岡野昭仁が語る「歌う意味」、ワクワクを求めてたどり着いた終着点
Rolling Stone Japan / 2023年8月22日 20時0分
岡野昭仁(ポルノグラフィティ)が様々なジャンルのアーティストと一緒に音楽を探訪するプロジェクト「歌を抱えて、歩いていく」。8月23日に同プロジェクト初となるアルバム『Walkin' with a song』がリリースされる。
今作には、岡野昭仁×井口理(King Gnu)×BREIMENのコラボレーションとしても話題となった楽曲「MELODY (prod.by BREIMEN)」をはじめとした既発曲4曲に加え、Eve作詞・作曲による「ハイファイ浪漫」、柳沢亮太(SUPER BEAVER)作詞・作曲による「指針」、n-buna(ヨルシカ)作詞・作曲による「インスタント」、小原綾斗(Tempalay)作詞・作曲による「芽吹け」、岡野昭仁作詞・作曲「歌を抱えて」など、全10曲が収録されている。本作がどのように誕生したか、また岡野が歌う意味まで、ざっくばらんに語ってもらった。
関連記事:SawanoHiroyuki[nZk]が語るアニメ音楽への姿勢、ポルノ岡野昭仁との化学反応
―YouTubeでのソロコンテンツ「DISPATCHERS」でソロアルバムの完成報告をされた際、「僕自身がほんとに楽しんで歌って作った」と話されていましたよね。
岡野昭仁(以下、岡野):本当にそれが正直な気持ちで。僕はある意味、無責任なんでね(笑)、自分でソロをやってみようと決めたくせに、細かいコンセプトを決めたりするのが苦手だったりするんですよ。なので、スタッフ陣への信頼と、コラボを引き受けてくれた方々の作る楽曲への信頼にお任せして、とにかく楽しく気楽にやらせてもらった感じなんですよね。気楽とか言っちゃうと申し訳ないんだけど(笑)。
―ソロとして初めてのアルバムだからこそのフレッシュさもあったでしょうし。
岡野:そうそう。あとはまあ、ある程度のキャリアをポルノで重ねてきたっていうのも大きかったとは思うんですよね。ソロに関してはけっこう前から話に上がっていたこともあったんだけど、もしもっと早い段階でソロをやっていたら今回ほど楽しみながらやることはできなかったような気もしてて。ポルノでのキャリアという土台があったからこそ、いい意味で気楽に向き合えた部分もあったんだと思います。
―ソロプロジェクトのアイデアが現実味を持って動き出したのは、ポルノとして20周年の大きな節目を東京ドーム2DAYS(2019年9月開催の「NIPPONロマンスポルノ19~神VS神~」)で迎えた後だとおっしゃっていましたよね。
岡野:そうです。東京ドームを終えた後、ポルノが充電期間に入ることが決まったので、「ソロとして何かやってみようかな」っていう。当初はまだ具体的にどんなことをやっていくかは見えていなかったんだけど、澤野(弘之)くんと「光あれ」を作ったことをきっかけに、「歌を抱えて、歩いていく」というテーマを掲げ、配信LIVE(21年4月と7月に開催された「DISPATCHERS」「DISPATCHERS vol.2」)をやったりだとか、作品をひとつひとつ楽しみながら作っていくことができて。その流れの行き着く先としてアルバムがあったっていうことなんだと思います。
―アルバムまでの道筋を細かく決めておくのではなく、それこそ1曲ごとの出会いを楽しみながら歩んできたということなんでしょうね。
岡野:うん。とにかくいろんな方から楽曲提供を受けて、ボーカリストとしての新たなチャレンジをたくさんしようということをやってきた感じですね。どこが終着点かはわからないけど、とにかくワクワクすることをしようっていう。
―昨年までの段階で、澤野さんを筆頭に、n-bunaさん、辻村有記さん、スガシカオさん、井口理(King Gnu)さん、BREIMENという多彩なメンツとともに、「光あれ」「Shaft of Light」「その先の光へ」「MELODY(prod.by BREIMEN)」を続々とリリースされて。この4曲だけ見ても、相当斬新なコラボレーションが実現していました。
岡野:いろんなことやりましたねぇ(笑)。そのすべてが本当に刺激的でした。今の時代の先頭を走っているボーカリストである井口くんとコラボできたのも本当にありがたかったし。「その先の光へ」で作詞をお願いしたスガさんは憧れの大先輩ですけど、それ以外の面々は自分と比べてかなり年齢が若いんですよ。アルバムでご一緒できた方々も含め、そういった下の世代のアーティストと一緒に音楽を作れたこともまた、いちミュージシャンとしていい経験になりました。若いヤツらの音楽に対するアプローチはすごくおもしろいし、そのハンパない熱量にハッパをかけられることも多かったですね。
―「光あれ」で作詞をされていたn-bunaさんは、アルバム収録の「インスタント」でもう一度コラボされていますね。そこでは作詞に加え、作曲とアレンジも手がけられていて。
岡野:n-bunaくんには「光あれ」の時点で、「曲も書いて欲しいんだよね」という話をさせてもらってたんですよ。ポルノとして「暁」にまつわる活動が始まるタイミングでもあったから、「いつまたソロが動き始めるかはわからないけど、僕はn-bunaくんの曲を歌ってみたいんだ」って伝えて。そうしたらすぐにこの「インスタント」を作ってくれたんですよね。
―n-bunaさんの持つ魅力に触れたのはどんなきっかけだったんですか?
岡野:これはいろんなところで話しているんですけど、最初はヨルシカの「だから僕は音楽を辞めた」に衝撃を受けたのがきっかけで。僕は普段、歌詞にそこまで引っかかることはないんですけど、あの曲を聴いたときに「え? どういうこと?」「何言ってるの、この子は?」って(笑)、思いきり刺さったんです。それをきっかけにヨルシカ、n-bunaくんの音楽をたくさん聴くようになったんですよね。
―「インスタント」の印象はいかがでしたか?
岡野:いやー、めちゃくちゃかっこいいですよね。しかもデモの仮歌はn-bunaくん本人が歌ってくれていたんだけど、それがまたものすごくいいんですよ。僕にはないエッセンスを感じさせてくれるn-bunaくんの歌からは、情景を語っているような平歌の雰囲気だとか、曲のイメージを鮮明に感じることができて。それを完全に再現できたかどうかは別として、その仮歌から受け取ったものは自分の歌にもしっかり乗せられたと思います。オケ録りも含め、現場でのn-bunaくんのディレクション、ジャッジも本当に素晴らしかったですよ。20代とは思えない堂々とした立ち振る舞いに、スタッフも驚いてました。参加してくれたすべての人に言えることですけど、「彼らがいれば日本の音楽シーンは当分、安泰だな」って本気で思いましたから(笑)。
―楽曲的、ボーカルアプローチ的にもっとも斬新さを感じたのは、Eveさんが作詞・作曲を、Numaさんがアレンジを手掛けた「ハイファイ浪漫」でした。
岡野:「俺にEveくんの意図を表現できる?」と思ってしまうくらい、自分にとっては新しいタイプの曲でしたね。「廻廻奇譚」(Eveが手がけたアニメ「呪術廻戦」OPテーマ)のようなマイナー調の曲に言葉がギュッと詰まったEveくんの音楽性は僕のスタイルにもシンクロするんじゃないかなと思ってオファーさせてもらったんですけど、ふたを開けてみれば僕がまったくやったことのない曲だったっていう。勝手にシンクロすると思ったことを申し訳なく思ったり(笑)。
―ラップパートもありますからね。
岡野:めっちゃ頑張りましたけど、歌った後は現場に来てくれたNumaくん含め、みんなに聞きましたけどね。「大丈夫? 48歳のラップ、ムリしてない?」って(笑)。
―そもそも昭仁さんのルーツにラップミュージックは存在してるんですか?
岡野:ルーツ的には入ってないかなあ。入ってはいないけど、最近は海外のチャートにラップの曲が数多く入っているし、純粋にかっこいいと思える曲も多いので、よく聴くようにはなってますね。とは言え、自分でやるという意味においては、ずっと異世界のものという感覚はあったと思います。それこそ昔は絶対に理解できないものというか、ある種、毛嫌いしているところもあったと思うし。
―今回、そこに挑戦できたのは時代の流れと、キャリアを重ねたことで生まれた柔軟さゆえですかね。
岡野:うん、そうだと思います。ポップスやロックにラップが入ってくるのはもう特別なことじゃないですからね。僕としてもね、ソロではもう何でもやってやるぞって気持ちになってますから(笑)。
―以前、開催された配信LIVEではSUPER BEAVERの「人として」をカバーされていて。アルバムでSUPER BEAVERの柳沢亮太さんにオファーをしたのはそこからの流れですか?
岡野:そうですね。自分のアンテナにSUPER BEAVERの存在は激しく触れていたので、今回お願いした流れです。柳沢くんが作ってくれた「指針」は、メッセージ的にも僕の今後の活動における”指針”になり得る曲だなと思いました。n-bunaくん同様、デモでは柳沢くんが仮歌を入れてくれていたんだけど、その魂溢れる歌の衝撃がとにかくすごくて。そこに負けないような歌を刻むために、自宅で何度も歌い重ねた上でレコーディングには臨みましたね。音程を当てて、音符に言葉をはめるだけではない何か……柳沢くんから受け取った魂みたいなものをしっかり詰め込むことをとにかく意識したかな。
―Tempalayの小原綾斗さんが手がけた「芽吹け」でのグルービィなボーカルも強く印象に残りました。
岡野:Tempalayはね、BREIMENと同世代のバンドをいろいろ聴いていく中でアンテナに引っかかったんですよ。ジャズなのか、ブラックミュージックなのか、彼らのルーツが僕にはわからないけど、そのミクスチャー的な感覚は僕らの世代のJ-POPにはなかったもののような気がしたし、純粋にオシャレでかっこいいっていう印象を受けたんですよね。今回、提供してもらった「芽吹け」は、僕にとって苦手意識のあったファルセットがけっこう盛り込まれている曲だったんですけど、綾斗くんのディレクションもあって、自分なりの表現の仕方を見つけられたような気がします。ファルセットに対するコンプレックスがちょっと拭えたかな。
―これまでにない昭仁さんの新たな表現が詰め込まれた楽曲が続く中、「GLORY」はどこかポルノの系譜を感じさせる曲でもあって。
岡野:そうですね。市川喜康さんが書いてくださった歌詞にはポルノのイメージを投影したメッセージが込められていると思うし、作曲はポルノのライブでベースを弾いてくれている(山口)寛雄だし、アレンジはポルノで何度も一緒にやってもらってる篤志ですからね。ソロだからと言って、ポルノと全く違うことだけをやるつもりもなかったので、アルバムの中にこういう曲が入っていてもいいんじゃないかなと。今までポルノの楽曲を聴いてくれている人にとっては、一番違和感なく、バランスよく楽しんでもらえる曲になったんじゃないかな。ちなみに寛雄は「GLORY」の他にもう1曲書いてくれたんですよ。それもすごくいい曲だったので、またいつか機会があれば世に出したいなとは思ってますね。
―アルバムは、昭仁さん自らが作詞・作曲を手掛けた「歌を抱えて」で感動的なエンディングを迎えます。
岡野:ソロプロジェクトの流れ的に言えば、本当は自分で曲を書くつもりはなかったんですよ。ただ、9曲が揃った段階で、最後の1曲はソロでの活動を通して見えた自分なりの答えみたいなものを、自分の言葉とメロディで残すべきだなと思ったんです。内容としては、去年亡くなった父親のことを書きました。アルバムに参加してくれたすべてのアーティストが命を燃やしながら作品に向き合ってくれたので、だったら僕は父の死というものに向き合い、その現実をちゃんと受け止めた表現をするべきだと思ったところもありました。
―ここまでプライベートな内容を楽曲に落とし込むことこそが、ソロプロジェクトを通して見出した、昭仁さんにとっての”歌う意味”だったんでしょうね。
岡野:まさにそうですね。僕にとっての歌う意味、音楽をやっている意味は、自分自身のことをちゃんと表現することだと、ここ数年でより深く思えるようになったんです。だから今回は父のことをしっかり表現しておきたいと思ったんですよね。この曲を聴くたびに、ライブで歌うたびに僕はきっと父のことを思い出すはず。それが僕にとっては大事な意味になるし、それこそが「歌を抱えて、これからも生きていく」ということなんだと思いますね。
―アルバムまで辿り着いた今、ソロ活動に関しての今後についてはどう考えていますか?
岡野:ポルノの活動に還元することを第一に考えてスタートしたソロプロジェクトなんでね、新しいものを持って帰れるのであれば、今後も続けていきたい気持ちはありますよ。
―事実、ソロプロジェクトを始動させた後にリリースされたポルノのアルバム「暁」には、昭仁さんの新たな表現が満載されていましたからね。
岡野:そうですね。まあでもここからはポルノの25周年という大事な活動がスタートするので、またタイミングを見てっていう感じにはなるかな。アルバムのタイミングでライブもやりたかったんですけど、ちょっと今回は難しそうなんですよ。それがちょっと申し訳ないんですけど、必ずまたやりますので。その時を待っていてもらえたら嬉しいですね。
<リリース情報>
岡野昭仁
『Walkin' with a song』
https://pornograffitti.lnk.to/okanoakihito1stAL
=収録曲=
1. 「インスタント」作詞・作曲・編曲:n-buna
2. 「ハイファイ浪漫」作詞・作曲:Eve 編曲:Numa
3. 「Shaft of Light」作詞・作曲・編曲:辻村有記
4. 「指針」作詞・作曲:柳沢亮太 編曲:トオミヨウ
5. 「芽吹け」作詞・作曲:小原綾斗 編曲:小西遼, 小原綾斗
6. 「光あれ」作詞:n-buna 作曲・編曲:澤野弘之※TVアニメ「七つの大罪 憤怒の審判」オープニングテーマ
7. 「GLORY」作詞:市川喜康 作曲:山口寛雄 編曲:篤志
8. 「その先の光へ」作詞:スガ シカオ 作曲・編曲:澤野弘之
9. 「MELODY (prod.by BREIMEN)」作詞・作曲:高木祥太 編曲:BREIMEN
10. 「歌を抱えて」 作詞・作曲:岡野昭仁 編曲:江口 亮
■商品形態
初回生産限定盤A:CD+BD ¥5500(税込)
初回生産限定盤B:CD+DVD ¥5000(税込)
通常盤:CDのみ ¥2800(税込)
【初回生産限定盤】
<映像特典> ※初回盤A・B共通
2021年に開催した、岡野昭仁 配信LIVE2021「DISPATCHERS」 / 「DISPATCHERS vol.2」から厳選したライヴ映像を収録
◎岡野昭仁 配信LIVE2021「DISPATCHERS」
ROLL
Zombies are standing out
愛なき・・・
白日
One more time, One more chance
旅せよ若人
ワインレッドの心
だから僕は音楽を辞めた
丸ノ内サディスティック
真夜中のドア/Stay With Me
未来予想図Ⅱ
Shaft of Light
光あれ
◎岡野昭仁 配信LIVE2021「DISPATCHERS vol.2」
ギフト
リンク
人として
ジュビリー
サヨナラCOLOR
若者のすべて
その先の光へ
「歌を抱えて、歩いていく」 プロジェクト特設サイト https://www.pornograffitti.jp/akihitookano/
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
待望のソロアーティストデビューアルバム!前島亜美『Determination』リリース記念インタビュー
アニメ!アニメ! / 2024年11月21日 18時30分
-
小西康陽が語る65歳の現在地 歌うこと、変わり続けること、驚くほど変わらないこと
Rolling Stone Japan / 2024年11月20日 17時30分
-
「下手すぎる!」『ベストヒット歌謡祭』のコラボに酷評の嵐、もはや“放送事故”扱いの悲運
週刊女性PRIME / 2024年11月16日 19時0分
-
「ひさびさに来たよ、京平さん」筒美京平が眠る鎌倉で、松本隆が語ったこと
CREA WEB / 2024年11月16日 11時0分
-
SKE48卒業からソロアイドルへ江籠裕奈「続けてきたことで、アイドルをやる意味が見えてきた」
エンタメNEXT / 2024年11月2日 12時0分
ランキング
-
1「また干されるよ」ヒロミが「もう辞めるか?」のボヤキ、視聴者が忘れないヤンチャ時代
週刊女性PRIME / 2024年11月26日 11時0分
-
2「火曜サザエさん」27年ぶり復活!「懐かしすぎ」ネット歓喜「さすが昭和」「時代感じる」「涙が…」
スポニチアネックス / 2024年11月26日 19時11分
-
3山下智久、国際エミー賞で快挙!主演海外ドラマ「神の雫」が連続ドラマ部門受賞「夢が一つ叶いました」
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年11月26日 15時27分
-
4私立恵比寿中学・星名美怜、突然の「契約終了」 残るメンバーは謝罪...ファン衝撃「本当にちょっと待って」
J-CASTニュース / 2024年11月26日 12時55分
-
5辻希美&杉浦太陽の長女、芸能事務所入り たった2時間でフォロワー8・5万人!両親も宣伝「おめでとう」
スポニチアネックス / 2024年11月26日 15時11分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください