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メタリカ『72 Seasons』新作レビュー キャリア史上最もディープでハードなアルバム

Rolling Stone Japan / 2023年4月14日 10時0分

メタリカ(Photo by TIM SACCENTI)

メタリカ(Metallica)が通算12作目となる最新アルバム 『72 Seasons』をリリース。そこには若者の持つ激しさと大人の良識とが混在している。米ローリングストーン誌のアルバム評をお届けする。

黄色と黒色の組み合わせは、警告標識、核シェルターの表示、「赤ちゃん乗車中」のステッカーなど、生きていく上での差し迫った脅威や大惨事に対する警告を示す配色だ。だからメタリカが、アルバム『72 Seasons』のジャケットのカラースキームとして黄色と黒色を採用したのは当然と言える。彼らの最新作は、若者の持つ冷酷さと大人になることの危うさを表現する、メタリカ流のメディテーションだ。同様のテーマは、「The Unforgiven」「Dyers Eve」など過去の楽曲にも見られる。しかし今やフロントマンのジェイムズ・ヘットフィールドも他のメンバーたちも60前後という年齢になり、大人へと成長するまでの道のりを、以前とは違う見方をしている。

メタリカの12作目となるフルアルバム中の楽曲「Lux Æterna」で、バンドは「フルスピードで突っ走るしかない」(full speed or nothin)と歌う。1983年のデビューアルバム『Kill Em All』にも使われたフレーズだ。さらに「心を打ち砕かれ、叩きのめされ、傷つけられ」(broken, beat, and scarred)と重々しく歌う「Room of Mirrors」の歌詞も、2008年のアルバム『Death Magnetic』からの引用だ。



かつてメタリカといえば、重厚でグルーヴの効いたギターリフと、入り組んだ曲構成が特徴だった。しかし40年以上のキャリアを積んだ彼らは、単にスピードを追い求めていた頃に比べると、より明確な方向性をもってプレイするようになっている。ニューアルバム収録曲「You Must Burn!」は、通称ブラック・アルバムに収録された「Sad But True」を彷彿させる。「自分に問いかけてみれば、分かるだろう/次に焼き殺すべき魔女が誰かが」とヘットフィールドが歌い、おどろおどろしい雰囲気のブリッジへと突入する。ゴーストのようなボーカルは、これまでのメタリカともまた一味違って聴こえる。

別の収録曲「Too Far Gone?」はミスフィッツ(バンド)系のパンクロックで、印象的なギターに乗せてヘットフィールドが「俺はもう救いようがないのか?/なんとか1日をやり過ごさせてくれ」と歌う。また「Sleepwalk My Life Away」では、「俺は落ちていくのか/お前は来てくれるのか」と問いかける。前作のリリース後、ヘットフィールドは、アルコール依存性克服のためにリハビリ施設へ再入所し、さらに25年間連れ添った妻と離婚した。実生活の苦しみを表現したにせよ、あるいはフィクションにせよ、『72 Seasons』の楽曲は、自分なりの真実を追求しながら、ただ激しく突き進むだけのメタルの殻を打ち破っていく群れのボスの姿を描いている。




自己への追求は、11分間の乱雑なジャムが続く「Inamorata」でクライマックスを迎える。ドロドロしたギターリフと共にヘットフィールドが、「不幸なことだが、彼女は俺を必要としている/でもそれより俺の方がもっと彼女を必要としている」と自己分析している。究極のメランコリーだ。メタリカの作品の中でも最長クラスの楽曲だが、決して退屈ではない。ヘットフィールドがぶつける激しい感情が、真に迫っているからだ。最初の72シーズンを乗り越えるのは、メタリカにとって拷問のようだっただろう。しかし苦難の時代を乗り越えた彼らは今、自分たちの得た知恵を分かち合えるまでになったことを実感している。

【関連記事】メタリカのラーズ・ウルリッヒが選ぶ、最強のメタル/ハードロック・アルバム15作


From Rolling Stone US.



メタリカ
『72 Seasons』
発売中
*日本盤のみSHM-CD仕様/初回生産限定ロゴステッカー封入
再生・購入:https://umj.lnk.to/Metallica_72s

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