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過激信仰で娘・息子・夫を殺害、残された子供の無念「母はただの人殺し」米

Rolling Stone Japan / 2023年5月8日 6時50分

我が子2人が殺害された事件で裁きにかけられているロリ・ヴァロウ・デイベル被告(TONY BLAKESLEE/EAST IDAHO NEWS VIA AP, POOL, FILE)

2人の我が子(タイリー・ライアンさんとJ.J.ヴァロウ君)を、母親のロリ・ヴァロウ被告が現在の夫チャド・デイベル被告と共謀して殺害したとされる事件。その殺害の動機として、被告のカルト信仰が浮かび上がっており、被告の知人らが数日にわたり証言を行ってきたが、成人した息子コルビー・ライアン氏が米アイダホ州の陪審の前で証言した。 

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現地時間4月、27歳のライアン氏がボイシ裁判所に入廷すると、49歳のヴァロウ被告は声に出さずに「あんたって子は」と口を動かしたそうだ。イーストアイダホニュース紙のネイト・イートン記者によると、被告が鋭い視線を送る中、ライアン氏は証言中ほとんど母親と目を合わせなかったという。

ヴァロウ被告は2人の我が子(タイリーさんは当時16歳、J.J.君は当時7歳)の殺人罪、殺人共謀罪、殺人に伴う重窃盗罪で無罪を主張している。2019年末に2人が行方不明と断定されると、事件に注目が集まり始めた。最終的に翌年6月、警察はアイダホ州レクスバーグにあるデイベル被告の敷地で2人の遺体を発見した。検察いわく、末日聖徒イエス・キリスト教会の信者だったヴァロウ被告とデイベル被告は、交際が進むにつれて奇妙な過激信仰を抱くようになり、互いの伴侶とヴァロウ被告の子どもを「悪霊に取り憑かれたゾンビ」とみなしてお粗末な殺害計画を実行したという(報道によると、デイベル氏は2019年に教会から破門されている。ヴァロウ被告と教会との現在の関係は不明)。

弟と妹を指し示すよう尋ねられると、ライアン氏は涙を流した(ライアン氏はタイリーさんの父親ジョセフ・ライアン氏(故人)に養子として正式に引き取られた。J.J.君はロリ被告と4番目の夫チャールズ・ヴァロウ氏(同じく故人)の間に養子として引き取られた)。ライアン氏はその後、2019年に養父チャールズ氏が心臓発作で死んだことを母親から聞かされたと証言した――だが実際は、母親の兄アレックス・コックスによって射殺されていた。アレックス・コックスはのちに老衰で他界した。

さらにライアン氏は証言を続けた。2019年11月には、タイリーさんとJ.J.君を捜索中の警察から連絡を受けたという。ちょうどその頃ライアン氏はタイリーさんと携帯メールをやり取りしていたが、「ふだんのタイリーの話し方や言葉遣いとは違っていた」と当時を振り返った。ライアン氏の話では、弟妹の行方やチャド・デイベル被告と突然結婚したいきさつについて、母親から答えを引き出すことはできなかったそうだ。

反対尋問では、人間が悪霊に取りつかれて「闇に落ちる」、あるいは「ゾンビ化する」という信仰を母親がライアン氏に一度も説明しなかったことが明らかになった(先週にはヴァロウ被告の旧友メラニー・ギブさんが出廷し、被告がタイリーさん、J.J.君、チャールズ・ヴァロウ氏を「ゾンビ」と呼んでいたと証言している)。被告弁護団は、ライアン氏が別居中の妻から昨年9月にレイプ容疑で訴えられていることは持ち出さなかったものの――この件での刑事起訴は1週間後に取り下げられた――鬱や自殺思考の過去について質問した。スティーヴン・ボイス判事はこの質問に対する異議を認めた。

被告弁護士のジム・アーチボルト氏が母親を愛しているかと尋ねると、ライアン氏はイエスと答えた。母親から愛されているかという質問に対しては、「そうだと思います」と答えた。



だがこの日ライアン氏の証言の山場は、ヴァロウ被告との間で交わされた感情的な通話が再生された時に訪れた。当時被告は留置所に収監されており、デイベル被告の敷地からはJ.J.君とタイリーさんの遺体が埋められているのがすでに発見されていた。

「僕に隠し通せると思ってるのか?」と、通話の中でライアン氏は母親に尋ねた。お前は私と口をきこうとしなかったじゃないか、とヴァロウ被告が言うと、「あんたが妹と弟を殺したと思ったからだよ」とライアン氏は答えた。

「僕は人生最悪な時期にもあんたのために祈っている。あんたが無事だと言っていた妹や弟のためにも祈っている」と、ライアン氏はヴァロウ被告に言った。「あんたは信用できる人だと思ってたのに。こんな人だとは思ってなかった」。ヴァロウ被告が「私のことは生まれてからずっと知ってるじゃないか」と言うと、ライアン氏は「人殺しの母親なんか知らない」と反論した。

通話の中でライアン氏は、ヴァロウ被告にさんざん嘘をつかれたと責めた。あんたは被害者ぶってるけれど、あんたの人生はチャド・ダンベル被告と出会った時から一遍したんだとも言った。ダンベル被告は臨死体験に取りつかれたモルモン教黙示録文学の作家で、ヴァロウ被告にも前世で夫婦だったと語っていた(ダンベル被告も同じ事件で別途裁判を受けており、無罪を主張している)。

「妹と弟はすでに他界して、携帯をやり取りしていた妹はすでに死んでいたなんて」とライアン氏。「可愛いさかりだった弟……養父も含め、家族が全員死んだのは神の思し召しだとあんたは言うけど――さんざんあんなことを僕に言ってきた後で、いまさら世界の救世主イエス・キリストがあんたの味方だと言えるのか?」。ヴァロウ被告はこれに対してそう思うと答えた。

するとライアン氏は、J.J.君とタイリーさんの身に起きたことが神の思し召しだというなら説明してみろとヴァロウ被告に怒鳴った。これに対しヴァロウ被告は、誰も理解できないと答え、死んだ子どもは「私を愛している、2人とも真実を知ったからもう大丈夫だ、私たちだけが真実を理解できる」と答えた。

「本当の母さん、妹、弟、家族みんな、父さん――あんた以外はみんないなくなってしまった。そのせいであんたはいま留置所にいるんだ」とライアン氏は母親に語った。「ずっと聖なる神に祈っている。この状況を乗り越えられますように、と。なぜチャドと一緒に堕落していくのさ? なぜろくでもない奴の後をついていくんだよ?」。さらに同氏はこう続けた。「どんなにあんたに腹を立て、どんなにあんたの夫の顔をシャベルで殴りつけたいと思っても、僕は毎日あんたのために、あいつのために祈ってやってる。あんたのせいで僕は胸がずたずたに張り裂ける思いだ。他のみんなもそうだ」。

悪霊の憑衣と「おはらい」に関するヴァロウ氏とデイベル氏の奇妙な信仰についての証言の他、この日陪審はタイリーさんとJ.J.君の遺体の生々しい解剖写真も目にした。被告弁護団は証拠や証言が感情をかき乱すことを理由にヴァロウ被告の裁判欠席を要請していたが、ボイス判事はこれを却下した。続いて故アレックス・コックス氏の妻ズレマ・パスティネスさんが証言台に立ち、ヴァロウ被告やデイベル被告から教えられた信仰によれば、悪霊は拘束と炎で追い払えることになっていると証言した。掘り起こされたJ.J.君の遺体はガムテープで拘束されており、タイリーさんの遺体には一部やけどの跡があった。

ヴァロウ被告の裁判は3週目を迎えているが、2カ月前後続くとみられている。ボイス判事は3月、仮に殺人罪で有罪となっても死刑は免れるとの裁定を下した。ヴァロウ被告はアリゾナ州でも、元夫チャールズ・ヴァロウ氏殺害の共謀罪に問われている。

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from Rolling Stone US

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