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Lucky Kilimanjaro熊木幸丸とフレデリック三原康司が語る、踊らせる「歌詞」の作り方

Rolling Stone Japan / 2023年4月5日 19時30分

左から、Lucky Kilimanjaro熊木幸丸とフレデリック三原康司(Photo by Mitsuru Nishimura)

「踊る」をテーマに、ダンスミュージックやR&Bなどを混ぜ合わせたサウンドを肉体的に鳴らすLucky Kilimanjaroと、ブラックミュージックの要素を入れつつもロックバンドとして昇華するフレデリック。それぞれのバンドで楽曲制作を担う熊木幸丸と三原康司に、ダンスミュージックにおける歌詞の考え方や生み出し方について話してもらった。年齢が一つ違いでほぼ同世代という2人の共通点が多く見える貴重な対談となった。

【写真を見る】取材中の熊木幸丸(Lucky Kilimanjaro)と三原康司 (フレデリック)

自分の変化を追求していくアルバムになった (熊木)

熊木 三原さんとこういう形で対談させていただくことが初めてで。取材は緊張しないタイプなんですけど、割と緊張しています(笑)。

三原 僕もしゃべりたかったことが色々あったので、すごく嬉しいです。

ーまずは、熊木さんがフレデリックの最新ミニアルバム『優游涵泳回遊録』を聴いた感想から聞かせていただけますか?

熊木 ロックバンドの皮を被っているんですけど、サウンドデザインがディスコマシーンというか、どの言葉にもミラーボールが見える。どう作っているのか不思議に思うぐらいロックっぽいんだけどロックっぽくない構造で完成されていて。元からフレデリックはそういう要素があるバンドだと思っているんですけど、今作はよりテクノ感やオールド感と、今のフレデリックのメロディ感だったりパワフルな存在感だったりが融合していて。本当に誰にも出せなかったサウンドで、改めてすごいバンドだなと思いました。

三原 今作はより自分たちの個性みたいな部分を磨き上げた部分があって。フレデリックの個性を担っているのは僕だから託したいとメンバーが思っている部分もあったみたいで、会話を重ねた結果、個性が出まくりな作品になっていきましたね。



ー康司さんは、Lucky Kilimanjaroの新作アルバム『Kimochy Season』を聴いてどう思われましたか。

三原 「踊る」って言葉に対する追求がサウンドだけじゃなく、意思や気持ちにも全部載っているなと思いました。僕らもそこを言葉でもサウンドでも意識するバンドなので共通点を感じたし、同時にLucky Kilimanjaroにしか出せない追求の仕方がすごく出ていて、めちゃくちゃ曲を書くポテンシャルを感じて素晴らしいなと思いました。



ー熊木さんは、今作をどういうテーマをもって作られたんでしょう。

熊木 世界情勢の変化だったり、自身も結婚したり変化が多くて。バンドとしてもメジャーデビューの最初のツアーからコロナ禍で、ずっと変化の最中に置かれている感覚があって。そういう変化って実は一時的なものじゃなく、持続し続けるものなんだと捉えるようになってきたんです。日本人は特に変化を嫌う国民性があるというか。ある種、自分のポジション、キャラクター、アイデンティティを1つの場所に固定して安心感を求める部分がある。そんな中で、日本のポップスにおいて変化していくことの気持ちよさや流動性の気持ちよさをどう組み立てるか。それを説教的な形ではなく、気持ちいいダンスミュージックとしてどう届けるかを全体のコンセプトとして掲げて作り上げました。自身も、自分のキャラクターみたいな部分にこだわってしまう瞬間はありますが、そこを超えてようやく自分の面白さだったり新しい自分が発見できたり、もっと面白くなると思っていて。自分の変化に対してもどんどん追求していくアルバムになったのかなと思っています。


あえてちょっとふざけた歌詞も書きます (三原)

ー今回の対談では歌詞をテーマにお話を伺いたいんですけど、両者ともに「踊る」とか「ダンス」は大きな共通項ですよね。まずは踊ることへの考え方を聞かせてください。

熊木 僕は音楽で自然に体が動いて踊るのが昔から本当に好きで。日本でも例えばYOUR SONG IS GOODのように非常にいいダンス要素を持っているバンドと、それに共鳴しているお客さんがいたり、海外でも音楽フェスに行ってみんなで踊って楽しいって瞬間があったりして。それこそ、ダンスミュージックを知らない人にも、もっとカジュアルな形で踊るって行為の楽しさ、気持ちよさ、泣ける要素とかも全部詰め込んで伝えて人生ワクワクしたいよねというところが僕の「踊る」という言葉に込められている感じですね。肉体的に踊る瞬間の気持ち・感情をそのままお客さんが出力するのが僕の理想にある。それをUKのダンスミュージックだったりR&B、ヒップポップをごちゃ混ぜにして出せないかという部分が僕の原点にあると思います。

三原 うちはメンバーが元々ダンスミュージックや昔のブラックミュージックがすごく好きで。ジャンル問わず踊れて気持ちいい音楽が好きなんです。なにより踊るって天気が悪くても楽しいじゃないですか?(笑)

一同 (笑)

三原 そういう無敵で完璧なポジティブな気がしていて。本能的にみんなが求めちゃうというか。音を鳴らしてみんなを楽しませるって表現をやっている以上は、自分たちも感じたことのないダンスミュージックを作って、フロアでみんなで踊りたい。言葉が違うだけで、熊木さんと同じ解釈ですね。

熊木 踊るということに対して、能動的な気持ちよさだったり、自分をアップリフトしてくれる感覚がちゃんとあって。サウンドを聴いても、歌詞の置き方や譜割を見ても、ここは絶対気持ちいいからやっているな、というのがすごくわかりますし、そこでシナジーというか、僕らと似ている感覚を感じることが多いです。

ーダンスミュージックにおける歌詞や言葉に関してはどう考えていますか。

熊木 康司さんの言葉の選び方って、すごくおもしろいなと思って。すごく享楽的な選び方なんですけど、ちゃんと頭に入ってくるタイプの言葉を使っている。

三原 俺もLucky Kilimanjaroの楽曲を聴いた時、1つの言葉の中にもいろいろな色を持っていると感じました。今回のアルバムも、根本的なLucky Kilimanjaroとしての柱はずっとあるけど、表現やサウンドに対しての変化があるからこそ歌詞の聞こえ方の変化もしていっているんだろうなと感じて。メロディーとか楽器、サウンド感も全部込みで1つの音楽って印象が強いから、すごく美しいし、歌詞と切り離せない感じがするんです。そういう意味で、歌詞にすごくこだわっているのを感じました。

熊木 そういう要素はすごく大事にしているので嬉しいです。自分の声と歌詞、サウンド、コンセプトがすっと入ってくる上で踊れるようにしたくて。

三原 フレデリックも、サウンドと歌詞が一緒に出てくることが多いです。

熊木 曲を聴いていて、その感じがすごくしました。

三原 そのリズムに当てはまるワードが自分の中で絶対的にあって。それを組み立てていく感じ。僕自身、歌詞の中で大事にしていることの1つはリズムの気持ちよさで。それがなかったら歌詞が入ってこないから、あえて単調というか、ちょっとふざけた歌詞も書きます。それが逆に伝わりやすかったり、みんなの耳に残りやすかったりすることがある。そういうこだわりは考えたりしています。音色とか全部やっているんでしょ?

熊木 基本的なことはほぼ全てやっています。ほぼプロデューサーみたいな。

三原 サウンドもめっちゃいいですよね。Boiler Roomとか毎日チェックしている感じがサウンドからして。最近のダンスミュージックをすごい勉強というか、ほんまに好きなんやなってことが音からわかる。

熊木 最近は特にUKのダンスミュージックが好きで聴いていて。そこからすごく影響を受けています。フレデリックは、編曲段階からある程度もう組みあがっているんですか?

三原 曲それぞれって感じですね。デモのまま完成するような楽曲もあれば、完全に別曲みたいになる曲もあったりするので。そこはメンバーと話しながら作り上げていきます。

熊木 歌詞がテーマで音ネタの話をするのもあれですけど、フレデリックはシンセメンバーがいないのにすべての音がシンセ的なんですよね。シンセから逆算してギターにしたような考え方がされていたり、アルペジエーターの使い方だったり、ドラムマシーンのサウンドの選び方、クラップの重ね方とかも、ダンスミュージックの人が作るロックだなと思って。

三原 多分、そこらへんの話、めっちゃ長なります(笑)。

熊木 そう、僕もしたかったです(笑)。


熊木幸丸(Photo by Mitsuru Nishimura)
Lucky Kilimanjaroのボーカル。「世界中の毎日をおどらせる」 をテーマに、ギターの松崎浩二、ベースの山浦聖司、シンセサイザーの大瀧真央、ドラムの柴田昌輝、パーカッションのラミとともにバンド活動中。2018年、EP『HUG』でメジャーデビュー。作詞作曲を手がける熊木の多作ぶりの他、作品ごとにクリエイティビティとキャパシティを広げていく豊かな音楽性が特徴。4thアルバム『Kimochy Season』を4月5日にリリースした。



お酒の曲を書く時はお酒を飲む (熊木)

ー歌詞の話を深掘りしていくと、最終的な歌詞の完成に至るまでのプロセスがどうなってるのかお伺いしたいです。

熊木 僕はサウンドコンセプトに対してこの言葉がいいというざっくりしたものはありますが、トーンに合うためにどういう言い回しにしようかという核になる部分がすごく大事で。例えば「一筋差す」という曲だったら、「一筋差す」と連呼する場所。ここは外せない。「Heat」という曲だったら「寒いなぁ」と連呼するところとか。絶対外せない言葉をどんどん固めていって、コラージュみたいに入れたり外したりひたすらやっています。





ーLucky Kilimanjaroは同じ言葉の反復を多用されますが、その理由というのは?

熊木 気持ちいいからですね(笑)。今回フレデリックでも「どう考えたってもう」とか「もう考えなくていい」という反復がやばくて。

三原 海外のダンスミュージックでも、いわゆるサビと言われるパートで同じ言葉をリフレインさせることが多くて。そういう聴かせ方の追求をお互いし続けているなとすごく感じますね。

熊木 連続性があるからこそ、みんながより言葉に対して入っていける。1回目聴いた時より2回目の方がその言葉が入っていき、最後には言葉の中にいちゃうみたいな状態。それを制作段階から想像していて。だからこそライブでみんなが盛り上がれて気持ちよくなると思っているんですよね。多分そこの快楽への追求が似ているんじゃないかな。

三原 僕もなんとなくメロを歌ったとき、自分の中で口気持ちよかったり、聴感上いいなって部分をピックアップしていく作業をしていて。今回のミニアルバムで言うと、全国ツアーの旅をテーマにして楽曲を作っていったんです。なのでツアーの移動中にしか歌詞を書かないと決めていて。「MYSTERY JOURNEY」は、飛行機の移動時に全部書こうと決めて、北海道とか九州に行く時の移動時に書きました。「midnight creative drive」は、ライブが終わってから次のライブハウスに移動する車の中で書こうと決めて書いて。環境を変えながら、自分も楽しくなるように書いていました。





ー書く環境が変わると、出てくる歌詞も変わるものですか?

三原  いや、もう全然変わりますね。

熊木 純粋に朝書くのと、夜書くのでも全然歌詞が違います。あと、僕はお酒の曲を書く時はお酒を飲むんですけど、その方が無茶な歌詞が書けるというか。シラフだったらダサいと思ってやらないような歌詞を書けたりする。それを使うか使わないかは、またシラフの自分が判断するんですけど(笑)。自分の心の状態がそのまま歌詞として出るので、すごくいいですね。僕も移動時間に書いてみようかな。

三原 違う言葉、違う言い回しとか絶対出てくるのでいいと思いますよ。

ー熊木さんが、今作で気持ちよくハマったなという言葉があれば教えてください。

熊木 今回は、自分の声のアーティキュレーションの方法も含め、どうやって音楽として言葉を成立させるかを非常に大事にしていて。「咲まう」という曲に関しては、歌詞とサウンド表現のバランスだったり、言葉でも時間の経過を味わってもらうってところで今までの自分と違う書き方をしました。結婚したのもありますけど、今まで書かなかった歌詞や書ききれなかった歌詞だなと思っていて。書いて満足がいったのは、この歌詞ですね。

ー「咲まう」って、なかなか聞いたことのない言葉ですよね。

熊木 仮歌では、絵文字を意味する「エモート」という単語だったんですけど、エモートはすこし固いなと思っていて。歌詞が持っている言葉のトーンと、サウンドのトーンを綺麗に合わせられたらと、ひらがなで検索したら「咲まう」という言葉が出てきたんです。ちょっと運命的な出会いをしていますね。「咲まう」という単語自体から発せられる優しい匂いだったり、温かい空気や丸さ、そういうものがサウンドと一緒に完成した感じがして嬉しかったです。

三原 自分の中でスッキリ歌詞が書けたのは、あーいいよなと思いますよね。そこにたどり着けない時もあるので。それだけ力を込めて作った楽曲なんだなっていうのはすごく思いましたし、俺もこのアルバムの中でこの曲が1番好きです。今の話聞けて嬉しかった。

ー「千鳥足でゆけ」は、さっきおっしゃっていたみたいに、お酒を飲んで書いた曲?

熊木 この曲はトラックを作る時からお酒を飲んでいましたし、ミックスチェックもお酒を飲みながら徹底して作りました(笑)。

三原 絶対一緒に飲みに行きたいじゃん(笑)。俺もお酒好きやから。

熊木 リアルから出てくる詩があると思うんです。もしかしたら音楽製品としてのクオリティが変わってしまうかもしれないけど、むしろそこにクオリティだったり面白さがあると思っているので、大事にしている部分ではありますね。



ー康司さんも、お酒を飲んで歌詞を書くことってあったりするんですか。

三原 たまにやるんですけど、僕はあまりうまくいかない(笑)。なんか、楽しくなっちゃって。だから羨ましいですね。


三原康司(Photo by Mitsuru Nishimura)
フレデリックのベース/コーラス。バンドでは作詞を担当。双子の兄、健司(ボーカル/ギター)、ギターの赤頭隆児、ドラムの高橋武とともにバンド活動中。2014年9月、ミニアルバム『oddloop』でメジャーデビュー。独特なユーモア性と幅広い音楽的背景を持ち、中毒性の高いリズムと歌詞で注目を集める。どのシーンにも属さない「オンリーワン」なバンド。2月22日に最新ミニアルバム『優游涵泳回遊録』をリリースした。



言葉が間違っていても、伝わって面白ければいいとも思う (熊木)

ーフレデリックのアルバムタイトル『優游涵泳回遊録』もあまり聞き馴染みのない言葉ですが、どう浮かんできたんですか。

三原 フレデリックに合うだろうなってワードを普段からメモするようにしていて。これは、昔からワードとしても五感としても意味合いとしても合いそうだなと思っていた言葉で、今回作るテーマにすごく合っていたから使ってみようと思ったんです。

熊木 僕も普段から言葉をメモしているんですけど、それはタイラー・ザ・クリエイターの影響で。彼も自分の単語リストみたいなものがあって、そこからいいと思ったワードを曲タイトルにしているみたいなんです。自分のやりたい表現に合わせて言葉を使っていくのはある種、言葉のサンプリングみたいな感覚というか。フレデレックにも、そういう良さを感じていて。言葉をそういう風に当てはめていくというか、まず言葉があって、それを膨らませていくような遊びの部分があって、すごく面白いですよね。

ー以前別アーティストの取材で、言葉の引き出しが多いほど解像度が高くなるから語彙力を常に磨いていると聞いたことがあるんですけど、そのあたりはどう考えますか?

熊木 僕は結構いろいろな言葉を使うんですけど、すごくシンプルでもいいと思っています。それこそ「辻」という曲は難しい言葉を一切使っていなくて。一方で、本読むのが好きなので、解像度の高い言葉、もっと意味をたくさん含んでいる言葉に惹かれる部分もあります。美しくて、そこに文脈があるような言葉がすごく好きで、そういうのを使いたくなる欲求はめちゃくちゃありますね。

ー今作では季節の移ろいもテーマになっています。季節こそ言葉の表現仕方はたくさんありますが、どのようにワードを選ばれていったんでしょう。

熊木 言葉1つで想像力を広げてくれるようなワードを選んでいます。今回季語の本を読んだんですけど化けものみたいにいい単語があって。開いちゃったなと思いました(笑)。

三原 あははは。

熊木 日本語って1つの単語に意味がちゃんと入ることができると思っています。俳句はそういうところに美しさがある。そういう技術は持っていきたいし、もっと広げていきたいなと思っています。

ーフレデリックも、初のシーズンソングとして「FEB」を書かれていますが、言葉のチョイスとか考え方においてどのように考えていますか。

三原 どの曲に対しても、その景色が見えるコード感とメロディがあって。そのコードが鳴っていたら、この言葉のニュアンスが合うみたいなことを考えて書いています。音楽って、説明があまりなくても伝わる瞬間が生み出せる気がしていて。そういう意味で、語彙力に縛られずに、もうちょっと自由な考え方は持っておきたいよなって思います。アーティストによって、いろいろなやり方があると思うし魔法みたいなことがある。言葉足らずだったり言葉自体が間違っていても、伝わって面白ければいいよなとも思います。



熊木  みんなどうやって言葉とサウンドだけで魔法をかけようかすごく考えていて。言葉の選び方とサウンドの組み合わせ方も本当に違います。そこがクリエイターとしてお互い面白いと思える部分だと思いますし、聴いてくれる人がいろいろな想像力を働かせることができる要素になっているのかなと思います。


スピード感があるけど破綻してない嫉妬しましたね (熊木)

熊木 僕は最終的に本当に気持ちいい言葉を選んでいて。それは死んでいない言葉というか、動いている言葉、意味が踊っている言葉を選んでいます。康司さんも、ある種の快楽性をすごく大事にしているのかなと思って。メロディとは別に、言葉自体が気持ちいいものを選びたい欲求はありますか?

三原 めちゃくちゃその欲求は強いです(笑)。感覚的に絶対にこれ!って選び方が自然と自分の中にあって。めっちゃ受け取ってもらえていると思って嬉しかったし、生き生きしている言葉はすごく考えています。今回はミニアルバムを制作してからリリースまで月日がそんなに経っていなくて。全国ツアーもこれからファイナルで、ツアーを回りながら考えていたのもあったから、今、本当に新鮮な言葉な感覚がしていて。

熊木  言葉が持っているスピード感ってそういうところから来ていると思うんです。ツアー中に移動しながら作ったり考えたスピード感みたいなものが入っています。そのスピード感と、フレデリックの音楽性がマッチしているのがすごい。

三原 それこそ今のバンドの姿勢とちゃんとリンクしているからこそ、言葉が生き生きしてくるとも思うし、自分たちでもその実感があるので嬉しいですね。僕からの質問なんやけど、曲数はめちゃくちゃ書いている?

熊木 僕の場合、まずワンループのセッションをするというか、取っかかりを探そうみたいなことが多いです。いくつかサウンドデザインがあって、自分の中で合ったものがくっつけばいいなと思いながらセッションしていくんです。1ループを1曲とするなら、1日5、6曲絶対に作る。これだ!って思うセッションと、これだ!と思う言葉の融合点をひたすら探している感じですね。

三原 1曲に仕上げる時の方がやっぱり時間がかかる?

熊木 僕はゼロイチを作るときが1番時間がかかりますね。1曲にするのは1日あれば作れるタイプなんですけど、ゼロイチは1週間全く進まないこともあるくらいです。

三原 じゃあ、今作ができるまですごい曲数を作って頑張ったんだね。

ー作品を作るにあたって、言葉のインプットでピンときたものや影響を受けたものがあったら教えてもらえますか?

熊木 僕は本を読むのが好きなんですけど、フェルナンド・ペソアという詩人の詩集『ポルトガルの海』を読んだら、太陽の美しさだったりをシンプルな言葉で取り出していて。そのテクニカルじゃなさが逆に超かっこいいなと感じたんです。前作『TOUGH PLAY』は、割と自分のテクニカルな部分が出たアルバムで。でも踊るという感情的な部分で、整理する前に踊るって反応が大事だよなと思うこともあって、もっと速度の速い言葉を使いたかったんです。自分の頭から出た言葉で歌って、シンプルだけどいいなと思ってできたのが「ファジーサマー」だったりするので、そこは今回の作品の歌詞の書き方のベースにちょっとあるかもしれないです。



ー今回のアルバムの歌詞を見ると、シンプルさやスピード感は腑に落ちますね。

熊木 それこそフレデリックの歌詞はすごくスピード感があって、特に今作はスピード感が出ている。僕もどうやって自分の音楽のスタイルとスピード感を合わせていくか考えた結果が、今回の作品にすごく出ています。スピード感のある言葉が感覚として吐き出されるところに、フレデリックの魅力がめちゃくちゃあって。「のってけ」連打、僕もやりたかったもん(笑)。

三原 「のってけ」連打(笑)。

熊木 スピード感があるんだけど破綻していないというか。「のってけ」のリズムにしっかり乗ってスピード感を持って歌っている。嫉妬しましたね。

三原 僕は、今回の作品を作るにあたって、ツアーでいろんなところを回って観光もしたんですけど、今まで行ったことない美術館に行ってみたり、何も考えずにフラフラ遊びに行ってみたり、そこで感じたことをそのまま歌詞にしていったのがほとんどだったので、そこの街並みだったり、その土地土地で考えさせられたことがすごく出ていると思います。歌詞を書けたのは、ライブハウツアーがあったからかなって。


Photo by Mitsuru Nishimura

ーその土地土地で思い浮かんだワードを、スマホなどにメモしたりするんですか?

三原 それもあまりしなかった気がします。「midnight creative drive」って曲の中に、”フロントガラス越しにディープに咲いたシティライト”って歌詞があって。僕はいつも、移動車の助手席に座るんですけど、フロントガラス越しに次のライブハウスのある街が見えてくるとき、高速からどんどん光が出てくるぼやけた感じがめっちゃ綺麗よなと思って。そういう言葉が出てきたりしていて。その日その日で感じたことを思い返しながらメロディになってみたいな感じです。だから、さっきの話の中にも出てきた鮮度が高いような歌詞になったんじゃないかと思います。

熊木 百聞は一見に如かずですよね。僕ももっと外に出て歌詞を書かないとダメだと思いました。そこに新しい答えだったり、自分の面白いがあると思って。もっと遊ぼうと思いました(笑)。

三原 遊び方を探索していこう(笑)。いわゆるロックバンドと言っても、いろいろな表現の方法がある。知的探求心というか、やれることってまだまだたくさんあると思うんです。

熊木 日本語でのリズムの表現がようやくスタート地点に立っていると思っていて。それぐらい日本語の語彙数とか面白さってめちゃくちゃある。まだまだ日本の音楽は掘り足りないぞと思っています。

三原 「うまい」って単語でも、上手って意味もあるし、美味しいって意味もあったりするから、表現方法の可能性は多いよね。

熊木 サウンドの表現も含めて、音楽における詩ってこんなもんじゃないはずなんですよね。もっとそういう表現を聞きたいし、自分もどんどん作っていきたいなと思いますね。



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