追悼・坂本龍一 YMO、映画音楽、ヒップホップへの影響…その軌跡を振り返る
Rolling Stone Japan / 2023年4月3日 1時25分
3月28日に亡くなった坂本龍一の訃報は、海外メディアでも大きく報じられている。米ローリングストーン誌が故人のキャリアを振り返った追悼記事を翻訳した。
日本におけるエレクトロニック・ミュージックの先駆的バンド、イエロー・マジック・オーケストラのキーボーディストであり、映画『ラストエンペラー』『レヴェナント:蘇えりし者』などのオスカー受賞作曲家である坂本龍一が71歳で死去した。
坂本のTwitterは4月2日の夜に彼の死を発表し、彼が3月28日に亡くなったことを伝えた。死因は明らかにされていないが、坂本は過去10年間に2種類のがんと闘い、2021年にステージ4の直腸がんと診断されたことを発表している。
pic.twitter.com/mYLMEN6HrZ — ryuichi sakamoto (@ryuichisakamoto) April 2, 2023
坂本が設立したレコードレーベル、Commmonsは以下のように報告している。
「2020年6月に見つかった癌の治療を受けながらも、体調の良い日は自宅内のスタジオで創作活動をつづけ、最期まで音楽と共にある日々でした。これまで坂本の活動を応援してくださったファンのみなさま、関係者のみなさま、そして病気治癒を目指し最善を尽くしてくださった日米の医療従事者のみなさまに、あらためて深く御礼申し上げます。坂本自身の強い遺志により、葬儀は近親者のみで済ませております」
Commmonsはさらに、「Ars longa, vita brevis.(芸術は長く、人生は短し)」という坂本が好んだ一節を紹介している。
坂本の死は、YMOのバンドメイトだった高橋幸宏が誤嚥性肺炎のため70歳で亡くなってから、わずか2カ月余りの出来事だった。
pic.twitter.com/Fq0hRyp5F4 — commmons (@commmons) April 2, 2023
YMO、映画音楽、ヒップホップへの影響
1978年、当時クラシック出身のセッションミュージシャンだった坂本は、ドラマー/シンガーの高橋、ベーシスト/キーボード/ボーカリストの細野晴臣と共にYMOを結成。シンセ、シーケンサー、ドラムマシンを駆使し、80年代を席巻するエレクトロニック・ミュージックの先駆者となった。
YMOの画期的な作品群と同様に、坂本のソロアルバムもまた、80年代初頭にヒップホップ・サウンドを形成したアーティストたちを魅了した。特に1980年のアルバム『B-2 Unit』に収録された「Riot in Lagos」は、アフリカ・バンバータやマントロニックスの音楽にも影響を与えている。
常に実験的であった坂本は、80年代前半にダブのレジェンドであるデニス・ボーヴェル、元ジャパンのデヴィッド・シルヴァンらとコラボレーションを行い、デヴィッド・ボウイ主演の83年の戦争映画『戦場のメリークリスマス』で映画デビューを果たした。この映画で坂本は自身初のスコアを手がけ、BAFTA(英国アカデミー賞)の作曲賞を受賞した。
Were saddened to hear that Ryuichi Sakamoto, the BAFTA-winning composer of film scores including The Revenant, The Last Emperor and Merry Christmas, Mr Lawrence, has died. Our thoughts are with his family. — BAFTA (@BAFTA) April 2, 2023
多作家だった坂本は、1978年のアルバム『千のナイフ』を皮切りとしたソロ活動、映画作曲家としての飛躍、頻繁なコラボレーションを両立させていた。1987年、ベルナルド・ベルトルッチ監督は、坂本とデヴィッド・バーン、中国の作曲家である蘇聡の3人に、大作映画『ラストエンペラー』の音楽を依頼。この作品で彼らは、アカデミー賞の作曲賞、グラミー賞の最優秀オリジナル映画音楽アルバム賞などを受賞している。
その後、坂本はベルトルッチ監督と『シェルタリング・スカイ』『リトル・ブッダ』で再びタッグを組でいるほか、ブライアン・デ・パルマ監督の『スネーク・アイズ』『ファム・ファタール』とのコラボレーションを実現させ、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督は2015年の映画『レヴェナント: 蘇えりし者』のスコアで、アルヴァ・ノト、ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)と共に坂本を起用した。
近年の坂本は、Netflixドラマ『ブラック・ミラー』や、ジョン・デヴィッド・ワシントン主演の2021年のスリラー映画『ベケット』などの音楽を手がけていた。
長かった闘病生活
2014年、坂本は中咽頭がんと診断されたことを発表。音楽活動を1年間休止して闘病に専念することにした。
「すべてのプロジェクトをキャンセルすることにしました。すべてね。少しばかりキャンセルしても音楽を続けられそうにもない。だから全部キャンセルすることにしたんです」。坂本は2015年、米ローリングストーン誌にそう語っている。「何もしない時間がたっぷりできてしまいました。たぶん、20代前半の学生時代の頃から40年ぶりくらいですね。(中略)もちろん、治療が何よりも大事ですし、人生で一番過酷で肉体的に辛い時間を過ごしました。ほとんど食べられなかったり、自分の唾液を飲み込めなくなるくらいでした」
休養後、復帰した坂本は『レヴェナント』のスコアを手がけ、2017年リリースのアルバム『async』も高く評価された。しかし、2020年には新たに直腸がんが発見される。「これからは”ガンと生きる”ことになります。もう少しだけ音楽を作りたいと思っていますので、みなさまに見守っていただけたら幸いです」と、彼は2021年にコメントしている。
今年初め、坂本は最後のアルバムとなる『12』をリリースした。同作を引っさげて行われたストリーミングコンサートの後、坂本は「この形式での演奏を見ていただくのは、これが最後になるかもしれない」と語り、最後のライブになる可能性が高いことを示唆していた。
From Rolling Stone US.
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