全英1位のアーティストが語る、「時差11時間」超遠距離恋愛の大失恋、からの復活アルバム
Rolling Stone Japan / 2023年6月14日 12時0分
1992年生まれ、30歳のイギリスのアーティスト、コナー・メイナードが、アルバム『+11 hours』をリリースした。10代の時にオンラインにアップしたカバー曲が話題を呼び、2012年の1stアルバム『Contrast』が全英1位を獲得、5枚のシングルがトップ10にチャートインするなど、デビュー時からポップ・ミュージック界で大きなセンセーションを起こしている。2020年にはインディーズ・アーティストとして独立。
【動画を見る】コナー・メイナード【和訳MV】「If I Ever」
待望のリリースとなる『+11 hours』は、コナーの住むイギリスとは11時間の時差がある、オーストラリア出身の女性との別れからインスピレーションを得た作品。様々なエモーションをアンビエントからアップビートまで、多様な楽曲で聴かせるアルバムになっており、サウンドが新しくなった分、コナーのメロウながらも芯のある歌声の素晴らしさ、メロディの美しさ、聴き手に寄り添うリリックが、さらに際立つプロダクションとなっている。
―5月26日に韓国のSeoul Jazz Festivalで行われたライブは、かなり盛り上がったみたいですね。
コナー めちゃくちゃ楽しかったよ。韓国は初めてだったしね。
―コナーが客演した曲「Way Back Home」では、SHAUNも登場して一緒に歌ったんですよね。
コナー そうそう。SHAUNに会うのは初めてだったんだ。同じステージに立つのは少し緊張したけど、彼がどんなヴァイブスなのかわからなかったんだ。僕がスゴくハイエナジーなのに対して、彼はちょっとメロウな感じだったね。だけど飛び回って、一緒に歌ってくれたし、超クールだった。
―小さい時はどんな子供でした?
コナー 子供の時、実は俳優になりたかったんだ。毎週土曜はドラマスクールに通って、演技とともに歌とダンスも習ってた。僕はいたずらっ子だったし、行儀が良い方だとは言えなかったね(笑)。でも試験の成績は良くて、必要な時には気配りもできたし、真剣にやろうと思えばちゃんとできた。クラスではみんなを楽しませるお調子者だったね。だから今これを仕事にしてるのも、なるほどって感じだよね。
―自分の音楽の才能に気づいたきっかけは? 誰かから歌声が素晴らしいって言われたからですか?
コナー 長い間、僕が歌えることを知ってる人は誰もいなかったね。僕はサッカーをやってたし、歌を歌うのがカッコいいとは思えなかったんだ。15~16歳になってから、初めて人前で歌うようになったんだけど、その時の女の子たちの反応を見て、シンガーにならなきゃと思ったんだ(笑)。
―2022年の冬に、突如SNSから姿を消しましたよね。彼女と別れて大変な時期だったと思いますが、そこから新曲を作り始めましたよね。この間、何が起きたのでしょうか? その時の曲作りはどのようなプロセスになりましたか?
コナー 去年の終わりに前の彼女とひどい別れ方をしたんだ。それでも僕はポジティブでいたかったし、この経験をポジティブなものに変えようと思ってた。だけど僕にできたことは、SNSから一歩下がって、すべてが上手くいってるフリをやめることだけだった。SNSから離れて、曲作りとスタジオワークにフォーカスして、友達と楽しい時間を過ごして、自分のことをハッピーにしたかったんだよ。曲が出来てみんなに聴かせる時が来たら、そこでSNSに戻ればいいと思ってた。実際、SNSに戻ってきた時のみんなからのサポートはハンパなかったよ。
「If I Ever」の真意
―今年1月に新曲「If I ever」をリリースしたわけですが、この曲はコナーのことを待っていた人たちへの答えになりましたね。
コナード これが僕の経験したストーリーをみんなに伝える手段になったと思うんだ。自分がどういうプロセスで何を経験し、どう理解したのかを伝えたかったからね。曲になったものをみんなに聴かせた時に、多くの人が共感してくれたから、自分は一人じゃないってことにも気づかされた。こういう感情を持つのは自分一人だけじゃなかったし、他の人の救いにもなってる。「Oh my god! まさに今の自分に必要なのはこれなんだ」とか、「これって、まさに自分が経験したことだ」みたいなメッセージをたくさんもらったよ。それはスゴくうれしいことだったね。
―「If I ever」の曲作りはどのように始まったのですか?
コナー 彼女と別れた後、仲のいい友達とスタジオ入りしたんだ。ロンドンの自分のアパートにスタジオがあるんだけど、僕とその友達は毎日スタジオに入って、新曲を作り、新しいことにトライして、上手くいくかどうかいろいろ試してたんだ。「If I ever」は僕と友達のジョーダン・ショー、プロデューサーのブレンダン・バックリーで書いた曲なんだけど、3人でスタジオで何曲か作ってる時に、いきなりこの曲のアイデアが浮かんだんだ。3人ともスゴく気に入ったから、すぐに曲を完成させたよ。アルバム制作のスタートとしては完璧だったと思うね。
―「If I ever」のMVは、自身でディレクターを務めていますよね?
コナー 僕のMVはほとんど自分でディレクションをやってるよ。MVのアイデアは最初からあったんだけど、1つのビデオの中に2つの異なるビデオが同時進行で進んでいくわけだから、撮影はスゴく難しかった。もちろん、撮影も編集も楽しいものになったけどね。
―何も知らないですべて上手くいっているフリをするのか、現実を直視して痛みを味わうのか。2つのビデオで全く違うストーリーを同時進行させることによって、そこの選択を問うていますよね?
コナー まさにそこがポイントなんだ。知らない方が幸せなのか?っていうことさ。MVの中の片方の僕は何も知らないから、ハッピーに見えるんだけど、それは嘘でしかない。そういうレッスンを伝えたいと思ったんだよ。ただ、自分が望むことは自分で選べばいいと思ってて。それは自分がどう生きたいかということだから。僕個人としては、真実を知る方がいいし、真実とともに生きた方がいい。それでどれだけ痛みを味わったとしても、そこから学んで前に進むことができるわけだから。
―それを実際に経験したわけですしね。
コナー そうそう。これは実際に起こったことだから。僕は真実を知りたい方なんだけど(笑)。
―アルバムには「Intro」と「Outro」があって、どちらも場面設定が空港になっているし、『+11 Hours』というタイトルは時差を意味していますよね。別れた彼女とは遠距離恋愛だったのでしょうか?
コナー そうなんだ。面白いことに、ちょうど今僕はオーストラリアに来てるんだけど、別れた彼女はオーストラリアに住んでるんだよね。彼女の住む街でもライブをやる予定があるんだ。だからスゴくナーバスになってるよ(笑)。
―そのことはリリックでも歌っていますよね。
コナー そうそう。「If I Ever」で、「いつか君がいる場所で歌っていたとしても/お願いだから来ないでほしい」って歌ってるくらいだから。
「最悪の時でも、美しくかけがえのないものってある」
―今はストリーミングで音楽を聴く時代ですが、『+11 Hours』は「Intro」から始まって「Outro」で終わっているし、曲の流れにしても、映画のようなストーリー性があって、作品としてのアルバムという感じがスゴくしました。
コナー そうなんだ。僕はストーリーというものが常にすべての中心にあると思ってるし、映画、TV、音楽、演劇は、どれもストーリーが中心にあるんだよね。「Intro」と「Outro」では、僕が手放さなきゃいけない現実を表現してるんだ。彼女に会いにしょっちゅうオーストラリアに行ってたし、それが自分の人生にもなってたし、自分の時間をイギリスとオーストラリアで分けてたし、彼女がイギリスに来ることもあった。それをアルバムの中で表現したかったんだ。
―それにしても、長距離恋愛は大変ですよね。
コナー ひどいものだったよ。会えないし、そばにいてくれないし。FaceTimeで長時間話してると、会ってる気にはなるんだけど、現実の生活で一緒にいる感覚とは全く違う。相手が話したくない時には会話もできないんだ。そういう恋愛が終わってしまったことが、このアルバム全体のインスピレーションになってると言えるね。
―アルバムのどの曲も別れをテーマにしていますが、1曲1曲ごとに異なるヴァイブスで、異なるエモーションを、異なるシチュエーションで歌っていますよね。
コナー その通りだね。そういう風に作ったのも、別れ自体がそういう感じだからだ。朝起きて、「会えなくてさみしい」って思う日もあれば、「大嫌いだ。二度と会いたくない」って思う日もある。だからアルバムでも、自分が感じた様々な感情を描いてるし、自分がそこからどう抜け出したのかを描いてる。それで音楽の方も多様なものになったと思うんだ。常に変化する自分のムードを反映させたかったからね。
―「Enemies」は曲もリリックも切ないですけど、名曲ですね。「僕ら/敵同士になれるかな?/忘れようとするより/嫌いになったほうがいいから」なんて、かなり切ないです。
コナー この曲は大好きだね。彼女のことを忘れられないなら、嫌いになった方がいいって、本当に思ったんだ。それしか僕が前に進める方法はなかったんだよ。前に進むために考えた面白い視点だとは思うんだけど。
―「Storage」も名曲だと思いますが、彼女との思い出を「ストレージ」と表現しているのが面白いですね。確かに、その思い出はもう必要のないものだけれど、消したくても消せずにずっと残っているものだから。
コナー 間違いないね。彼女と別れた時、いろんな友達や仕事仲間と話をしたんだ。話しててわかったことがあって。一番傷ついたことは、彼女はもう自分の人生には存在しないのに、彼女のことはどんなディテールでも記憶として残ってることなんだ。それは本当につらかったね。彼女のことを知りたくて覚えたことばかりなんだよ。彼女が好きな映画とか、彼女が調子の悪い時に僕がすべきこととか。それがある日突然彼女がいなくなって、僕が覚えたことだけが残ってる。「ストレージ」と表現したのは、僕の脳の中はまだ彼女のことでいっぱいで、空きスペースがなくなったって感じたからなんだ。
―アルバムはどの曲もスゴくパーソナルなことを歌っているのですが、同時に、コナー自身は音楽で解放されたと思うし、聴き手にとっては寄り添ったものになっているんですよね。そこは制作していく中で意識しましたか?
コナー 最悪の時でも、美しくかけがえのないものってあるんだ。それが音楽として形になったんだと思う。めちゃくちゃひどいこととか、なかなか克服できないことがあっても、その反面で良いこともあるし、それが僕にとっては音楽になるんだ。乗り越えて、何とか理解して、自分が感じてることを知るための、僕なりのやり方になるんだ。だからこれはセラピーみたいなものだね。僕個人としても、音楽アーティストとしても、音楽を作ることがナンバー1の解決方法になるんだよ。
―今後の予定は?
コナー ツアーが続くし、フェスの出演も控えてる。6月にもオーストラリア・ツアーがあって、夏はヨーロッパで小規模のツアーもある。日本にも行きたいけど、日本でライブをやるからには、準備に時間をかけてちゃんとやりたいね。日本に行くことは、死ぬまでにやりたいことのリストに入ってるんだ。あと、今年はまだまだ新曲を出していく予定だ。音楽活動を楽しんでるし、新しいものはどんどんクリエイトしていきたい。
―音楽以外でやりたいことはありますか?
コナー ファッションも好きだから、自分のブランドでデザインをやったり、他のブランドとコラボをやったりしてみたい。あとは、自分のMV以外でも映像のディレクションをやってみたいね。
―恋愛映画とかどうですか?
コナー やるべきだろうね。悲しい恋愛ストーリーになると思うよ。ただ、終わりだけはハッピーエンドにしたいね(笑)。
―これからオーストラリア・ツアーが始まりますが、別れた彼女がライブに来ないといいですね。
コナー 本当だよ! 恐ろしいね。
―でも、もし本当にライブに来たら、新曲が生まれそうですけど。
コナー 間違いないね。タイトルは「I Cant Believe You」か「Im Not Glad You Came」かな(笑)。
<INFORMATION>
『+11 hours』
コナー・メイナード
エイベックス
配信中
https://avex.lnk.to/11hoursPR
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