FINLANDS塩入冬湖が振り返る10年、「生きやすくなった」理由と子供や家族のこと
Rolling Stone Japan / 2023年5月12日 12時0分
去年、結成10周年を迎えたFINLANDSが周年後初となるフルアルバム『SHUTTLE』をリリースした。Re RECアルバムと題した今作は、FINLANDSの過去曲や前身バンド・THE VITRIOLの楽曲などを今のFINLANDSで蘇らせた作品となっている。音楽活動を始めた10代、FINLANDSとしての歩みを始めた20代、結婚や出産を経た今の30代など、それぞれの側面を感じる1枚となっている。インタビューではこれまでの活動を振り返りつつ、アルバム制作の経緯や現在の人生観や音楽観についても話を聞いた。
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―今は朝10時ですけど、この時間って普段は何をされていますか?
塩入冬湖(以下、塩入):以前だったら寝ていたんですけど、最近は子供の保育園が始まったので強制的に起きることが増えました。
―午前中のルーティーンってどんな感じですか?
塩入:昼過ぎから仕事して、夕方は仕事をしに外へ出かけて夜に帰ってくるっていう感じですかね。
―ご家族ができる前と後で生活リズムって変わりました?
塩入:全く違いますね。一人暮らしの時だったら、1日3、4時間も寝ればそれで十分だったんですよ。深夜に気が向いたら車でいろんなところに行ってみたりして、明け方に寝て昼前に起きて仕事をする感じだったんですけど、今は夜12時とか1時には寝てることが多いので、もう全然違います。あと、産後は全然起きれなくなってしまって。ものすごく寝るようになったんです。生活っていうよりも、自分自身がすごい変わった感じがしますね。今までだったら薄暗くなった頃に外へ出かけることに、ドキドキしていたんですけど、今は日が照ってる時間に外へ出かけるとか、そういうことに魅力を感じるようになりましたね。
―僕は最近、断酒をしまして。
塩入:あ、お酒を辞められたんですね!
―そうなんですよ。断酒したらちゃんと夜に眠れるようになって。朝早くから活動すると自己肯定感も上がった感じがするんですよね。
塩入:へー! お酒は飲まれる方だったんですか。
―それまでは7年くらい、毎日お酒を飲んでいました。
塩入:それを突然やめたら、生活もガラッと変わりそうですね!
―趣味だったりやりたいことだったり、不思議と変わっていきましたね。塩入さんは30代を超えて変化はありますか?
塩入:26、7歳ぐらいからなんですけど、生きやすくなったなってすごく感じていて。その理由が、より明確に分かってきたのが30代なんです。今までは誰かに優しくしなきゃとか、誰かの望むようにしなきゃとか、何かのためにこうしなきゃとか、いつか後悔しないためにって生きていた部分がすごく強かったんですけど、それが気づかないところで自分を疲労させていたなと思って。いつかの言い訳のために、何か大義名分を求めていた部分があった。でも30歳を超えたぐらいから、もう”自分のため”でいいんじゃないかなって。ただ自分が欲しいから買った。自分がやりたいからやった。自分がここに行きたいから行った。それだけでいいんじゃないかなって思うようになってから、すごい生きやすくなって。生きづらかった理由も、生きやすくなった理由も言語化できるようになったのが30代ですね。
―生きづらく感じていた、きっかけとか要因って何だったですか?
塩入:要因としては、いつも誰かのため、何かのため、いつか自分が悲しい思いをするのが嫌だっていう、予防線をすごい張り続けていた部分があったんです。そういう部分で自分を常に急かしてしまっていた。自分自身がこの人に優しくしておかないととか、この人と会っておかないととか、この人と一緒にご飯を食べに行く時間を作らないととか。そういう風に誰かの要望に全て答えようとするのを、自分に課していた。やっぱり自分の意思と反することをすると、自分自身がすごい疲れてくる。そこが大きいんじゃないかなと思いますね。
―今回のアルバム『SHUTTLE』は、以前に作られた楽曲を改めてRe RECされた内容で。それこそ「あそぶ」とか「ロンリー」とか「ゴードン」など、前半に収録されてる曲を聴いて、塩入さんは刹那的に生きてきた人なんだな、って思ったんですよね。
塩入:うん……刹那的に生きてましたね。というか今でも拭えないところがあるので、歌詞を見返しても納得できる部分はありますね。
―6年ぐらい前のインタビューで、「基本的に私の中には怒りがあって。それが途切れないから曲を作り続けてる」とおっしゃっていたんですね。当時、怒りこそが原動力になっていたわけですよね。
塩入:そうですね。自分に対してもそうですし、世の中に対してもそうですし。自分が音楽をやっている中で生まれる衝突だとか憤りとか、それらを見逃しちゃいけないっていう気持ちがあって。怒りによって自分は生かされていた部分がありましたね。
―アルバムのラストを飾る新曲「SHUTTLE」って、恋愛の曲にも受け取れるんだけど、今言ったような「こういう自分でいなきゃ」とか、怒りを抱えて生きていたこととか、これまでの自分に対して歌っていたんじゃないかな?と思って。
塩入:本当におっしゃる通りですね。自分の今までのことに焦点を当てた曲です。
―実は見ないようにしていた感情……怒り以外の自分がいるのは知ってるけど、それはちょっと自分の中では許しちゃいけない部分とか、そういう感情一つひとつ拾って認めてあげて昇華したんじゃないかなって。
塩入:まさにその通りですね。「SHUTTLE」に関しては、今回Re RECアルバムという大きなくくりがあったので、 FINLANDSの初期の曲とか、FINLANDSを始める前にやっていたTHE VITRIOLってバンドの曲とかを聴き直す機会があったんですけど。やっぱり、先ほど言っていただいたように怒りをすごく感じますし、嫌っていたモノが手に取るように分かったと同時に、それは何でだろうな?って思ったんですよね。思い返してみたら、 FINLANDSを始めたのは22歳の時なんですけど、18歳から22歳までの4年間って、ものすごく堕落していて、ろくに生活もできていなかったんですよ。なんで生きてこれたのか不思議なくらい。バイトもちゃんと行かないし、お金も時間もない。友達との約束も全然守らないし、恋人との衝突は多い。でも自分はすごくいい曲を書ける。自分は曲を書くことで全てが帳消しされるというか。
―ああ、その心理は分かる気がします。
塩入:バンドがうまくいくんだったら、私はそれだけで生きていけると思ってて。おざなりにしてることを肯定し続けていたんです。「一つのモノを大切にすれば、他は全て犠牲にしていい」って考え方で生きていた。心のどこかでそれは違うなって気づきながらも「自分はすごい人間なんだ」って、その一本で押し切ろうとしていたっていうか、それがすごい辛かった原因なんだなって今思い返せば分かる。あの頃、自分は人にたくさん迷惑をかけていたんですけど、あの頃があったから今きちんとしようとか、何か一つを大切にするためには、その周りにあるものも一つひとつ大切にしていかないといけないとか、そういうことを学べたのは、当時の堕落した生活があったからだなと思うので。肯定するわけじゃないですけど、あの頃の自分自身をきちんと供養というか、救い出したいなって気持ちで作ったのが「SHUTTLE」ですね。
―以前は堕落していた日々の中でも「いい曲を作ればあとはいい」って考えだったんですよね? その刹那な的な生き様が、塩入さんの作る曲に緊張感と切迫感を与えていたと思うんですけど、生き方を切り替えることによって、今で積み上げてきた音楽性が崩れる恐怖はなかったですか。
塩入:確かに、何かに怒ったり何かを嫌ったりする方がアイデンティティは作りやすい。でも、そうじゃなくて無数にあるモノの中から好きと嫌いを自分で選んでいくところに、本当のアイデンティティが生まれるんだろうなっていうことも、ある時期から徐々に思うようになって。全てに対して怒りを持っていいわけではないっていうことにも、気づき始めた時期だったので、だったらそういうふうに自分を生活させてみようというか、自分を動かしてみようって思って、そっちに突き進んで行きましたね。
ー今回Re RECアルバムを作ると聞いて、僕は意外だなと思ったんですよね。ずっと今を歌い続けてるバンドだから、過去の曲を改めて歌うのはFINLANDSに限ってはしないんじゃないかなって勝手に思っていて。
塩入:本当にその通りですね。私自身も過去の曲を引っ張り出して、新しく録ってちょっといじって出すってことは絶対しないだろうなと思ってて。そもそも、それがカッコいいことだと思わなかったですよね。バンドは最新のモノが一番カッコいいものであるべきだっていう気持ちは今でもありますし、ずっとそう思っていたので。ただ、2021年に『FLASH』というフルアルバムを出したんですけど、その時からFINLANDSの10周年がちょっと見えてきて。今までの活動を振り返った時に、思い出したらちょっと恥ずかしいなってことも、もちろんあるんですけど、恥じるような活動はしていないというか。自分が頷けることをしてきたし、誰かに反してしまったとしても、そこに後悔はない。売れることに対しての執着が全然ない時期もあって「意味が分からない活動だ」と言われることもあったけど、思い返した時になんでこんなことをやっちゃったんだろう?ってことは一つもない。自分が作ってきた作品に対しても、自信を持っていいモノだと言える。そういう活動を10年近くやってこれたことが自分を後押しするというか、自分にとっての糧になっていて。THE VITRIOLを含め、今まで作ってきた楽曲と向き合うきっかけになった。そこでRe RECアルバムを作ることに対しての恐怖がなくなったんですね。
―過去の楽曲や当時の自分と対峙した時に、どんなことを感じましたか?
塩入:14、5年前に作った楽曲が一番古いと思うんですけど、そういう楽曲を聴くと、よく周りの大人が止めなかったなっていうレコーディング方法とか構成なんですよね(笑)。今聴いたら「それ正解なのかな?」みたいなことをしていても、やっぱりときめくポイントは自分自身変わっていなくて。「ロンリー」で言うと、最初にノイズが入ってるんですけど、それをどうしてもベースノイズで出したくて。当時のベースにノイズを出してもらったんですよね。でも別にギターでも出せばいいじゃんって、その時もみんな思っていただろうし、今も物議を醸しているんですけど。
―アハハハ。労力がだいぶ違いますからね。
塩入:でも、私はベースで出すノイズが本当にカッコいいなって思うんですよ。今聴いてもやっぱり間違ってなかったと思えた。今回のレコーディングもそこにこだわって、サポートベースの彩さんにめちゃくちゃ頑張ってベースノイズを出してもらって。自分自身は14、5年の間にすごい変わってるし、それを実感しているんですけど、やっぱりときめくポイントって変わってないんだなって。ちょっと笑っちゃうような、でも安心するような発見があって、向き合えて本当に良かったなって強く感じたポイントでしたね。
―今って配信とかSNSもそうですし、曲単体で切り取られる時代になりましたよね。でも、それって一部分でアーティスト性の全体を示してるわけじゃない。だからこそアルバムがある。もっと言えば、そのアルバムが生まれた背景には、これまで自分の鳴らしてきた過去の曲たちがあるわけだけど、それってリリースライブの時期を過ぎると、どうしてもスポット当たりづらくなり、過去の産物になって人の目に止まらなくなる。このアルバムを聴いて「SHUTTLE」が生まれるまでのバックボーンをちゃんと感じられたし、そういう意味で人生のアルバムだなと思ったんですよね。
塩入:うん、そうですね。ベストアルバムなわけでもB面集ってわけでもないですし。ただ、この1枚でFINLANDSの環境や状況とか、性格の癖だとか、そういう部分も全部象徴したアルバムになったなと思いますね。独断と偏見だけでやってきたFINLANDSっていうバンドの全てを表している気がします。
―収録曲を選ぶ上で、基準ってありました?
塩入:基本的にはコンピレーションアルバムだったりとか、スプリットアルバムに入ってる楽曲ってFINLANDS初期の頃が多かったんですけど。その辺の楽曲ってお客さんも知らないですし、私自身もCDを持ってるかどうか危ういぐらいのレベルで。中にはそういう楽曲を愛してくださってる方もいるので、もう一度改めて聴いていただきたいのがあって。あまり知られていない、アルバムに入ってない楽曲っていうのが曲選びの基準でした。ただ「ゴードン」に関しては、サポートギターの澤井(良太)さんって、もう8年ぐらい一緒にやってくれているんですけど、唯一レコーディングに参加してない曲なんです。「だから俺が弾きたい」と。それと今のレーベル(サンバフリー)に入って初めてMVを撮ったのも「ゴードン」だったので、これは節目な曲という印象があって入れました。
―そういえば先日MVが公開された「ナイター」は、JACKMAN RECORDSのコンピに入っていた曲ですけど、コレが今のレーベルに入るきっかけだったんですか。
塩入:そうなんですよ。2013年にCOUNTDOWN JAPANの「RO69JACK」というオーディションを受けて、ありがたいこと入賞させていただいたんですけど、そもそも参加したきっかけが初めて自分たちでCDを作らなきゃいけないとなって、いざ作ったら莫大なお金がかかって。ありがたいことに、THE VITRIOLは高校卒業してすぐ、どパンクのレーベルに入って、CDを作らせていただいてたんですよね。だからCDを作ることに、こんなお金がかかると知らなくて。でも、どうしても自分たちでCDを作りたいと思った時に、まとまったお金が必要だなと思って、オーディションは嫌いだったんですけど、意を決して出て。そこでいただいたお金で作ったのが『atlas』ってアルバムだったんです。そこでいただいた賞金で「ナイター」を再録して、音源を聴いていただいた音楽関係者の方に、今のレーベルに繋いでいただいて。半ば押しかけみたいな感じで入れてもらったんですけど、それがきっかけだったんですよね。
―聞けば聞くほど、各楽曲にバンドのドラマが詰まった作品になってますね。
塩入:はい、エピソードに事欠かない楽曲たちが集まってます(笑)。
―特に「今振り返っても、この曲を書いていた時期は強烈に濃い時間だったな」と思う曲は?
塩入:THE VITRIOLでは2枚CDを出していて、1枚目を出した直後に当時のレーベルの方に「次はこの時期にCDを出すから曲を作っといてね」って言われて「ロンリー」が収録されてるアルバム『i-ron』の制作に取りかかったんですけど。それまで自分が「こういう曲を作りたいな」っていうタイミングで作ってきたし、人から「曲を作っといてね」と言われたことがなかったので、「なんで他人に『曲を作っといて』なんて言われなきゃいけないの?」と思ったんですよ。
―ハハハ、そこで謎の火がついて。
塩入:今考えるとそんなに怒ることじゃないのに、めちゃくちゃブチ切れた記憶があって。「サビ始まりの曲がいいんじゃないかな」とか、その人は私たちを売ろうと思って言ってくれていたんですけど、その時は本当に嫌だなと思って。こうなったら、めちゃくちゃいい曲を作ってやろうと思って作ったのが「ロンリー」だったんです。結果的に、この曲を披露した時に当時のお客さんとか周りの友達とかにすごい愛してもらえる楽曲になったので良かったなと思うんですけど、「ロンリー」とか「April」を作ってた時期はすごい怒りにまみれてたなと思いますね。なので記憶が怒り一色ですね(笑)。
―あ、「April」もそうなんですか?
塩入:「April」も「ワンダーランド」も同じアルバムに入っているんですけど、怒りに溢れてるというか、あの時期は全てに対して怒ってたなと思いますね。「April」は当時の恋人のことを歌った曲で、その人に対しても今考えたら「そんなに怒ることじゃないじゃん」っていうことですごい怒っていましたし、なんかいろんなことに対して怒ってましたね。よく疲れずに毎日生きていたなと思いますけど。
―それだけ塩入さんの曲作りって、全てに対して誠実に向き合っているし、己を投影しているからこそリアルがあると思っていて。確か、2ndアルバム『BI』は結婚する前の旦那さんのことを歌っていたんですよね?
塩入:それだけではないですけど、『BI』って制作の後半にどんどん曲が出来て行ったんですよ。今まで作っていた曲たちでレコーディングをしますって感じだったんですけど、それを全部塗り替えるぐらい後半に楽曲がバーっと書けて。それが今の夫に対してのことがすごく多いですね。
―うろ覚えで恐縮ですけど、当時は体調を崩すくらい旦那さんに恋愛していたとか。
塩入:普通に体調が悪くなるぐらい好きでしたね。めちゃくちゃ体調が悪いっていうか……うん、体調悪かったですね(笑)。
―やっぱり体調が悪い(笑)。
塩入:ふふ、それくらい人のこと好きになったの初めてでした。
―結ばれるまでに、何度か振られたみたいですね。
塩入:めっちゃ振られていましたよ(キッパリ)。でも、振られることは本当に大したことないっていう感覚になって。これがストーカーの始まりかと思ったんですけど(笑)、なんか振られたことはやっぱりショックですし、悲しいことなんですけど、振られたからって自分の気持ちがなくなるわけでも色褪せるわけでも、相手を嫌いになれるわけでもないので。振られることってマジで大したことないなって、その時に気づいてしまって。そこからすごい心が強くなったなと思います。
―今もそんな感じらしいですね。旦那さんと会っていない時間も、動向を追ってるっていう。
塩入:めっちゃ追ってます。会ってない時間は、旦那のことをネットストーキングしてますね。知りたいと思っちゃうんですよね。疑わしいことだけじゃなくて、自分と一緒にいる時間とか、一緒にいない時間とかも知りたいなと思っちゃう。興味があるんですよ、ずっと。ファン心理みたいな気持ちで追っちゃいますね。
―結婚したら落ち着かないですか?
塩入:いや、全然落ち着かないです。結婚したから安心!もう大丈夫!みたいなことはマジで一切ないですね。緊張感を持って暮らしていかないとっていう気持ちで。なんか、こういうのが自分を苦しめるんだろうなと思って。「別にそんなことを自ら課さなくていいじゃん」って夫にも言われますけど、でもやっぱり緊張感を持って一試合一試合、一日一日を過ごして行こう!みたいな気持ちになりますね。
―曲を書いてる本人だから当然かもしれないけど、 FINLANDSの音楽を地で行ってますよね。
塩入:アハハハ! そうですね。性格の我が出ちゃってるんでしょうね。
―愛が強烈に強い人っていうか。
塩入:愛は強いですね。でも、それは愛なのかなって? まあ愛なんでしょうけど、自分が愛だなって気づく間もなく突き進み続けているので、FINLANDSに関しても夫に関しても。だから自分では客観視するのは難しいですね。
―お子さんに対しては、どういう感情なんですか?
塩入:私、妊娠中は母性なんて芽生えるのかな?と半信半疑だったんですよ。もちろんすごい愛しい存在だし、お腹の中にいる時から子供というよりも相棒的な気持ちになっていたんですけど。産まれた時に、私は病室で子供は新生児室で何日間か寝ていたんですけど、自分でもビックリするぐらいに子供に会いたくなるんですよね。廊下を渡ったらすぐの場所にいて会えるんだけど、「これから赤ちゃんは寝るからお母さんも寝てください」と言われて、それでもちょっと会いたくなるみたいな。どうしても会いたい、今すぐ会いたい気持ちってやっぱり恋愛染みてるなってその時に思って。今でも仕事帰りとか夜中に帰ってくる時とかも、車を運転しながらめちゃくちゃ会いたい気持ちになるんですよね。それは恋愛でしか経験したことがない感覚だったので、恋愛よりも色濃く子供って存在を求めてるなっていう瞬間を自分で認識するたびに驚きますね。
―お子さん見ていて「この子はやっぱり自分の分身なんだな」とか「自分の子供なんだな」って思う瞬間ありますか?
塩入:めちゃくちゃありますね。冒頭で話した通り、私はすごいせっかちなんですよ。何か1つ、アレをやらなきゃと思って歩いてる途中で、目に入ったモノにすぐ手を出して「あ、コレもやらなきゃ」と思って、そっち始めちゃって当初の目的忘れちゃうみたいな。そういうことを繰り返してるんですよね。今年の頭に大熱を出しまして、寝込んでる時もちょっと熱が下がってくるとリビングに行って「アレもコレもやらなきゃ」ってやっていて。その時、旦那に「今やらなくていいことをすぐにやって、いろんなものに手を出すよね」って言われて。私の人生を象徴するような言葉だなと。それを1歳になる子供も地でやってます。
―「いや、今それやらなくていいじゃん」ってことを。
塩入:誰にも頼まれていないのに、セルフで忙しそうにしてるんです(笑)。オモチャを出して、雑誌を破いて立ち上がってリモコンをバンバンやって。自分で自分を忙しくして「ふぅ〜」みたいになっているのを見ると、やっぱりこの子は私の子供だと思いますね。
―ご家族は塩入さんにとってどんな居場所になっていますか?
塩入:一番の心強い場所だなと思いますね。家に帰ってきた時に、こんなに安心する場所ないなって思うんですよ。よくリビングで子供のプレイマットの上で寝ちゃうんですよ。ごろんって床に転がって家族がいる風景を見ていると、夫と私はもちろん血が繋がってないですけど、こんなに心強いっていうか「私が一生この人たちの味方でいたい」と思うように、2人もそう思ってくれてるんだろうなと感じることが多い。絶対に揺るぎない自分の味方がいる場所っていうか、一番心強い場所っていう気持ちが最近すごい強くなりましたね。
―それによって、歌いたいことに変化はありますか?
塩入:今年の頭にソロでミニアルバム(『大天国』)をリリースしたんですけど、その中に収録した「不慣れな地球でキスをする」は出産する直前まで作っていた楽曲で。歌詞はほぼ決まっていなかったんですけど、出産後に書いたら100%子供の歌になっていて。こうやって歌いたいことも変わるんだろうなと思ったんですけど、FINLANDSでは今のところ子供や家族のことを歌いたいっていうのは思いつかないんですよね。でも、きっと日々の生活の中で変わってくんだろうなって。例えばニュースを見てる時に恋愛のもつれで、若い女の子が亡くなったとか、そういう事件を見ると今までだったら「自分ならどうしたかな」とか、相手に対して「なんでこんなことするんだろう」って、被害者の気持ちになっていたんですけど、今は全然違うんですよね。親御さんの気持ちになってしまうというか。赤ちゃんの頃から大事に大事に育てた自分の子供が、恋愛のもつれでこんなことになってしまって、私だったら絶対に耐えられないなと思うんです。
―視点がガラッと変わったと。
塩入:恋愛の曲をずっと書き続けてきましたけど、その恋愛にプラスアルファで、大事な人やモノをどうやったら大切にし続けられるか、守ってもいけるかをすごく考えるようになったんですよ。そういうことが徐々に生活に影響を与えていけば、歌いたいことも変わっていくというか、増えていくんじゃないかなと思います。
<リリース情報>
FINLANDS
『SHUTTLE』
2023年5月10日(水)リリース
デジタル配信 & 通販・会場限定CDリリース
=収録曲=
1. あそぶ(SHUTTLE ver.)
2. ロンリー(SHUTTLE ver.)
3. ワンダーランド(SHUTTLE ver.)
4. ゴードン(SHUTTLE ver.)
5. 銀河の果てまで(SHUTTLE ver.)
6. スペシャルウィーク(SHUTTLE ver.)
7. リピート(SHUTTLE ver.)
8. ナイター(SHUTTLE ver.)
9. April(SHUTTLE ver.)
10. SHUTTLE【新曲】
<ツアー情報>
「I AM SHUTTLE TOUR」
2023年5月13日(土)札幌 Sound lab mole w/ THE BOYS&GIRLS
2023年5月19日(金)名古屋 HUCK FINN
2023年5月21日(日)静岡 UMBER
2023年5月28日(日)東京 LIVE HOUSE FEVER
2023年6月2日(金)仙台 ROCKATERIA w/SEVENTEEN AGAiN
2023年6月4日(日)盛岡 CLUB CHANGE w/SEVENTEEN AGAiN
2023年6月7日(水)千葉 LOOK w/paionia
2023年6月10日(土)長崎アストロホール
2023年6月11日(日)福岡 DRUM SON
2023年6月18日(日)京都 GROWLY w/ ナードマグネット
2023年6月19日(月)大阪 Live House Pangea
2023年6月23日(金)高松 TOONICE
2023年6月25日(日)広島 CAVE-BE w/ さよならポエジー
2023年7月7日(金)新潟 club RIVERST w/ 四星球
2023年7月8日(土)松本 LIVE HOUSE ALEX w/Os Ossos
2023年7月13日(木)横浜 F.A.D
「I AM HITORI SHUTTLE TOUR(塩入冬湖 弾き語り公演)」
2023年5月14日(日)札幌:ukigmo w/ ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS)
2023年5月18日(木)名古屋:sunset BLUE
2023年6月20日(火)大阪:cafe Room
Official HP:https://finlands.pepper.jp/
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