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never young beach安部勇磨が語る『ありがとう』の意味、ビートルズからの影響

Rolling Stone Japan / 2023年7月24日 18時0分

安部勇磨(never young beach)(Photo by Tetsuya Yamakawa)

never young beachが、前作『STORY』から約4年ぶりとなるニューアルバム『ありがとう』を、2023年6月21日(水)にリリースした。レコーディングには安部勇磨(Vo.Gt)、巽(Ba)、鈴木(Drs)に加えて、ライブサポートでもお馴染みの岡田拓郎(Gt)、下中洋介(Gt)、香田悠真(Key,Pf)らが参加。6人で見つけた愉快で気持ちのいい素直な新しいネバヤンの音楽とグルーヴが収録されている。本作について、フロントマンの安部に話を訊いた。

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─素晴らしいアルバムでした。もしかしたらネバヤン史上最高作が届いたな、という実感もあります。なのに、安部さんは、今、楽器を手にしたくないとの噂を聞きましたが……?

安部勇磨(以下、安部):楽器は大好きなんですけど、いつからだろうな……たぶんネバヤンの4枚目(『STORY』2019年)ぐらいから、僕、あまり楽器弾かなくなってきて。デモ作ったりでは弾きますよ。簡単なの。そういう時は楽しいんです。1人で黙々とやるし、無責任でいいから。でもライブなんかだと責任重大ですから。なまけた自分には耐えられません。すぐ忘れちゃうし弾けない。なので拓郎くんと下中には本当に助けてもらってます。頭があがりません。拓郎くんと下中が弾くフレーズはドラマチックで生きてるんです。あの2人の「ギタリスト」がこのフレーズを弾くとどうなるんだ?みたいなこと考えるとワクワクします。パワーアップしてくれる。

─岡田さんが加わってからバンドの温度感が明らかに変わりましたね。

安部:そうなんです。拓郎くんと下中のギターが大好きなんです。2人がギターを弾くとマジックがかかるんです。生きてるんですよね。2人のファンなんです。聴いてて幸せだからどんどん僕は弾かなくなるんですけど(笑)。この間くるりの岸田(繁)さんに「安部くんギター弾いた方がいいよ」って言われたの今話しながら思い出しました。今は、岡田くんもそうだし、下中くんも香田くんのプレイで歌うのがとにかく楽しくて。自分は自分の得意なこと……僕は歌だったら割と早く思い浮かぶので、そういうことを今はやってようかなと思ってます。

─逆に言えば、安部さんは歌が今は面白く感じている、歌やメロディを形にするのが得意という自覚があるということですか。

安部:そうですね。歌が安心しますね。最近はそこに集中するようにはしてます。歌は結構頭の中だったり、ぼそぼそ口ずさむから、自然というか、楽しいんですよ。歌ってても、もう歌いたくないっていうのはないし。最近拓郎くんから「この曲安部ちゃん歌ってみない?」って言ってデモを送ってきてくれたんです。僕もずっと拓郎くんの曲で歌いたいって話してて。デモ聴いたら曲が最高で。そういうのに歌入れてるとすごい楽しくて。もちろん、さっき話したように曲を作るのも好きなんですけどね。歌うのが好きになると、曲も作りたくなるんで……今回のアルバムは割とそういう気持ちが自然と出て形になったところがありますね。

─新しい仲間がネバヤンに活力を与えていると。

安部:すごい活力をもらってますね。この間スタジオで「ジャズとは?」みたいな話しを皆でやんわりぱやぱやっとしていて、そこから一つのコードでセッションが始まったんです。みんなでああでもないこうでもないとソロを弾いたりして。そしたら悠真くんが「じゃあ、次は一弦だけでやろう」とかってどんどん面白いことをやるんです。みんなもテンションあがっていって。で、「じゃあ、次はアベちゃん、弾いて」とかってこっちに振ってくるんです。僕もなんとか合わせようと頑張って弾くんですけど、全然だめで。それでも「ああ、いいなあ」とかって拓郎くんに褒めてもらえる(笑)。すると、「おおお、楽しい~!」ってなっちゃう。毎回毎回楽しくて。音楽いいなぁってなります。活力に溢れてますね。

─それはネバヤンを結成した時とは違う感触なんですか。

安部:そうですね。全然違いますね。自分もいろいろ変わったんだなって思います。4枚目(『STORY』)を作ったくらいから、コロナもあったし、他にもいろいろ立ち止まって考えることが増えて。好きなものが変わったりとかする中で、どうしたらいいんだろうっていろいろなことがわかんなくなっていたんですよ。そういう中で岡田くんや下中、悠真くんらとつながって、この人達と一緒だったら次の何か新しいことができるかも……って思えてきたんですね。音楽的なヒントやアイデアを何気ないスタジオでの音出しからもらったりしてますし、そこから曲が生まれたりもしています。聴く音楽の趣味も変わりました。ザ・バンドとかデレク・アンド・ドミノスとかエリック・クラプトンとかを聴いて、今ならこういうこともできるな……って思えてきたり。拓郎くん、下中と交流することで、こっちも行っていいんだ、みたいなことに気づいて、オープンになっていったというか。悠真くんもきてくれるし。今までは、そういうのはやっちゃダメかな……みたいに思っていたところがあったんですよね。



安部:あと、ビートルズのドキュメンタリー『Get Back』を観たのも大きかったですね。あれを観ると、メンバーはガンガンに声を張り上げてるし、どっかんどっかんやってるし、でも、めちゃくちゃかっこよくて。ああ、バンドってこういうものだよなって。僕、ビートルズって聴いてこなかったんです。でも映画を観たら、一気にバンドの持ってる衝動みたいなものに打ちのめされちゃって。やっぱりバンドやりたいなとか思って。僕らの新しいアルバムに入っている「Hey Hey My My」もビートルズの影響を受けた曲なんです。まさに「ゲット・バック」の最初のあのイントロの感じみたいな曲やりたいんだって話をしたら、拓郎くんも下中も「いいじゃんいいじゃん、やろうよ」ってノリになって。そこからどんどん進んでいってできたんです。そんな感じで、彼らと出会ってなければ僕はたぶんバンド続けらんなかっただろうなって思うし、僕を含めメンバー3人ともみんな彼らと仲良くなれて、今はバンドの雰囲気はすごくいいですね。ツアーも楽しいですよ。今回のアルバムはそういうプロセスがそのまま出ているような作品だと思います。



─「Hey Hey My My」はニール・ヤングに同名の曲がありますよね。ニール・ヤングがパンク・ロックに共感を受けて作ったと言われていますが、「ヘイ・ヘイ・マイ・マイ」というタイトル自体には言葉としてほとんど意味がない。でも、確実にパンクに刺激を受けた今の自分自身に手応えがある、ということが感じられる曲です。それと同じ感覚がネバヤンの今回の『ありがとう』にも感じられるように思うんです。歌詞そのものには意味がないものが多いじゃないですか。お天気だったら楽しいとか、気持ちが上がるとかか、洗い物がはかどるか。でも、その言葉の背後には充実した空気や漲る気力のようなものが確実にあって、外部からの刺激や影響がそうさせている、というような。

安部:そうですね。9年間バンドをやって、いろいろ経験したことがうまくまとまったかなと思います。下手なりに転がってたことが繋がってきたなって。だからタイトルも『ありがとう』。メンバーやサポートのみんなだけじゃなく、スタッフの方々にも「ありがとう」って。事務所の社長やマネージャーにも「もうバンドやめたいです」とかこぼしちゃっていたんです。「まあまあまあまあ」ってゆっくり話を聞いてくれたんです。感謝ですね。あの時に辞めてたらこのアルバム作れなかったし。

─岡田さんがネバヤンのサポートすごく楽しいって言ってました。同い年なんですよね。

安部:そうかあ、拓郎くん、楽しんでくれているんだ……嬉しいなあ! ライブなくてもメンバーみんなLINEでわちゃわちゃしてますよ。ヤフオクにこんなギターが出てるとか、他愛のない話ばかり。気を遣わないんです。バンドとソロとどう分けるか、みたいなところで悩んでたときに拓郎くんに相談したら「大丈夫だよー」って言ってもらえて凄い安心したな。大好きです。

─まあ、確かにソロにもバンドのサポートにも岡田さんがいますから。

安部:(笑)。そうそう。そこがなんかもうわけわかんなくなってきてるんですけど。楽しいからいいかって。今回のアルバムも、やっぱり、今話していた「Hey Hey My My」が最初にできたことがすごく大きくて。そこから波に乗ったら、どんどん曲もできていった感じなんですよね。で、カントリーっぽい曲を作りたくなって、そういう感じのデモを持っていったら、岡田くんが「これはスライドギター要るよね~」とかって言い出してすぐその場で弾いてくれて。「うわ~、はいはい、もうやっぱもうそれですね!」みたいな感じ。下中もすぐアイデア出してくれて乗っかってくれて。だからすごい速さで、3、4曲はすぐにスタジオで作った感じでした。「帰ろう」とか、もうレコーディングが始まってから作ったんですよ。スパスパスパってなんかできる気がしたので、あんまり作りこみすぎないで、その場のノリで。ただ、フレーズを引き出すためにイメージの共有をどうできるか? みたいなことはちょっと気にしました。でも、本当にすぐできて、「ああ、気持ちよかった!」みたいな感じで(笑)。





─安部さんのヴォーカルも少し変わった気がしました。『STORY』の時はもう少しメロウで柔らかい表現を取り入れていた印象でしたけど、今回は自由に声を張ったり伸ばしたりしていて、本能で歌っている感じさえします。

安部:そうなんですよ。『Get Back』を観たっていうのもあるんですけど、あんなパワフルにやるのって、やっぱいいなとか思ってて。あと、ネバヤンの曲ってサビがあってAメロがあって……って曲が多いんで、自然と声を出す時は出す、みたいになっているんですよね。あと、やっぱりソロとの違いは考えたかもしれない。ソロだとAメロからサビとかっていうの、ちょっと避けたいとか、声を張るっていうアプローチをちょっとやめてみようとか思ったりするんですけど、ネバヤンはバンドだから張ってみることも気にせず思い切り歌えるんですよね。そうですね……4枚目(『STORY』)は割と自分の声あんまり張ってないですよね……。



─そうやって自然とソロとバンドとの違いがハッキリしていくわけですね。同じメンバーが関わっていても、それによって地続きな部分と、うっすら別れていく部分とに別れていく。

安部:なんかソロはどんどんミニマルっていうか、自分の世界に入っていくんで、逆にやっぱ放出したい時もあるんですよ。そういう時はバンドだなとか思って。ちょっとドカドカやってみようって。そうやっていいバランスがとれていったんだと思います。だってほら、ソロはもっと歌い方もボソボソしてたりするじゃないですか。でも、そういうのばかりやってると今度はドカドカやりたくなる。ソロではちょっとネガティヴに聞こえる歌詞でもネバヤンでは全然イケるな、みたいな感じで、逆に整理されたりもするんですよね。ソロもバンドも手伝ってくれてますけど、拓郎くんも多分そういうのはわかってくれてて、ソロでのギターとバンドでのギターはすごくちゃんと分けて考えてくれていると思います。だから、拓郎くんたちは新たな仲間でもあるけど、いろんな音楽の知識も豊富だし、なんといっても尊敬できるミュージシャンなんですよね。だから、ライブとかでは逆にこっちが「こんなことやって大丈夫かな?」って不安に思っちゃったりする。親しき中にも礼儀あり、みたいな(笑)。下品って思われたらどうしよう?って。でも、みんな「いいよいいよ、その方がこっちも弾きやすいし楽しいよ」って言ってくれて。下中なんか、もうかっこよすぎて僕が震えちゃうっていうか、雨でびしょびしょの日の野外のステージで、膝からこう、サッカー選手みたいに、ステージの前でスライディングしてギター弾くんですよ。かっこよすぎますよね。音に関して2人にお願いするときは緊張します。尊敬してるので。

─逆にいうと、自分が出したい音というのがわかってきた。それを実現させるための新しい仲間ができて、譲れない耳が出来上がってきたということですか。

安部:そうですね。確かに今回はマスタリングとかミックスの調整にももっと意識的になって、どこまで音をあげるかとか、ここは下げた方がいいんじゃないか、みたいなことをエンジニアの池田さんとも結構話したんです。そこは最初のソロ『ファンタジア』(2021年)で学んだことですね。同じ曲でもこんなアプローチがあるとこんなことになるんだ、こんなに変わるんだ、とかっていうのがちょっとわかったので、やっぱり今のバンドにも確実に還元されてるなって思いますね。



─そういう意味で、今作のサウンド面での方向性はどういうものでしたか?

安部:あくまでサウンドの面ですが、今回は明確に「もっとパワフルにしてみたい」ってことだったんです。だからアンプとかも60年代より50年代のアンプにしてみたり、マーク・ボラン(T・レックス)のこういうギターの音がいいとか、そういう明確な理想がありましたね。そこは初期からはかなり変わったかもしれない。昔はギターの音はシュワシュワって感じだったり、とんがってたりソリッドだったけど、今は太くて丸い感じの音がいいなって思う。実際に、前まではフェンダーばかり使っていたんですけど、今回はほぼギブソンのギターを使ってるんです。ファースト(『YASHINOKI HOUSE』2015年)から3枚目(『A GOOD TIME』2017年)くらいまでは漠然とインディーっぽさからいかに離れるか、みたいな思いが強く音に出ていたと思います。でも、今はそういうことも考えない。いいと思える音、好きだなと思える音があって。昔だったら出せなかった音、解像度が高すぎない、ちょうどいい塩梅の音というのが理想としてちゃんとあるんですよね。



─時代性と反時代性が交差したところに自分の音の価値観を見つけ、体系的と反体系的なことの間で自分の理想を獲得していく作業ですね。

安部:そうですね。やっぱこだわらなきゃダメな領域ってある気がするなとか思って。だから、機材とかももっと買わなきゃなとか、チャレンジしなきゃなとかはすごく考えていますね。そこから自分の音、音楽をちゃんと考えていくというか。 

─「文脈」ということですね。

安部:そうです。尊敬できるミュージシャンって、ちゃんと文脈を感じるっていうか、そこがあるからやっていけるんだな、歴史に残るんだなって思うんですよ。今まで自分のペースでいろいろと音楽を聴いてきたけど、全然わかってなかったんだなって思いますね。自由に好きなようにやればいいやっていうのは一部のちゃんとしたミュージシャンなんですよ。でも、僕はまだそんなことは言えない。一生勉強だなって思います。自由でいることより勉強っていう気持ちの方が強くなってきてますよ。ちゃんと勉強してから自由がどれだけ怖いことなのかと考えていかないと。今やっと、古い音楽ってこんなかっこいいんだって気付かされて。もっともっと聴いてみたいですね。


<リリース情報>

never young beach
『ありがとう』
2023年6月21日(水)発売
形態:12inch Vinyl/digital
価格:¥4400(税込)
品番:ROMAN-024
発売元:Roman Label / Bayon Production
流通:東洋化成
=収録曲=
SIDE A
1. 哀しいことばかり
2. 毎日幸せさ
3. 蓮は咲く
4. Oh Yeah
5. 風を吹かせて
SIDE B
1. らりらりらん
2. こころのままに
3. Hey Hey My My
4. 帰ろう
★リードトラック:B-4 帰ろう / B-1 らりらりらん

- Member -
安部勇磨 (Vocal&Guitar)
巽啓伍 (Bass)
鈴木健人 (Drums)

- Support Members -
下中洋介 (Guitar) | 岡田拓郎 (Guitar) | 香田悠真 (Keyboard, Piano)

<ライブ情報>

「never young beach 5th Album ”ありがとう” Release Tour」
2023年9月28日(木)東京|LIQUIDROOM
2023年10月1日(日)神奈川|BAYHALL
2023年10月4日(水)北海道|PENNYLANE 24
2023年10月13日(金)宮城|Rensa
2023年11月6日(月)愛知|Zepp Nagoya
2023年11月7日(火)大阪|なんばHATCH
2023年11月9日(木)福岡|DRUM LOGOS
2023年11月17日(金)石川|Eight Hall
2023年11月18日(土)新潟|LOTS
2023年12月16日(土)沖縄|桜坂セントラル<DAY1>
2023年12月17日(日)沖縄|桜坂セントラル<DAY2>
【愛知・大阪・福岡・石川・新潟・沖縄】
チケット発売詳細は後日発表

「Yuma Abe ”Surprisingly Alright” Show at Sogetsu Hall」
2023年8月3日(木)東京・赤坂 草月ホール
OPEN 18:00 / START 19:00
料金:¥5000
出演:Yuma Abe
主催:BAYON PRODUCTION
協力:草月ホール
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/yumaabe-t/
e+ https://eplus.jp/yu_ma/

official site |http://neveryoungbeach.jp

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