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辻陽太が語る、ストロングスタイルとオリジナリティの探求で手に入れる「世界一」の称号

Rolling Stone Japan / 2023年7月14日 18時35分

辻陽太(Photo by Mitsuru Nishimura)

2023年5月3日福岡大会「レスリングどんたく2023」、ある男の帰還に会場は大きな歓声に包まれた。その男の名は辻陽太。海外武者修行からの凱旋、そしてすぐにIWGP世界ヘビー級王者のSANADAへスピアーを介した宣戦布告。ベルトを高く掲げ、不敵に笑う彼の姿に新日本プロレスの未来を感じた人間も少なくないはずだ。6月4日大阪城ホール大会「DOMINION 6.4 in OSAKA-JO HALL」では惜しくもSANADAに敗れたものの、彼はすでに先を見据えている。今後、新日本の顔になるであろうこの男は何を考え、何を実行しようとしているのか。「新日本プロレスを世界一の団体にする」と公言する辻陽太というプロレスラーの胸中に迫った。

【撮り下ろし写真を見る】G1初出場となる辻陽太

ー6月26日にトロントで行われたForbidden Doorは結果も含め、どのような感情でご覧になられましたか?

細かくは観てはいないですが、ひとつ気になったのは、IWGP世界ヘビー級選手権試合が第4試合に組まれていたこと。昨年のForbidden Doorもそう感じたんですが、結局、新日本プロレスはAEWに舐められているように感じますよね。



―そこに対してフラストレーションがある。

そうですね。結局、AEWの人間はAEWのことしか考えていない。新日本プロレスは使い駒でしかないんですよ。果たして、新日本はこの状況のままでいいのか、正直、とてもムカついていますね。

―新日本とAEWの間に上下関係が生まれてしまっている。

主導権を握っているのは、完全にAEWじゃないですか。トニー・カーン(AEW社長)も「日本で興行をしても利益にならない」と公言している。そんな状況なのにも関わらず、新日本の選手たちも楽しそうに「カナダに着きました!」とSNSで発信している。俺は選手の意識、会社の運営陣の意識も含めてどうなのかなと思っています。

―Forbidden Doorに乗り込んでいきたいというお気持ちはありましたか?

ないですね。俺がいまの現状で乗り込んだところでAEWの馬にされる。正直、まだ俺は世界からすると名の通っていないレスラーだと思っているし、出たところで「誰だ、こいつ」となって終わるだけ。正直に言いますけど、今はAEWには興味がないんです。

―まずは国内に集中し、IWGP世界ヘビー級王者になることをいちばんに考えている。

新日本の顔になってからでないと世界にはいけないと思っています。俺は、「新日本プロレスを世界一の団体にする」と公言していますけど、それを実現するためには俺がある程度力をつけないといけない。俺が発言して、みんなが賛同してくれるような力をまずは持たないといけないんです。世界に目を向けるのはそのあとなのかなと思います。


思考のバックグラウンド

―5月3日の福岡大会で凱旋帰国を果たし、すぐさまSANADA選手に宣戦布告。そして凱旋して最初の試合がIWGP世界ヘビー級王座のタイトルマッチというインパクトを残されました。正直、このままの勢いだけで突っ走っていく選手が大半だと思うんですが、辻選手はとてもクレバーに物事を考えられているような気がします。

そこに関しては、学生時代のアメフトの経験が生きているのだと思います。俺がやっていたQB(クォーターバック)というポジションは戦術や相手チームを分析し、どういう筋道で試合を展開するのかを考えるポジションだったので、いまも俯瞰して物事を捉えられているのかもしれません。あとは、少しの間ですが、社会人を経験しているというのも大きいのかもしれない。



―社会人時代はどんなお仕事をされていたんですか?

人材派遣の会社だったんですが、新卒ということもあり、派遣先の業務もやっていたりしましたね。ちょうどそのときは、携帯販売の人材派遣を担当していて、俺も家電量販店で携帯を販売していました(笑)。でもこの経験がいま考えると大きい。

正直、プロレスラーって若ければ若い方が有利ということがあるじゃないですか。実際オカダ(・カズチカ)は15歳でプロレス界に入っていたり、一期上の海野(翔太)、成田(蓮)も18歳で入門している。俺は、大卒で社会人も少し経験して入門したので、プロレスラーのスタートはかなり遅い部類なんです。でも、いま思えば大学時代や社会人生活で学んだことは大きかったし、よかったなと思っています。

―あらためて、凱旋帰国後からの日々の流れは怒涛のものだったと思うんですが、ご自身の体感としてはいかがですか?

俺は、こういう風にしたいと思っていたので。5.3の福岡大会での凱旋帰国も先を見越してのアタックだったんです。というのは、新日本のいちばん大きい大会、イッテンヨン東京ドーム大会のメインにIWGP世界ヘビー級チャンピオンとして立つことを大前提として、いまここでいちばん目立つには、チャンピオンのまま、G1 CLIMAX 33を優勝することだろうと。なので、6.4の大阪城ホール大会”DOMINION”でチャンピオンになって、そのままG1優勝、そしてイッテンヨンのメインに立つのがいちばんだと思ったんです。

―SANADA選手とのタイトルマッチでは、リングから場外へ飛ぶ、「ブエロ・デ・アギラ」など繰り出す技のひとつひとつから辻選手の身体能力の高さが伺えましたし、あれだけのインパクトを残されたら、ファンの方たちの反響も多くあったと思います。

思っていた以上に上手くいったなと。正直なところ、試合には負けましたが、プロレスラーとしては勝ったと思っていますよ。

―新鮮に感じたのは、17分台という試合時間。タイトルマッチというと30分以上の戦いが多い中で、17分01秒という時間であれだけの濃密な戦いが観られたことは非常にフレッシュでした。

そこに関しては、海外遠征中に現在のプロレスは非常にゴチャゴチャしていると気づいたことが大きく影響していて。



―もっとシンプルでもいいと思っている?

シンプルかつ技に説得力を持たせるべきだなと。過去に棚橋さんがケニー・オメガのプロレスは品がないと発言した、イデオロギー闘争があったと思うんですが、その意味がなんとなく分かってきて。イギリス遠征中に感じたんですが、イギリスのレスラーってやりたいことばかりをやる選手が多いんですよ。

―イメージでは、クラシカルなブリティッシュスタイルのプロレスを好む気がしていました。

ザック(・セイバーJr.)みたいなイメージですよね? 俺もそう思っていたんですけど、実際はそんなことなくて。

―それこそ、頭から落とす技も多い?

そうです。やはりいまのままだとお客さんもやればやるほどわけが分からなくなってしまうというか。どの技がこのプロレスラーの技なのか、そしてこのプロレスラーはどういう感情を持っているのかということが分からなくなってしまう。新日本プロレスには、ストロングスタイルという世界に誇れるものがありますけど、現在はそのストロングスタイルとは一体何なのかということもある。だから、「新日本プロレスのプロレスはこういうものだよ」とひとつのカテゴリーのようなものを構築しないといけないと思ったんです。

―新日本が提示する新たなスタイルの構築。

それこそいまのままだとインディープロレス、学生プロレスに近づいている気がする。だからこそ、ひとつの技に説得力を持たせ、自分の感情をしっかり見せることが大切なんです。リングの上で何を伝えたいのかが大事。SANADAとの試合では、現在の新日本プロレスのプロレスに一石を投じる気持ちがありました。


Phto by Mitsuru Nishimura



自分の正義を振りかざすための「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」

―辻選手なりのストロングスタイルの提示をしたかった。

とはいえ、俺がストロングスタイルを語るのは違うと思っていて。ただ、俺の中に流れる血の中には新日本の遺伝子はある。道場で育ち、ちゃんこ番もやって、頭も丸めて雑用をしながら育ってきた。新日本のストロングスタイルが何にせよ、俺が思うプロレスをしたいなというところです。

―いちプロレスファンとして気になるのは、辻選手がデビュー戦前に新日本プロレスワールドのインタビューで答えていた、「プロレスラーとして目標にしている選手が3人いる。それはまだ言いたくない」という件でして。これはまだ教えていただけないですか?

2人なら公表できます。予想通りだと思いますが、1人は棚橋(弘至)さん。元々、自由が丘の駅で「プロレスラーになれよ」と大学時代に声を掛けてもらったことがあって。そこから、社会人になり物足りないなと思っているとき、深夜の「ワールドプロレスリング」を観て、棚橋さんの言葉を思い出すことになるんですけど、そのときの試合というのが内藤(哲也)さんが2016年両国でオカダに勝って、IWGPヘビー級のベルトを放り投げた試合。それを観てカッコいいなって思って。なので、2人目は内藤さん。いまとなってはロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンに入ったので、こじつけだと思われてしまうかもしれないですけど、そこにはちゃんとストーリーがあるんですよ。

―ロス・インゴ入りに関しては、遠征前の最後の試合で内藤さんと試合を行ったこと、そしてメキシコに行ったことも含め、縁のようなものを感じたんでしょうか?

そうですね。ヤングライオンで経験した縛りのようなものから海外遠征で解放され、もっと自由に好きなようにプロレスをやりたいと思ったんです。上から縛られているようじゃプロレスラーとしても魅力を感じないし、自分の思うこと、自分の正義を振りかざすということをしたいと考えたとき、やはりいちばんに思い浮かぶユニットはロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンですよね。

―なるほど。そして今回のG1には、NOAHから清宮海斗選手が参戦しますが、近年NOAH、全日本プロレスを含め、他団体との絡みも増えてきました。そこに対してはどう思われていますか?

やっぱりプロレス界を盛り上げるという点においてはメリットのあることだと思います。その中で、俺がやりたいのはジェイク・リー選手ですね。

―それは華のある試合になりそうですね。やはり彼からは特別な何かを感じますか?

感じます。纏うオーラ、上品さ、色気。ジェイク・リーに関しては素直にいいプロレスラーだと思います。緑のマッチ棒とは大違いですよ(笑)。

―辻選手は、G1初戦で清宮選手と対戦しますが、先日ABEMAでNOAHの後楽園大会を観ていたんですけど、辻選手の登場に驚かされました。

彼が初戦ということもあり、これまでいろんな種を蒔いてきたつもりなんですけど、そこに対して何もアンサーがない。来たかと思えば、「お前には興味がない」と(笑)。いやいや、「初戦は辻陽太、札幌の主役はいただきます」とツイートしていたし、ずっとオカダ、オカダと言っていたくせに、今回はSANADAしか興味ないんかい!と(笑)。

まあ、別にどうでもいいんですけど、話が噛み合わないので行ってやろうと。ただ行ったら行ったで何もしてこないし、正直、こんなの初めてですよ(笑)。



―選手として、彼のことはどう思っていますか?

試合うんぬんよりもプロレスラーとして試合以外のところでも話題を作るというか、注目を集めることが大事だと思うんです。それを彼は出来ていない。そこは勿体無いなと。

ただ、清宮が俺のことをシカトしたからこれだけ話題になったわけで、彼が意図的にこれをやっていたら、俺の完敗ですよね。まあ、99.9%ないと思いますから、今回のG1ではそういう部分も学んでいただけたらと思います(笑)。


Phto by Mitsuru Nishimura



「G1 CLIMAX 33」に向けて

―あらためて、辻選手にとってG1とはどんな大会ですか?

正直、選ばれた人しか出られない大会というイメージがあったんですが、今回はどうだろうと感じています。

―やはり4ブロック制32人出場ということに違和感がある?

なんかもう誰でもいいじゃんって感じですもんね。見渡すとヤングライオンを卒業したら誰でも出られるじゃんみたいな感じがありますよ。

―辻選手はAブロックにエントリーされましたが。

まず言いたいのは、俺は世代交代に興味はありません。凱旋した時点で俺の時代が始まっていると思うし、「世代交代」と発言することで自分を下げることになると思う。だから、逆に海野、成田が「お前だけには負けたくない」みたいなレベルの話をしているのがショックでした。とはいえ、同世代の選手に興味がないわけではなく、俺一人の力で新日本プロレスを盛り上げることは無理なことだと思っているし、中心には自分がいますけど、彼らにも頑張ってもらわないといけないと思っています。

―ただ海野選手、成田選手は辻選手に対して思うことがあるでしょうね。

ジェラシーは感じているでしょう。ただそれより、俺が気に食わないのは会社としては、俺もその位置だと思われていることですよ。今回のAブロックを見る限り、「どうぞ、新世代で頑張ってください」という感じじゃないですか。そこに関して、誰が考えているのか知りませんけど、「お前ら何を見ているんだ」と言ってやりたいです。

―ただ同じブロックにはSANADA選手もいます。リベンジをするには絶好の機会ではないですか?

そこに関しては、手間が省けました。今回は、長岡のファンの皆さんに俺からギフトをあげたいなと思っていますよ。

ひとつ思うのは、「新しい景色を見せる」とSANADAは言っていますけど、その景色ってどんなものなの?と思いますし、実際に俺が帰ってきてから、新しい景色を見せているのは俺自身。俺のおかげであなたは新しい景色をファンに見せられていると思いますし、何なら主役は俺でしょって。

―考えは一貫していますよね。古い考えに興味はないし、新たな景色を辻選手も求めている。

俺からは「新しい景色」とは言いませんけど、確かに大きな括りで言えば同じことを思っています。

―ちなみに、G1の優勝決定戦で戦い相手は?

内藤哲也ですね。早々に内藤哲也を倒しておくことによって、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン=内藤哲也というのを打ち壊したいです。

―最後になりますが、新日本プロレスの選手として、今後、団体の顔になっていく自分として、団体をより世間に認知させていくには何が必要だと考えていますか?

社内改革ですね。スタッフの意識、選手の意識を改革していく。特にスタッフの意識が大事だと思っています。俺らがいい試合をしたとしてもその経営をするのは社員ですから、俺ら選手だけでは世界に羽ばたくことはできないと思うんです。俺らがいい試合をしてそれを発信することができなければ何の意味もない。新日本プロレスがいかにすごいものであって、世界一で、なおかつ世界に通用するものなんだと責任を持つことが重要だと思います。

もちろん、選手もそういう意識を持つべきで、「Forbidden Door 2回目だ。イェイ!」ではダメなんです。「またコケにされた」、「今度こそやり返してやる」と思ってないとダメなんです。俺がチャンピオンになったらそういうところを言っていきたい、そこから変えていきたいと思っています。

―フロント側にも積極的に意見を言っていきたい?

そうですね。俺は、ヤングライオンはもっと高待遇を受けないといけないと思うんです。だっていちばん働いていると思うし。試合のない日でもちゃんこ番を15時間しているんですよ? みなさん残業したら残業代もらえますよね? 下積み修行という意味ではいいのかもしれませんが、勘違いしないで欲しいのは彼らは新日本プロレスに認められて〝プロ”としてデビューした選手だということです。ヤングライオンになら何してもいいみたいな雰囲気ありますよね……。

―発言権は辻選手がベルトも含めてトップになればなるほど大きくなると思うし、発言権が大きくなればなるほど、会社も動かざるを得なくなると思います。

そうです。だからこそ俺はまず、IWGP世界ヘビー級のベルトを獲って、ここでの価値を高める。そして世界へ行く。だから、まだ俺の戦いは国内にあるんです。

構成:笹谷淳介



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