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須田景凪が振り返る挑戦の1年、初めて語られる制作エピソード、大切な出会い

Rolling Stone Japan / 2023年6月23日 18時0分

須田景凪(Photo by 雨宮透貴)

須田景凪が2023年6月21日(水)、メジャー2ndフルアルバム『Ghost Pop』の発売を記念し、東京・代官山蔦屋書店にてRolling Stone Japanの公開インタビューを開催した。

本イベントは、2023年5月24日(水)発売の須田景凪メジャー2ndフルアルバム『Ghost Pop』リリースを記念して、CD購入者対象に向けて行われた招待制のイベント。司会を音楽ジャーナリストの柴那典が務め、須田景凪に質問を投げかける形でイベントが進行した。イベントの後半には、観客からのマニアックで鋭い質問も投げかけられた。本記事では、公開インタビュー本編の様子をレポートする。

ー『Ghost Pop』リリースから約1カ月経ちましたが、本当に中毒性が強い、そして聴く度にいろんな発見があるアルバムだなと思っています。今回は、アルバムリリースから日も経ったということもありますし、幅広い話題で色々お話を伺おうと思っております。皆さん、拍手でお迎えください。須田景凪さん、よろしくお願いします。

須田:須田景凪です。よろしくお願いします。(お客さんと)めちゃくちゃ近いですね(笑)。

ーいらっしゃる前も言ってたんですけど、今回インタビューでたくさんご一緒しましたね。

須田:この短期間、柴さんとめちゃくちゃ会いましたよね。そもそも自分の初めてのインタビューも柴さんにしていただいて。5、6年前からお世話になっていますよね。

ーなので、結構縁が深い感じではあるんですが、公開インタビューは初めてですか?

須田:もちろん初めてです。話す事を考えて、変な間が開くかもしれないですけど、気にしないでください。


ステージ左から、柴那典、須田景凪(Photo by 雨宮透貴)

ーじゃあ早速、いろんな話を聞かさせてください。まずは、アルバムがリリースされて、5月27日にワンマンライブ「須田景凪 LIVE 2023 "Ghost Pop"」が開催されましたが、シンプルにライブを終えての手応えってどんな感じですか。

須田:自分の中ではもう遥か昔に感じていて。まだ1カ月くらい経ってないのかって感じだと思うんですけど、自分の中ではやり切ったし、いいライブだったし、いい日だったし、本当にもう1年前なんじゃないかってぐらい前に感じていて、そのくらいいろんなものを出し切ったライブになったんじゃないかと思っています。

ー久しぶりに声出しの解禁がされました。それまでのライブとやっぱ違いました?

須田:もちろん声出しがダメだよってなってからの期間、自分もたくさんライブをさせてもらって、寂しいけど、自分の中のライブって感覚的に声出しなしが当たり前みたいになってきていたんですよね。今回、3年ぶりに皆さんが声出しだったり、一緒に歌ってくれたりして。もちろん声出しちゃダメだよってライブも楽しかったけれども、やっぱり声が聞こえるとこっちもテンション上がるし、ライブとしての一体感が増すのがすごくよかったです。

ー見てる側の印象としても、お客さんと一緒に1つの場を作っていくというか、お客さんが来ることで、1つの場所として成立する、そういう感じがありました。

須田:それこそ、「シャルル」とか「メロウ」とか、何も言わずと歌ってくれたりするじゃないですか。その瞬間に、今ライブしてるなみたいな感覚がめちゃくちゃあって。一体感が増したっていうのはすごくわかりますね。

ーステージセットも豪華だったし、映像とかライティングもかなり幻想的な演出でしたが、ライブを作っていくにあたって、どんなコンセプトや考えがあったんでしょうか。

須田:1年くらい前から、今までの須田景凪のライブっていうのもちょっと変えてみたいなと思っていて。そこからステージの装飾であったり、目に見えて違うものになったよねってしたくて、照明の演出の仕方とかも変えました。とはいえ、ライブをしてみて発見はあったので、ここの照明めちゃくちゃ良かったけど、逆にここで照明の使い方を変えたらどうなるんだろうとか、そういうのはツアーに活かしていけたらなと思っていました。

ー元々、変えようっていう想いがあったんですね。

須田:変えようというか、いろんなことを実験してみたいなと強く思っていた1年だったので、その延長ではありますね。

ーインタビューでも、去年は新しい挑戦が多かった1年だったっておっしゃってましたね。ライブの演出とかも、その一環だったんですか。

須田:ライブとか音源もそうですし、皆さんが目に見えて触れる音楽の部分はわかりやすく変えてみたいなと思って。そういうのも1つきっかけになるライブになったんじゃないかなと思っています。

ー先ほどおっしゃったように、9月から全国7都市を回るツアー「須田景凪 TOUR 2023 "Ghost Pops"」が始まるわけですが、この準備も、もう始まってたりするんですか。

須田:そうですね。具体的にどの曲をやるとか、こういうセットリストでこういう演出をしてみたいなことは決めてないんですけど、初めて全国ツアーを3年前にやるって発表して、それが始まる直前でコロナでなくなっちゃったりしたので。自分も悔しかったですけど、その時に悲しい想いをした人たちもいっぱいいるじゃないですか。それを払拭するツアーでもあるなとも思うので、そういうものを熱量だとしても演出だとしても表現できたら1番美しいんじゃないかと考えています。



ーアルバムがリリースされた後の話題についていくつか聞いてたらもうと思うんですが、「ラブシック」のMVも公開されました。これも非常にコンセプチュアルで、「ダーリン」のMVも含めて、実写とアニメーションを融合するっていう作りになっている。このアイデアは、そもそもどういうところからだったんですか?





須田:遡るとちょっと昔になっちゃいますけど、今回の『Ghost Pop』っていうテーマを視覚的に表現するにはどうしようってところから、「ダーリン」とか顕著なんですけど、アボガド6さんのイラストと実写をミクスチャーするような見せ方をしてみたいなと思って。『Ghost Pop』のジャケットかもそうなってるんですけど、「ダーリン」と「ラブシック」でも、それをやってみようという一連の流れから生まれたビデオになってます。

ー「ラブシック」を作った時に映像のイメージみたいなのもあったりしましたか。

須田:いや、あまりなかったですね。それこそ、『Ghost Pop』ってアルバムを作るにあたって、「ラブシック」を最初に作ったんですよ。その後に、「ラブシック」って曲からアルバム全体が見えていくんだろうなと思って、「ダーリン」とかいろんな曲を書いていったんです。それこそ、「ダーリン」のMVを森本一平監督とアボカド6さんと一緒に作った後、「ラブシック」はこういうアプローチができるんじゃないかっていうのを、またアボカド6さんと森本さんと喋って、いろんな意見を出し合いながらみんなで作っていきました。

ー森本監督からは、どんなアイデアがあったんですか。

須田:そもそも森本さんは『Billow』ってアルバムに付随するツアーのライブ映像を撮ってくれていて。その流れもあって、僕がどういうものが好きとか、どういうものが美しいと思っているみたいなのは前から知ってくれていて。森本さんとすごく長く話して。その中で、お互いが好きな映画とかがすごく近くて。ちょっとギミックがある感じというか、ビデオもそういう風にしてみようかってところから一気に進んでいきましたね。



ーちなみに、その好きだった共通する映画って?

須田:1番僕が大好きなのは『メメント』っていう昔の映画なんですけどって言ったら、森本さんも「僕も人生で1番好きです」みたいな言ってくれて。それはめちゃくちゃ通ずるものがあるねっていうところから、いろんなアイディアをくれて。ここはちょっと難解すぎるかもねとか、ここは難解だからこそいいよねとか、何回でも見れるものにしようみたいな話をしながら、森本さんとビデオの一連の流れを話し合って決めて。逆にアボカド6さんは、後半の実写のところに、イラストの須田を入れたらおもろいんじゃない?みたいなアイデアをくれて。どんどん色々な意見を取り入れて、みんなで作っていったというか。

ー映像のストーリーは1回見ただけじゃ噛み砕けないところもあると思うんですが、いわゆるなかなか抜け出せない世界をループしていく。このアイデアって曲から来ているようなものなんでしょうか。

須田:漠然とこういう感じの曲なんですよねってお伝えしたら、森本さんが「須田さんが何回も死んじゃうのとかどうですか?」ってアイデアをくれて。あ、めちゃめちゃいいっすねってなったんです。森本さんが目に見えて大きいアイデアをくれましたね。

ー撮影を振り返って、シンプルに大変でしたか?

須田:もちろん大変だったんですけど、今まで実写で撮らせてもらったビデオって、もう少し雰囲気のある場所で歌ってますみたい映像が多いと思うんです。今回は、そういうビデオってよりも、あまり歌ってるシーンがなくて、ご飯を食べたり、歯を磨いたり、走ったり、今までやったことのない、録られたことのない映像だったので、普通に歯を磨いていていいのかな?みたいな(笑)。撮られるにあたって、どうしたらいいんだろうみたいな大変さはありましたけど、慣れないっていう感覚のほうが強かったですね。

ー仕上がったMVを見て、ご自身としてはどうでしたか。

須田:実写系の映像って全部そうなんですけど、順番通りに撮っていくわけじゃなくて、後半のこのブロックだけ撮りましょうみたいな感じでバラバラに撮っていくんですよ。だから撮られている側は想像のつかない部分が多いんですけど、出来上がった時に、森本さんが描いてるのはこういうことだったんだ、って初めて視覚的に見えて。その段階で、ここはもっとこうしたいですとかぶっちゃけなくて。最初から完成されていて、シンプルにすごいものになったなっていう感覚がありましたね。



ーそれこそ「ダーリン」「ラブシック」の森本さんもそうですし、アボカド6さんはもちろん盟友的な関係ですが、『Ghost Pop』というアルバムを作っていく過程で、同じ感性、感覚を共有できるクリエイターの方が周りに広がったという感覚はありましたか。

須田:それこそ、こうやってインタビューしていただいて、自分も改めて振り返る作業に入って、アボカド6さんはもちろんですけど、気づけば頼れる人、頼れるクリエイター、自分の作品を少し預けられる人たちは、少しずつ増えてきた感覚がありますね。

ーそういう感覚を共有できる、預けられる作り手って、自分と何かしら通じ合うものがあったりするんだなという発見もあった?

須田:そうですね。来週、来月、来年にはお互い感性が少しずつ変わっていくものだけど、プライベートで、より親交がある人とかだったら、その感性とかも一緒に交換しながら生きていくじゃないですか。だからこそ、友達が増えたのかもしれないです。その感覚が近い。

ーここ1年で振り返って友達が増えた、と。自分のキャリアとかを振り返って、この出会いは大きかったなっていう出会いはありますか。

須田:それこそ、アボカド6さんがいなかったら今の自分は絶対にないし、それは関わってくれた方全員なんですけど、目立つとこでいうと、例えば、フレデリックのみんな。特に(三原)健司さんに関しては、本人が言っていいよってことだったので言うんですけど、僕、基本LINEとかすぐ返すんですよ。どれだけ遅くても1時間とかで返すタイプなんですけど、普通にめちゃくちゃ忙しい日があって、ちゃんと脳みそを使って返事できないから、それが終わるまで1日寝かせていたんですよね。そしたら初めて健司さんから電話が来て。「どうしたんですか?」って言ったら、「いや、須田くんからこんなに連絡が来ないのは初めてだから心配でね」って。そんな友達がいるのって素晴らしいな!と思って。

―すごいですね(笑)。

須田:俺はそれがめちゃくちゃ嬉しくて。本人はめちゃくちゃ恥ずかしがってたんですけど(笑)。気づけばそんなことを思ってくれる友達ができたのかと思ってすごく嬉しかったし、 そういう人たちが気づかない間に少しずつ増えているんだろうなって。自分もそう思いたい友達だったり、後輩とかも少しずつ増えていって。こういう話ってどうしても暑苦しい話にはなってくるんですけど、でもそれでしか得られない情報だったり経験みたいなものはたくさんあるので、そういうものを見逃さずに生きていかなければなと思いました。



ーそして、ここ最近の動きとしては、先日「THE FIRST TAKE」で、「シャルル」と「ダーリン」の歌唱が公開になりました。「THE FIRST TAKE」自体が初めてだったと思うんですが、やってみてどうでしたか?

須田:バチバチに緊張していました。それこそ、昨日もちょっとラジオに出させてもらって同じようなことを喋ったんですけど、やっぱり白い部屋に入って歌ってくださいねっていう状態なので、イメトレはたくさんしていったんですけど、やっぱりあの場に立つと空気感も全然違いますし、今から本番ですってなった瞬間、さっきまで賑やかだったスタッフさんが一斉に静かになる。みんなで、あの緊張感を作っているんです。ただ、ひたすら緊張したっていうよりも、すごくいろんなことを考えながら歌えたんですよ、2曲とも。それは自分でもすごく不思議な感覚で。多分、あの場じゃないと生まれない感覚なんだろうなって。

ー「シャルル」と「ダーリン」、それぞれどんなことを考えて歌っていたのでしょう?

須田:やっぱり、「シャルル」の方が作ってから年月も長いので、作った当時の記憶はもちろんですけど、自分が作曲に手を出した時期のことだったりも思い出して。自分はニコニコ動画の文化出身なんですけど、あの文化って当たり前のようにそれまでいた人がいなくなっていくんですよね。去年まで一緒に仲良く頑張っていたクリエイターのアカウントが急に無くなって連絡がつかなくなるとか、当たり前の文化なんですよ。良くも悪くもと思うんですけど、そういえばあんな人もいたなあとか、そういう関係性ももちろん思い出しましたし、自分が作曲を始めて曲をたくさん書いていく中で、何を考えていただろうみたいな。音楽以外もなんですけど、いろんなことを振り返りながら歌えた感覚はありましたね。



ー「シャルル」は大きなターニングポイントになった曲でもあるわけで、自分の記憶とかあの時はああいうことを考えていたとか、そういうのが改めて蘇ってくるような感じ?

須田:もちろん蘇ってきたんですけど、それこそ昔の感覚とか、脳みそでは覚えているんですけど、感覚では意外と覚えてなかったりするじゃないですか? その感じが感覚として蘇ってきた。そうならざるを得ない場所に行かないとそうならないと思うので、改めて思い出したのはすごい貴重な体験でしたし、なるべく1日でも長く忘れないようにしたいなって思いました。

ー「ダーリン」の方はどうでしたか。



須田:「ダーリン」は、作ってから1年も経っていないんで、いろんなことを生々しく覚えているんですけど、曲単品っていうよりも、このアルバムを作るにあたって何を考えていたかをすごく思い出して。音楽的な話よりも、このアルバムを作るにあたって、そもそも自分はどういう人間だったか思い出すことがすごく多かったんですよ。音楽関係なく、皆さんの1番古い記憶みたいなのって多分あると思うんですけど、実は、さらにその奥にもう1個、思い出せない記憶みたいのあると思うんです。それを意図的に探しに行ったことがめちゃくちゃあって。それってすごくスタミナを使うし、言ってしまえば、思い出したくないことを思い出す作業とかもあるわけで。そういうものをトータルで思い出した後に、自分の一部にしなければならないみたいな感覚があって。そういうものを考えながら歌っていましたね。

ーアルバムのインタビューや、ライブのMCでもおっしゃってましたけど、『Ghost Pop』というアルバムを作ることが、アーティストとしてはもちろんですが、それ以前に人間としての自分の棚卸しのような作業になった。

須田:そうなりましたね。

ーしばらく経って、制作時期って自分にとってどういう期間だったと思いますか。

須田:どっちかっていうと、自分はパソコンの前で制作している時間が1番好きなタイプなんですよ。曲じゃなくても、ずっとゲームをしたり、黙々と作業するのが1番好きなんですけど、去年は目に見えて人前に出させてもらったり、いろんな初めましてを体験させてもらったりして。自分をある程度さらけ出さないとやっていけないんだろうなっていうのをすごく感じた1年ではあったんです。それは前からわかっていたんですけど、改めてそれを作品にする作業は初めてだったので、その感覚は意識的だったと思います。

ーじゃあ、最後に僕から1個聞かせてください。ライブのMCでも、今日のお話でも、新しいことにたくさん挑戦してきたという話題がありました。今後、挑戦してみたいことって今、思いつくことでありますか?

須田:なんすかね…? でも、今、思いつかないようなことがしたいんだろうなって気はしていて。それこそ、走ったり、ジムに行ったりも、ある種、必要に駆られてやりはじめた部分ではあるんですけど、やんなくてもいいことをやってみたいなと思っていて。水面下で、柄にもないことをたくさんする時間が多分必要なんだろうなって気はしていて。

ーこちらが勝手に言うと。デザインとか?

須田:それこそ、どこにも出してないですけど、趣味でデザインを触るのは好きなんです。それを更にやっていくのもいいし。何やったら楽しいんですかね? なんかあります?

ーそれこそアボカドさんみたいな造形物を作るとか?

須田:う〜ん、それはアボカドさんのすごさを隣で見ちゃってるから。

ーもしくは体を使った何か。ダンスとか?

須田:面白いですね(笑)。

―あとは、須田さんがやってきた中から1番遠い距離があるってところで言うと、体を駆使する何かもしくは、突然海外で1カ月過ごすとか?

須田:でも、そういうことですよね。ダンスとか柄にもないですし、海外とか、僕は絶対行かなそうじゃないですか。今、想像すると笑ってしまうようなことをちゃんとやってみたいなってのは思っています。

ー突然、アイスランドで1カ月過ごすとか?

須田:アイスランドのことを何も知らないので、何も浮かんでこないですけど、本当にそのくらい、今までの延長だったらしないであろうってことをしてみたい感覚はすごくありますね。


<リリース情報>



須田景凪
『Ghost Pop』
2023年5月24日(水)発売(CD・ダウンロード・ストリーミング)
特設サイト: https://suda-keina.com/ghost-pop/
初回生産限定盤 [CD+Blu-ray] 「Ghost Popオリジナルキーホルダー」付き WPZL-32055〜6 ¥5940(tax in)
通常盤 [CD only] WPCL-13478 ¥3300(tax in)

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