アジカン後藤正文のサマーソニック談義2023 多様性に富んだフェスの見どころ
Rolling Stone Japan / 2023年8月16日 17時50分
後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)がホストを務めるSpotifyのポッドキャスト番組『APPLE VINEGAR -Music+Talk-』では、つやちゃん、矢島由佳子、小熊俊哉(本誌編集)というレギュラー陣に、ときにはゲストも交えながら、ユニークな視点で音楽トピックや楽曲を紹介している。昨年に引き続き同番組との連動企画で、2大洋楽フェスをテーマに音楽談義。注目すべき出演アーティストなどについて4人で語り合った。こちらはサマーソニック編。
※編注:本記事のポッドキャストは今年5月に収録
後藤:アジカンとして昨年も出演しましたが、サマソニにはいろいろな思い出があります。海外アーティストの楽屋にもたくさん行きましたし、オアシスの打ち上げに参加させてもらったこともありますね。2005年に「SUMMER SONIC EVE」というイベントが名古屋で開催されて、オアシスの前座をアジカンが務めたんです。当時のオアシスは、フロントアクトを決める前にノエル・ギャラガーがちゃんとチェックしていたらしくて。最初は別のバンドが予定されていたんだけど、ノエルが「こいつらはイヤだ」ということで地元の僕らが呼ばれたみたいです。そしたら打ち上げにまで呼んでもらって。ちょうどその日はアンディ・ベルの誕生日で、「パーティーをやるからお前らも来いよ」という感じで誘っていただいたんです。
矢島:打ち上げはどんな感じだったんですか?
後藤:みんな和気あいあいで楽しそうに呑んでましたよ。ゲム・アーチャーもいたので、彼に「ヘヴィー・ステレオ時代からのファンです」と伝えたりしつつ話し込んでいると、ノエルがこっちに来て「お前らはカンフー・ガイじゃないか! カンフーできるのか?」と訊かれて。できないよと答えたら、なんだよーみたいな。
3人:(笑)。
後藤:僕らが緊張していたから、ほぐしに来てくれたんだと思うな。ノエルはかなり機嫌がよくて、僕は持参したオアシスの1stアルバムにサインしてもらいました。それからリアムに、このアルバムでいかに人生が変わったかを伝えたら、ガシッと抱きしめてくれたうえに、「お前はお前のロックンロールを鳴らし続けろよな!」と言ってくれて。バンドを頑張ってきてよかったなと思いました。
矢島:メチャクチャいい話!
後藤:そんなリアム・ギャラガーも出演する今年のサマソニだけど、彼とヘッドライナーのブラーは違う日に出演するんですよね。調整がつかなかったのかな?
矢島:本当は「リアム→ブラー」という流れにしたかったけど、ブラー側から「絶対ダメ」と言われたって、クリエイティブマンの清水(直樹)社長がラジオで話してました(笑)。「ノエルならいいけど」とも言われたらしくて。
後藤:なるほど。ノエルはゴリラズの作品に参加しているし、最近はデーモン・アルバーンとも交流がありますもんね。ブラーは万全のコンディションで来日してほしいな。2014年の前回来日も行ったんだけど、正直、演奏はやや物足りなかったんだよね。だからこそ、今回は絶好調の彼らを観てみたい。
小熊:今年1月に出演がアナウンスされたときは「このタイミングでなぜ?」とも思いましたが、8年ぶりの最新アルバム『The Ballad Of Darren』が7月21日にリリースされることが先日発表されてから、期待値が一気に上がった感じがします。
後藤:「The Narcissist」という新曲は予想以上によかったです。
ケンドリック・ラマー、NewJeansなど気になる出演陣
後藤:あとはもちろん、ケンドリック・ラマーをこの時代に観られるのは非常に意味のあることだと思う。60〜70年代にボブ・ディランを観るくらい価値のあることなんじゃないかな。
つや:去年からツアーで世界中を回り仕上がりまくっているであろうケンドリックは絶対に観たいですよね。ヒップホップのフェスやライブが世界中で増えていく中、どれだけ”魅せる”パフォーマンスができるかが重視されるフェーズに入ってきています。日本のラッパーもケンドリックのステージからはたくさん学ぶことがあるでしょうね。
それ以外だと、NewJeansがやはり気になります。彼女たちが出演することで万単位のチケットが動いたという話もありますし。最近はアジア圏をルーツに持ちながら、グローバル規模の人気を獲得しているアーティストが増えている。昨年のサマソニではリナ・サワヤマやビーバドゥービーが話題になりましたけど、NewJeansはその流れの一つにも捉えられる。どんなステージを見せてくれるのか楽しみです。
女性グループでいうと、自分がインタビューさせてもらったFLOは、正統派のR&Bを継承していますよね。NewJeansはクラブミュージック的なサウンドがベースにあるわけですけどそのデザインや見せ方という点では、両者ともに90年代〜2000年代のカルチャーをリファレンスにしていて、同じ潮流に位置付けることもできるのかなと。
小熊:FLOも含めて、UKのニューカマーをフックアップしてきたサマソニの伝統は今年も健在ですよね。R&Bならゲイブリエルズ、ロックならウェット・レッグ、ザ・ラウンジ・ソサエティといったダン・キャリー組も出ますし、個人的に驚いたのは女性デュオのノヴァ・ツインズ。「グライムを通過したレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」とでも言うべき音楽性で、生で観たら相当かっこいいはず。それこそ、サマソニはかねてからラウド系も積極的にブッキングしてきたわけで、同じ日・同じくMOUNTAIN STAGEに登場するBABYMETALやエヴァネッセンスのファンにも観てもらいたいです。
矢島:アジアに話を戻すと、SOL(TAEYANG)が出演するのもいいなと思いました。彼はBIGBANGのリードシンガーですけど、そもそもBIGBANGがいなかったらBTSもあんなに成功していなかったかもしれないし、アジアのアーティストが世界中で認められている現在の土壌を作ったという点でも功績が大きい人。アジアのアーティストが多数出演する中、過去にBIGBANGの一員としてサマソニに出演している彼がレジェンドとしてMARINE STAGEに帰ってくるのもストーリーとして美しいなと。
小熊:今年はボーイズグループの存在感も際立ってますね。ジャニーズWESTから(BIGBANGと同じくYG所属の)TREASUREまで、国や事務所の垣根を超えて集うという。
矢島:HYBEからはENHYPEN、BMSGからは社長のSKY-HIとBE-FIRSTに加えて、今年デビューしたばかりのMAZZELも出ますしね。
つや:ここ数年で、アイドルグループの出演が一気に増えましたよね。
矢島:「アイドルとは?」「ロックとは?」といった設問自体がもはや時代錯誤だと思うし、旬なポップスターを呼んできたらこうなっただけ、という気がします。
つや:たしかに。音楽的にもヒップホップやクラブミュージックを採り入れた、先進的なポップスになっていますしね。
後藤:バンドによる生演奏を絶対的な是としない文化は、もはや世界中に根付きましたよね。トラックメイキングの進化は音楽をより複雑でユニークなものにしていると思うし、パフォーマーが演奏から解放されて、歌やラップに集中できるという点でもいい。そういう多様な音楽のあり方をアイドルグループは肯定しているように思います。身体一つでライブをやれるってこと自体がかっこいいもんね。
矢島:あと、ザ・キッド・ラロイも楽しみです。彼がジャスティン・ビーバーとコラボした「Stay」という曲は、10代後半〜20代前半のアーティストに取材すると、影響を受けた曲としてよく挙がるんですよね。例えばダフト・パンク「Get Lucky」やビリー・アイリッシュ「bad guy」のように、音楽シーンに大きな影響を与えた曲として後年に振り返られるんじゃないかと思っていて。
この日のMARINE STAGEはザ・キッド・ラロイやSOL、ケンドリックからリアムまで目白押しですし、マカロニえんぴつはオアシス大好きでオマージュもたくさんしているから、彼らがタイムテーブルの序盤に登場するのもいい流れだと思います。
サマソニは「多様性に富んだフェス」
後藤:東京初日のBEACH STAGEは、星野源くんがキュレーションするんだよね。
矢島:もともとは星野さん側に「フェスをやりたい」というアイデアがあったみたいですが、紆余曲折を経てサマソニ内でやることになったみたいです。個人的にも楽しみで、ジェイコブ・コリアーからUMI、ペトロールズまで魅力的なメンツを呼んでいますよね。
後藤:いいなー、俺も一つのステージを任されたい。
つや:「APPLE VINEGARステージ」とか作れないですかね(笑)。
後藤:清水さんがやらせてくれるなら、ぜひやりたいです。
小熊:今年の新機軸ではもう一つ、Spotifyとサマソニがコラボした「Spotify RADAR: Early Noise Stage」に、国内のフレッシュな新進アーティストが集っているのも興味深いです。
矢島:CHAI、imase、春ねむり、新しい学校のリーダーズ……小熊さんと一緒に編集した本誌前号の特集「世界で活躍する日本のアーティスト10組」で取り上げたアーティストもたくさん出ますよね。アジアの音楽を盛り上げていこうとする動きと共に、そうやって海外で活躍し始めている日本のアーティストもちゃんとプッシュしているのがいいですよね。メインステージには破竹の勢いのYOASOBI、SEKAI NO OWARI、BABYMETALも顔を連ねていますし。
小熊:国内アクトについては、海外の音楽ファンからも知られている人たちが重点的に集められている感じもします。「アジアのなかの日本」「世界のなかの日本」という観点から考えたとき、今の日本でやるべきフェスとはどんなものだろう、というのをしっかり意識しているというか。K-POPだけでなく中国の張惠妹(aMEI)、台湾の落日飛車(Sunset Rollercoaster)や宇宙人(Cosmos People)、韓国のLØREN、タイのMILLIやイン・ワラントンというふうに、アジア各地のスターや注目株を招聘しているのもそう。「メディアとしてのフェス」に求められている役割を果たそうとしているのが伝わってきます。
後藤:サマソニは都市部で開催されるからこそ、先進的かつリベラルなフェスであってほしいという気持ちが僕にはありますね。昨年に引き続きジェンダーバランスへの配慮も感じられますし、多様性に富んだフェスになっていくのは素敵なことだから。そうなると、アジアや海外のミュージシャンももっと出たいと思うでしょうし、僕らとしてもさらに誇らしい場所になりますよね。
SONICMANIA
8月18日(金)幕張メッセ
公式サイト:https://www.summersonic.com/sonicmania/
SUMMER SONIC 2023
2023年8月19日(土)、20日(日)
千葉 ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ / 大阪 舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
公式サイト:https://www.summersonic.com/
ASIAN KUNG-FU GENERATION
『サーフ ブンガク カマクラ(完全版)』
発売中
配信:https://kmu.lnk.to/SBKC
購入:https://kmu.lnk.to/bmvsqJ
ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2023「サーフ ブンガク カマクラ」
2023年9月29日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
2023年10月1日(日)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
2023年10月4日(水)大阪府 BIGCAT
2023年10月5日(木)大阪府 なんばHatch
2023年10月8日(日)宮城県 SENDAI GIGS
2023年10月15日(日)北海道 サッポロファクトリーホール
2023年10月18日(水)愛知県 Zepp Nagoya
2023年10月21日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
2023年10月22日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
2023年11月2日(木)東京都 日本青年館ホール
2023年11月3日(金・祝)東京都 日本青年館ホール
2023年11月19日(日)東京都 TACHIKAWA STAGE GARDEN
2023年11月22日(水)神奈川県 鎌倉芸術館 大ホール
2023年11月23日(木・祝)神奈川県 鎌倉芸術館 大ホール
公式サイト:https://www.asiankung-fu.com/
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