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SANADAが語る、温故知新のプロレス観、ハイスタから授かった「魂(スピリット)」

Rolling Stone Japan / 2023年7月15日 11時40分

SANADA(Photo by Mitsuru Nishimura)

新日本プロレスの至宝・IWGP世界ヘビー級のベルトを現在、腰に巻く、SANADA。彼がチャンピオンになるまでの軌跡には紆余曲折あったように思う。届きそうで届かなかった至宝。トライ&エラーを繰り返し、トップまで上り詰めた彼はG1 CLIMAX 33を直前に何を思うのか。飄々と受け答えするSANADAから感じるのは王者の余裕。新日本プロレスの新たなチャンピオン像を体現しようとする男の胸中に迫る。新日本プロレスの新しい景色はSANADAが私たちに見せてくれるはずだ。

【撮り下ろし写真を見る】IWGP世界ヘビー王者のSANADA

―Rolling Stone Japanはカルチャー誌なので、プロレスのお話をお聞きする前に、好きなカルチャーについてお聞きしたいなと思います。SANADA選手はパンクやメロディックコアがお好きだとか。

そうですね。主にHi-STANDARDしか聴かないという感じなんですが(笑)。

―先日、SATANIC CARNIVALに行かれたとお聞きしたんですが、それはもちろんハイスタをご覧になるために?

そうですね。やはり、ハイスタは僕が学生時代の頃からずっと第一線、スターで居続けてくれる存在というか。いまだに輝き続けているというのがすごいなと感じました。ライブを観ていても色褪せないし成長しているという表現が正しいか分からないですけども。



―常に更新を続けてるバンド。

常に生み出そうとしている、パイオニアというんですかね。自分はハイスタのことをパイオニアだと思ってライブを拝見しました。

―恒さん(恒岡章)の訃報があり、バンドとしても一大事だった中で「続ける」ということを言葉できちんとおっしゃっていましたね。

今後の自分の人生論を考えさせられました。続けることに意味があるのかなと。ライブではハイスタの生き様を感じたというか。悲しい出来事があっても辞めないでヒーローで居続けてくれるというのは嬉しかったです。



―人生論というお話が出ましたが、近年プロレス界では40代くらいまでにキャリアにピリオドを打つ選手も増えてきた印象があるのですが、SANADA選手の中ではご自身のプロレスラー人生をどう見据えていますか?

昔は生涯死ぬまでプロレスラーというのがカッコいいなと思っていたんですが、最近は第一線で出来なくなったら考えるかなと思います。新日本プロレスで言えば、IWGPのベルトやG1などで結果を残せなくなってきたら引退を考えるかなと。

やっぱり、自分がいちばんカッコいいと思った職業がプロレスラーだったので、ご覧になる方にもカッコいいイメージでいてほしいんです。だから、弱々しいところを見せたくない。もちろんいろんな役割があると思うし、戦い方を変えて続けている選手も大勢いますけど、そこは悩みどころだなと。

―そうですよね。自ずと世代が上がっていくと世代交代が起こり試合順も早めの位置に転換されていく。それがプロレスラーの生き方としてスタンダードな気がします。

しがみついてまでやりたくはないなと。しがみついている方を見るのは切なくなりますから。


ベルト戴冠後の気持ちの変化

―それは、IWGP世界ヘビー級のベルトを持っているからこそよりそういう気持ちになったんでしょうか。4月8日、両国国技館「SAKURA GENESIS」でベルトを戴冠してから気持ちの変化はありましたか?

変化はありますね。人に求め続けられることってすごく大変なことじゃないですか。人間にはいい時もあれば落ちる時もある。そういうことを考え出すようにはなりましたね。



―やはり、IWGPのベルトを戴冠=団体の顔として興行を引っ張らないといけないという責任感も自ずとあると思います。

意識はすごくするようになりましたね。今まではチャンピオンを追う立場でしたが、今は追われる立場なわけで。正直に言うと、追う立場の方が面白いんです。無我夢中に追うことだけを考えればいい。でも追われる立場というのは、すごく嫌ですけど、どこか守りに入るというか。だから自分はチャンピオンでありながらチャレンジャー精神を持っていたい。あたらしいことにトライしていく姿勢というものは常に持っていたいと思います。

―そういう意味ではチャンピオンとして出場するG1がいい機会になるのでしょうか。

そうですね。挑戦し続けることに関して、いまの話が繋がりますね。今回エントリーされたブロックは自分がいちばん年上なんですが、あえて自分がいちばんフレッシュでいたいと思っています。

―2016年に新日本プロレスに登場して以来、7年越しのIWGP戴冠。オカダ選手とのタイトルマッチは4度目の挑戦で本当にようやくという思いが強かったと思いますが、ベルトを獲ってからの日々は体感としていかがですか?

イメージしていたものとは違いました。

―というと?

もう少し華やかなのかなと思っていましたから。チャンピオンは華やかで幸せなものだろうと。

―実際はそうではない。

もちろん幸せですし、追われる立場というのはモテるということですもんね。最近どの取材でも”モテる”というワードを使うんですけど(笑)。モテることはいいことなんだけど、やっぱり人間って自分の人生をイメージするじゃないですか。そのイメージではもっと華やかなんですよ。でも実際は、そこまで達成できていない。チャンピオンになる前のイメージより輝いてないかなと思っています。自分は本当の意味でチャンピオンになったとは思ってないんです。

―SANADA選手の考えるチャンピオン像とは?

自分がイメージしていたのは、「SANADAがチャンピオンのときすごく観客が入っている」とか「どの大会も完売してる」とかそういうイメージだったんです。それがチャンピオンの責任でもあるのかなと思っています。

―まさにチャンピオンとして興行を引っ張るというか。

はい。「あの時代のプロレス最高だな」と思っていただきたい。これは、振り返って思うものでもあるのかもしれないですが、まだ自分が思い描いていたイメージまでは全く到達していない。そういう意味では全然チャンピオンではないなと思います。

―SANADA選手の黄金期を築くためには何がいちばん必要だと思いますか?

固定概念を捨てて新しいことをするじゃないですけど、何でもいいので前に進み続けていたら自ずと黄金期が来るのかなと。答えがわからないから人間は突き進んでいくと思うし、挑戦をやめたとき、全部ダメになるのかなと。挑戦し続けることが大事なのかなと思います。

―挑戦と言ってもさまざまな挑戦がありますしね。

そうですね。ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンから脱退して、新しいユニットに行ったことも挑戦だったし。その結果、ベルトも獲れたわけで、何かに挑戦することが大事なんです。


Photo by Mitsuru Nishimura



新技「デッドフォール」が生まれるまで

―ロス・インゴの脱退以降、本当に急展開だったじゃないですか。Just 5 Guysへ加入してそこからベルトまで一気に上り詰めた。ロス・インゴ脱退はずっと頭の中にあったことなんですか?

伸び悩みが続いたときは、環境を変えるのもひとつの手だなとは思っていました。

―Just 5 Guysではタイチ選手と合流することになりましたけど、タイチ選手の存在は大きい?

彼は、すごく優しいんです。ここ何年かですけど、敵なのに試合中も優しかったんですよ。IWGPタッグのベルトを賭けた試合でも「sanaやんはいいよ」と俺のことを常に守ってくれる。「sanaやんは好きだけど、内藤はちょっと」とか言って(笑)。



―その理由は何なんですかね?

それが分からないんですよ。ただ、全日本からというルーツは同じなんですよね。そのルートがあるから優しいのかは分からないですけど。それで、昨年10月のNJPW WORLD認定TV王座戦でシングルマッチした際に、試合後リング上で「俺ら鈴木軍、多分解散するから一緒にやらない?」と言われたんですよね。正直そのときはドッキリだと思ってましたけど(笑)。

―なるほど。いざユニットを組んでみていかがですか?

あんまりプライベートで一緒になることはないですが、優しいですね。ツンデレって言うんですかね? 仲良くなったら優しくなる。マナーが守れないファンがいたら怒りますし、実はきちんと筋の通った人です。ツンデレ兄やん。

―ユニットとしての居心地はいいですか?

そうですね。ただ、居心地が良すぎるのもあまり好きじゃない。緊張感がなくなるのも良くないんです。ロス・インゴのときも居心地は悪くなかったけど、緊張感はありましたから。

―ロス・インゴは緊張感がありますよね。

みんな独特ですからね。俺なんて(高橋)ヒロムさんと喋ったのってトータルで10分くらいですよ。内藤さんとも普段は全く喋らないですし。喋っていたのは、BUSHIと鷹木(信悟)さんだけです。

―そうだったんですね。そういう意味では馴れ合いはなかった。

それがよかったなと思っています。でも、逆にロス・インゴは俺が今いなくて居心地がいいんじゃないですか? だから緊張感がないと落ちていくよとアドバイスしたいです。余計なお世話だと言われると思うけど(笑)。

―では、Just 5 Guysのメンバーとも程よい距離感をとりつつやっていく?

そうですね。でも自分以外の4人はすごく仲がいいですから。ずっと鈴木軍でやってきたメンバーですし、だからこそ自分がその色を払拭しないといけないなと思っています。そのイメージを脱却できれば、ユニットとしてもっと上に行けると思うので。

―新たなユニットへの加入の他に、新技「デッドフォール」の存在も大きいのかなと思います。SANADA選手が頭から落とす技の封印を解いたことも含めて非常に語りがいのある技だなと思うんですが、あの技に行き着いた経緯、頭から落とす技に行き着いた気持ちはどういうものだったんですか?

ここ近年、固定概念を全て捨てたくなったんです。じゃあ、あえて頭から落としてみようかなと思った。「頭からは落とさない」という固定概念があったから上にいけなかったのかなと。そのこだわりすら捨てて、こだわりより新しいことに挑戦してみたい、前に進み続ける何かを持っていたいという気持ちの方が強くなってしまったのがキッカケです。

―そのこだわりから解脱したことで一気に物事が動いた。

そうですね。あと、「デッドフォール」とハイスタの難波(章浩)さんに命名していただいたことで、技に魂が入った感じがしますし、重みも増したなと。

―なるほど。技の入り方とかも含めて絶妙だなと思っていて。頭から落とすとは言え、下品な落とし方ではないし、品があるんですよね。

確かに雑な感じはないですよね。

―芸術点が高いというか。その辺りもきっとこだわられたのかなと。

自分の中でイメージしたのは、誰にでもかけられる技にしたいなと思ったんです。たとえ200kgの人にでもかけられる技。きっとそこに繋がってるんじゃないですかね、雑じゃない感じは。

―フィニッシャーとして頭から落とす技が増えて、SANADA選手の全体のプロレス観みたいなものって変わった部分はありますか?

自分は根本的にはそんなに変わってないんですが、これをやったことによって周りはどう思ったのかなと気になっています。

―核となる部分は変わってないと思います。

基本は、全て新しければいいという発想ではないので。古き良きことがありながら新しいことにチャレンジした結果が「デッドフォール」なので。


Photo by Mitsuru Nishimura



「モテる」プロレスラーに

―SANADA選手にはオーセンティックなプロレスを大事にしたいという気持ちがあるかと思いますが、ロールモデルとなった選手はいますか?

闘魂三銃士(武藤敬司・蝶野正洋・橋本真也)が好きだったので、モデルはそこですかね。

―武藤さんはSANADA選手がこの世界に入るキッカケを与えた存在でもありますね。

いい別れ方をしなかったので、多分嫌われていると思うんですけど(笑)。TNAから帰ってきたときの試合のバックステージでカメラの前で怒られていますしね。でも、離れてよかったとも思ってるんです。スーパースターとは離れた方がいい。ずっと子分のような見え方をしますし、だからこそ独立しないといけない。あっ、だからロス・インゴを辞めたのかも。

―確かに、いくらロス・インゴはみんな並列と言っても内藤選手の存在は大きいですよね。

内藤哲也の顔が出てくるじゃないですか。鷹木さんがベルトを獲っても、プロレス大賞MVPを獲っても内藤哲也のイメージが強い。自分は本当の意味でトップに行きたかったので脱退しましたね。

―でも、SANADA選手のスタイルは新しいチャンピオン像の可能性がすごくあると思うんですよね。

ありがとうございます。まだまだ発展途中ですけども。

―それこそIWGP世界ヘビー級王座の防衛戦もイレギュラーだったと思いますし。

そうですね、相手が全員後輩なんですよ。これはきっと会社が俺の「新しい景色を見せる」ということに便乗してると思うんですよね。洗脳されている気がする。だからG1も32人もエントリーして新しいことに挑戦してる。絶対俺の真似だと思うんですよね。

―防衛の3試合はいかがでしたか? 特殊な戦いだったと思いますが。

これは悪い言い方になってしまうけど、自分が勝っても格上げになりづらいシュチュエーションですよね。

―確かに相手は勝てば大金星と言われる試合。ネガティブなプレッシャーはなかったですか?

向こうにはメリットがあるんですが、こっちは勝っても「そうでしょうね」で終わる。でもプレッシャーはありませんでした。これはもう楽しまないとダメだなと思ってやっていましたね。

―団体としては、近年全日本、NOAHとの交流も盛んになりましたね。

あんまり好きじゃないんですよ、頻繁にやるのが。たまにやるから面白いのであって、普通にやっていたら他団体とやる意味がないと思うんです。今回のG1にもNOAHから来ますけど、自分の中では対抗戦という雰囲気はなく、G1という括りの中でのいち選手としての戦い。

―清宮(海斗)選手への興味は?

興味は、英語で言う「so-so」みたいな(笑)。日本語で言うと失礼になっちゃうので。

―それこそ武藤さんに最後、可愛がられていて、シャイニングウィザードも引き継いでいますが、そういった武藤遺伝子みたいなところで言うと?

最後だけなので、あまり感情移入はできないですよね。自分の方が武藤さんとのストーリーがあるし、深みは自分の方があると思いますね。

―清宮選手を含め、今回のG1のAブロックはイレギュラーだった防衛戦のような流れと似ていますよね?

そうですね、全員後輩ですね。

―勝って当たり前の状態で試合をすることに関してはいかがですか?

令和闘魂三銃士には期待していますね〜。マジで期待しています。未来の新日本プロレスなので。

―格の違いを見せるつもりでいる?

そうですね。あの世代はまだ色気が足りないんですよ。まあ、キャリア的にはしょうがないんですけども。そこの差を感じますね。試合の上手さとかより大事なような気がするんですよね、色気が。気を引くというか。だからあの世代にはモテるやつはいないんだろうなって。

―面白い。

多分、モテないですよ!


Photo by Mitsuru Nishimura



G1優勝決定戦で戦いたい相手

―でも先日、辻(陽太)選手にお話を聞きましたけど色気を感じましたよ。まだまだですか?

まだまだです。でも辻はあの中では色気があるかもしれないですね。でもモテなそうですね、あいつ(笑)。

―あはは(笑)。20分1本勝負ということも含めて、展開のスピード感も変わってくるのかなとも思います。

時間へのプレッシャーはあるでしょうね。早めに仕掛けようとか、そういうことを考えたりしながら試合をするとすごくスタミナを使うんですよね。すごく疲れちゃうので、逆にハードなような気がします。引き分けになれば点数が減るわけで、面白い展開になりそうではありますよね。

―SANADA選手の試合のスタイルとしてそこまで早く仕掛けることってあまりないのかなと思いますが、どう向き合っていきますか?

そうなんです、苦手なんですよね。もしかしたら今回のG1は俺がいちばん弱いかも……。いま話していて思いました。

―いやいや! 

まあ、自分の中で一発一発重みのある技が1〜2個増えたのでそれをうまく場面でタイミングよく行けたらいけるんじゃないですかね。

―逆に相手が仕掛けてくる可能性もありますもんね。

怖いですよね、若者が仕掛けてくるって。何してくるか分からないし。

―そんなことを言って、秒殺する試合を観たいです。

それいいですね。

―ちなみに優勝決定戦で戦いたい相手は?

棚橋弘至ですね。世代を作ってくれた人で、これまでは自分がチャレンジャーで棚橋さんがチャンピオンみたいな図式で勝負していたんですけど、今度はチャンピオンSANADAとチャレンジャー棚橋という立場で試合をしてみたいんです。

―それは夢がありますね。ぜひ、IWGPの防衛戦でも観たい。

IWGPでやってみたいです。自分がG1を優勝して逆指名してみたい。側から棚橋さんを見ているとちょっと調子が落ちている気がするし、あの世代で落ちているのを見るのは切ない。あの世代で夢を見せてほしいなと思うんです。

―新たなチャンピオン像というものも含めて今回のG1では観ることができると思うし、本当に期待しています。

自分もそういう自覚をもって試合をできることが幸せですし、チャンスかなと思って試合をやりたい。自分がいちばん若い気持ちでいかせていただきます。

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構成:笹谷淳介



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