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ブルーノ・メジャーが語るタイムレスな作曲術、親密な歌心を培ったルーツとメランコリー

Rolling Stone Japan / 2023年7月24日 18時30分

ブルーノ・メジャー(Photo by Neil Krug)

ノスタルジックなサウンドとメランコリックなフィーリングが特徴のベッドルーム系シンガーソングライター。ブルーノ・メジャー(Bruno Major)のイメージは大体こんなところだろうか。ソウルやR&Bのフィーリングがあり、同時にジャズの影響も強く感じさせる彼の音楽はイギリス独特の感性を持っている。

2017年のデビュー作『A Song for Every Moon』の時点で、ネオソウルやポストロックも含めたプロダクションも備えつつ、70年代以前のノスタルジックでヴィンテージな質感が醸し出す独特のムードが世界中のリスナーを魅了した。それは2000年の2作目『To Let A Good Thing Die』でも引き継がれていた。ささやくような歌唱に加え、密室的なサウンドの親密感も彼の音楽の魅力である。僕も穏やかな音楽、もしくは心を静める音楽(©Quiet Corner)として接してきた。

しかし、ブルーノ・メジャーという人はもっとスケールの大きなアーティストだったようだ。最新アルバム『Columbo』では僕が感じていた印象をはるかに超えてきた。からっとしていて、パワフルなサウンドもたびたび聴こえる今作は、これまでの印象とは異なるようだが、音楽的には筋の通ったブルーノ・メジャーらしさみたいなものも同時に感じられる。彼の音楽家としての懐の深さを知り、ますます魅了されてしまった。

ここではそもそも、ブルーノ・メジャーがどんな音楽家なのかを掘り下げようとしたのだが、こちらから尋ねなくても自身の音楽がもつ本質をたくさん語ってくれたように思う。音楽の話をしているはずなのに、いつのまにか音楽観だけでなく、彼がどんな風に物事を考えているのかも見えてくる深い話がいくつも含まれたものになった。『Columbo』や8月に控える来日公演をもっと深く味わうためにも、うってつけの記事になったのではないだろうか。



―あなたは色々なタイプの曲を書いています。特に研究していたシンガーソングライターがいたら教えてください。

ブルーノ・メジャー(以下、BM):僕はもともとジャズ・ミュージシャンだった。だから、18歳から22歳くらいまではずっとジャズを勉強していた。ジャズ・ギタリストになりたいと思っていたんだ。でもその過程で、自分は曲そのものに興味があるということに気がついた。そこからジョージ・ガーシュウィンやジェローム・カーン、コール・ポーター、ロジャース&ハマースタインなどの曲に合わせてジャズの即興をする練習をするようになった。曲に興味があったから、自分のジャズ・スタンダードを書いてみようと思ったんだ。それが作曲をし始めたきっかけだよ。

ソングライティングを始めてからは、ランディ・ニューマン、ニック・ドレイク、ボブ・ディラン、キャロル・キング、ビリー・ジョエル、ポール・サイモン、ディアンジェロ、レディオヘッド、チェット・ベイカー、エラ・フィッツジェラルド、ルイ・アームストロング、ジョニ・ミッチェル……このリストには終わりがないね、僕は本当にさまざまな人たちから影響を受けている。でも僕のソングライティングは、自分にとってパーソナルなものであって、誰かから直接的にインスピレーションを受けているというものでもないんだ。

―最初はジャズ・ギタリストだったけど、自分なりのスタンダードを書きたくなったとおっしゃっていましたけど、あなたが考える自分なりのスタンダード・ソングはどんな条件を備えていると思いますか?

BM:僕はジョー・パスやウェス・モンゴメリーがすごく好きで、それに加えてサックス奏者のキャノンボール・アダレイや、ピアノ奏者のキース・ジャレットなどギタリスト以外のミュージシャンも好き。ビル・エヴァンスやマッコイ・タイナーのピアノ、マイルス・デイヴィスのトランペット、エルヴィン・ジョーンズのドラムなどもね。僕が曲を書いたり、アルバムを作ることは、ジャズ・ミュージシャンが曲を書くのと同じこと。今まで聴いてきた膨大な影響から、それらを組み合わせて、絵描きがそうするように自分のパレットを作ることなんだ。そこからどの音を選んで使うかは自分で決めることであって、それが自分独自の「声」になる。時間をかけて培ってきた知識や影響を、その「自分の声」と混ぜ合わせることによって、自分独自のスタイルが出来上がる。スティーヴィー・レイ・ヴォーンだってジミ・ヘンドリックスに影響を受けていたし、ウェス・モンゴメリーだってチャールス……なんだっけ?

―チャーリー・クリスチャン?

BM:そう、チャーリー・クリスチャンにインスパイアされている。さらに昔に遡っても、ベートーヴェンだってハイドンやバッハに影響を受けていた。とにかく、そういう影響からは絶対に逃れられないものなんだよ。



―先人との影響関係について自覚的なのは、あなたの音楽を聴けば一目瞭然だと思います。先ほど挙がったジョー・パスに影響を受けていると色々なところで公言していますよね。具体的にどんな影響を受けてきたのでしょう?

BM:僕は子供の頃にクラシックのギター演奏をやっていて、全てのグレード試験(訳註:英国では、音楽、芸術、スポーツ等の素養を身につけさせることを目的とした技術グレードの検定試験がある)を受けてきた。でも、16歳くらいの時にマーティン・テイラーのコンサートを観たんだ。それに圧倒されたんだよ。「うわ、あれは一体何なんだ⁉️」と思って、自分もそういうことをやりたいと思った。彼の演奏からはさまざまな音を聴き取ることができた。それまで、ジャズは「#$@=!%)*^&」(フリージャズみたいな変な音を出しながら)みたいな感じで、僕の頭では理解しきれていなかった。でもマーティン・テイラーの演奏を聴いたら納得が行ったんだ。ギターという文脈の中でジャズを理解することができた。

ジョー・パスもその延長線上にいる。彼のソロ演奏を聴いたとき、すごくインスパイアされたんだ。マーティン・テイラーも大好きなんだけど、個人的には、ジョー・パスの方がディープなレベルの即興演奏をすると思う。彼の1stアルバム『Virtuoso』(1973年)だけを1年間聴き続けた時期があったくらいだ。一日中ずっと聴きながらラインやコードを覚えて、僕が寝ている間も目を覚ました時もアルバムはずっと流れている、みたいな。とにかく夢中だった。今でも自分がギブソン175を弾いているのはジョー・パスの影響だよ。



―シンガーソングライターの名前もたくさん挙がっていましたが、例えばランディ・ニューマンはどんなところが好きですか?

BM:マーティン・テイラーがソロ・ギターという媒体を通して、僕にジャズの聴き方を教えてくれたのと同じように、ランディ・ニューマンはジャズという媒体を通して、僕にソングライティングの流儀を教えてくれたんだと思う。彼はジャズに対する造詣が深くて、ニューオーリンズのブルース・ジャズを背景に持つ人だ。だから、「You've Got a Friend in Me」(「君はともだち」)のピアノパートはドクター・ジョンに影響を受けているよね。そういう流れから作られた曲なんだ。

それに、ランディの作る音楽はジャズ・ミュージックなんだけれど、見事な歌詞がのせてある。僕は彼こそが史上最高のリリシストだと思っている。本当にものすごく影響を受けた。言葉と音楽を組み合わせることがソングライティングという魔法の源であること。それに彼のおかげで、愛や恋愛についての曲ばかり書く必要はなくて、例えばカール・マルクスについての曲(「The World Isn't Fair」)や、背の低い人についての曲(「Short People」)を書いてもいいんだと気づかされた。いつも興味深いキャラクターを描いていて、そういうところにも大きな影響を受けている。



―レナード・コーエンの名前もよく挙げている気がします。

BM:彼も偉大なアーティストの一人だよね。レナードはフラメンコ・ギターの影響を受けていて、彼の音楽にはスペイン音楽の要素もたくさん含まれている。僕はパコ・デ・ルシア(スペインのギタリスト)の大ファンでもあるし、そういう要素が混ざっている感じがすごく好きなんだ。でも、レナードの最大の魅力は彼が書く歌詞だと思う。「Hallelujah」が最も有名なのかもしれないけど、あの曲の第2ヴァースは僕が一番好きな歌詞かもしれない。こんなふうに、僕には影響を受けた人たちがたくさんいるんだ。話をしていたらキリがないくらい。



―影響を受けてきたソングライターに共通点を感じるとしたら、なんだと思いますか?

BM:どうだろうな。尊敬しているアーティストたちから、自分が学んだことで共通している点があるとすれば「ユーモア」だと思う。僕が好きな人たちの音楽には、程度の差こそあれ、何かしらのユーモアが含まれている。ランディ・ニューマンの音楽はわかりやすいほど面白いし、時にはコメディのように感じられる。レナード・コーエンの音楽にも一種のシニシズムが含まれていると思う。ポール・サイモンもそう。彼らはみな、偉大なアーティストだけど、音楽に対してあまり気難しく考えていない。僕もそれを見習って、自分の音楽には何かしらのユーモアを入れたいと思っている。

―なるほど面白い。たしかに、あなたの音楽にも肩の力が抜けた心地よさがありますよね。

BM:結局のところ、作品や物事が時代によって風化するのは、そこが要因だと思うんだよ。気難しく考えて何かに取り組んだら、世界一クールな存在になれるかもしれない。でも10年後、15年後、それは古くさくて時代遅れのものに感じられてしまう。そこまで気難しく考えずに作ると、それは名曲になる。特に学んだのはそういうところだね。

「メランコリー」はどこからやってくる?

―割と古い名前についてばかり質問してきましたが、レディオヘッドの名前も挙げていましたね。

BM:レディオヘッドやディアンジェロ、J・ディラもそうなんだけど、彼らにはリリシストとしてではなく「音響」に関して大きな影響を受けている。歌詞が目的でディアンジェロを聴く人はあまりいないはずだ。むしろ音響的な体験が求められていると思う。それはプロダクションがもたらすもので、シンガーソングライターにとっても重要な要素の一つだ。「どうやったら聴き手に対して、ある種の感覚や感情を喚起することができるんだろう?」と考えるのがプロダクションだ。ウラディミール・ホロヴィッツが演奏するベートーヴェンの「月光」を聴くと、歌詞がないのにある種の感情が呼び起こされ、悲しくメランコリーな気分になる。それが音響(sonics)の力なんだ。

僕の音楽を聴けば、音響的にはレディオヘッドの影響がたくさん含まれているということに気づくと思う。例えば、ニューアルバムの収録曲「You Take The High Road」を聴けばわかるはずだ。それに自分の歌い方は、トム・ヨークのファルセットにも影響を受けている。彼は高音を出す時に、ものすごく表現豊かに歌うからね。そこは自分の歌い方にも共通するところだと思うよ。




―今、「悲しい」とか「メランコリー」といったエモーションを表現する単語が出てきました。あなたの音楽にとって、それらはすごく重要な要素なのではないかと思うのですが?

BM:それはディープな質問だね。僕の音楽は、自分が感じたことを素直に表現したもの。だから、自分の中には「悲しさ」とか「メランコリー」というものが確かに存在しているんだと思うよ。とにかく、そういうこと。僕は音楽を作るとき、頭で考えないようにしている。一番良い音楽ができるのは、脳が完全にスイッチオフされた状態で、身体で感じている時。悲しくしようとか、メランコリーにしようとか、こういうふうにしようと考えて音楽を作っているのではなくて、自分の中にある感情を表現しているだけだから、その時、感じたものがそのまま音楽として反映される。だから、自分の中にメランコリーな感情があるっていうことなんだと思うよ。

―例えば、「メランコリー」の表現に関して影響を受けたアーティストはいますか? それとも自分自身の中から出てくる感覚なのでしょうか?

BM:僕が初めてアーティストになりたいと思ったのは、ニック・ドレイクの『Pink Moon』を聴いた時だった。ポーランドのワルシャワでギグをやっていたんだけど、インフルエンザになってしまい、2日間くらい寝たきりだった。熱にうなされながら『Pink Moon』を聴いて「これはすごい!」と思った記憶がある。あのアルバムには間違いなくメランコリーな要素があると思うよ。色々な人が、色々なタイプの音楽を作っている。ファレルは「Happy」という曲を作っているけど、僕はそういうタイプの人間じゃないってこと(笑)。



―そのニック・ドレイクの「メランコリー」って、あなたの言葉で説明するならどんなエモーションになりますか?

BM:彼のメランコリーは彼特有のものだよね。ニック・ドレイクの音楽にはアセクシュアルな感じがあって、そこがとても興味深い。彼の音楽には、テストストロン(男性ホルモン)みなぎるアルファ男性(訳註:男らしさをそのまま形にした、いわゆる「男の中の男」と喩えられる男性)らしさが感じられない。その反面、例えば、ビリー・ジョエルなどは、銃士や海賊みたいな感じの堂々とした生き様で、愛や喪失感などについて歌っていて、男性ホルモンが強そうな感じがする。ニック・ドレイクは内省的でアセクシュアルだと思うんだ。シェイクスピアのパック(訳註:シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』に登場する妖精)みたいなキャラクターで、自身の経験について知的に語っている。まるで彼が退屈しているみたいな感じ。彼はたしか比較的裕福な家庭で育ち、大学も出ているインテリなんだよね。ニック・ドレイクの魅力は、彼の音楽を聴いていると、彼がベッドの端に座りながら音楽を演奏していて、その音楽は自分だけに向けて演奏されているように感じられるところ。ニック・ドレイクのレコードを聴くと、自分と彼だけの特別な瞬間がそこにあるような、不思議な感覚がするんだよ。ニック・ドレイクが自分だけに歌ってくれているような。僕はそういうところに影響を受けて、自分の音楽でもそれをやりたいと思っている。僕の音楽は親密なものだし、できるだけパーソナルな感じにしたいと思っているからね。

『Columbo』での挑戦と進化

―ここからは新作について質問させてください。『Columbo』は過去の2作とは異なるサウンドだと感じました。音楽面のコンセプトを聞かせてください。

BM:たしかに、これまでの2作とは違うサウンドになったと思う。別に意図したわけではないんだけどね。僕は何かしらのサウンドを意図してアルバムを作るということはしないから。自分には決まった作曲方法があってね。最初はギターとiPhoneのメモ機能を使って、歌の部分を書く。それが終わったらボーカルと楽器、ギターかピアノだけをノートパソコンに録音する。そして、そこから細かいパーツごとに一つずつ作り上げていくんだ。「この曲には何が必要なんだろう?」ということを考えながらね。ドラムビートが必要かもしれないし、ベースギターかシンセサイザーかもしれない。シンセサイザーはご覧の通りたくさんある(自宅スタジオの中にずらっと並んだ楽器をZoom越しに見せながら)。だから、特定のサウンドを目的に音楽を作っているわけじゃないんだ。自分のその時のクリエイティブなマインドが、そのまま音楽として反映されている。

あと、今回のアルバムはロサンゼルスのシルバー・レイクで作曲したんだ。僕としてはシルバー・レイクのサウンド、カルフォルニアらしいサウンドのアルバムになったなと思う。



―カルフォルニアのサウンドというのを、もう少し具体的に説明すると?

BM:僕はギター奏者だけど、最初の2枚のアルバムはピアノを使っての作曲が多かった。でも、今回のアルバムはギターで作曲したんだ。それがサウンドの違いに貢献しているかどうかは分からないけど、おそらくそういうことなんだと思う。カルフォルニアの「サウンド」というよりは、むしろ「フィーリング」に近い気がするね。別にビーチ・ボーイズやジョニ・ミッチェルみたいなサウンドにしたいと思ったわけじゃない。「芸術は環境の産物」とよく言うように、このアルバムはカルフォルニアで書いたから、僕にとってはカルフォルニアな感じがするってこと。

でも同時に、イギリスの影響もたくさん含まれているんだよ。レコーディングはロンドンで行ったから、アルバムにはエルトン・ジョンやクイーン、ピンク・フロイド、ニック・ドレイク、レディオヘッドの影響も詰まっている。だから、このアルバムにはイギリスらしいフィーリングも感じられると思うよ。

―アルバムを聴いて、僕もエルトン・ジョンに通じるものを感じましたけど、これまでの作品からすると意外な名前ですよね。

BM:エルトン・ジョンの魅力は、コーラス部分になるとすごく開けっ広げで、”Hold me closer tiny dancer〜♪”のように、彼は仰々しく歌い上げる。そういう瞬間を今回のアルバムにも入れたかったんだ。「We Were Never Really Friends」を聴くと”Dont Make Me Make The Call〜♪”の部分なんかは、ビッグで広がりのあるサウンドになっている。母親が夜中3時のキッチンで、ワインを飲みながら、大声で歌い上げている感じをイメージしたんだ。エルトンは、曲の構成にものすごい自由度があるところがいいと思う。ピアノの演奏も影響が入っているかもしれないね。




―エルトン・ジョンだけじゃなくて、さっき名前が出たビリー・ジョエルも感じました。そういったピアノメインのソングライターで、しかもパワフル系の人たちの影響がかなりありますよね。

BM:確かにそうだね。ビリー・ジョエルは上手すぎて僕を不安にさせるアーティストの一人なんだ。あんまりそういうアーティストはいないんだけど、彼はそのうちの一人に入る。個人的には、彼こそがトップ中のトップだと思う。ビリー・ジョエルの業績を見ると、彼がどうやってあれほどのことを成し遂げてきたのかが信じられなくて、その才能に恐れを抱いてしまう。ピアノの演奏もトップレベルだし、歌も素晴らしい。そして、とにかくかっこいい! オタクっぽいとか、ギークっぽいとか、テクニックに凝りすぎている感じが一切しない。彼の音楽はアイコニックで、感情や人生、死、愛について何らかの理解がある人なら、誰にでも伝わるという普遍的なものなんだ。僕が作りたいのはそういう音楽なんだよね。僕は、自分を偉大なアーティストたちと比較する。今まで成し遂げられた最高のものと、自分を比べない理由なんてないだろう? でもビリー・ジョエルを聴いた時は「ちくしょう!(=負けた)」と思ったね(笑)。

―あとはさっき名前が出たところだと、ピンク・フロイドというのは意外な気がしました。それは自分の音楽のどの辺りから聴こえると思いますか?

BM:ピンク・フロイドに関してはギターの話に戻るんだけど、13歳の時に「Another Brick In The Wall」のソロ部分を習ったんだ。(口ずさみながら)今でも覚えてるよ。「Comfortably Numb」も大好きだった。彼のギター演奏がとにかく大好きなんだ。つまりピンク・フロイドの影響とは、実はデヴィッド・ギルモアの影響という意味ってこと。同じようにクイーンの影響はブライアン・メイの影響ってことだね。僕はギター奏者だから。「The Show Must Go On」のギターソロ部分にはデヴィッド・ギルモアの影響が感じられると思うよ。




―新作は多くの曲が共作で、しかもクレジットの比率が50/50とか60/40とかですよね。共作したのって今回が初めてですか?

BM:コライトは昔からやっていたよ。いつも一緒に仕事をするクルーがいるんだ。ダン・マクデューガル、エミリー・エルバート、レイリー・コール、そしてレコーディングを毎回一緒に行う、共同プロデューサーのフィン(・ファイロー)。共作はすごく好きなんだ。一人で作曲するのとは違う感じだからね。例えばニューアルバムの「Trajectories」や「18」を聴くと、共同で書いた曲とは違う(自分がひとりで書いた)雰囲気が聴こえると思う。でも、色々な人から影響を受けて作曲するのはいいことだと思うんだ。



―共作をしていても、すべての曲がブルーノ・メジャーらしく聴こえるんですよね。他人と50/50で共作する目的って何だと思いますか?

BM:共作する人によって、自分の違う一面を引き出してくれるんだよ。ダン・マクデューガルはとても論理的な考え方をする人で、構成を組み立てるのが上手い。例えば、「Columbo」は、ヴァースとコーラスだけは僕が書いて出来上がっていたんだけど、その先の発展をどうすればいいのか分からなかった。だから、ダンに曲を聴かせたら、「これはここにするべきで、これはこっちだ」「このセクションをここに入れよう」などとアドバイスしてくれる。彼は、メロディやハーモニーを聴き取るのも得意だ。レイリーと作曲をするときは、すごく安心感が感じられるから、彼女には心の内を曝け出すことができる。二人で、僕の祖母についての曲を一緒に書いたんだ。エミリーはとてもピースフルな人で、カルフォルニアの天使みたいな人なんだよね。彼女には穏やかな雰囲気が常にある。「Easily」という曲を聴くと、エミリーと共作したということが分かると思う。会話をする相手によって、話題が変わるのと同じことだよ。グルメについて話す相手もいれば、愛や人生について話す相手や、サッカーについて話す相手もいる。共同で作業する人によって、自分の違う一面が出てくるんだ。それはすごく役に立つことだよ。だって、一人で作業しているときは、自分としか対話していないからね。



―自分が話したい内容に合わせて会話の相手を選ぶように、その曲が求めていることによって共作者を選ぶと。サウンドに関してなんですけど、過去の作品はベッドルーム/密室っぽい感じだったと思います。でも、新作は空間が広く感じられるし、バンドサウンドっぽい質感も際立っている。録音に関して、これまでとかなり変えた部分がある気がしたんですが?

BM:違いは全くないよ。ただ録音の腕が上達したんだと思う(笑)。僕の1stアルバムに対して、「どうやってあんなローファイな音を出すことができたの?」と聞かれることがあるんだけど、正直言って、あれは僕のできる限りのハイファイな音だったんだよ。だって僕はマイク1本しか持ってなかったから。これはShure SM7Bで、僕の1stアルバムは全てこのマイクで撮った(Zoom越しに見せる)。でも今はマイクの数も増えたし、ファイローと一緒にアルバムを作ってきて何年も経った。『A Song For Every Moon』をリリースしてから6年も経っているんだよ。アルバムを作るたびに、新しいことを少しずつ学んでいくから、録音の技術も上達している。当初、僕はプロデュースのやり方を学んで、曲の書き方を学んで、いろいろな楽器の演奏のやり方を学べば、アルバムを作ることができると思っていたんだ。それはある意味その通りで、僕はそうやって『A Song For Every Moon』を作った。それはそれで良かったんだけど、2枚作ったら「アルバムを作ること」自体にもスキルがあるんだって気づいたんだ。だからアルバムを作るたびに、いろいろな経験をして学んできて、そのスキルが徐々に上達しているんだと思うよ。そして今回は、これまでよりも少し完全味のあるサウンドのアルバムを作ることができたと思う。

―8月に来日公演があります。どのようなライブになりそうですか?

BM:日本では2公演やるよ! 東京公演は僕にとって3年ぶり。この3年間、僕はステージに上がって演奏をするということをやっていなかった。クレイジーな話だよ。だから、僕自身は、エモーショナルで、緊張して、ワクワクしている状態だと思う。ライブも全て新しい内容にして、新たなセットリストを組んで、新しいメンバーとの新しいバンドで全てが新しいんだ。つまり新しい世界になる。すごいことになると思うよ。だからみんなのサポートが必要なんだ。間違いなく僕はすごく緊張しているだろうからね(笑)。



ブルーノ・メジャー
『Columbo』
発売中
日本盤CDにはボーナストラック2曲を追加収録
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13435


ブルーノ・メジャー来日公演
2023年8月7日(月)東京・WWW X ※追加公演 ※SOLD OUT
2023年8月8日(火)東京・WWW X ※SOLD OUT
詳細:https://www.livenation.co.jp/show/1420671/bruno-major/tokyo/2023-08-08/ja

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