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デンゼル・カリーが語る、強さの理由「何者かになるために自分を失ってはいけない」

Rolling Stone Japan / 2023年7月29日 15時20分

デンゼル・カリー。フジロック1日目のWHITE STAGEに出演した。(Photo by Kana Tarumi)

フジロック1日目、WHITE STAGEに立ったデンゼル・カリー。あらゆるジャンルを吸収しながら、リアルなヒップホップを堂々と体現し、気迫に満ちたステージングと爆発力でオーディエンスを熱狂させたのだった。

【写真を見る】苗場滞在中のデンゼル・カリー

ー前回のインタビューで日本文化への愛をたっぷり語ってもらいましたが、今回の来日ではライブ以外に何をしてますか?

デンゼル:渋谷をブラブラしたり、友達に会ったり。前回来日した時に知り合った人に会いに行ったりしたよ。そういえば、日本人のラッパーとも新しく知り合いになった。あとはレコードバーに行ったり、一晩中日本酒を飲んだり…… その日はちょっと飲み過ぎたけど。

ーそういえば今年3月くらいに、格闘家の平本蓮から空手を教わったと彼のInstagramで見ました。一体なにがあったんですか?

デンゼル:マイアミに住んでる友達が彼のマネージャーと知り合いで、友達伝いで知り合ったんだ。彼に極真空手を教えてもらって、スパーリングもしたよ。

ー『Melt My Eyez See Your Future』のリリースから1年以上が経過しましたが、ライブなどの経験を通じて、今このアルバムをどのように振り返りますか?

デンゼル:『Melt My Eyez See Your Future』は、ここ数年で変化してきた自分の姿が映し出されたアルバムなんだ。2年間のパンデミックでの生活で感じたことや、目指すべき自分像への問いについて。アルバム制作を通して多くのことを学んだよ。当時は集中すべきことがたくさんあって、そのために自分を知る必要があった。ずっと表現したかったことが形になった、パーフェクトなアルバムだと思う。



ーニューシングル「BLOOD ON MY NIKEZ」がリリースされました。曲もMVもキャリア初期の作品(『Nostalgic 64』や『Imperial』)を想起させますが、なぜそのような曲を今リリースしようと思ったのでしょう?

デンゼル:正直なところ、特に理由はない。その時に作った曲の中でベストだった。音楽を世に届けることが俺の役目で、そうやって世界と繋がっていたい。ただ曲をリリースしたかったっていうのと、あの曲には自分がうまく表現されていたんだ。



ー『Nostalgic 64』のリリース(2013年9月)からもうすぐ10周年。この10年の間に、あなたの中で変わったもの、変わらないものをそれぞれ教えてください。

デンゼル:環境は大きく変わったよ。『Nostalgic 64』を作っていた時は17〜18歳だった。当時は父と兄とキャロルシティに住んでいて、当時はレイダー・クランにいたんだ。その後レイダー・クランを脱退し、俺は一文無しになったんだ。もし、アルバムを作らずにフリーのミックステープを作っていたら、今でも一文無しだったんだろうな。

DENZELCURRYPH · Nostalgic 64

ーもちろん、ラッパーやミュージシャンとしてのスキルはこの10年間で大きく進化したと思いますが、最近はラップするうえでどんなことを大切にしていますか?

デンゼル:何者かになるために、自分を失ってはいけない。いつも自分であり続けること。変わってると言われようが、くだらないと言われようが、どんな時でもその言葉を言い聞かせてる。どうやっても他人にはなれないし、自分であることだけが最高の自分になれる。


Photo by Kana Tarumi



マーシャルアーツと音楽はとても近い存在

ーニューシングルにはスリー・6・マフィアのジューシー・Jが参加していますね。彼はあなたにとってどんな存在で、今回はどういった経緯で共演したんですか?

デンゼル:ジューシー・Jは偉大な存在、ラップをするきっかけになったのも彼の影響なんだ。彼はスリー・6・マフィアの創設者で、好きなラッパーの一人でもあるロード・インファマス、DJポールとともにスリー・6・マフィアを結成した。まさにシーンの中心人物、ビートのパイオニアだ。ジューシー・Jのラップはいつもヤバくて、10歳の頃からずっとファンなんだ。

ーコラボすることになったきっかけは何だったんでしょうか。

デンゼル:彼はレイダー・クランのファンだったらしく俺のことを知っていた。それから「Ultimate」で彼を呼んだんだ。その後『Rubba Band Business』に収録された、ジューシー・Jとウィズ・カリファとのコラボ曲「Too Many」を作った。なんとなく交流は続いていたけど「BLOOD ON MY NIKEZ」を誰とやるか真剣に考えるまで、また彼と一緒にすることになるとは思ってもなかった。それも、ムエタイのトレーニングのために1カ月半タイにいた時に決めたんだ、トレーニングの期間は彼の音楽を毎日聴いてたから。メッセージを送ったら翌日に返事をくれたよ。



ームエタイをやっている時にクリエイティブなインスピレーションが湧いてくることって、結構ありますか?

デンゼル:ああ。マーシャルアーツと音楽はとても近い存在だ。基礎があって、テクニックを学んで、自分のスタイルを見つける、そのことに熱をもって取り組む...... 両方ともルールと根本的なアイデアは同じだと思う。

ーあなたには「Ultimate」という代表曲もありますが、究極(Ultimate)のラッパーを挙げるとすれば?

デンゼル:アンドレ・3000かな。彼に出会ってなかったら、俺は「Ultimate」を作っていないから。

ーちなみに、あなたにとって究極(Ultimate)のファイターは誰でしょうか。

デンゼル:それは両親だね。

ー好きな格闘家はいますか?

デンゼル:タイ出身のタワンチャイ(・PK・センチャイ)、ロッタン(・ジットムアンノン)、ブアカーオ(・ポー.プラムック)、ノンオー(・ガイヤーンハーダオ)が好きだよ。

ーあなたはライブパフォーマンスの能力がずば抜けていますし、ステージ演出にも力を入れている印象です。自分のライブではどんなところを特にこだわっていますか?

デンゼル:オーディエンスとのつながりかな。

ーオーディエンスとうまくエンゲージするために心がけていることはありますか。

デンゼル:オーディエンスをショーに巻き込んで、エネルギーを共有することだね。

ーとはいえ、最初の頃はうまくいかなかったり、難しいと感じた経験はあったりするのでしょうか。

デンゼル:最初はもちろん緊張したけど、毎晩ステージに立つんだって考えたら緊張している場合じゃないって気づいたんだ。

ー自身のライブパフォーマンスにおいて、ターニングポイントになったステージはありますか。

デンゼル:オランダのWOO HAH!フェスティバル。すべてが一貫して完璧だった。最高のショーだったことを覚えてるよ。

ーその感覚はステージに立った瞬間に分かるものなのでしょうか。

デンゼル:ああ、エネルギーを感じるんだ。そのエネルギーを求めてパフォーマンスをしてる。だから、エネルギーを感じられないショーはやる意味がないと思ってる。

ー海外と比較すると、日本のオーディエンスは「おとなしい」と感じる人も多いと思いますが、その点はいかがでしょうか。

デンゼル:「静かさ」にアーティストへのリスペクトがあることは感じてるよ。そうだな、パフォーマンスの前にいくつか日本語を覚えるよ。それがオーディエンスと繋がるきっかけになると思う。俺の言いたいことをジェスチャーから感じ取ってくれる人もいると思うけど、言葉で理解してもらうのが簡単だから。

ー最後の質問ですが、あなたが自分でフェスを主催するとしたら、どんなものにしたいですか。

デンゼル:やっぱりビッグネームのビヨンセ、ジェイ・Zは欠かせないな。あとはテーム・インパラや、リル・ウージー・ヴァート、プレイボーイ・カーティ、ザ・ウィークエンド、フィーバー333、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン……いろんなジャンルのアーティストを一つのフェスティバルに呼びたい。それから、複数のライブを同時開催しない、一組ずつパフォーマンスするスケジュールを組むよ。あとは……ボクシングの試合もやろう、音楽に疲れたらボクシングの試合も観に行ける。そんなフェスがあったら最高じゃないか。


Photo by Kana Tarumi

FUJI ROCK FESTIVAL 23
2023年7月28日(金)29日(土)30日(日):新潟県 湯沢町 苗場スキー場
公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/

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