【フジロック大トリ】リゾの知っておくべき名曲TOP20
Rolling Stone Japan / 2023年7月11日 17時30分
PHOTO ILLUSTRATION BY MATTHEW COOLEY FOR ROLLING STONE. PHOTOGRAPHS IN ILLUSTRATION BY JOHN PARRA/GETTY IMAGES; STEVE GRANITZ/WIREIMAGE; TIM MOSENFELDER/GETTY IMAGES
7月28日から30日にかけて新潟・苗場スキー場で行われる「FUJI ROCK FESTIVAL '23」。3日目・日曜のヘッドライナーを務めるのは第65回グラミー賞で年間最優秀レコードに輝き、今回が初来日となるリゾ(Lizzo)。ソウルフルなセルフラブ讃歌からトゥワークを誘うフロアキラーまで、彼女の名曲20選をカウントダウン形式で紹介する。
過去10年間で、リゾはありとあらゆることを経験した。国民的スターになる前のメリッサ・ジェファーソンは、ミネアポリスのシーンで下積みを重ねるいちローカルアーティストに過ぎなかった。当初はリゾ&ラーヴァ・インクというエレクトリックなソウルポップのグループを率いていたが、その後はR&Bラップの3人組チャリスのメンバーとして活動。その後ソロに転向した彼女は、2013年に初のスタジオアルバム『Lizzobangers』をリリースし、2年後には『Big Grrrl Small World』を発表。スリーター・キニーの前座にも抜擢された彼女は、その後Atlantic Recordsと契約を交わす。
彼女はファンを着実に増やしていったが、発表から2年後にヒットしたセルフラブ讃歌「Truth Hurts」で一気にブレイクする。TikTokを席巻し、Netflixのコメディ『サムワン・グレート 〜輝く人に〜』にも起用された同曲は、ありとあらゆるラジオ局でプレイされた。陽気なキャラクター、見事なフルートのソロ、そして圧倒的な歌唱力という、スターとしての資質を備えていた彼女は、そこから一気にスターダムを駆け上がった。またシェイプウェアブランドのYittyのローンチや、バックダンサーを務める人材を発掘するAmazonの『Watch Out for the Big Grrls』など、近年では活動の幅をさらに広げている。
推し曲はファンによって異なるに違いないが、最新作『Special』を含む彼女のカタログの中から本誌が選出した以下の20曲を聴けば、リゾのユニークでディープな魅力に触れられるはずだ。
20位「Phone」(2016年)
リゾは「共感」のクイーンであり続けている。クラブでのハジける一夜を歌ったフロアキラー「Phone」で、彼女はケータイを紛失してしまう。「私のケータイはどこ?」と繰り返し問うも、実はその手に握りしめていたというオチは、ADHDを疑ったことのあるリスナーなら誰もが共感できるはずだ。
19位「Fitness」(2018年)
「Fitness」はリゾの曲としてはミニマルなものの一つだが、それはパワーに欠けるという意味ではない。ジムでのワークアウトについて歌っているこの曲は、実はセックス讃歌でもある。どちらにおいても、主導権を握るのは彼女だ。”bootyvicious”なリゾは誰からの指図も受け付けない(彼女が誘うことはあったとしても)。
18位「Better in Color」(2019年)
「レインボーカラーやら何やら」に満ちた、LGBTQと黒人のコミュニティに捧げたジャズ調のラブソング、「Better in Color」の魅力はめくるめくハーモニーだ。リゾの恋のターゲットとなった人物は、誰であれ覚悟したほうがいい。彼女はこう挑発する。「私の恋人にしてあげてもいいわよ/愛はカラーの方が映えるんだから」
17位「Everybodys Gay」(2022年)
本当の自分とセクシュアリティを祝福する全米のナイトクラブで、クィアの人々から圧倒的な支持を集めたクラブアンセム「Everybodys Gay」は、かつてのStudio 54を彷彿させる。ディスコ全盛期の輝きを放つこのアップテンポなダンストラックは、クィアの人々が不本意にも自分のアイデンティティをうやむやにしながら生きていることを強調すると同時に、そのマスクを脱ぎ捨てることの喜びを歌っている。「今夜、私は他人のふりをするのをやめる(本当の自分になる)/このコスチュームはリアルすぎて、自分でも怖くなっちゃうから」
16位「Soulmate」(2019年)
リゾは誰かに救ってもらおうとはしない。なぜなら、彼女自身が自分の「ソウルメイト」だからだ。どんな時でも自分自身を信じること、それがこの曲に込められたメッセージだ。気の向いた時にだけエクササイズすることや、毎週日曜日に自分に花を贈るという習慣まで、このアンセムは誰もを笑顔にする喜びに満ちている。自分自身にゾッコンで「いつか自分と結婚するの」と歌う彼女に、誰にも異論はないはずだ。
15位「Jerome」(2019年)
リゾの曲としてはテンポの遅い「Jerome」は、オールドスクールのR&Bクラシックを思わせる。豪快なボーカルが魅力のこの曲で、リゾは未熟な恋人について歌っている。この男性に我慢していた彼女には同情するが、この強烈なパワーバラードが生まれたことは、ファンにとっては幸運だった。
14位「Adore You」(2020年)
ハリー・スタイルズが彼女の「Juice」をカバーしたことを受けて、リゾは彼のアルバム『Fine Lines』に収録された「Adore You」をカバーした。彼女が「あぁ、ハリー」と胸を焦がす思いを情感たっぷりに歌う同バージョンでは、Sashaと名付けられたフルートの音色も堪能できる。
13位「Like a Girl」(2019年)
この曲でリゾは、男性優位のこの業界に「エストロゲン(女性ホルモン)を注入してやる」と宣言する。彼女は使い古されたクリシェを用いながら、自分こそがルールだと豪語する。「女の子らしく戦うのなら、女の子らしく泣かなきゃ/好きなようにやればいい、世界を征服しちゃいな」
12位「Water Me」(2019年)
リゾにとって、栄養補給は最重要事項だ。彼女は「干からびない」ように、毎日たっぷりと保湿する。そういったセルフケアこそが自己愛の原動力であり、彼女は自身の身体と心を神殿のように重んじる。「Water Me」で、リゾは自分自身のヒーローになる。あらゆる人を支えることはできなくとも、彼女は自分自身を救ってみせる。「私は自由、そうよ/私に水をちょうだい、そうその調子/あなたのことが大好き、でも他を当たらなきゃ/あなたが同じ気持ちじゃないなら」。ノリのいいベースラインに合わせて、彼女はそう歌い上げる。
11位「Tempo feat. Missy Elliott」(2019年)
究極のセクシャル・エンパワーメントアンセムの担い手である2人の女性がタッグを組む時、マジックが起きないはずがない。強烈なギターリフ、フルートのソロ、そしてミッシー・エリオットを擁するプラスサイズの女性の讃歌「Tempo」は、非の打ち所がまるでない。リゾはこう嘲ってみせる。「スローな曲はガリガリのアバズレども用/そんな曲じゃここでは踊れない/私は太ったビッチ、もっとテンポを上げて」。誰もが内に秘めた性的欲求を讃える、ベースがリードするこのクールでキャッチーな曲は、一度聴いたら頭から離れない。
10位「Exactly How I Feel feat. Gucci Mane」(2019年)
相手が誰であろうと、リゾは遠慮しない。「Exactly How I Feel」はその事実を再認識させてくれる。プリンスの影響が色濃く現れた(彼がリゾに太鼓判を押したことを考えれば当然だろう)この容赦ないアンセムで、リゾは感情を爆発させながら、自分の考えをはっきりと主張する。「私のことが好きじゃないなら、思いっきり嫌えばいい/あんたは誰になろうとしてるの?/どうだっていいけど」。そう歌う彼女の声に、気負いはまるで感じられない。
9位「2 Be Loved(Am I Ready)」(2022年)
オルガンの音色が印象的な、80年代のエアロビクスアンセム「2 Be Loved (Am I Ready)」は、『Special』のハイライトと言っていいだろう。ネオンカラーのレオタードとタイツに身を包んだリゾとBig GRRRLダンサーたちの姿は容易に想像がつくが、マックス・マーティンの手腕が光る同曲は単なるフロアキラーではない。リゾは自信を失くしてしまいそうになる自分と再び対峙し、自分に愛される資格があるのかと自問する。答えは間違いなくイエスだ。
8位「Boys」(2019年)
「Boys」はリゾの魅力が凝縮された曲だ。キャッチーなフックとファンキーなギターリフを武器に、性の自由を祝福するこの曲は、ミッシー・エリオットが2002年に放ったセックスアンセム「Work It」を彷彿させる。同曲で、彼女はデート相手に求める条件を堂々と明かしている。「髭面が好きだけど、髭なしでもオッケー/私は選り好みしない主義、味見しにいらっしゃい」。一方で、この曲にはプリンスへのオマージュも見られる。そのミュージックビデオでは、1977年に撮影されたプリンスのアイコニックな写真で有名になった壁画の前で、アフロヘアのリゾが見事なダンスを披露する。控えめに言っても最高だ。
7位「Good As Hell」(2016年)
リゾがポップスターとして頭角を現し始めてから彼女のファンになった人々にとっては、「Good As Hell」がきっかけの一つだったというケースは多いだろう。2016年作『Coconut Oil』EPに先駆けてリリースされた同曲は、どんな男性にも自分の価値を決めさせてはならないと諭すだけでなく(「彼があなたのことをもう愛していないなら/あなたの素敵なお尻を相手に向けて去ればいい」)、セルフケアの大切さを思い出させてくれる。合唱団によるコール&レスポンスが印象的なこの曲は、自分に自信を持とうとするすべての人々の応援歌だ。「髪をなびかせて/ネイルの具合をチェック/ベイビー、調子はどう?/私は超ゴキゲン」
6位「About Damn Time」(2022年)
ありとあらゆるところで流れていたこの曲を知らない人は少数派に違いない。ディスコファンク調のメロディがレトロな雰囲気を演出する、このエネルギッシュな曲が描くのは「これだけ我慢したんだから、もうハジけてもいいはず」という、誰もが抱いたことのある気持ちだ。もちろん彼女も例外ではない。「私みたいな頑張り屋がこんなふうにストレスを抱えるべきじゃない」と彼女は主張する。私たちと同じように、彼女も人間として成長する機会を経験してきたからだ。「私はもう昔の私じゃない/ビッチ、私はもっと価値のあるオンナ」
5位「Batches & Cookies」(2013年)
ポップのスターダムを駆け上がる前、リゾは「Batches & Cookies」のような仰々しい曲で知られるインディーラッパーだった。半分ジョークのこの曲の魅力は強烈なパーカションと、コンサート会場での合唱を促す超キャッチーなフックだ。「これは私の取り分とクッキー/これは私の取り分とクッキー(クッキー)/これは私の取り分とクッキー、これは私の……何?(クリーム)」。彼女はウインクしながらそうラップする。クセになる高速ラップも捨て難いこのセックス讃歌にしてアンセムは、今なおリゾの何たるかを体現している。彼女はこう宣言する。「あんたらの役目は私たちを楽しませること/なのにみんなゲンナリ」
4位「Coldplay」(2022年)
コールドプレイの「Yellow」のテンポを上げた、アルバムの最後を飾るジャジーなこの曲で、幸せの絶頂にあるリゾは恋人と歩んできた道のりについて情感たっぷりに歌い上げる。彼女が描くストーリーの多くはフィクションだが、この曲では2人の絆をより深めることになったトゥルムへの旅行について歌っている。アルバム前半の曲(「2 Be Loved」)では逃げたくなる気持ちについて歌っている一方 、「Coldplay」でリゾは自分の気持ちに正面から向き合い、溢れ出る感情に身を任せようとする。「悲しくなって、泣いちゃった/コールドプレイの曲を夜に歌うとダメね/あなたといる時は、音楽なしで踊るのが一番しっくりくるの」と彼女は歌う。いつになく実直でエモーショナルな「Coldplay」は、彼女の作品の中でも特別な曲の一つだ。
3位「Juice」(2019年)
コメディめいたユーモアのセンスと自信を備えたパーソナリティ、それはリゾの最大の魅力の一つだ。フロアを直撃するシンセファンク「Juice」では、彼女の代名詞である巧みなワードプレイが炸裂する。「私はおやつなんかじゃない」と言い切った上で、彼女はこう続ける。「ベイビー、私はまさにフルコース」(それは紛れもない事実だ)。80年代のプリンスを思わせる究極のパーティーアンセムにして、彼女のカリスマが滲み出るこのディスコポップは、間違いなくリゾの代表曲の一つだ。
2位「Cuz I Love You」(2019年)
デビューアルバムのタイトルトラックである「Cuz I Love You」は、アーティストとしてのリゾの多様な才能を象徴している。他の人気曲のようなパンチこそないものの、この曲では管楽器隊を擁するオーケストラの伴奏をバックに、リゾの圧倒的にソウルフルなボーカルを堪能できる。愛に飛び込む覚悟ができていると宣言した上で、彼女はフラストレーションと感情を爆発させる。「私が泣いてるのは、あなたのことを愛しているから」。この曲が説得力に満ちているのは、リゾが心の底から自分を愛しているからだ。
1位「Truth Hurts」(2017年)
この曲のサクセスストーリーに触れることなく、リゾについて語ることはできない。2017年に単発のシングルとしてリリースされた「Truth Hurts」は、リゾのキャリアの基盤を築いただけでなく、独り身であることに対する社会的価値観を変えてみせた。「たった今遺伝子検査を受けた/私がそのビッチだってことが確定」。問答無用の同曲で、彼女はそう誇ってみせる。ピアノがリードする自己認識に満ちたフックは無数の人々をエンパワーし、ラッパー兼シンガーとしてのリゾをスターダムへと押し上げた。ソーシャルメディアでのバズ(Sashaと名付けられたフルートが頻繁に登場する)、TikTokチャレンジ、Netflixのコメディ『サムワン・グレート 〜輝く人に〜』(失恋を経験したジーナ・ロドリゲスが演じるキャラクターが、このトラックに合わせて下着姿でラップする)での起用などに後押しされる形で、「Truth Hurts」は時間差での大ヒットを記録した。それ以来、この曲はセロトニン分泌促進剤として人々を笑顔にし続けている。
From Rolling Stone US.
FUJI ROCK FESTIVAL '23
2023年7月28日(金)29日(土)30日(日):新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※リゾは7月30日(日)出演
公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/
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