クリープハイプの「夏恋」ソングを考察 新しい音像を求める姿勢、深みを増した歌詞の表現
Rolling Stone Japan / 2023年6月8日 19時0分
これまで「憂、燦々」(13年)、「ラブホテル」(14年)、「エロ」(14年)など、夏を連想させる恋の歌を世に送り出してきたクリープハイプによる新たな”夏恋”ソングが誕生した。それが5月31日に配信リリースした「青梅」だ。
【動画を見る】クリープハイプ「青梅」ミュージックビデオ
”夏恋”と言うには、リリースのタイミングが若干早いような気もするが、タイトルになっている青梅の収穫のピークが6月であることを考えると、むしろタイミングはドンピシャだし、後述するようにジューンブライドにも掛けているんじゃないかという気もする。ともあれ、夏に向けて、「青梅」を聴きながら、恋する気持ちを盛り上げてほしいということなのだと思うが、その「青梅」は前掲の”夏恋”ソングとは、ひと味もふた味も違うものになっている。
今年3月29日にリリースした5曲入りのEP『だからそれは真実』はメジャー・デビュー10周年を経てもなお、いや、経たからこそ、新しいことに挑戦していこうというバンドの意思を印象づけるものだったが(それについては「クリープハイプが語る、無意識に感じ取った世の中のムード、CDが必要だと思った理由」を参照されたし)、「青梅」もまた、その延長上にある楽曲であることはファーストインプレッションから明らかだ。昨年12月14日に配信リリースして、その後、『だからそれは真実』にも収録した「本当なんてぶっ飛ばしてよ」はファンキーでポップな曲調が、クリープハイプが新たなバンド・サウンドを開拓していこうと考えていることを物語るものだったが、「青梅」のアプローチは、さらに大胆なものになっている。
歪みと揺れが絶妙に入り混じるエキセントリックな音色で鳴る冒頭のギター・リフから、突然、景色が変わるようになだれこむサビの4つ打ちのドラムと歌メロの甘酸っぱいコード進行は、レイブなんて言葉も思い浮かぶ、まさにクリープハイプ流のダンス・ポップ・アンセムの趣。今年も多数出演する夏フェスで早速、披露するに違いない。♪真夏の湯気 変な思い出と歌いながら観客が笑顔で飛び跳ねる光景が自然と目に浮かぶが、さらに驚かされるのがコードを刻むシンセに加え、サブベースやピアノの単音も鳴るその後の展開だ。電子音や、エフェクトを掛けたギターなのか、それともシンセなのか、何で出しているのかわからない音も鳴っている。21年12月リリースのアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』でも打ち込みを使っていたが、メンバー4人で奏でるいわゆるバンド・サウンドにこだわらず、果敢に新しい音像を求めるバンドの姿勢が痛快なまでに表れたという意味でも聴きごたえあるものになっている。
一方、恋活・婚活マッチングアプリ「Pairs(ペアーズ)」のWEB CMの挿入歌として書き下ろした「青梅」は、だから夏の恋を歌いながら、前掲の”夏恋”ソングのように刹那的にも、直情的にも、衝動的にもならず、むしろ恋の成就や、結婚も含め、その後のことを連想させる歌詞になっているところも聴きどころだ。
1番の《青いうめぼし》という歌詞が2番で《赤いうめぼし》になっているのは、夏の恋に落ちた2人の関係が時間を経て、成熟したことを歌っているんじゃないかと思うのだが、《夢は冷めても美味いに決まってる って知ってる》と恋愛関係の成熟が決して悪いものではないと認めながら、《恋は幻 赤いうめぼし ふたりで酸っぱい顔してる もう夏をとめて》と皮肉、いや、含蓄を込めながら締めくくるところが尾崎世界観(Vo, Gt)らしい。《ふたりで酸っぱい顔してる》という歌詞に身につまされる人は筆者を含め、決して少なくないはずだ。
夏の恋を求める人達に向けて、決して刹那的に、直情的に、衝動的にならず、《赤いうめぼし》になるまで人生を共にできる、そして、《酸っぱい顔》をしながら、お互いを認め合い、許し合えるパートナーを見つけてくださいとエールを送る実は大人の”夏恋”ソングなんじゃないのか。初め、「青梅」なのに、なぜこのジャケットと不思議だったのだが、曲を聴きながら歌詞を読んで大いに納得した。
サウンド、歌詞ともに新境地を印象づける「青梅」を聴きながら、クリープハイプが今後、どんなことに挑戦していくのか期待せずにいられないが、まずはこの新しい”夏恋”ソングをじっくりと味わいたい。因みに青梅は未成熟の果肉や種の中心に毒成分があるそう。梅酒を作ろうと思って、リキュールに漬けた青梅が甘いからって食べ過ぎると中毒症状を起こすこともあるので、注意が必要だそう。なんだか、そんなところもクリープハイプらしいとちょっと思ったりも。
<INFORMATION>
「青梅」
クリープハイプ
ユニバーサルシグマ
配信中
配信リンク:
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