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マイク・シノダが語る、ソロワークスとリンキン・パーク『Meteora』20周年

Rolling Stone Japan / 2023年4月10日 19時30分

『Meteora』リリース当時のリンキン・パーク。写真左端がマイク・シノダ

マイク・シノダの新曲がリリースされた。ソロ名義となる新曲「In My Head」で、カイリー・モーグをフィーチャー。同日に全米公開となった人気映画シリーズの『スクリーム6』に使われている。『スクリーム6』にはもう1曲マイク・シノダの楽曲があって、こちらはマイクが制作・プロデュースを手がけたデミ・ロヴァートの曲「Still Alive」となっている。

【動画を見る】リンキン・パーク「Lost」ミュージックビデオ

一方、リンキン・パークの方も、2003年に発表した2ndアルバム『Meteora』の発売20周年を記念した『Meteora: 20th Anniversary Edition/メテオラ: 20周年記念盤』が4月7日にリリースされた。『Meteora』は全世界でトータル2700万枚をセールスし、グラミー賞にもノミネートされ、世界各国で数多くのプラチナムディスクを獲得したモンスター・アルバムだ。このエディションで最も注目なのは、未発表音源が収録されているところ。特に、当時ミックスまで完了していたものの、その後忘れ去られてしまったという楽曲「Lost」のクオリティの高さには驚かされる。ボーカルはもちろん故チェスター・ベニントンだ。今同じタイミングで、未来に向けたソロの新曲と、過去のレガシーである『Meteora』の20周年記念盤を発表することになったマイク・シノダに話を聞いた。

―ちょうど1年前にNFT特集でマイクにインタビューしましたが、その後、音楽とテクノロジーの融合に関してはどのように追求していますか?

マイク・シノダ 今はどちらかと言うと、精神的にもそうなんだけど、もっと純粋に音楽をやりたい感じなんだよね。もちろん今もテクノロジーには興味があるし、Web3.0の先端もAIのこともちゃんと追っかけてはいる。でも今毎日をどう過ごしてるかって言ったら、新しい曲の制作になるんだよね。自分の音楽が2023年にはどういう風に鳴っていてほしいのか。そういうことを考えてるんだ。2020年から2022年にかけては、インストゥルメンタルの音楽をたくさん制作してたし、他の人の曲作りやプロデュースをたくさん手がけていた。今は僕自身の中から生まれてくる音楽が再び楽しくなってきてるんだ。でもこれって、ちょうどこの2~3ヶ月のことなんだよ。

―ソロ名義としてリリースした新曲「In My Head」は、おそらくそういう最近の制作から生まれたものだと思いますが、映画『スクリーム6』の曲でもありますよね。『スクリーム6』を意識した部分もありますか?

マイク・シノダ この曲のトラックはすでにデモとして作っていたんだ。それがちょうど『スクリーム6』のプロデューサーから連絡があったタイミングでね。「新しい映画の曲を作らないか?」って言われた時に、僕は「もちろん」って答えたよ。『スクリーム』は大好きだからね。しかも「デミ・ロヴァートは好きか?」って聞くから、「面白いことを言うね。ちょうど来週、彼女と会うんだよ」って僕は答えて。彼女にこの話をしたら、スゴく乗ってきたんだ。『スクリーム6』の制作チームには、何曲かデモを聴かせたんだけど、「In My Head」のデモを聴いて、「この曲はヤバいね。でもこの曲ともう1曲の2曲とも映画で使うことはできないか?」って言うんだ。「もちろんだよ。夢みたいな話じゃないか」って僕は答えたよ。それで「In My Head」と、僕がプロデュースしたデミの曲「Still Alive」の2曲が使われることになったんだ。「In My Head」がどういう風に曲として形になるのかは、僕の中ではすぐにわかったし、ごく自然に進めることができた。この曲で何について歌いたいのかはすでに決めていて、それを映画と結びつけた。これはパラノイアの歌であり、決して止まらないということを歌っている。僕の個人的な経験がベースになってるんだけど、映画の主人公もストーリーの中ではパラノイアと戦っているんだ。



―「In my head, there's a million little voices saying you'll never make it」(「僕の頭の中で百万もの小さな声がささやくんだ。おまえには無理だって」)というリリックが出てきますね。

マイク・シノダ 自分がバカなことを言って、最終的に、「ああ言えば良かった」とか「あんなことはすべきじゃなかった」とか考え始めるときついよね。2020年って、そういうことに対してスゴくセンシティブな時期だったと思うんだ。僕自身もこの時期は以前にも増して自分の内面と戦っていた。それでこのリリックが生まれたんだと思う。

―映画の『スクリーム』は好きでした?

マイク・シノダ 最初の『スクリーム』のポスターって覚えてる? ドリュー・バリモアがポスターの前列に何人かと一緒に写ってるんだ。てっきり彼女が映画の主人公だと思ってたら、映画を観たら最初に殺されてしまうんだ。マジで信じられなかったよ!(笑) 主人公を殺すなんて。そういう意味でも、この映画はマジでヤバいと思ったね。

―「In My Head」のMVではAIアートを使っていますが、AIの会社、Kaiber.aiが制作に関わっていて、このKaiber.aiはリンキン・パークの「Lost」のMVにも関わっていますよね。どちらも最新テクノロジーを使っているのにノスタルジーを感じさせるところが、非常にマイクらしいと思いました。

マイク・シノダ 「Lost」のMVでは、SHIBUYA、Pplpleasr、マシェイ・カシアラが制作を担当していて、Kaiber.aiは一部で関わっている。一方、「In My Head」のMVでは、Kaiber.aiが全面的に関わっている。Kaiber.aiはデザイン/AIの会社で、いろいろなものをクリエイトしてるんだ。彼らとはWeb3.0の話をしてる時に知り合って、他がまだ話ばかりで形になってなかった時に、先を行って新しいことをやってたところだ。彼らは単なるブロックチェーンではなく、デザイン・スタジオであり、テクノロジー・ディベロッパーなんだ。

―音楽だけでなく、映像でもマイクはジャンルや時代の境界線を壊していると思いました。クリエイティブというものを総合的にとらえていますよね。

マイク・シノダ 今日もちょうどこのことを他の人と話してたよ。自分が大好きな異なるものを結びつける時って、やり方は本当にいろいろあるんだ。リンキン・パークは最初のバンド名がHybrid Theoryだったくらいで、自分の大好きなものをブレンドしてハイブリッドなものにするというアイデアがあったから、デザインのことも学んだし、音楽のことも学んだし、他の模倣もしたけど、幸運にも恵まれ、自分たちも一生懸命やったから、結果として自分たちならではのものが形になったと思う。自分が大好きなものを積み重ねたものだけど、自分でもちゃんとそこに本質的なものを加えることができた。食べ物で例えると、いろいろな食材を組み合わせたら、結果、サラダに見えるかもしれないし、スープに見えるかもしれないよね。でも、赤いスープが出来たら、そこに何が入ってるのかはわからない。リンキン・パークでは、いろんな要素が一つになったものをやりたい時もあれば、いろんな要素がバラバラに見えるようにやりたい時もあった。これは見え方の話になるんだけど。


行方不明だった幻の一曲

―2021年にリンキン・パークの『Hybrid Theory』20周年記念の時に、100 Gecsによる「One Step Closer」のリアニメーション・バージョンを発表しましたよね。リンキン・パークは結成当初からジャンルの境界線を壊してきましたが、今なお最先端で境界線を壊していると思わされました。

マイク・シノダ あれをやるには勇気も必要だったよ。100 Gecsのディランとローラには、あの曲が発表される前に話をしたんだ。警告と言ってもいいかな。「あのリミックスは大好きだよ。素晴らしい仕事をしてくれたと思う。だけどほとんどの人は100 Gecsのことを知らないだろうし、このリミックスを聴いたらショックを受けるだろうし、嫌うんじゃないかな。ネットで叩かれることもあると思う。だけど大したことじゃないって言いたいね。多くの新しいファンが100 Gecsを好きになるだろうし、これは何よりも重要なことだけど、僕が気に入ってるし、君たちが気に入ってるし、僕たちはこれを最高だと思ってる。ただ、みんなの期待のずいぶん先を行きすぎてるとは思うね。みんながマクドナルドのチーズバーガーを食べたいのに、僕たちはウニバーガーを提供してるわけだから」(笑)。



―『Meteora』の20周年記念盤を出すに当たって、未発表曲「Lost」を含め、過去の自分たちの楽曲を改めて聴き直したり、埋もれていた音源を発掘したりしていますが、こうした作業はマイクにとってどのようなプロセスになりましたか?

マイク・シノダ 「Lost」に関しては、シンプルに言うと、この曲はLostしていた(見つからなくなっていた)曲なんだ。もっと詳しく言うと、『Meteora』を制作してた時、約25曲のデモがあって、ある曲はビートだけだったり、ある曲はボーカルも含めてすべて完成してたりと、曲ごとの完成度はバラバラだったんだ。そこから曲を絞って、最終的に12曲をアルバムに収録することになった時、「Lost」は13番目の曲だったんだ。ミックスもマスタリングも終えて完成してたんだけど、アルバムにはすでに「Numb」という曲があって、似たような曲を2曲入れたくなかったから、「Lost」をアルバムから外すことにしたんだ。ただ、シングルのB面に入れたり、サウンドトラックに入れたりとかは考えてたんだけど、実現することはなかったんだ。その後、僕たちは『Collision Course』を出して、Fort Minor、Dead by Sunriseをやって、次のアルバム『Minutes to Midnight』を出すことになるんだけど、その頃には昔のデモを使うような後ろ向きのことはやりたくなかったんだよね。



―「Lost」はどのように発掘したんですか?

マイク・シノダ 「Lost」がどこかに存在するのはわかってたんだ。それで、当時関わってたレーベル、マネージメント、友人、スタッフ全員に、音源、写真、映像など使えるものがあるかどうか聞いてみたんだ。みんなが協力してくれたおかげで、けっこう良いものが集まったと思うよ。『Meteora』の20周年記念盤のパッケージには、デモ音源などの未発表音源も入ってるんだけど、正直僕が驚いたのは、「Fighting Myself」と「More The Victim」の2曲(輸入盤のみで発売するスーパー・デラックス・ボックスとデジタルでのみ聴ける楽曲)で、、2曲とも未完成のままだと思ってたんだ。それである日、マネージメントから、「覚えてないかもしれないけど、これをチェックしてみて」って連絡があって。送られてきたデモを聴いたら、チェスターの歌が入ってたんだよ。僕は「これは何? このボーカルは覚えてない」ってなったね。





―20年間忘れていた曲を聴いた時、どう思いましたか?

マイク・シノダ 衝撃だったね。スゴくクールだと思ったよ。こんな素晴らしい曲が残ってたことがうれしかったし、昔の写真を見つけた時みたいに、ノスタルジックで良い気持ちになれたんだ。

―20年前、リンキン・パークはデビュー・アルバム『Hybrid Theory』で大成功をして、世界中をツアーして忙しい日々を送っていたと思います。期待とプレッシャーの中、2作目となる『Meteora』はどのようなアルバムを目指して制作を始めたのですか?

マイク・シノダ まず、『Hybrid Theory』は制作がスゴく大変なアルバムだった。それはクリエイティブな部分というよりも、ポリティクスの話だ。僕たちは新人バンドで、周りにはいろんな意見を持つ人たちがいて、ある人はバンドをバラバラにしてしまいたいと思ってたんだ。あるA&Rからは、ラップを入れるべきじゃないなんて言われたよ。僕は「それって全くポイントがズレてないか? スタイルをブレンドしなくなったら、僕たちの存在意義がなくなってしまう」って言ったよ。嫌なことがたくさんあったし、スゴくストレスの溜まる大変な時期だった。でも、『Hybrid Theory』が世に出ることで、僕たちの正しさは証明されたよ。それで僕たちはこのまま自分たちのビジョンを追求しようってなったんだ。2ndアルバムを作るに当たっては、新たな領域、新たなアイデアにチャレンジしようと思った。それでデモを作り始めて、プロデューサーを誰にするかってなった時に、前作同様ドン・ギルモアを起用しようという話になった。僕たちとしては彼とは一緒にやりたくなかったんだけどね。それは『Hybrid Theory』の制作中、ドンは周囲のノイズから僕たちを守ってくれなかったからなんだ。もちろん彼は良い人間だし、理由もわかるんだ。それで、ドンとミーティングをやることになったわけだけど、最初にドンがこう言ったんだ。「みんな、1stアルバムが大変だったのはわかる。制作中にいろいろ嫌なこともあったと思う。でもそれは君たちの責任ではなく、僕の責任なんだ。申し訳なかったと思うよ。もしもう一度アルバムを一緒に作れるのなら、今度は正しいやり方で、最高のレコードを、1stよりも良いレコードを、みんなが楽しんで作って、最高の結果を出すことを約束したい」って。そのミーティングはみんなが「ドンと一緒にやるなんてあり得ない」って言って終わったんだけど、僕は「ドンとやらなきゃいけない気がする」って言ったんだよね(笑)。結果として、同じチームで再び制作に入って、全員がクリエイティブに向けてハッピーになれて、自分たちのやってることのパワーを好きになれたことは大きかった。アーティストとしてもさらに良いところに行けたし、気持ち的にもさらにハッピーになれたから。

―まずは環境が変わったことが大きかったわけですね。

マイク・シノダ 最高の曲を作ること、最高のサウンドを出すことに集中できたからね。くだならいことで心配する代わりに、サウンド、アレンジ、リリックにおいて、どうしたら自分たちの最高を出せるのか、そこだけに集中することができたんだ。制作期間も3ヶ月と少なかったから、集中してやる必要があったんだけど、僕たちはやり通すことができた。


「今の僕から20年前の僕、20年前のメンバーに言いたいこと」

―『Meteora』は前作以上に枠に収まっていないですよね。ラップがない曲もあるし、ギターリフがない曲もあるし、ハイブリッドはこうあるべきだというしばりからも解放されて、自由度が高くなったと思うんです。サンプリングでもストリングスから尺八まで取り入れて、かなり意欲的に追求していますよね。アルバムの制作中、一番楽しかったのはどういうところでしたか?

マイク・シノダ 今話してくれたことは、当時の僕たちにとってスゴく重要なことだったんだ。1stアルバムでは明確なサウンドを打ち出したかったんだけど、2ndアルバムを作るに当たっては、「よし、サウンドを広げなきゃ」って感じだった。新しいことにチャレンジして、レシピを増やしたいと思ったんだ。それに僕たちはヒップホップを聴いて育ったから、自分たちのループ、サンプリング・サウンドを作ることがアルバムのテーマの一つとしてあった。アルバムを聴いてもすぐにはわからないかもしれないけど、ドラムやギターを実際にプレイしてサンプリングしてるんだ。ストリングスにしても、実際にストリングスのグループに演奏してもらって、サンプリングをしてる。当時そんなアプローチでサウンド作りをしてる人はほとんどいなかったと思うんだ。それがどれだけ革新的だったのかはわからないけど、僕たちは新しい領域にチャレンジしてるなとは思ってたよ。



―もし20年前の自分に何か言うことがあるとしたら、どのようなメッセージになりますか?

マイク・シノダ 当時は自分の人生がどれだけ大きく変わったのか、振り返って見ることがなかったからね。今の僕から20年前の僕、20年前のメンバーに言いたいのは、こんな感じになるよ。「ちょっと立ち止まって、今のこの瞬間がどれだけ素晴らしいのか、感謝してほしい。時はあまりにも早く過ぎていくし、気づかないままになってしまうから」。自分たちが成し遂げたことは、僕たちが一生懸命やってきた結果のものだった。だけど僕たちは何が起きてるのか気づかないまま、感謝することもなかった。でも同時に、僕たちはベストを尽くすことができた。今振り返ってみて、当時の曲を聴くと、スゴくうれしい気持ちになれるんだ。それに『Meteora』の20周年記念に対するファンの反応をオンラインで見てみると、みんなもあの時代がどんな感じだったのかを思い出してくれてるみたいで、素晴らしいものが多いんだよね。あと、今の10代のキッズが当時の僕たちと同じファッションをしてるのも、スゴくクールで面白いんだ。当時の音楽を聴いて、またライブ・バンドが良いってなってる、そういう時代の流れもいい。5年前とかは、デジタル音楽が主流になりすぎてたけど、今再び若い子たちがギターやドラムを手にして音楽をやってるのは素晴らしいよ。一度演奏のスキルを覚えたら、一生それで楽しめるからね。






『Meteora: 20th Anniversary Edition/メテオラ: 20周年記念盤』
リンキン・パーク
ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
https://linkinparkjp.lnk.to/Meteora_20

3CD国内盤: https://wmg.jp/linkin_park/discography/27468/
Super Deluxe Box Set: https://wmg.jp/linkin_park/discography/27433/

リンキン・パーク オフィシャルHP: https://www.linkinpark.com/
リンキン・パーク Discord: https://discord.com/invite/linkinpark




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