「売春婦養成コース」で女性たちを洗脳、極右インフルエンサーの人身売買手口 英
Rolling Stone Japan / 2023年8月19日 21時45分
2022年12月、性的人身売買の容疑で極右インフルエンサーのアンドリュー・テイトがルーマニア当局から逮捕された。その際ルーマニアの組織犯罪テロリスト捜査局(DIICOT)は、テイトと弟のトリスタンが交際を匂わせて女性たちをブカレストのマンションに誘い込む、いわゆる「ラバーボーイ手法」で女性たちに風俗仕事を強要したと主張した。テイトはパートナーに風俗を強要したことは一度もないとして、一貫して無罪を主張。最近もタッカー・カールソンとのインタビューで、自分には女性にオンラインコンテンツを無理矢理作成させる「金銭的動機はひとつもない」と語った。
【画像を観る】「性奴隷」にされた自己啓発団体の被害者たち
新たに流出したのはテイトが運営する男性専用会員制ネットワークWar Roomで2021年にやり取りされたメッセージのスクリーンショットで、テイトの主張を苦しいものにしている。War Roomに詳しい情報筋が本物であるとローリングストーン誌に証言したメッセージによると、テイトは恋人の1人を言いくるめて風俗仕事をやらせたと得意げに話しているようだ。
ルーマニア検察はその女性(ローリングストーン誌では本名の記載を控える)をテイトの人身売買事業の被害者として位置付けているが、女性本人は再三にわたって否定している。ローリングストーン誌はその女性にコメントを求めたが、すぐに返答は得られなかった。
テイトの広報担当者はローリングストーン誌に宛てた声明の中で、「問題のスクリーンショット」で言及されている女性が「テイト兄弟から不当な扱いは一切受けていないと全面的かつ公然と主張しており」、スクリーンショットの流出はテイト兄弟に対する誹謗中傷の一例だと述べた。「兄弟を犯罪者よばわりする被害者の発言は、何の疑問もなく世間から全面的に受け入れられているのに、兄弟の無実を証明する証拠はそこまで公正に扱われていません」と広報担当者は述べた。
メッセージから浮かびあがるのは、毒々しく、時に不快感を催させるプロセスの全容だ。テイトは若い女性に目をつけて、嘘とマインドコントロールと強制戦術を織り交ぜて自分の命令に従わせ、そのやりとりを仲間への教材にして意見を募っていたと思われる。
2022年12月、テイトと弟トリスタン(流出したWar Roomのチャットにも名前が出てくる)はブカレストで逮捕され、人身売買、強姦、組織犯罪の容疑で拘束された。現在も自宅軟禁下に置かれている。ブカレストにあるテイト兄弟のマンションが最初に家宅捜査を受けたのは、アメリカ人女性とモルドバ人女性がアメリカ大使館に電話をかけたのがきっかけだった。2人は嘘の口実でマンションに誘われ、テイト兄弟の懐を潤すために卑猥なオンラインコンテンツを作成するよう強制されたという。この件に関し、テイト兄弟は断固否定している。
以前ローリングストーン誌が報じたように、テイト兄弟がリーダーを務めるWar Roomは会員限定のソーシャルネットワークで、Telegramのチャンネルではメンバーにセックスと男性らしさを伝授していた。テイトの仲間はWar Roomを単なる無害な自己啓発グループとみなしているが、War Roomに詳しい情報筋は、女性に風俗仕事を強制するためのフォーラムとして機能していたと主張している。
ローリングストーン誌が入手したスクリーンショットは、現在は削除さえたテイトの「売春婦養成課程」、War Room博士号というチャンネルからの抜粋と思われる(現在削除された博士課程webサイトの紹介文には、「俺の仕事は女と出会い……俺の言うことを何でもきくところまでホレさせて、一緒に金持ちになろうぜと言ってwebカムをやらせること」と書かれている)。
2021年6月付のメッセージには、「テイト」――アンドリュー・テイトがTelegramのチャットでWar Roomメンバーとのやり取りに使っていたハンドルネーム――を名乗るユーザーが、女性パートナーに求める美徳を並べるところから始まる。「何のとりえもない、ひたすら従順な平均的バカ女を連れてこい」とテイト。「基本的に俺は女を従順度で判断する。従順な女は逃げたりしない。結果的にこちらの望むことを何でもする」。
テイトは女性が写ったInstagramの画像のスクリーンショットも投稿し、webカムをやらせようと考えている「標的」「資産」と呼んだ。「イビザの資産は(OnlyFansを)やることに同意した。博士号の証書が間もなく授与される」という2021年7月の投稿には、身元不詳の若い女性の動画も添付されていた。
テイトはその後「一緒に引っ越してきた」2人の女性の写真を送信した。いずれの女性も、テイトの性的人身売買事業の被害者としてルーマニア検察のリストに挙がっている。
テイトの説明によれば、2人のうち1人はテイトのそばにいたいがために生まれ故郷を離れたが、「家族からの支援を断たれ」、どうしても自分に会いたいと懇願してきたそうだ。テイトは女性が自分に依存するよう仕向けるために、女性の友人から以前風俗で働いていたことを知らされた、と話をでっち上げた。とんでもない女だ、ここから出ていけ。こうした嘘が功を奏し、女性を守りに入らせ、より一層依存させることになったいきさつを、テイトは事細かに説明している。
「最終的な目的は、女に1人でどこにも行かせないようにすることだ。生まれ故郷にも行かせない」とテイト。「しっかり働いてもらわないと」。
テイトはその後、その女性とやり取りした携帯メッセージのスクリーンショットと思しきものを添付した。テイトは女性にずばりこう語っている。「お前は(故郷には)二度と戻らない。帰省すらしない」「ブカレストの家を出る必要はない……俺たちはずっと一緒だ」。
「ええ、分かったわ」とその女性は返信した。
人身売買に反対する活動団体Polaris Projectによると、孤立は人身売買業者が使う手口のひとつで、「自分たちの影響力を弱めたり、自分たちのメッセージと相容れないような人物から被害者を遠ざける」のが目的だという。「人身売買業者は被害者を孤立させることで、この先誰かに助けを求めるのをより一層困難にするのです」と、Polaris Projectのサイトには記載されている。
だが流出したメッセージによると、War Roomのメンバーは孤立を命令に従わせるカギととらえていたようだ。「その手の孤立は必要不可欠だ」という投稿もある。
広報担当者にコメントを求めたところ、広報担当者はソーシャルメディアでメッセージをシェアしたアカウントの一部がごく最近作成されていた点を指摘し、流出メッセージの出所に疑問を呈した。
「AIやソーシャルメディアが情報源として台頭してきたことで、捏造または操作されたと思われる証拠を匿名で提示しつつ、責任を回避して処罰を免れることが可能になっています」と広報担当者は述べた。「こうした現実から、故意にピンポイントで世論を操作し、提示された証拠の信憑性が損なわれる可能性が懸念されています」。
メッセージをさらに辿っていくと、テイトは女性を誘いこみ、自分の下で性的コンテンツを作成させた経緯を詳しく振り返っている。スレッドに投稿された携帯メールと思しきスクリーンショットを見ると、女性は性的画像を送ったり、webカムやOnlyFansをやったりすることに抵抗している。「私の身体はプライベートなものだから、結婚相手しか触れたり見たりできないの」。
テイトはこれを明らかに同意が欠如した例として、また仲間たちへの挑戦および教訓としてWar Roomのメンバーに示している。「この仕事で経験する最大の難題がこれだ」とテイト。「お前たちさえよければ、俺のやり方を手取り足取り教えてやってもいい」。その後テイトはWar Roomのメンバーから意見を募り、自分ならパートナーをどう説得して風俗をやらせるか、と尋ねた――「僕なら良い警官と悪い警官の策を使う」と言うユーザーもいた。「断られてすごく傷ついたふりをする。拒絶を逆手にとって、彼女に申し訳ないと感じさせて泣かせる」――するとテイトも、女性にwebカムをやらせるために「今夜試してみる」と言った。
「(ブカレストに)越してきてから、あいつは食い物には困っていない。だがそれだけだ」とテイト。「あいつは一文無しだ。故郷にも帰れない。家を出ることもできない。ちくしょう、まるで俺が悪者みたいじゃないか。でも違う。俺は迷える羊を導く羊飼いだ。俺の後をついていけば人生上々だってことに、あいつはまだ気づいていない」。
その後テイトは、女性が金をせびるのを逆手にとってwebカムを共同作業だと思い込ませた経緯を語り、他の男性がパートナーにwebカムをやらせる際の雛形として紹介している。「俺たちは一緒に世界を旅するんだ。俺は携帯で仕事をする。俺たちはチームだから、俺の言うことを聞くんだ」と言うよう、テイトはメンバーに指示した。それでも女性が従わない場合、「一文無しにして頭を冷やさせろ。数日経っても拒んでいるようなら、計画は失敗だ。女を追い出せ」。
これに対してWar Roomのユーザーは、「了解、なかなかいい手だ」と返信している(Polaris Projectでは搾取の流れをこう説明している。「人身売買業者が被害者の搾取に着手する方法は、必ずしも明確ではありません。まずは時間をかけて、被害者がやりたがらないことを強要し」、風俗が「共通の目標を達成するための手段」だと納得させるケースもあります)。
さらにテイトは、アシスタント兼「稼ぎ頭」のジョルジーナ・ネイゲルとの会話をでっち上げて女性にwebカムをするよう説き伏せるという、巧妙な策略も披露している。ちなみにネイゲルも犯罪組織を形成して女性たちを搾取していた容疑で、他1名の女性とともにルーマニア当局から捜査を受けている(ネイゲルは容疑を否定し、ローリングストーン誌のコメント取材の要請にも返答はなかった)。本人の弁によれば、虚偽のやりとりをでっち上げるのは、webカムをやるよう圧力をかけられているのではないかという女性の疑念を取り除きつつ、自分のために一肌脱ぐようもう一押しするのが目的だという。
偽のやり取りのスクリーンショットで、ネイゲルは女性について疑問を呈している。「大金を稼げるのに、なぜその子は私とOnlyFansをやらないの?」。
「それ目当てで彼女をブカレストに呼んだと思われたくない」とテイトが返信する。
「何それ。あなたは金持ちなんだから、金稼ぎのために彼女が必要なわけないじゃない?」。ネイゲルはスマイル絵文字付きでこう返信。「私と組めば月3000稼げて、ブカレストであなたと暮らせるのにね……いつも写真ばっかり撮ってるくせに稼ぎがゼロだなんて。写真を売ればいいのにね?」。
War Roomのチャット記録を見ると、テイトはこうした芝居の目的およびフォロワーに逐一説明する理由について、こう語っている。「価値があると思ったら、俺はどの女にもこの手を使う」と本人。「お前らも稼ぎ頭を使って、ポン引き仕事をやらせるがいい」 その後チャットに投稿されたネイゲルとのやりとりのスクリーンショットには、その女性にOnlyFansをやらせろとネイゲルにはっきり指示する内容が示されていた。
「あいつ(名前は伏せ字)にOnlyFans用の写真を撮らせて、俺に見せろ」とテイト。
「OK」とネイゲルが返信。
「OnlyFansに載せろ。あいつには稼いでもらいたい」とテイト。「茶番をしている暇はない」。
「今日からコンテンツ作成に取りかかるわ」とネイゲル。
テイトと親しかった情報筋はこのメッセージを見て、女性に風俗をやらせることに関するテイトの主張――自分は金持ちなので、女性に稼いでもらう必要はない――は、過去にも本人の口から何度も聞かされたと述べた。「どの女性についても、(テイトの)理屈はまさしく100%こうです」と、その情報筋はローリングストーン誌に語った。「正直どの女性にも、真の意味で感情や敬意はまったく感じていなかったと思います」。
ローリングストーン誌が入手した裁判所記録によると、テイトは2021年5月に女性をブカレストへ連れていき、ポルノコンテンツを無理矢理作成させようとした件でルーマニア検察から捜査を受けている。その女性はソーシャルメディアで、テイト兄弟の被害者ではないと強く否定している。「汚職にはもううんざり。みんな目を覚まして!」と、その女性は1月23日に投稿した。「私は被害者じゃない。テイトの件では被害者は誰もいない」。
ローリングストーン誌が入手した2023年2月付の裁判所記録で、検察はこの女性がテイトと近しい別の女性とドバイへ連れていかれ、テイト兄弟を擁護するコンテンツを作るよう指示を受けていたと主張している。女性のInstagramのアカウントに最近投稿された画像には、別の女性(ドバイ在住で、テイトが運営する複数の企業と関りがある)と一緒にトリスタン・テイトと仲睦まじくしている様子が映っている。
7月18日、ルーマニアの裁判所は捜査が継続中であることを理由に、テイトの自宅軟禁を30日間延長する裁定を下した。テイトは容疑について、自分の口封じを図る壮大な陰謀論の延長だと再三にわたって主張している。18日にも、「政界の各方面にマトリックスのエージェントが散らばっている」とツィートした。
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