ニューヨークが語る、芸人とアーティストの相互関係、『だが、情熱はある』に見る「新しいお笑いブーム」の形
Rolling Stone Japan / 2023年6月25日 11時45分
『M-1グランプリ』と『キングオブコント』の両方でファイナルに進出し、文春オンラインによる「好きな芸人ランキング」では2年連続の1位に輝くなど、快進撃を続けるお笑いコンビのニューヨーク。皮肉と偏見に満ちた”毒”のあるネタが持ち味だが、1986年世代ならではの感覚を言語化した「あるある」に、SMAPメンバー、Dragon Ash、米津玄師といった固有名詞をも取り入れた攻めの漫才/コントは、川谷絵音やクリープハイプの尾崎世界観らを筆頭にアーティストからの支持も熱い。今回Rolling Stone Japanでは、屋敷裕政と嶋佐和也に本誌初のインタビューを敢行。2人が今も主戦場とするYouTubeをはじめ、お笑い芸人とアーティストの交流、スリップノットとの衝撃のエピソード、話題のドラマ『だが、情熱はある』、そして夏に控える史上最大規模の単独ライブ「虫の息」について、ざっくばらんに語ってもらった。
【写真を見る】ニューヨークの屋敷裕政と嶋佐和也
YouTubeは芸人にとって革命的な存在
ーいきなり個人的な話で恐縮ですが、2020年の最初の自粛期間は『ニューヨーク公式チャンネル』にすごく救われたんです。多忙な今でも高頻度でYouTubeを更新し続ける原動力はどこにありますか?
屋敷裕政(以下、屋敷):あー、ありがとうございます。そうですね、毎日更新してたんが週5日になって、4日になって…とちょっとずつ頻度は下がってますけど。まあ、「しっかりやってこう」っていう感覚を持っているというよりも、もう更新するのが日課というか、当たり前になってます。
嶋佐和也(以下、嶋佐):街でも「YouTube見てます!」って声をかけてくれる人がたくさんいます。普段テレビを見ない層が何かのきっかけで俺らのYouTubeを見てくれるパターンもありますし、YouTubeでしかできない内容もあると思うんで、そこは当たり前のように続けている感じですね。
ー『ザ・エレクトリカルパレーズ』(※1)、『花鳥風月問題』、『シン・りょう』(※2)など毎年のようにムーブメントが起きるチャンネルですが、この徹底的に掘り下げるジャーナリズム精神はお2人の性格的なものでしょうか。
※1 吉本興業のお笑い養成所「NSC東京校」の17期生として入学した生徒の一部により結成された、「ザ・エレクトリカルパレーズ」(通称エレパレ)の正体を探るべく、ニューヨークが芸人たちを調査するドキュメンタリー映画。監督は同チャンネル作家の奥田泰
※2 東京NSC24期のコンビ「小虎」のりょうを主人公に据え、様々な証言者の声から彼の「表の顔」と「裏の顔」に迫るドキュメント企画
屋敷:たまたまですけどね(笑)。後輩芸人の気になる話を聞いたから、「じゃあアイツ呼ぼう」って次々と話を聞いて、聞いて、聞きまくった結果がああなっただけで。2月にやった『ニューヨーク×鬼越トマホーク 東京15期未解決事件』は、俺らに付いてくれてる作家の奥田さんが吉本から「ライブを打ってくれ!」と言われて逆算で無理やり事件を作っていった。あれがYouTubeチャンネルとしては唯一の「作品」と言ってもええかもしれません。
嶋佐:それこそテレビでやるような内容でもないですし、小さな世界の出来事ではありますけど、YouTubeでやったら配信が1万枚とかチケットが売れて。そうやってお笑いファンの間で勝手に広がっていったのは俺らとしてもビックリでした。
屋敷:けっこう革命っすよね。だーれも知らん芸人のケンカで、ゆうたら2000万とか売り上げてますから。
嶋佐:そこまで行くと、全然違うジャンルの方からも「見ました!」って言ってもらえるようになって。
お笑い芸人とアーティストの相互関係
ーそれぞれ学生時代にコピーバンドをやられていたそうですが、YouTubeでもバンド活動をスタートしていましたね。Hi-STANDARDのカヴァーも好評でした。
屋敷:俺は学校の文化祭で1~2回程度ですけどね。「ニューヨーク公式チャンネル」で再開するまで、ちゃんとしたスタジオにも入ったことなかったんで。まあ、完全に”世代”です。モテたいやつはみ〜んなバンドやってました。
嶋佐:とりあえずギターとか楽器を買ってた世代ですね。
屋敷:芸人でもちょろっと弾ける人めっちゃいますもん。
ーフットボールアワーの後藤(輝基)さんは以前、RSJにも登場してくれたことがあるんです。かまいたちさんのGACHI SEA(テレビ朝日系『かまいガチ』から誕生したLUNA SEAのコピーバンド)みたいに、いつかバンドで武道館に立ちたい!などの目標はありますか。
屋敷:いやあ、全然そこまでは考えてないっすね。でも、くっきー!さん(THE SESELAGEES、ジェニーハイ等)とか、ラランドのサーヤ(礼賛)とかホンマにすごいよな。
嶋佐:あれ、サーヤって自分で作ってんすか?
屋敷:曲は(川谷)絵音さんで、歌詞は自分なんじゃない? 昔は「オリコン何位!」とか基準があったけど、今は何を持って成功なのかようわからんですよね、バンドって。ジェニーハイとかすごい人気あるんすよね?
ー今度の単独ツアー(ジェニーハイ TOUR 2023 「クラシックファイブ」)はホール規模で回るみたいですね。
屋敷:ほお~。クリープハイプさんとかもすごい動員あるじゃないですか? でも、クリープさんの曲がオリコン1位とか取ってるという話は聞かないですもんね。
ーまさにクリープハイプとのツーマン(「ニューヨークリープハイプ」)を2月に開催しましたよね。以前もTHEラブ人間の企画に出演されていましたし。
嶋佐:ラブ人間が毎年下北沢で主催している「下北沢にて」っていうイベントですね。これまで2回くらい呼んでもらって。
屋敷:ちょいちょいバンドの人に呼んでもらうことはあったんですよ。ライブハウスでネタやるっていう。
嶋佐:ツーマンだとMOROHAさんとも一緒にやりましたね(2022年の「無敵のダブルスツアー」)。
屋敷:その前にも渋谷のクラブクアトロかな、昔ラブレターズさんと一緒に呼んでもらったよな?
嶋佐:それこそT.M.Revolutionの西川(貴教)さんが主催してる「イナズマロック フェス」にも出させてもらいましたし。あとはROTTENGRAFFTYさんの「ポルノ超特急」とかね。
屋敷:やっぱクリープさんとのやつは超楽しかったすね。
ー『M-1グランプリ2019』で披露した「オリジナルソング」を尾崎さんと一緒にリメイクされたとか。
嶋佐:そうっすね、ライブとネタとコーナーを織り交ぜてやらせてもらって。
屋敷:お客さんもすごい喜んでくれてる感じはしましたね。
嶋佐:尾崎さんも昔俺らの単独ライブを見に来てくれたことがあるし、俺も普通にクリープさんのワンマン見に行かせてもらって。すごく良い関係です。
ー尾崎さんの楽曲から生まれた映画『ちょっと思い出しただけ』には屋敷さんも出演されていましたね。音楽×お笑いというと、パルコと吉本興業が手がけた『コトバノオト』ではオズワルドとT字路sがツーマンを開催したり、ちょっとしたトレンドみたいになってるんでしょうか?
屋敷:うんうん、流行ってますよね。ゲスの極み乙女さんとさらば青春の光さん(『ROCK or LIVE!-ロックお笑い部-』)とか、東京03さんもCreepy Nutsさんとのライブ(『東京03 FROLIC A HOLIC feat. Creepy Nuts in 日本武道館』)をやられてましたし。たぶん、芸人とかお笑いを好きなアーティストさんが昔よりも増えたんやないかと思ってます。
嶋佐:くるりさんの25周年トークイベント(2021年の『くるりトーク』)に、サバンナ高橋(茂雄)さんと呼んでもらえたのも嬉しかったよなあ。俺ら、コントの出囃子にはくるりの「ロックンロール」を使わせてもらってるんで。
スリップノットのクラウンから一升瓶を奪った
ー嶋佐さんは以前、スリップノットのメンバーにお会いしたことがあるんですよね?
屋敷:あはは! 懐かしい(笑)。
嶋佐:あー、クラウン(リーダーのショーン・クラハン)さん! テレ朝の廊下で、テンション上がって突撃しちゃいましたね。たしか『AbemaPrime』(AbemaTV)にクラウンさんが出たんだよな。俺らはただ深夜のネタ番組で収録に行ってただけで。
屋敷:なんやったっけ、何かやらされてたよな?
嶋佐:「僕はコメディアンで、あなたのファンなんです!」って言ったんですよ。そしたら「面白いことやれ」って。
屋敷:ほんで?
嶋佐:クラウンが日本酒の一升瓶を持って楽屋で飲んでたんです。だからそれ奪ってガーッと一気飲みして、「イエーッ!!」って叫んだり変なことしちゃって。
屋敷:スッッゴイことしてるよな(笑)。それガチ酒??
嶋佐:うん。そしたら「ハハハ……(苦笑)」みたいな。
屋敷:ヤバッ!!下手したら殺されんで。ロックンロール漫画でイタい高校生が奇跡的に夢掴んだ第1話やん。
嶋佐:さすがに「これ(一升瓶)、オッケー?」みたいなちょっとした前置きはあったよ。
屋敷:でもそれ、一番おもんないやん。確認取って一気飲みするって(笑)。
嶋佐:それでツーショット撮ってもらいました。
slipknotのクラウンさんと!!!
今年もKNOTFEST行きたい! pic.twitter.com/sL2Kj7pOOx — 嶋佐 和也 KAZUYA SHIMASA(ニューヨーク NEWYORK) (@Shimasahead) September 14, 2016
ー嶋佐さんはやっぱり、いずれ海外アーティストと仕事をしてみたいですか?
嶋佐:インタビューとか、好きなアーティストだったらしてみたいですね。そういえば昔、キングさん(生前のプリンスが前座に起用したR&Bグループで、現在は双子のストローザー姉妹によるコンビで活動)と合コンしたことあります。
屋敷:あははははっ(笑)!!!
ーあっ!当時それ見た記憶あります(笑)。
屋敷:マジっすか?!
嶋佐:深夜の『魁!ミュージック』(フジテレビ系)ね。
屋敷:あと外タレだとKARAかな? がっつりインタビューしたし。
嶋佐:KARAはジヨンさん、ニコルさんとお仕事させていただきましたね。名古屋かどっかのイベントでもご一緒して。
ーそれこそ『ラヴィット!』(TBS系)ではIZ*ONE出身の矢吹奈子さん、本田仁美さんと一緒に韓国ロケにも行かれてますもんね。
嶋佐:たしかに。IZ*ONEファンからしたらすごいことですよね。
屋敷:むちゃくちゃ一緒になるからなあ。
ー嶋佐さんは昔からTWICEのファンですけど、もうすぐ一緒に仕事できるんじゃないですか?
嶋佐:直接会ってみたいっすねえ。ライブでしか見たことないから。
ーまだTWICEのファンクラブには入ってるんでしょうか。
嶋佐:入ってます! でも、今年はライブ行けなかったんですよ。東京公演はタイで見取り図さんとやるツーマン(5月21日にバンコクで開催した『トゥクトゥクピアス』)と被っちゃって……。
今までにない「お笑いブーム」が起きている
ーニューヨークさんは『PRODUCE 101 JAPAN』の国民プロデューサーでもありますが、TBS系『私が女優になる日_』や、ABEMAの『シャッフルアイランド』でもMCを担当されています。オーディションやサバイバル番組というか、素人がバチバチやるのが好きなんですか?
屋敷:そうかもしれないですね。わりとドキュメンタリー系とか、恋愛リアリティショーとか……「人間」が好きなんでしょうね。
ー『ガチンコ!』(TBS系)世代ですし。
屋敷:そうっすね、『BREAKING DOWN』も見てますしねえ(笑)。単純にケンカは好きかもしれないっす。
嶋佐:たしかに『BREAKING DOWN』って、俺ら世代からしたら『ガチンコ!』ですもんね。
ーちなみに、『だが、情熱はある』(日本テレビ系)ってご覧になってますか? ドラマ内でも当時の『ガチンコ!』のシーンが再現されていて。
屋敷:見てます見てます。『ガチンコ漫才道』(オール巨人が講師を務めた若手漫才師の育成企画)ね!
嶋佐:俺『漫才道』はあんま憶えてないんだよなあ。ちゃんと見てなかった気がする。
屋敷:俺はけっこう憶えてますね。山里(亮太、当時のコンビ名は足軽エンペラー)さん以外にレギュラーさんも出てたよな。どんなネタしとったかは一切憶えてないですけど。
ー毎週いろんな芸人さんが出てますけど、ニューヨークさんには出演オファーなかったんですか?
嶋佐:たしかに。それこそ脚本を書いている今井太郎さんは、俺らの単独ライブにも付いてくれてる作家さんなんですよ。
屋敷:THIS IS パンの吉田(結衣)さんもがっつり出てたもんなあ。
嶋佐:芸人けっこう出てますね。まあオファーは全然なかったです(笑)。あのドラマ見てると、若林(正恭)さんと山里さん、マジでやべえ人だなって思いますね。
屋敷:高橋海人(King & Prince)くんの演技もエグいっすよね。昨日高橋くんと会ったんですけど、ちょっと若林さんの喋り方になっちゃってたもんな(笑)。思わんかった? もともとの高橋くん、もうちょっと高橋くんっぽかった気がするんやけどなあ。
嶋佐:高橋くんもどっちかというと、内向的なタイプだもんね。
屋敷:俺らの番組『NEWニューヨーク』(テレビ朝日系)でも「繊細サミット」っていう企画に出てくれたんですけど、むちゃくちゃ繊細やったもんな。今はちょっと若林さんが憑依しちゃってるのかもしれん。
ーでもホント、笑っちゃうくらい若林さんに似てますよね。
屋敷:似てますねー、すごい。
嶋佐:声ソックリっすよね。
屋敷:山里さん役の森本慎太郎さん(SixTONES)も漫才とかめっちゃ練習したんだろうなって思いますよね。ネタの間とかもちゃんとしてたから。
ーああいうドラマが作られるっていうのも、ある種お笑いブームならではなんでしょうか。
嶋佐:相当ですよね、民放のあの時間帯で。
屋敷:『コントが始まる』はだいぶファンタジーでしたけどねぇ。
嶋佐:たしかにお笑いブームみたいな感じはします。
屋敷:しかも、今までにないブームの形っすよね。ネタ番組でどんどん一発屋っぽい人たちが出るというよりは、「お笑いそのもの」が愛されてるというか。ある意味、『シン・りょう』の配信チケットが1万枚売れるっていうのも新しいお笑いブームの形ではありますよね。ちょっと信じられないことですよ(笑)。
ニューヨークの半生が映像化されたら、誰に演じてもらう?
ーちなみに、もしお2人の半生が映像化されることになったら誰に演じてもらいたいですか?
嶋佐:あーー、なるほど!!
屋敷:オマエ、えなりかずき? で、俺が窪塚洋介かなあ。
嶋佐:おもろそうだな(笑)。そのキャストいいかも。
屋敷:アハハハハハハッ(爆笑)!!!
ー窪塚さんが「最悪や!」って言うところは見てみたい(笑)。
屋敷:窪塚とえなりかずきでニューヨークやる(笑)?「しまさぁ~」とか言って。でも、むちゃくちゃ視聴率悪いやろなあ。ほか、誰がええかな?
ー嶋佐さんは昔、ヴァンサン・カッセルに似てるっていう持ちネタありましたよね?
屋敷:ハハハ(笑)。外国人だったらめっちゃおもろいな。
嶋佐:俺らの映画、ハリウッド・リメイクされてるじゃないですか(笑)!
お〜い!久馬さんプレゼンツ世にも奇妙なコント終演致しました
御一緒させていただいた日本で僕含め2人しかいないヴァンサン・カッセルのものまね芸人チョップリン小林さんとお写真撮らせていただきました
僕のツイッターのアイコンと小林さんのスマホの待ち受けはヴァンサン・カッセルです☆ pic.twitter.com/nr8gb2q0ft — 嶋佐 和也 KAZUYA SHIMASA(ニューヨーク NEWYORK) (@Shimasahead) August 28, 2017
屋敷:でもさ、若林さんの役を高橋くんがやってあんだけ似てる感じになるってすごいですよね。若林さんのものまね芸人なんて1人(八木良)しかおらんかったじゃないですか? あれ、若林さん本人はどう思ってるんやろな。「似てるー!」って思っとんのかな? まあ山里さんのものまね芸人もあんまおらんかったもんなあ。
嶋佐:最近の俳優さん、あんま詳しくねえからなあ……。
屋敷:まあ、リアルにいくと俺役はなにわ男子の藤原(丈一郎)くん? ツッコミっぽいし(笑)。
嶋佐:俺は西畑(大吾)くんにやってもらいたいな。
屋敷:あ~、もう大胆な散髪してもらってね(笑)。そしたら視聴率ある程度は取ってくれるんじゃないすか?
嶋佐:たまにある2夜連続のスペシャルドラマだったらいけるんじゃない?
屋敷:いやでもマジでおもんないっすよ、俺らのドラマなんて。クソドラマ。
ー初エッセイ『今更のはじめまして』も読ませてもらったんですが、バンド、テニスサークル、空手などお2人の青春時代に共通点が多くて驚きました。
屋敷:たしかに(笑)。しかも、あんまみんなやってない系ですし。
嶋佐:大学のテニサーとかって、実は芸人だとあんまりいないんですよね。
屋敷:だからドラマ化したら余計おもんないんじゃないっすか? 「一方その頃」もまったく同じことをしてるっていう(笑)。対比が何もおもんない。
嶋佐:その本も全然重版かかんなくて(笑)。あんま売れてねーんだろうなあって。いやホント、ありがとうございます。
ニューヨークと夏フェス
ー過去にパーソナリティを担当したラジオ『ニューヨークのオールナイトニッポン0(ZERO)』や、ライブの出囃子ではザ・ストロークスの「New York City Cops」が流れるのはお馴染みじゃないですか。今日ぜひお聞きしたかったんですが、今年の「FUJI ROCK FESTIVAL」はどうされるんですか?
嶋佐:もうねえ、フー・ファイターズとかも見たかったんですけど……しんどいなって(笑)。
屋敷:しんどいってなんやねん。
嶋佐:俺、もうフジロックさえも「しんどい」って思うようになっちゃったかあ〜って。だから行かないっすね!
ーなるほど……ストロークスのライブ自体は見たことあるんですか?
嶋佐:あります! 2011年の「SUMMER SONIC」で。あ、今年フジロック出るんでしたっけ? ああ…でも、「苗場遠いなあ」っていうのが先に来ちゃいますね。
ー屋敷さんは?
屋敷:ないっす。何人組かも知らないっす(笑)。女子います?
ーいないっす(笑)。でも、『NEWニューヨーク』は地上波でストロークスの曲がかかりまくる貴重な番組だったので、終わってしまったのが寂しくて。
嶋佐:きっと、スタッフさんがそういう文脈もちゃんとわかって選曲してくれてたんでしょうね。
屋敷:やっぱストロークスに反応してくださるファンは一定数いますよね、Twitterとか見てると。
ー嶋佐さんは「単独のためにいろんな予定キャンセルしてやりますんで皆さんも予定キャンセルしてでも来て下さい!」と書かれてましたが、今年は単独ライブの東京公演がサマソニと被ってますね。去年の『Last Message』はフジロックと裏被りでしたし……。
嶋佐:そうなんです、毎年ミスっちゃうんですよ。毎回そこ確認してスケジュール組もうと思ってるのに、毎年忘れちゃうから案の定ドン被りしちゃいました。うーん、ブラー見たかったんですけどねえ……。リアム・ギャラガーは前のサマソニで一回見たんで、フォール・アウト・ボーイとかも見たかったっす。
ーリアムといえば、『ラヴィット!』ではオアシスやレッド・ホット・チリ・ペッパーズの曲をまさかのフルサイズでカヴァーしていましたよね。あれって周りの音楽好きの芸人さんから反響があったりするんですか?
屋敷:なんで最初歌うことになったんやっけ? 横田(真悠)ちゃんの誕生日きっかけか。
嶋佐:ノリで「オアシス歌いたい」って言ったらホントに生バンド用意してくれて。すごい反響あってビックリしましたね。千鳥のノブさんとかも「いや~オアシス良かったよ!」って言ってくれましたね。まあ、半分イジられてるとは思うんですけど、貴重な経験させてもらいました。バンドマンでも生放送であんなフル尺で歌えるってなかなかないじゃないですか? ちょっとだけアーティストさんの気分は味わえたかなと。
あれは蜃気楼だったのか。
良質なバンドサウンドに乗せられた「Don't Look Back in Anger」の伸びやかな歌声は、まさに初夏を潤す都会のoasisであった。#ラヴィット#oasis#shimasa#そしてラヴィットソニック2023へ pic.twitter.com/fpru5PqbPR — 川島明 (@akira5423) June 30, 2022
お笑いの単独も、音楽ライブと同じノリで来てほしい
ー最後に、単独ライブ「虫の息」について聞かせてください。今はもう、ネタづくりの真っ最中って感じでしょうか。
屋敷:そうっすね、このあともリモートでネタ合わせを予定してて。仕事の合間合間でやってるんですが、作家さんが忙しくてね、毎日ではないですけど。
ー漫才とコント半々で、しかもオール新作っていうのは相当タフな作業ですよね。
屋敷:まあでも、2年前が一番忙しくなりたての頃で、まだスケジュール配分も何もわかってない中でやってたのでめっちゃキツかったですけど、最近はええ感じにバランスが取れてきました。マネージャーも「ここでネタ合わせ入れたら2人ともやるかな」っていうのが、肌感でわかってくれてる感じしますし。
嶋佐:Zoomがあるのもありがたいですね。やっぱ各々の自宅からちょっとした合間でネタ合わせできるんで。
屋敷:2年前はネタ8本中の4本はカンペ見ながらやってたからな、俺ら。死にかけてたわ。
ーキービジュアルの老けメイクの意味は、実際にライブを見たらわかるんでしょうか?
屋敷:そう書いといてください(笑)。
ー全国5都市で14公演、のべ1万人の動員という規模感ですが、アーティストでいったらアリーナ級ですよね。
屋敷:いやあ、でもアーティストって一撃で集めますからねえ。それがすごいわ。ちゃんとおもろいネタ作らなっていうプレッシャーと、お客さんをちゃんと集めなっていうプレッシャーの両方があります。
嶋佐:単独ライブは、毎年なぜか奇跡的にやれてる感じですからね。ホント毎回ギリギリで、なんとかネタが思い浮かんで……。これ、芸人のヘンなところなんですけど、みんな何も準備できてないのにまず公演を打つんですよ(笑)。それがアーティストと違うところで。彼らは曲ができてるからコンサートやるわけじゃないですか? 俺らの場合、開催発表から本番までの期間になんとかネタを仕上げていってる。
屋敷:ちゃんとしてる芸人は公演の1ヶ月前とかにネタが完成して、稽古とかやるんでしょうけどね。
嶋佐:でももう、ネタが浮かばないときは浮かばないので。だから今年も無事にできるのか!?っていう。実際、まだ全然できてないっす(笑)。あとはやっぱ屋敷と同じで、1万人埋まるのかというのと、ミスらずにやれるのか、ちゃんと笑ってもらえるのかっていうところですね。単独ライブってホント、芸人活動の中で唯一と言っていいくらいプレッシャーがのしかかります。
ー寄席と違ってニューヨークさんを好きな人たちしかいないですし、言い訳ができない「純度100%ニューヨークの出し物」とおっしゃってますもんね。
屋敷:ホンマそうです。おもんなかったら完全に俺らのせいですしね。だから「祈り」ですよ、ずっと。「おもろいネタできろ!」「お客さん来てくれー!」っていう……。
ー僕もニューヨークさんのオンラインサロンに入らせてもらったんですけど、あの場所であがった意見とかアイディアを採用することってあるんですか?
屋敷:そうですね、グッズとかに関しての意見はちゃんと目を通させてもらってます。YouTubeとかラジオのコメントってそんなに読まないんですけど、サロンはなるべく密なコミュニケーションが取れたらええかなっていう気持ちがあって。単独のタイトルも一緒に考えてもらったりして、まだ採用はしたことないですけど、ニュアンスとして一部に入ってきてたりはしますよね。たとえば去年の『Last Message』なんて、サロンで出てきた「ラストなんとか」って言葉にピンと来て、「Last」ってアリやな~みたいな。
ータイで開催する『トゥクトゥクピアス』を足がかりに、いつか海外でも単独ライブをやりたいという願望はありますか?
屋敷:それはあんまないですね(笑)。俺らって日本人に対してしかできないし、海外進出には興味がなくって。日常とか、自分たちが育ってきた背景とかにすごく影響されてもうてるネタが多いんで。だから、「文化が違う人たちを笑かしたい」っていう欲求はないかもなあ……。
嶋佐:うん、俺らはたぶん無理でしょうね。今から外国語を憶えるのも大変ですし、言葉を憶えても日本で言うところの厚切りジェイソンさんみたいな笑わせ方になっちゃうと思うんで(笑)。
屋敷:「わかるわかる!」「おるなー、そういう奴!」って、みんなに共感してもらいたいんやろうな。
嶋佐:そうね。
屋敷:だからまあ、お笑いの単独とかも、もっと見る人が増えてくれたらなとは思うんです。それこそ音楽のライブみたいに。「クリープハイプのチケット取れたけど一緒に行く?」くらいのノリで、ニューヨークの単独ライブにも来てもらえたらええなって。
左から嶋佐和也、屋敷裕政(Photo by Mitsuru Nishimura)
<INFORMATION>
ニューヨーク単独ライブ 「虫の息」
出演者:ニューヨーク(屋敷裕政、嶋佐和也)
主催:吉本興業
公演日程:
■名古屋
会場:名古屋市芸術創造センター
2023年7月12日(水)18:00 開場 19:00 開演
■福岡
会場:よしもと福岡 ダイワファンドラップ劇場
2023年7月22日(土)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
■大阪
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2023年8月5日(土)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
2023年8月6日(日)①12:00 開場 13:00 開演
■北海道
会場:共済ホール
2023年8月11日(金)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
■東京
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
2023年8月17日(木)18:00 開場 19:00 開演
2023年8月18日(金)18:00 開場 19:00 開演
2023年8月19日(土)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
2023年8月20日(日)①12:00 開場 13:00 開演 ②16:00 開場 17:00 開演
※オンライン配信あり(詳細は後日発表)
<チケット情報>
チケット価格(税込・全席指定):前売 5,000円
※未就学児童不可
※当日券に関してはお問合せください
※オンライン配信あり(8月20日(日)東京芸術劇場プレイハウス公演のみ)
『今更のはじめまして』
ニューヨーク著
発売中
仕様:四六判・並製
定価:1,650 円(税込)
発行:ワニブックス
~目次~
第一章【激変する環境】
第二章【子供の頃】
第三章【学生時代(AD 時代)】
第四章【NSC時代】
第五章【順調な芸人人生のスタート】
第六章【挫折】
第七章【YouTube とM-1グランプリとキング オブ コント】
第八章【相方のこと】
第九章【結婚】
第十章【これからのニューヨーク】
特別企画【マヂカルラブリー×ニューヨーク スペシャル対談】
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