔦屋って、多分ここが最初なんじゃないかな? こういう場所でイベントができて嬉しいです。よろしくお願いします。今日は『華灯』関連で最後のリリースイベントになると思いますので、色々話尽くしたいと思います」

東京出身の伊東曰く、代官山がこんなにお洒落タウンとしてもてはやされるようになったのは、最近の印象なんだとか。「渋谷は谷で、代官山は山だからアップダウンが多いんです。だからなんだって話ですけど(笑)。今日、一番遠いところから来たぞという自信のある人は?(手が上がらず)いないね(笑)。逆に一番近いぞっていう人は?(「中目黒」と声を上げる人)近っ(笑)」。お客さんに向けての活発なコミュニケーションに気さくな人柄が伺える。

ソロアーティストとして初となるCD『華灯』は、自分の名刺がわりになる作品だという。じつは歌手の人よりも仕事で歌っているペースは早く、週1回、多いときには2日に1回はレコーディングを行っているという。とはいえ「ソロ活動はストレスなくやれているのが強み。まったく無理していないので、みなさんに安心して楽しんでもらえると思います」と、音楽活動に対する姿勢を伝えた。

『華灯』に収録されている4曲「sugar」「陽だまり」「AMBER」「真夜中のラブ」は、1曲ずつそれぞれの時間帯を表している。川谷絵音が楽曲プロデュースした「真夜中のラブ」は、「華灯」のテーマにつながるとは思っていなかったが、2曲目に作った「AMBER」が無意識に夕方の曲になったため、せっかくだから時間帯を絡めて作ってみようということで生まれた曲が「sugar」と「陽だまり」だという。「自分にとっての幸せってなんだろう、 幸せってどういう気持ちなのかな?って考えたのが「sugar」。幸せっていうものを考えたときに見える景色が「陽だまり」。最初から狙って作っていたわけじゃないんですけれども、結果的には同じテーマから2曲が出来上がって、そういう話になっています」と、それぞれの曲について説明した。なぜ「幸せ」をテーマに曲を作ろうと思ったのかというと、友人間での"幸せゲーム"がきっかけなんだとか。「友人5人で「幸せって何だと思う?」ってグルグル話をまわし合っていたとき中で自分が「それって良いテーマだな」って思ったのもを曲にしたんです」

そのときの5人の名前には曲ができたことを報告したものの、有名人なので「SpecialThanks」のクレジットは載せなかったそうで、「自分が50歳ぐらいになったら言うかもしれない(笑)」との告白に客席から笑いが起きた。



続いて、話題は『華灯』にまつわるトピックへ。

ー「sugar」の主人公はなぜに女性になったのか。

「AMBER」は男性的な視点で作ったので、「sugar」はどちらかというと、女性的な視点で作ったら面白いかなと思いました。ただ、曲の主人公を自分にしたくないというのが基本的にあるんです。だから正直女性っていう限定もしたくないなんて最初は思ったんだけど、今回はアニメーションPVを作ることになったので、じゃあこの主人公は完全に女性に振り切ろうって、そこで100パーセントが決まった記憶があります。これから先もいろんな視点の曲が作れたらいいなと思っていて、「陽だまり」だったら、男女ではなくて人間ですらなくていいかもしれないっていう視点で作りましたし、そういう意外な面白い視点があったら、今後も積極的にそういうところに目を向けて曲を作っていきたいなっていうことですね。でも、最終的に作詞して歌うのは自分だから、CDをリリースすればするほど、あと今はリリースイベントのときにしかやっていないけど、ライブとかを重ねれば重ねるほど主人公が自分っぽくなっちゃったら、そこからどれぐらい抗えるかというか。 だから、次はもう思いっきり伊東健人を聴いてくれる人の視点に立った曲を作ったらどうだろうとかね。そんなことを考えてます。その視点みたいなところは、今後の注目してほしいポイントです。



ー友人との間での"幸せゲーム"によって生まれた「sugar」「陽だまり」。"幸せゲーム"の正解は?

正解…いやわからん(笑)。正解があったら、もうそれは死ぬ時じゃないかなっていうね。どこかのラジオで、「 死ぬ時に目の前に孫がいたら幸せなんじゃないか」みたいな話をしたような気がする。子供じゃなくて孫っていうところがポイントです。子どもができる以上に、人生設計をしっかり積み重ねていった先じゃないと、孫に看取ってもらうことはできないから、みたいなことをどこかで言った気がする。いやわかりません、教えてください(笑)。(お客さんに向かって)幸せって何かの答えがわかっているっていうすごい人います?(場内爆笑)いないよね。はい、わかりません。教えてください! えー次行きます(笑)。



ー川谷絵音さん、zakbeeさんなど、他者と共作する上で感じたメリット・デメリットは?

これは良い質問だ、スタッフ(笑)。『華灯』という、いろんな人と一緒に曲を作って非常に贅沢な円盤が出来上がりました。まず、自分自身の活動のために曲を作るっていうのは、今回が初めての経験だったので、やっぱり時間かかりましたし「向いてねえな」っていつも思います。それは、良い曲、歌詞が書けるとかじゃなくて、自分の中ではスピードなんですね。自分が書いた詞に対して、「ああ、自分めっちゃ良い歌詞書くじゃん」って思えるまでのスピードが早い人がこういうことに向いていると思っていて。川谷絵音さんとかもそうですけど、世に出ている作詞、家の人、作曲家の人ってリリースするペースが凄まじいんですよ。いや、何個バンド掛け持ちしてどんなペースで曲作ってんだっていう。それって、やっぱり自分が作った曲を許せるまでのスピードがすごく早いからだと思うんですよね。これね、最近TAKU INOUEさんと話す機会があって聞いたんですよ。「自分が作った曲ってどれぐらいしたら良い曲だなって思えます?」って。そしたら、「いや、俺自分で作ったら良い曲だなとしか思ったことないですよ」って言っていて。これがやっぱり向いてる人の1つの条件なんだな、作家として抜けている人の条件なんだなって。それ聞いた瞬間に、やっぱり俺は作詞家・作曲家にはなろうとしなくてよかったって思いました。そんな人たちと一緒に共作する上で感じたメリットは、自分で作詞する作曲するっていう世界の殻を破れる、そこから外の文化が入ってくるっていうことですね。自分的には才能の限界っていうのをいつも感じながら生きているから、それを破るものが欲しいんですよね。それができるっていうのが、大きなメリットの1つかなって思いますね。

デメリットで言うと、スピードっていうのはやっぱり出ないということですね。他のアーティストさんに目を向けると、例えばアーティストがいて、横にコンポーザーがいて、2人で組んでやるみたいな方もいらっしゃるじゃないですか? だから曲づくりのスピードはそういう人たちには叶わないですね。何日か家に籠らせてくださいっていう期間が設けられれば、きっとスピードとしてはすごく上がるんでしょうけど、自分としてはやっぱりそれは本位ではないから。それができたら毎月リリースみたいなこともやれたら面白いなと思うし、それも自分的には全然ストレスなくできるので。それこそ、中島ヨシキとやっているユニットのUMakeでそれに近いこともやっていますし、 全然できなくはないけど。伊東健人の活動に関しては、自分では思いつかないようなことを思いついてくれる人とやりたいなと、そんなことを思っております」



イベントは後半に差し掛かり、Q&Aコーナーへ。伊東自ら、抽選BOXから座席番号が書かれた紙をピックアップして、お客さんからの質問に答えた。最初に引き当てられた番号のお客さんの質問は、「「陽だまり」の歌詞で、”こうかざした手”と”交差した時計”と言うフレーズがめちゃくちゃ好きなんですけど、そういった歌詞はどのタイミングで使られたんですか?」というもの。伊東は、「作詞の仕方として、思いついた時に携帯のメールにバーって書いているんですけど、その中でリズム的に合わせたら面白いんじゃないかなというフレーズがその2つだったのかな。 ”交差した時計”が先にあって、”こうかざした手”との間の文章を埋めるみたいな、そういう作業ですね。こういう歌詞はだいたいこじつけです(笑)。これとこれを組み合わせて文章を繋げたら風景っぽい描写になるとか。このメロディを合わせれば曲になるんじゃないかなみたいな。こじつけが20%。後の80%は確かな理由があって出来上がってます。そういったワードのチョイスです」と作詞方法を明かしつつ、「たしかにあそこの韻の踏み方は気持ちいい」と、ファンからの声で気付かされることもあったようだ。



続いて、「先ほどのお話で、いろんな視点で取り組みたいということだったんですが、個人的に伊東さんはいろんな立場に立つのがすごく上手だなと思っています。そういう考え方や歌の作り方で注意してることがあったら教えていただきたいです」との質問が寄せられた。それに対して伊東は、「主人公を自分にしたくないなっていうのも、結局は自己評価の低さだったりとかに起因するところもあるし、いろんな視点で見たら面白いんじゃないかってのは、普段の仕事が与えてくれるものなのかなって思いますね。声優っていうお仕事は、自分以外のいろんなものにならなくてはいけないですから、人間じゃないものもやるし、なんだったら、多分無機物もやったことはありますし(笑)。そういった経験から来るものはやっぱりあるんだろうなって思います。いろんな視点で世界を見ることって面白いし、それをみんなに味わってもらいたいから、今はこういうことを言っているのかなっていう思います」と、声優としての経験がアーティスト活動をする上での発想に繋がっていることを伺わせるものだった。

秋葉原で2月に開催されていた1st EP『華灯』発売記念写真展に訪れて「花弁が散っている中で伊東さんが寝そべっている写真が良かった」というお客さんの声には、「あれは渋谷で、衆人環視のもとで撮影しました(笑)。夜の渋谷で、本当にランダムに街の明かりを取り込んで「良い光あれ!」って思いながら撮っていたので、どれもお気に入りです。でも最終的には ジャケットに使われた写真がお気に入りになるのかな。業界内からもCDのジャケットを見てくれた人からすごい反応もらったんですよ」と撮影秘話を披露した。



緩やかなムードでときおりお客さんに呼び掛けながらトークを進める伊東。マスクをつけての声出しはOKということで、客席からも伊東の問いかけに応える声や笑い声が上がり、盛りあがっていた。イベント終盤では、20歳を迎えてレベルアップのため読書をしたいという方に伊坂幸太郎の小説や「ハリーポッター」シリーズをおすすめしたり、番号が当たったものの何にも質問を用意していなかったという参加者からの「こういう何も考えてなかったときに、どう切り抜けたら良いですか?」というユニークな切り返しに対して笑いつつ、「何を話そうって文章を考えちゃうと身動きできなくなっちゃうから、話の核だけ考えておけば良いと思います」と真面目に回答。最後は「好きなポケモンは?」との和む質問に「ゼニガメです!」と答えて、Q&Aコーナーは終了となった。

「『華灯』は、アーティスト・伊東健人の始まりと言いますか、名刺代わりの作品になりました。今のところ、次にみなさんの元に届けられる情報はまだないですけれども、色々作ってますし、レコーディングもしてたりしてなかったりします(笑)。またうれしい発表はいくつかできるんじゃないかなと思いますので、その時はまた情報に目を向けてくれると嬉しいです。またみなさんの前に出て、こうやって話ができる機会もきっとあると思いますので、またそのときにお会いしましょう。今日はありがとうございました!」

そう感謝を伝えて、1時間近くに渡ってファンと楽しく盛り上がったトークイベントを締めくくった。


<リリース情報>



伊東健人
1st EP『華灯』
発売中
https://A-Sketch-Inc.lnk.to/KentIto_Hanabi

初回限定盤(CD+DVD)価格:3500円(税込)
通常盤(CD)価格:2500円(税込)
=収録内容=
CD
1. sugar
2. 陽だまり
3. AMBER
4. 真夜中のラブ

DVD *初回限定盤のみ
「真夜中のラブ」-Music Video-
「真夜中のラブ」-Making Video-
「華灯」-Special Documentary-

Official Site:https://ito-kent.com

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