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The 1975東京公演レポート 日本とファンに繰り返し愛を伝えた一夜

Rolling Stone Japan / 2023年4月25日 17時0分

The 1975 東京ガーデンシアター公演(Photo by Jordan Curtis Hughes)

The 1975のバンド史上最大規模となるジャパン・ツアーが、昨日4月24日の東京公演からスタート。編集者/ライター・小松香里が当日の模様をレポート。

【画像を見る】The 1975 東京ガーデンシアター公演ライブ写真(全5点)

昨年のSUMMER SONIC以来のThe 1975の来日公演である、「At Their Very Best」日本ツアーの初日は追加公演にあたる東京ガーデンシアター。サマソニはパンデミックによる約2年半ぶりのステージ、そしてニューアルバム『Being Funny In A Foreign Language(外国語での言葉遊び)』からの新曲世界初披露の場だっただけにナーバスなムードを伴って行われたパフォーマンスだった。昨年11月からスタートしたツアーは、シアトリカルな内容且つ毎公演セットリストが変わるということが報じられており、サマソニからまた何歩も先に進んだThe 1975が観られるということで、開演前の東京ガーデンシアターは期待に満ちた空気が充満していた。

開演時刻になり、客電が落ちると、「Love Me Tender」が流れ、巨大なヴィジョンにどこか日本の駐車場だと思われる場所にいるシャツ+ブラックのパンツ姿のマシュー・ヒーリーが映し出される。「Atpoaim」という文字がヴィジョンに映る。The 1975のYouTubeチャンネルで公開されている「A theatrical performance of an intimate moment」と題した何本かのモノクロの映像と「Atpoaim」は紐づいているが、コンセプト作りに余念がないThe 1975ならではのオープニングだ。


Photo by Jordan Curtis Hughes

やがてマシューが画面から消え、ステージに現れる。先ほどの映像は東京ガーデンホールの駐車場で撮られたリアルタイムのものだったのだろうか。まさにシアトリカルだ。持ってきた丸椅子をステージに置き、笑顔で手を振るマシュー。ギターを持って丸椅子に座り、しっとりと「Oh Caroline」を奏でる。スーツ姿で終始ナイーブな表情を浮かべていたサマソニとは明らかに違い、自身の部屋に招き入れたかのような親密なムードが漂う。もはや日本公演で恒例となっている感のあるおちょこでお酒を飲む姿を早速見せる。「I Couldnt Be More in Love」を歌った後、「Good Evening」とマシューが呟くと大歓声が上がる。「Be My Mistake」を続け、メドレーで3曲を披露した。

活き活きとしたシンセが聴こえ、大歓声の中、「Looking for Somebody(to Love)」へ。ギターを抱え、アグレッシブに体を動かしながら歌うマシュー。緻密でタイトなバンド演奏に、一気に場内が躍動感に包まれる。オーディエンスのハンドクラップに合わせて、マシューもハンドクラップ。時折フロアを右手で指差し、さらなる盛り上がりを促す。「コンニチハ! Hello! Welcome! How you feeling?」と日本語をまじえ、オーディエンスを歓迎。「How you feeling?」と言っておちょこでお酒をぐいっと飲み、右手でおちょこを持ったまま、ノリノリで「Happiness」へ。最高だ。サマソニの時は緊張を和らげるためのアルコールに見えなくもなかったが、今回はこのパーティーをとことん楽しむためのものに見える。それほどのハピネスが渦巻いていた。


Photo by Jordan Curtis Hughes

マシューはステージ上の肘掛け付き椅子に座り、アダム・ハンのギターのカッティングを嬉しそうに聞き、客席の上方を指差し、オーディエンスのコール&レスポンスに満足気な声を上げた後、「Tokyo!」と叫び、引き続きオーディエンスの「Show me your love Why dont you?」の大合唱が響き渡る。マシューが鍵盤を弾き、「1、2、3、4!」とカウントアップし、サックスのパートに突入。まだほんの序盤だがピークタイムのような盛り上がりだ。

バンドとオーディエンスの信頼関係

マシューがおどけた口調で「Ladys & Gentremen!」と挨拶。「The 1975 Live in Tokyo! So many people, Hello Everybody!」と言って、嬉しそうに手を振る。おちょこを持ちながら、「ごめん、僕は日本語が喋れないんだよ。次来る時までに覚えてくるね。もう何度も来てるんだけど(笑)」と話すとフロアから笑い声が上がる。1曲目に続いて、再び「Oh Caroline」を演奏。毎公演違うセットリストのツアーということもあり、イントロが鳴る度にどよめきのような歓声が上がり、どんどん興奮に満ちていく。

マシューがギターを爪弾き、おちょこで日本酒を飲み、ハンドクラップが始まる。「Im in Love With You」だ。これまで皮肉まみれのラブソングばかり歌ってきたThe 1975が、5枚目のアルバムにしてようやく歌った「ただただ君が好きなんだ」というどストレートな愛の言葉。「1、2、Im in Love With you!」とマシューが歌唱を促し、オーディエンスはもちろん大合唱で応える。

たゆたうような音像が心地よい「fallingforyou」に続いては、TikTokでもヒットした「About You」。度々おちょこでお酒を飲みながら、楽曲の主人公を演じるかのような仕草でもって、優しく語り掛けるように「About You」と何度も繰り返すマシュー。楽曲の物語性をさらに高めるかのような演出とアレンジにオーディエンスはさらに音楽に没入していく。


Photo by Jordan Curtis Hughes


Photo by Jordan Curtis Hughes

ギターを優しく爪弾きながら、ベースのロス・マクドナルド、ドラムのジョージ・ダニエルに続き、サックス、パーカッション、キーボード、ギターのサポートメンバーを紹介し、最後に「Best Friend」と前置きしギターのアダム・ハンの名前を呼び、「Together, We Are The 1975」だと。温かい拍手と歓声が上がる中、そのまま緩やかに「Paris」へ。「She said hello」と歌った後、笑顔でオーディエンスに手を振り、幸せが充満していく。

「Chocolate」では、まずイントロが細切れで演奏され、何度もじらされたオーディエンスが待ちきれずに「Chocolate」を歌い始めた。マシューが「1、2、3、4!」とカウントアップをし、本格的に「Chocolate」が始まり、歓喜が爆発。The 1975のロゴが大きくプリントされたタオルを掲げ、笑顔で揺れるオーディエンスの姿がヴィジョンに映し出される。この曲がきっかけでThe 1975を好きになったリスナーも多いだろう。そして、今でもとりわけ愛されている曲だ。悲鳴のような声も聞こえる中、「I love it」と愛おしそうに口にするマシューの姿もあった。

日本のファンに捧げられた「Guys」

一転して、吐き出すようなヴーカリゼーションを聞かせ、格差社会やネット問題、人種差別等を歌った切迫感溢れる「Love It We Made It」へ。その後、マシューがアコギを爪弾いて歌ったのは、「Guys」。しかも、「Oh, the first time we went to Japan Was the best thing that ever happened」というフレーズをことさら強調するように歌った。そう、「Guys」は前アルバム『Notes on a Conditional Form(仮定形に関する注釈)』のラストを飾るナンバーであり、このアルバムがリリースされたのは世界的なパンデミックが始まったばかりの時期。The 1975も多くのアーティストと同様にライブ活動を止めざるを得なくなり、また音楽リスナーもリアルライブを体験することができなくなった中で放たれたこの一節は、日本のThe 1975ファンにとって「パンデミックが一刻も早く収束し、The 1975が再び日本に来られる日が来ますように」という願いを生む一節となった。その3年後、間近な距離でこの一節を弾き語りで歌ってくれたのだから、ぐっと来ないわけがない。

そこからフォーキーな旋律が紡がれ、バンドの音が重なっていく。バラード曲「I Always Wanna Die(Sometimes)」だ。マシューはフロアに近づき、右の拳で胸を叩いた後、オーディエンスを指差して「泣かないで」というジェスチャーを挟む等、まるで「一緒に力強く生きよう」と言わんばかりの熱のこもったパフォーマンスを展開。「We Love you!」という男性の声がフロアから上がり、マシューが「I Love Guys!」と返す。

「The Sound」ではマシューの「1、2、fucking jump!」という号令を皮切りにオーディエンスが一斉にジャンプ。東京ガーデンシアターの床が揺れる。その後は「Sex」。演奏をいったん止めるマシュー。どうやらオーディエンスの中で誰かが倒れていると思ったが、それが勘違いだったと気付き、大爆笑したあと、「何が起きてるかわからないよ(笑)。I Love Tokyo! みんなOK? あと2曲だよ」と言って、再び「Sex」へ。思わぬハプニングにより、マシューのテンションの高さがより伝わり、場内はさらに沸騰。閃光のような照明もそれを後押しした。


Photo by Jordan Curtis Hughes

マシューが本日何度目かの日本への愛を叫んでから、ラストの「Give Yourself a Try」へ。何度も投げキッスをする。ヴィジョンには再び「Atpoaim」というメッセージが映し出される。コンセプチュアルなライブではあったが、ストレートに愛を歌った『Being Funny In A Foreign Language』と呼応するように、実にストレートにオーディエンスに愛を伝えるライブだった。韓国から来たというファンからのメッセージボードにビビッドに反応したり、おちょこに入ったお酒を飲み干した後に取り出したスキットルをオーディエンスにプレゼントし、何やらメッセージが書かれた紙を受け取り、「クールなファンだ」と満足気な表情を浮かべたり、とにかくオーディエンスと近い距離でコミュニケーションを取るマシューの姿が印象的だった。最後はステージを下り、直接オーディエンスと触れ合っていた。

メンバーが去り、ノイズが消え、客電が落ちたタイミングでスキーター・デイヴィスの「The End of The World」が流れた。どこを切ってもスペシャルな瞬間が詰まっていた。この後、日本ツアーはぴあアリーナ横浜2デイズとAichi Sky Expo公演、大阪城ホールと続く。自分はぴあアリーナ横浜公演にも行く予定だが、またそこでもセットリストを含めて色々と変わる気もするので、楽しみで仕方がない。

【関連記事】The 1975密着取材 マシュー・ヒーリーが探し求める「本物の愛」


〈セットリスト〉
1. Oh Caroline (Matty solo)
2. I Couldn't Be More in Love (Matty solo)
3. Be My Mistake (Matty solo)
4. Looking for Somebody (to Love)
5. Happiness
6. UGH!
7. Me & You Together Song
8. Oh Caroline
9. If You're Too Shy (Let Me Know)
10. I'm in Love With You
11. fallingforyou
12. About You
13. Robbers
14. She's American
15. Somebody Else
16. It's Not Living (If It's Not With You)
17. Sincerity Is Scary
18. Paris
19. Chocolate
20. Love It If We Made It
21. Guys (Shortened - Matty solo acoustic)
22. I Always Wanna Die (Sometimes)
23. The Sound
24. Sex
25. Give Yourself a Try


THE 1975 AT THEIR VERY BEST JAPAN 2023
2023年4月26日(水)・27日(木)ぴあアリーナMM
2023年4月29日(土)Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場) ホール A
2023年4月30日(日)大阪城ホール
※全公演ソールドアウト
公演詳細:https://www.creativeman.co.jp/artist/2023/04the1975/

The 1975 POP-UP SHOP in TOKYO
開催期間:2023年4月25日(火)~2023年5月2日(火)
開催場所:ゼンモール原宿 
営業時間:平日・土日祝 11:00-20:00 ※5/2(火)最終日は19:00閉店
ポップアップショップ詳細:https://www.universal-music.co.jp/the1975/

The 1975
『外国語での言葉遊び / Being Funny In A Foreign Language』来日記念盤
発売中
CD(通常盤/日本盤ボーナス・トラック収録)+ジン(雑誌/2022年来日時の写真多数掲載)+ポスター+カバー
購入:https://umj.lnk.to/Zt5OxFGjMB

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