PassCodeが語る、『GROUNDSWELL ep.』で示したグループの本質
Rolling Stone Japan / 2023年6月25日 12時30分
PassCodeが昨年12月にリリースした『REVERBERATE ep.』に続く新EP『GROUNDSWELL ep.』を6月21日に発表した。前作が白なら今作は黒とメンバーが説明するように、今作は彼女たちの持ち味と言える攻撃的なサウンドと複雑な楽曲構成を全面に押し出した内容になっている。
【写真を見る】PassCodeメンバー
久しぶりとなるインタビューは内容を前後編に分けてお届けする。前編は『GROUNDSWELL ep.』について迫る。メンバーそれぞれによる楽曲解説など、本作の内容について語ってもらった。
―まずは新作EPについてお聞きしたいと思います。昨年12月に4曲入りEP『REVERBERATE ep.』をリリース。今回はそれと対になる『GROUNDSWELL ep.』が発表されます。EPってシングルでもないしアルバムでもない、ちょっと特殊な存在ですよね。みなさんにとってはどんな位置づけになっていますか。
南菜生 フルアルバムだとライブで漏れてしまったり、消化しきれなくなる曲が出てくるよねって話をサウンドプロデューサーの平地さんとユニバーサルの担当北田さんとしたんですよ。で、「じゃあ、EPっていう形にしたらどうなるやろう」っていう話から4曲入りのEPを提案しました。EPだからというよりも、ライブで全部の曲を消化できる曲数ということで4曲。それで『REVERBERATE ep.』を作ったんですけど、これは歌モノが多くて、平地さんの中では「白」として位置付けされてたので、それと対になる「黒」を出したいっていう話を『REVERBERATE ep.』を出すときからしてたんです。それで今回「黒」が出るんですけど、今、ツアーで『REVERBERATE ep.』に入ってる4曲全部やっていて、ちゃんとライブで育てられてる感じがあって。さっきも言いましたけど、やっぱり、フルアルバムだとなかなかセトリに入れられなかったり、ライブでどう乗り切ればいいのかメンバーもお客さんもお互いわからない曲が出てきて、結局やらない曲になってしまうってことが多かったんですよ。
―「Majestic」とか。
南 そう。あ、でも「Majestic」はやりたいですけどね。まあ、そうやって漏れてしまう曲がないように……って言ったらアレですけど、ライブでちゃんとできる4曲をテーマにつくったEPです。
―白盤と黒盤。実際、『REVERBERATE ep.』の曲は今のツアーでぐいぐい育ってますよね。高嶋さん、ライブでやっていてどうですか。
高嶋楓 さっき南が言ってたとおり、フルアルバムだとちょっと休憩みたいな曲もあったりするんですけど、『REVERBERATE ep.』は歌モノって言ってるわりに全部攻めな曲じゃないですか。たとえば、「NOTHING SEEKER」はライブではイントロを倍尺にして盛り上げてから本編に入ったりするので、新しいPassCodeになってきたなって。強力な武器が4つ増えたって感じがします。
―僕も『REVERBERATE ep.』は比較的おとなしい作品だと最初は感じてんですけど、ライブで聴いたら、「あれ、こんな曲だったっけ?」って。
南 うんうん。
―実は、『Clouds Across The Moon』も最初はあまりしっくり来てなかったんです。だけど、この曲がライブの終盤で披露されることによって4人がこれをどう見せたいかということが伝わってきて、この曲の楽しみ方を教えてもらったような気持ちになりました。それからはすごくいい曲だと思ってます。「NOTHING SEEKER」もライブで観て大好きになりました。
南 「ANYTHING NEW」を配信シングルとして出したときにあんまり評判がよくなくて、「割と退屈」とか「ライブで盛り上がらない」って言われてたんですけど、「コロナ禍が終わったときにこの曲をライブで一番盛り上がる曲に絶対育てる」って思いながら2、3年やり続けてきて、実際に今そういう曲に育てられてきているので、自分たち次第で曲の見え方とか色って変わるんだなってすごく実感してます。「Clouds Across The Moon』に対しても「ANYTHING NEW」のときと同じ感覚で今回のツアーのセットリストに置いてるし、この曲は元々きっちり振りがついてるんですけど、ライブ用に「ここは振りをなくして手を一緒に振れるようにしよう」とかメンバーで話し合って、ノリがしっとりしてるパートに敢えてジャンプを入れてみたりしてるし、バンドメンバーにも話をしてハイハットをバシバシ叩いてもらったりしてます。
―そこまで工夫してたのか!
南 だから、自分たち次第でどうにでもなるなって。それに対して曲を作ってる平地さんが「PassCodeの曲はライブで完成やから」って言ってくれてるのがすごくありがたくて。人にもよると思うんですけど、自分がつくったものは忠実にやってほしい人もいるじゃないですか。そうじゃなくて、平地さんは「PassCodeがライブでやってる光景を想像して曲を作ってPassCodeがそれをライブで育ててくれるから、また自分の好きなように曲が作れる」って言ってくれてるし、信頼関係みたいなものがあるんですよね。
―セットリストの決め方に関して、いい意味で自分たちのエゴが出てきていると。
南 うん、そうですね。けっこう好き勝手やってます。
―なんか、『GROUNDSWELL ep.』もすでにライブで聴いてるような気分になるんですよ。次のツアーがあるとして、今回のEP2作から8曲全部入ってても全く文句ないです。
全員 へぇ~。
―それぐらい『GROUNDSWELL ep.』の曲はしっくりきてます。
南 本当ですか? そういうの、制作中はわからないんですよね。
メンバーが語る収録曲
―では、今作の収録曲について一人一曲ずつ解説をお願いしたいと思います。まず、「Lord of Light」について南さん、お願いします。
南 これは「MYTH」以外の3曲で最初にできた曲です。メロディーが耳に残りやすかったり、今回の曲の中で『REVERBERATE ep.』に一番近い曲だと思います。歌っててもすごく気持ちいいし、ライブでも絶対盛り上がるだろうなって。
有馬えみり この曲はシャウトがむずかった。
南 あ、そうなんや。いつもと何が違うん?
有馬 歌詞がめちゃくちゃ速い。私はおととし加入したばかりだから、みんなと違って過去のPassCodeの曲をダンスも歌も直近で覚えてるんですよ。たとえば、ここ半年で1stアルバム『ZENITH』の曲を覚えてたり。だから、新曲の難易度が爆上がりしてるのがよくわかってて。
南 6年ぐらいかけてちょっとずつ難しくなっていってるのかもしれないね。
―これはライブでお客さんがサビでシンガロングする光景が浮かびます。
大上陽奈子 落ちサビみたいなところがあるのもいいですよね。サビが2回来るし、ここは絶対にライブで手拍子が入りそう!
―では、続いて「Melody from the Bumbling Clash」を有馬さん。
有馬 この曲はシャウトのリズムを私がつくったんですよ。
―おお、それは初の試みですね。どうしてそういうことに?
有馬 基本、シャウトってシャウトボーカルがつくることが多くて、平地さんみたいなコンポーザーが全部考えるっていうのはけっこう珍しいケースなんです。ボーカルやけどメロディは考えへん、でもシャウトとラップは考える、みたいなことはよくあるんです。そのことを平地さんは知ってはって。で、私は前のグループでもシャウトは自分がつくってたので、そのことをどうやって知ってたんか知らんけど、「つくってみてくれへん?」みたいな感じで声をかけてくれました。
―なるほど。
有馬 で、最初は歌詞も何もない平地さん語で歌ったものが送られてきて、それに私が歌詞も何もないえみり語の状態でシャウトのリズムを録って平地さんに送って、それに歌詞がついて完成したって感じです。
南 この曲が来たの、けっこう前やもんな。『REVERBERATE ep.』を出すよりも前。次の作品をどういう形で出すか悩んでたときにはもう出来上がってたんですけど、「今回入れるのは違うな」ってことで今回入りました。
有馬 歌詞を見て驚いたのが、平地さん語の響きに忠実に作詞されてたし、私もえみり語だけじゃなくて般若心経とか入れたりしてたんですけど、それにもちゃんと英詞が付いてて。しかも、リズムも変わらずにそのまま活かしてくれてたんで、「プロってすごいな」って思いました。Konnie Aokiさん、すごい。耳がめっちゃいいんやと思います。
―この曲のリズムはどういうところからインスピレーションを受けてるんですか。
有馬 やっぱ、長年の経験……?
全員 あはは!
有馬 シャウトの練習をするときにカラオケに行って海外のバンドの曲をよく歌うんですけど、私、シャウトの歌詞までいちいち覚えてられなくて、画面に出てくる歌詞を自分なりのリズムでシャウトしてるんですよ。そういうのもあるかな。
南 このリズムにはこう乗せるのがいい、みたいなのってあるん? セオリーみたいな。
有馬 めっちゃいい質問やけど、ようわからん(笑)。フィーリング。
南 フィーリングなんや。
―でも、すごく耳に残りますよ。
有馬 今回、三連符のシャウトのフロウを使ってるんですよ。それって今のメタルコアのトレンドなんですけど、これまでPassCodeの曲に入ってなかったので平地さんにそう話したら、「そういうのは俺には絶対考えつかんかったから、やってもらってよかった」って言ってもらえて、それは嬉しかったです。
―抑揚とかも含めて、シャウトだけどメロディっぽいっていうか……。
有馬 そうなんですよ。やっぱり、平地さんはシャウトボーカルじゃなくてコンポーザーなので、シャウトを楽器的な感覚でつくるんですけど、私はやっぱりボーカルなんで、シャウトボーカルが考えるシャウトになるんですよ。
―今後もシャウトは自分でつくるんですか。
有馬 いや、別にどっちでもいいです。求められるならやるけど、平地さんがつくったシャウトを歌うのもすごく好きなんですよ。だから、本当にどっちでもいいですね。
南 曲によって分けられたらいいよな。そうしたら幅がすごく広がるし。
―では、「MYTH」を高嶋さん。
高嶋 「MYTH」は「北斗の拳」のタイアップのために2年前ぐらいにつくられた曲で、当時のことはほぼ覚えてないんですけど、配信リリースのちょっと前ぐらいに確認用に送られてきたのを聴いて、えみりがシャウトでめちゃくちゃ<あたたたたっ!>って言ってるのを聴いて「北斗の拳」の要素がめっちゃ散りばめられてるなって思いました。ライブでやってみたら、PassCodeのよさが前面に出てるなって改めて思ったし、今ではライブに欠かせない曲やなって思います。すごくいい曲です。一番好きかもしれん。曲も好きやし、振付も新鮮で面白い。
―2人ずつ組になってお互いの頭上に蹴りを入れる振付がありますけど、よく頭を蹴らずに済んでますね。
高嶋 でも、練習では当たってる。
南 ライブ写真を見ると、かえちゃん(高嶋)の頭の上を(大上)陽奈子の蹴りがギリギリで通ってるよな。
大上 けっこうギリギリ(笑)。
高嶋 割と髪の毛かすってる。
大上 ちょっと股関節痛めてたら蹴っちゃうかもしれない。危ない(笑)。
―あはは! では、ラスト「GROUNDSWELL」を大上さん。
大上 最初、チームの人たちから、「今回のEPはこの曲でMVを撮ろうと思ってる」って言われたときは、「ほかにも強い曲あるのにこれなんや……」って一瞬反発しそうになったけど(笑)、何回も聴いていくうちにサビのメロディーがだんだん頭に残るようになってきて。だから、これからライブでもっといい感じにしていきたいなって思ってます。
南 この曲は平地さんがいつもと歌割りを変えてみたって言ってました。平地さんの中で曲を出すごとに新しいことに挑戦したいっていう気持ちがあるみたいで、サビを1人ずつわりと長めに歌ってたりします。普段だとかえちゃんがしそうなタイトルコールを私がしてたり、色々と試してるので新鮮だと思います。
左から南菜生、高嶋楓、有馬えみり、大上陽奈子
昔と今では振り幅が全然違う
―今作を聴いてると、PassCode全部盛りというか、「PassCodeってこういうグループだよね」っていうものが全部詰まってるから、「いよいよ再びPassCodeが動き出すぞ」みたいな印象を受けます。
有馬 確かに、コロナ禍がちょっと収まってきたタイミングでPassCodeらしい歌も入りつつ、バチバチなところもありつつっていう曲が出ることで、曲をちゃんと聴きたい人と曲に合わせて自分を解放したい人の両方を楽しませることができると思うので、ここでこのEPが出るっていうのは素晴らしいことだと思います。
―ご時世的なものとタイミングが合ったところはあるかもしれないですね。
有馬 しかも、意図せずですよ。
大上 たしかに、『REVERBERATE ep.』に入ってる「NOTHING SEEKER」みたいにちょっとおちゃらけた雰囲気があったり、歌にもおふざけな声が入ってたりわちゃわちゃ感があったけど、今回はアルバムとEPで作品の形態は違うけど、なんか『ZENITH』みたいな 雰囲気を感じるかもしれない。全曲真面目っぽくない? あんまりおふざけが入ってないっていうか。
南 the PassCodeやな。
―『ZENITH』の頃にこの曲が出てるかって言われたら絶対にそんなことはないわけだから、ちゃんと進化しつつthe PassCodeになってるという。
南 PassCodeっていうグループの幅が広がりましたよね。「MISS UNLIMITED」でメジャーデビューしてもう7年経つけど、そのときに「PassCodeっぽい」って言われてたものと、今「PassCodeっぽい」って言われるものの振り幅が全然違うと思います。
>>後編に続く
<INFORMATION>
『GROUNDSWELL ep.』
PassCode
USM
発売中
配信リンク:
https://umj.lnk.to/groundswell_epTP
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