Gacharic Spinの最終形態、アンジェリーナ1/3が語るアルバムで描いた二面性
Rolling Stone Japan / 2023年6月16日 18時0分
Gacharic Spinが日本クラウンへの移籍第1弾として、約2年振りとなるニュー・アルバム『W』を2023年7月5日にリリースする。
アルバムのテーマは、先行配信シングルの「カチカチ山」「レプリカ」という両極端なイメージの楽曲が示唆しているように、誰もが持っている”二面性”を表したものだという。一方で、卓越した演奏力を駆使したそのサウンドはむしろ多面体と言いたくなるほどに多彩で縦横無尽だ。
今回、初めてGacharic Spinの音楽に触れる人にもその魅力を伝えるべく、バラエティ番組やラジオなど、多方面のメディアで大活躍中のメンバー、アンジーことアンジェリーナ1/3にご登場いただき、自身を含めたメンバーそれぞれの紹介からアルバム収録曲についてまで、思う存分語ってもらった。
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―レーベル移籍しての新作リリースとなりますが、バンドのテンションは今どんな感じですか?
アンジー:バンドの音作りだったりライブパフォーマンスだったりを支えてもらう環境がすごく良い状態で、「移籍したからには絶対もっともっといい音を届けていこう、いいライブを届けていこう」って、バンドの空気感としては今すごく燃え上がってメラメラしてる感じです。
―Gacharic Spinがどんなバンドなのか改めて紹介したいと思うんですけど、「カチカチ山」のMVを見るとアンジーさんがメインボーカルではなさんが最初ギターを弾いていて途中からドラムを叩き出したりしてますよね。これってどういうことなのかなって思う人も多いと思います。
アンジー:「カチカチ山」はエンターテインメントを追求したGacharic Spinが一番得意な分野の音楽になっているんですけど、誰がどのパートかわからないですよね(笑)。バンド自体はもう14年のキャリアがあって、メンバーチェンジもあったんですけど、その中で、はなさんがドラムからドラム・ボーカルになって今はボーカル・ギターになっていたりとか、パートチェンジもあったりして、時期によって第2期、第2.5期という風にそのときどきのGacharic Spinがあるんです。今は第5期になってこの6人がGacharic Spinの歴史の中で一番長いメンバー、バンド編成になっています。「最終形態」ですって言えるような形をしっかり作っていこうっていう気持ちでやってます。
―では、アンジーさんからメンバーさんそれぞれについて教えてもらっていいですか。
アンジー:なんか照れくさいですけど、わかりました(笑)。まずベースでリーダーのF チョッパー KOGAさんは、私のことを見つけてくれたメンバーなんです。今はGacharic Spinはセルフプロデュースのバンドになったので、KOGAさんがバンドの見え方やステージのこと、『W』の中に入ってるライブ映像だったり、バンド全体の見え方っていうのをすごく意識しながらプロデューサー業にも回ってくれています。本当にすごく視野が広くて、私とかもこんな見た目なんですけど(笑)、落ち込むときとかもあったりするんです。でもそれってあんまり人に察して欲しくないじゃないですか? でもKOGAさんには嘘をつけないっていうか。それぞれのメンバーのことをちゃんと理解して、寄り添ってくれるから本当にリーダーとしてもう人としてもすごく尊敬してます。
―もともと、Gacharic SpinはKOGAさんとはなさんから始まったバンドなんですよね。はなさんはどんな人ですか?
アンジー:はなさんは音楽の才能がすごくて、Gacharic Spinのサウンドを作る部分で柱になってくれてる人なんですけど、音楽以外のところが少し抜けてて(笑)。カリスマ的な男前キャラみたいなのもあるからちょっと怖い人なのかなと思ってたら、初めての挨拶のときにすごいふざけながら私に声かけてくれて、すごくかわいらしい人だなって思いました。そういう人間的なギャップもあるメンバーなので、一番人として面白いかもしれないですね。
―TOMO-ZOさん(Gt)はいかがですか。
アンジー:トモちゃんはとにかく見た目とのギャップがすごいです。背中で語ってくれるタイプで、見てると自分も奮い立たせられるというか。別に多くを語るわけでもないんですけど、常に人前で見せてる笑顔の裏には、ものすごい練習と努力があって、すごく尊敬してます。あと、一番欲しいときに欲しい言葉をかけてくれるんです。KOGAさんとは違うベクトルで、人に寄り添える人なんだなって感じます。
―オレオレオナさん(Key)についてはどうでしょう。
アンジー:オレオさんは、一言で表すと”空みたいな人”ですね。オレオさんが笑ってるとバンド全体の雰囲気がハッピーになるし、誰かが悲しんでいたりしたら寄り添ってくれますし、その人の感情以上に自分が爆発しちゃうタイプなんです。あと、私のバンドのフロントマンとしての動きをすごく見てくださって、私がすごく野心家なのを知ってるから「お前そんなもんか!」みたいに煽ってくるんですよ(笑)。バンドとしての私のキャラクターっていうのもすごい意識しながら優しい言葉をかけてくれるっていうよりは、ボコボコにしてくるタイプなんですけど(笑)、その方が私はすごく奮い立つんですよ。オレオさんに言われた一言でめちゃくちゃいいライブになることも多いです。
―ドラムのyuriさんは2019年にアンジーさんと同じタイミングで加入されたメンバーですね。
アンジー:元々はなさんがドラムだったところから、コンバートしてyuriが加入したわけですけど、前任のドラマーがいる状態で自分がドラムを叩くって、すごくハードルも高いし、プレイ的な部分でもいろいろ言われたとは思うんですよ。私も未経験の女子高生として加入したので、「大丈夫なの?」っていう声もあったし、そこはいわずもがなお互いに感じてる部分もあったんですけど、そういうの一切感じさせずにどんどん突っ込んで自分のプレースタイルを確立していったyuriの姿を見て、私は負けちゃいけないなって思ったし、yuriが努力してプレイスタイルを完成させる姿を見せてくれたからこそ、私もyuriに負けないぐらいやるぞって思えたので、本当にyuriが同じタイミングで加入してくれたことは私にとって大きかったです。
―ありがとうございます。アンジーさんのパートは「マイクパフォーマー」となっていますけど、どんな経緯でそうなったんですか。
アンジー:もともと、私が加入するタイミングで、本当はもう1人ボーカリストの女の子が入る予定で、そっちの子がメインで私は煽りや歌以外のマイクパフォーマンスでお客さんとの一体感を出す役割みたいになっていたんですけど、その子が発表の5日前に辞退してしまって。元々、私はそのメインの子とのバランスがあってマイクパフォーマーとして入る予定だったので、バンドとして私の見せ方をどうしようっていうことでメンバーみんなで考えて、はなさんがドラム・ボーカルで私がセンターに立ってボーカルを取る曲もあれば、一切歌わないけどずっと煽ってるだけの曲があったり、みたいな立ち位置になったんです。そこからyuriが加入してはなさんが前に出てきたので、今ははなさんとツインボーカルっていう形でやってます。
―もともとアンジーさんは、どうして音楽の世界でやって行こうと思ったんですか?
アンジー:音楽をやりたいと思ったのは、お父さんが中学校1年生の時に亡くなったことがきっかけだったんです。それまで芸能のお仕事をしたいなっていう漠然とした夢があって、お芝居の仕事とかをやっていたんですけど、それを一番応援してくれていたお父さんの存在がいなくなったときに、「これってやってる意味あるのかな?」と思って1回やめて中学校3年間普通に学業専念しようと思ったんです。そのタイミングでお父さんの遺品整理をしたらいろんなアーティストのCDがいっぱいあったんです。それを見たときに、「お父さんとドライブ行くときこの曲聴いてたよな」「お風呂入ってるときずっとこの曲歌ってたよな」みたいに、そのCDを見ただけで色んな思い出が蘇ってきたんですよ。やっぱり音楽ってそういうパワーがあるんだなって思ったときに、自分も音楽やりたいと思ったんです。誰かの人生に寄り添うとか大きいことは言えないんですけど、時間とか心とかにリンクして音楽っていつもそばにあるものだなと思うし、私がいつか死んじゃったときに、自分の肉体はないけど歌声ってずっと残っていくじゃないですか? それってすごくロマンがあるなって思うんです。そういう意味でも、音楽をやりたい気持ちが自分の中ですごく大きくなっていきました。
アンジェリーナ1/3
―その思いがどうやってGacharic Spin加入につながっていったんですか。
アンジー:音楽や表現に関することが専門的に学べるような高校に通い始めて、学園祭で初めて弾き語りでステージに立ったんです。そのときにたまたまうちのリーダーのKOGAさんが新メンバーを探すために、弾き語りのイベントやアイドルさんのイベントに行ったりしていて、それこそ学園祭みたいなところにも、観に行っていたんです。それでたまたま私が弾き語りをしてるところを観てくれたんです。それで後日、校長先生経由で、「F チョッパー KOGAさんからオーディションの話があるんだけど受けてみないかっていう話をしてくださいましたよ」って言われたんです。
―へえ~! 高校の学園祭まで足を運ぶってKOGAさんもすごいですね。
アンジー:そうなんですよ(笑)。その頃私はバンドサウンドが大好きでライブハウスに頻繁に通っていろんなバンドのライブを観に行っていたんですけど、ちょうどその年にGacharic Spinのライブをファンとして観て、すごく好きになっちゃって。「こんなかっこいいガールズバンドいない!」と思っていたバンドのリーダーから「オーディションを受けてみない?」って言われたので、もう二つ返事でオーディションを受けて、加入に至ったんです。
―学園祭でスカウトされるってすごいエピソードですね(笑)。でも、バンド未経験の状態から既に10年活動してるバンドのフロントマンを任されるって大変なことですよね。怖さとかはなかったですか?
アンジー:その学園祭の次のステージが、Gacharic Spinに加入後初ライブの恵比寿リキッドルームだったので、もう怖いとかじゃないっていうか(笑)。「もうとにかくやるしかない!」みたいな気持ちだったんで、どっちかと言ったらその後のツアーでライブハウスを回ったりとかして、ステージに立つ意味やすごさ、このステージ1つにどれだけの人が関わって作っていってるんだっていうことを理解してからの方が緊張するようになりましたし、恐怖心みたいなのもあったりはしましたね。
―ところで、学生時代はバンドを作ろうとは思わなかったんですか?
アンジー:バンドはずっとやりたかったんですけど、当時「私と同じぐらいの熱量でバンド好きでバンドやりたいって思ってる子なんてまわりにいない」って思ってたんですよ。ちょっと履き違えた尖り方なんですけど(笑)。でも本当にバンドが好きすぎて、ライブハウスに通うためにバイトを頑張って、学校のお金とかも払いながら残ったお金を全部バンドに注ぎ込んでたので、自分ぐらい熱い気持ちがない人とバンドを組んでも意味がないみたいなって思っていたんです。私はSUPER BEAVERさんが大好きなんですけど、SUPER BEAVERさんって学生の頃に結成していてライブの熱量もすごいし、言葉とか人とか空間をすごい大切にしたライブをするんで、「これをやりたい」って思ったときに、本当にマジで死ぬほどバンド好きで死ぬほどライブが好きな人じゃないとこの空気感は絶対出せないから、そんな人は私のまわりにいないって思ってバンドは組んでなかったんです。でもとりあえず音楽の実績を積まないことには始まらないと思って、弾き語りをやっていたんです。
―そのときは曲の合間に喋ったりもしたんですか?
アンジー:頑張ってMCもやってましたけど、今映像を見たらもう恥ずかしくて見れないです(笑)。でも私、基本出たがりなんですよね、きっと。だから出番の時間があれば全部くれっていうぐらいだったんで、そのときは全然恥ずかしさとかもなくやりきってました。
―いまや地上波のテレビやラジオにもたくさん出演されてますもんね。神田伯山さんとの関わりが話題になっていますけど、交流が生まれたのはどうしてなんですか。
アンジー:私がラジオ日本で1年間冠番組(「アンジェリーナ1/3のアンジェネレーションラジオ」)をやらせていただいたときに、リスナーさんからのメールで、「神田伯山さんという講談師の方がすごく良いからぜひ講談に触れてみてください」って教えてもらって、それをきっかけに、伯山さんのYouTubeチャンネルで「中村仲蔵」という講談を聞いたときに、もうボロボロ泣いてしまって。その「中村仲蔵」というお話自体が、自分の人生と重なる部分が結構あったので、号泣しながら約40分の講座を聞いて、「こんなに素晴らしいものを知らなかったなんて、何してんの自分」と思って、そこからすごく講談が好きになって、自分の人生の糧になっている芸事が講談になりました。そこから、私が「「中村仲蔵」を聞いて講談が好きになりました」ってラジオで話していたのを伯山さんが聞いてくださってて、TBSラジオの「問わず語りの神田伯山」で私の名前を出してくださって、そこからラジオ同士のラリーみたいなのがあって、半年越しのオファーが実って私の番組にゲストで来てくださったんです。そこから本当によくしていただいて、「伯山の妹」って呼んでくださるようになりました。
―伯山さんのラジオ番組「問わず語りの神田伯山」でピンチヒッターを務めたこともあったんですよね。
アンジー: 2022年4月に伯山さんのコロナ陽性に伴い、30分間ぽっかり穴が開いてしまうからどうしようってなったときに代打で私のことを呼んでくださったんです。講談界もそうですし大衆芸能、伝統芸能の人たちって下の世代の子たちをちゃんと出してあげないといけないって考えてくださる方たちが多いんですけど伯山さんもその1人で、Gacharic Spinのことも応援してくださっていて、「この機会にアンジーに是非30分ラジオの代役をやって欲しいです」って言ってくださったんです。大好きな番組だったし、それこそリスナーさんもすごく耳が肥えてる方ばかりなので、自分で大丈夫かなって気持ちもあったんですけど、伯山さんが作ってくださった1つのステージだから「私は絶対ここを成功させます!」っていうことで30分間お話させてもらいました。
―そこでアンジーさん自身、1つステップアップした感じ?
アンジー:そうですね。あの回がなかったら多分、この1年の動きはなかったんじゃないかなって思ってます。
―今お話を聞いていると、アンジーさんはすごく明るくてエネルギーに満ち溢れてますけど、アルバム『W』を聴くと結構ネガティブだったり人間臭い曲が多いですよね。
アンジー:Gacharic Spinはもう今年で14周年で、しんどいこともたくさん経験してきた姉さんたちがいるので、明るくポップな曲もあるけど、そこだけじゃなくGacharic Spinだからこそ表現できる人間臭さっていうのをすごく大事に描いています。『W』っていうタイトルには、「本当の自分と人前に立ってるときの自分」という二面性をしっかり描きたいっていう思いが込められているんです。だからこそポップな「カチカチ山」みたいにちょっと笑い飛ばしながらも、不満なこともあるよみたいなことを伝える曲もあれば、「ロンリーマート」とか、もっと根っこの部分、部屋で1人で思ってることを曲にしたような曲があったりとか。Gacharic Spinの2つの顔がしっかり描かれたアルバムだと思います。
―そういう意味の『W』なんですね。曲は作詞作曲編曲がバンド名義だったり、編曲に他の人が入っていたりしますが、どうやって出来上がっていったんですか。
アンジー:1曲を作るのにいろんなやり方があって、歌詞だけができててそこに曲をつけるメンバーがいたりとか。私で言うと、はなさんからラップパートだけを作ってきてって言われて、オケも何もない状態でとりあえずラップだけを作って、そのラップを聴いてはなさんが曲を作ったり。歌詞もいろんなメンバーの歌詞が入り組んでいたりするんです。リードの2曲(「レプリカ」「カチカチ山」)を含む前半4曲はTOMO-ZOさんがガッツリ、ギターから作っていこうという曲になってたりとか、本当に1曲通してもいろんな作り方があります。
―「ナンマイダ」は、まさに最後に〈どーにかして曲できた。〉って歌ってますけど、この曲は本当に複雑な構成ですよね。
アンジー:これはもう、はなさんだからこそ作れる曲で、Gacharic Spinって何回死んでてもおかしくないっていう(笑)、Gacharic Spinの歴史を歌ったような曲になっています。Gacharic Spinとして生きていくためにいろんなことを考えながらやってたら、もう何回死んでもおかしくなかったけど、結果今生きられてるよねみたいな。曲としてもすごく展開が多くて面白いし、歌詞も面白くて、いろんな紆余曲折ありながら、でもそれを歌ってたら〈どーにかして曲できた。〉みたいな落としにするのは、はなさんらしくてすごく良いなと思います。
―こういうミクスチャー的な曲って、何か参考にしているバンドとかいるんですか?
アンジー:Gacharic Spinって面白いことに、どのバンドっぽいなっていうことがないんですよね。だから本当に自分たちの音楽をしっかり確立してるんだなって思います。ざっくりしたくくりで言えばオルタナティブ・ロックとかメタルとかいろいろあると思うんですけど、ジャンル的にもどこにも属してないのがGacharic Spinの強みなんだなって感じますし、今回のアルバムもどの曲がどのバンドっぽいとかどのジャンルっぽいなっていうのがない、Gacharic Spinとしか言いようがないのが面白いんじゃないかなって思います。
―「レプリカ」は、アルバムのテーマの二面性を歌ってるからこそ、リード曲になった感じですか。
アンジー:そうですね。一発目にポップな「カチカチ山」をリード曲に持ってきたんですけど、「レプリカ」はその逆をいくだいぶシリアスなテーマが曲になっていて。これはレコーディングしながらだいぶ食らいましたね。
―食らったというと?
アンジー:自分の人生と重ね合わせながら歌ったときに、だんだんシリアスな方に意識が行っちゃって。レコーディングってだいたいいろんな人の顔が見える状態で行うのが普通ですけど、「レプリカ」に関しては、たまたま全然違うところにボーカル・ブースがあって1人の世界でじゃないと歌えないみたいな環境だったんですよ。私はもうそれがしんどすぎて、何か自分と闘いながらレコーディングしたので、めっちゃ疲れました(笑)。
―アンジーさん自身の中には二面性というか、仮面をつけているような瞬間ってあるんですか。
アンジー:私、じつはめちゃくちゃ暗いんですよね(笑)。人の言葉にいろんなことを感じちゃいやすくて、いろんなものをもらいやすいから。でもステージに立ってる私が求められてるのってそうじゃなくて、爆発的な力があったりパワーがあるキャラクターなので、そういう自分でステージの真ん中に立っていたいっていう気持ちはあるんです。そういう意味では、芸名のアンジェリーナ1/3と本名での自分っていうのは全然違っていて、そこが二面性になってるんじゃないかなっていうのは感じてます。
―「The Come Up Chapter」では赤裸々に嫉妬心や葛藤を歌っています。
アンジー:歌い出しの〈生きたい、生きて。感じてる〉っていうフレーズだけ、私が歌詞書いたんですけど、ここのサビの頭だけ歌詞がなくて、何にしようっていろいろメンバーの中で考えてたときに、KOGAさんに「これアンジー書いてくれる?」って言われたんです。それで歌詞を見ていたら、私自身もやっぱり人に対しての嫉妬心ってすごくあるし、自分のふがいなさにすごく腹が立ったりとか、なんでもっと自分ってうまくできないんだろうって葛藤することがめちゃくちゃ多いし、いろんな消化しきれない思いとかもいろいろあるけど、それでも生きたいと思ったんです。〈生きたい、生きて。〉の〈生きて〉っていうのは、自分を客観的に見たときに、それでも私はちゃんと生きなきゃいけないし、生きてほしいっていうのを伝えたいと思って書きました。自分を俯瞰で見て歌ってる曲にもなっているので、悔しさがあっても強くありたい自分っていう葛藤がすごくちゃんと書かれた曲になったんじゃないかなと思ってます。
―「リバースサイコロジー」はライブでお客さんが腕を振ってる光景が目に浮かぶような曲で、ベースのスラップとギターのユニゾンが凄まじいです。
アンジー:これは、インスト曲を第5期でも作ろうかっていうことで作っていたんですけど、サビだけ作ったら思いのほかサビがめちゃくちゃかっこよくて、AメロBメロはちょっとインスト的要素がありつつサビだけ歌詞があるっていうのも面白いんじゃないかっていうのでこの構成になっていて。インスト曲ってなるとライブで私の立場的に、「アンジー、なにやるの?」ってなるじゃないですか?
―実際、そうなったら何をするんですか?
アンジー:本当にそうなったときは、はけるんじゃないですか(笑)。でも第5期のインストっぽい曲って考えたときに、私はマイクパフォーマーだから、ボーカルとは違うけど楽器的な声の要素を入れようっていうので、ラップなんだけどラップとして聴くんじゃなくて、音の一部、演奏の一部として聴いてもらうようなラップがあったりとか、第5期だからこそできる楽器演奏と私の声も含めた面白さっていうのが「リバースサイコロジー」に入ってるんじゃないかなと思います。
―アルバムの中で、アンジーさんが特に聴いてほしい曲、歌詞はどんなところですか?
アンジー:7曲目の「Voice」は私が歌詞をガッツリ書かせてもらったんですけど、自分の亡くなったお父さんに向けて書いた曲なんですよ。自分は今一番頑張りたい時期にいて、この1年間でまた音楽的な部分以外でもGacharic Spinが注目してもらえるような状況を作れていたりとか、『W』は移籍した一発目ですごく大切に作りたいアルバムだったので、今自分の中で一番大切にしてる思いを歌詞にして歌いたいって思ったんです。私は自分の声が好きじゃなくて、この声がきっかけで小学校のときにいじめられてたりとかもして、一番のコンプレックスだったんです。だけど、KOGAさんがオーディションに勧誘してくれた理由になったのも私の声だったんですよ。「あの子の声は何か光るものがあるから、この声を新しいGacharic Spinの音にしたい」って。この曲はAメロが一緒に過ごした空間だったり大事にしてるものを描写していて、お父さんとの思い出や想いを書いた曲ではあるんですけど、今はマイクパフォーマーとして自分の声が先行でラジオをやらせてもらったり、バンドの顔となるような声になってるからこそ、メンバーに対するありがとうっていう想いも込めながら、「Voice」ってタイトルにしようと思って書いたんです。
―なるほど、お父さんへの想いもバンドへの想いも両方入っている曲なんですね。
アンジー:そうなんです。この曲はレコーディングも泣きながら歌ってました。曲自体を作ってくれたのが、オレオさんだったんですけどレコーディングもずっと見てくれていて。この曲に関してはうまく歌うとかじゃなく、等身大の自分で、ものすごく下手くそだったりしたらマジでごめんなさいって言いながらレコーディングブースに入ったんですけど、声が掠れながらバーって歌ってる姿を見て、オレオさんがすごく泣いてくださって。出来上がった曲を聴いたときは、2人で泣きながら抱き合いました。すごく感情の放出もできたし、この声でもっともっとGacharic Spinの音を強くしていきたいっていう意思とか決意表明にもなった曲だなって。やっぱり音楽を繋いでくれたのはお父さんでもあるので、「この声を使って頑張っていくね」っていう気持ちとか、いろんな想いを込めて作りました。
―歌に寄り添うような演奏のアレンジで、ディレイのかかったノスタルジックな感じが出てるのはそういうことなんですね。
アンジー:そうなんです、エモいですよね(笑)。最初、ギターの音色とかは私がレコーディングする頃にはできていて、ちゃんとミックスされた状態で歌ったんですけど、歌が入ったミックスをTOMO-ZOさんが聴いたときに、「この歌に負けないギターの音を作る」って思ってくれたらしくて、歌をもっと引き立てられるようなギターの音色をやんないといけないっていうのを声が入った状態でもう1回音作りしてくれたりとか、メンバー自身もすごく大事に音作りとかをしてくれて嬉しかったです。
―アルバム聴いてライブを見たいという人も増えると思うんですけど、ツアーは今2パターンやってるんですか?
アンジー:そうなんです。「47都道府県ツアー」と「New Revolution」っていう野音に向けてのツアーの2つを同時にやっています。47都道府県ツアーは本当は2020年に47都道府県全部回ろうということで作ったツアーなんですけどコロナになってしまって2020年から状況を見ながら回っているツアーなので「47都道府県ツアー」と「New Revolution」では全然楽曲のテイストや内容も違って、どっちも面白いと思います。
―ライブも観たこともありますけど、このアルバムを聴いただけでも、こんなに演奏技術を持っていて、他と違った面白いことやってるバンドってなかなかいないなって思います。
アンジー:すごいですよね!? いいバンドですよ本当に(笑)。自分はメンバーではあるんですけど、Gacharic Spinの一番のファンでもあるので。自分のバンドだから、こういうインタビューで「かっこいいバンドですよね」とか言うと、聞く人が聞いたら「えっまだそのファン目線?」っていう人もいれば、「なんでそんなに自分のバンドのことすごいってガンガン言えるの?」みたいに思う人もいると思うんですよ。でも私はこのバンドがすごく好きだし、一番のファンであり、1メンバーとしてGacharic Spinのことが好きなので、もうこのスタンスはずっと変えずにいようと思っています。
<リリース情報>
Gacharic Spin
New Album『W』
2023年7月5日リリース
CROWN STONES
各配信サイト https://gacharicspin.lnk.to/double
【通常盤 (CD only)】
CRCP-40660 ¥3300(税抜価格 ¥3000)
【初回限定盤 (CD+Blu-ray)】
CRCP-40659 ¥5500(税抜価格 ¥5000)
=CD収録= ※初回限定盤・通常盤共通
1. レプリカ
2. The Come Up Chapter
3. カチカチ山
4. rabbithole
5. ロンリーマート
6. KIRAKIRAI
7. Voice
8. Live Every Moment ~ヒトヨバナ~
9. ナンマイダ
10. リバースサイコロジー
【Blu-ray 】※ 初回限定盤のみ
Gacharic Spin LIVE 2023
「New Revolution~最終章の始まり~」
2023.2.23 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
<ライブ情報>
LIVE 2023 「Limit Breaker~結成 15 周年に向けて~」
2023年11月18日(土)日比谷野外大音楽堂
NEW ALBUM「W」Release Party!! 〜ALL PLAY+α!!!! Special Time〜
2023年7月23日(日)渋谷ストリームホール
TOUR 2023「New Revolution」
2023年6月3日(土)福岡 DRUM Be-1 ※終了
2023年6月11日(日)愛知 名古屋Electric Lady Land
2023年6月25日(日)石川 金沢AZ OPEN
2023年7月2日(日)大阪 なんばHatch
47都道府県TOUR「ROCKET SPIRITS」Restart!!
2023年6月4日(日)熊本 B.9 V2 念願の22/47 ※終了
2023年6月24日(土)長野 CLUB JUNK BOX 念願の23/47
2023年10月14日(土)兵庫 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎 念願の24/47
2023年10月15日(日)京都 KYOTO MUSE 念願の25/47
2023年10月28日(土)福島 郡山 HIPSHOT JAPAN 念願の26/47
2023年10月29日(日)茨城 mito LIGHT HOUSE 念願の27/47
チケット受付URL
https://l-tike.com/gacharicspin/
https://eplus.jp/sf/search?block=true&keyword=Gacharic+Spin
https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=Gacharic%20Spin
OFFICIAL SITE https://gacharicspin.com/
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