当代最強のパンクバンド、アミル・アンド・ザ・スニッファーズが語る音楽愛と初来日への想い
Rolling Stone Japan / 2023年8月31日 17時30分
9月6日(水)に東京・渋谷CLUB QUATTRO、9月7日(木)に大阪・梅田 Shangri-Laで初来日公演を開催するアミル・アンド・ザ・スニッファーズ(Amyl and the Sniffers)。フー・ファイターズやウィーザーも虜にしてきた4人組の最新インタビューをお届けする。
アミル・アンド・ザ・スニッファーズはロックンロールの生存者! 彼女達の最新作である2ndアルバム『Comfort to Me』のリリースを記念して行われた配信ライブは、新型コロナウイルスのパンデミックに伴うロックダウンによって無人となったメルボルンの夕暮れ時の港をステージに、アルバム収録曲を矢継ぎ早に披露していく圧巻の内容だった。映画『渚にて』を彷彿させる切ない風景と、そんな感傷を吹き飛ばすかのようなバンドの圧倒的なパワーに、筆者は得も言われぬ感動を覚えた。
AC/DCからの系譜すら感じさせる王道のオーストラリアン・ロックンロールでありつつ、アンダーグラウンドなパンクの猥雑な匂いもある。そしてライオット・ガールの精神を継承する真摯なメッセージ。ビキニ・キル時代のキャスリーン・ハンナが「Girls to the front!(女の子は前へ!)」と言っていたのを踏まえて、エイミー・テイラーは「Freaks to the front!(はみ出し者は前へ!)」と叫ぶ。間違いなくアミル・アンド・ザ・スニッファーズは当代最強の爆裂ガレージ・パンク・バンドである!
2016年にオーストラリアはメルボルンのバラクラヴァで結成されたアミル・アンド・ザ・スニッファーズは、エイミー・テイラー(Vo)、デクラン・マーテンス(Gt)、ガス・ロマー(Ba)、ブライス・ウィルソン(Dr)からなる4人組(バンド名は「亜硝酸アミルと、その吸引者達」の意)。わずか12時間でソングライティングから録音、そしてリリースまで(!)完了させたというデビューEP『Giddy Up』を結成と同年に発表すると、以降は怒涛の勢いでキャリアを積み重ね、本国のみならず海外でも人気を博す国際的なアーティストへと成長していったのだった。最近ではスマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンが「ライブを見てぶっ飛ばされたね。エイミー・テイラーは真のロックスター。彼女は唯一無二の存在だ」と発言するなど、その評価は天井知らずだ。
2023年9月、そんな彼女達がついに初来日公演を果たすのだから、これは事件以外の何物でもない。来日を目前に控えてヨーロッパ・ツアー中のバンドが、ハードスケジュールの合間を縫ってメールインタビューに答えてくれた(回答はエイミーとデクランの共同名義)。
—2019年の1stアルバム『Amyl and the Sniffers』、2021年の2ndアルバム『Comfort to Me』はどちらも(オーストラリア版グラミー賞である)ARIAミュージック・アワードの「ベスト・ロック・アルバム」を受賞しましたが、それによって周囲の環境に何か特筆すべき変化はありましたか?
すごくクールな体験だったのは確かだけど、それが何をもたらしてくれたのかは正直分からないな。色んなことがあるのが人生ってもんだし、一つ一つの物事が環境にどのような変化を及ぼしたのかを分析するのは難しいよ。
—2016年のバンド結成から現在に至るまでにコロナのパンデミックもあって激動の7年間だったと思いますが、バンドにとって変わらないものがあれば教えてください。
今でもライブをするのが大好きだし、熱量もずっと変わらずに持ち続けていると思う。
—エイミーさんは(同じくオーストラリアのバンドである)トロピカル・ファック・ストームとの共演でザ・セインツの「This Perfect Day」をカバーしています。オーストラリアのアーティストにとってセインツの存在は大きいのでしょうか?
そうだね。オーストラリアのバンドは、何十年にも渡ってセインツからの影響を受け続けていると思う。
—セインツ以外にオーストラリアのパンク・バンドというと、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTにも影響を与えたレディオ・バードマンや、最近ユー・アム・アイのティム・ロジャースが加入したハード・オンズ、オーストラリア在住の日本人によるマッハ・ペリカンなどが日本では有名です。他に日本のリスナーにお勧めしたいオーストラリアのパンク・バンドがあれば教えてください。
C.O.F.F.I.N、リサーチ・リアクター・コープ、スティッフ・リチャーズ、ビッグ・ウェット、コズミック・サイコス、ボディ・タイプ、G2G、ブーディカ、スパンクが私達のお勧め(注:ビッグ・ウェットはソロ・アーティスト)。
—アミル・アンド・ザ・スニッファーズはオーストラリアのパンクの歴史において、どのような立ち位置にいると思いますか?
そんなこと偉そうに言える柄でもないよ! それは他の人達に決めてもらえればいいと思う。でも、とにかく私達は楽しい時間を過ごしてる。
—パトリック・ヘルナンデスのディスコ・ソングである「Born to Be Alive」のカバーは選曲のセンスも含めて最高だと思います。どうしてこの曲をカバーしようと思ったのですか?
褒めてくれてありがとう。ロックダウン中にコンピレーション(「Rising: Singles Club」というマンスリーのシングル・リリース企画)の為にレコーディングしたんだけど、当時はみんなかなり落ち込んでいたから、人生がいかに楽しいものかを思い出させるいい曲だと思って。というのも、私にとってはこの原曲がそういう特効薬だったから。
—あなた達が出演した「What's In My Bag?」を観ても、パンクだけにとどまらない幅広い音楽の趣味を持っていることが分かりますが、バンドの音楽性としてストレートなパンク・ロックに行き着いたのはどうしてですか?
私達はあらゆる種類の音楽が大好きで、どのジャンルにもたくさんの魅力がある。別にパンク一辺倒というわけじゃないんだよ! 私達がバンドを始めた当初はもっとガレージ・ロックっぽいサウンドで、そこからロック/パンクに進化して、最新作ではロック/パンク/ガレージ/ロカビリーの要素が入ってきている。私はラップからもすごく大きな影響を受けているし、実は多様性のあるサウンドだと思う。できる限り固定観念には縛られずに自由でいたいし、無限の可能性を信じて、クリエイティブでありたいと思っている。確かにパンクのエネルギーはあるし、パンク・ミュージックもパンク・スピリットも大好きだけど、私達を「パンク」で終わらせるのはまだ早いかもよ。私達は自分達を「パンク」と決めつける必要はないし、そこに囚われず活動していきたいと思ってる。
—エイミーさんはスリーフォード・モッズやヴァイアグラ・ボーイズの楽曲にも参加されています。両者ともアミル・アンド・ザ・スニッファーズとは音楽性が異なる海外(イギリスとスウェーデン)のポスト・パンク系のアーティストですが、彼等とはどのような経緯で知り合い、共演に至ったのか教えてください。
もともと私は彼等のファンで、同じフェスティバルに出演することがあったりして面識を持つことができた。自分の大好きなアーティストと知り合えるなんて最高だよね。なぜ彼等が私を選んだのかは分からないけど、両者からオファーを貰えて嬉しいよ!
—エイミーさんはアリス・バッグが好きだと聞きました。以前にリンダ・リンダズにインタビューした時に、彼女達もアリス・バッグをリスペクトしていると語っており、近年の若いパンク系ミュージシャンからアリス・バッグが強く支持されているのを感じるんですが、それはどうしてだと思いますか? ちなみに、私は『ザ・デクライン』(1980年前後のLAパンク・シーンを記録したドキュメンタリー映画)を観てアリス・バッグのことを知りました。
アリス・バッグは最高。彼女はオリジナルであり、社会が押しつけようとする枠組みや限界と戦い続けている。無限を感じさせる自由な存在で、強くて偉大なパフォーマーで、偉大なソングライター。さらにはスタイルアイコンでもあり、私にインスピレーションを与えてくれる。彼女はパンクが白人男性だけのものではないことを証明している生き字引だと思う。『ザ・デクライン』は未見なんだけど、ずっと観たいと思ってる!
—あなた達のライブ映像を観るとプラズマティックスからの影響も感じます。アミル・アンド・ザ・スニッファーズがライブにおいて理想とするアーティストがあれば教えてください。
あなたが言っている通りで、プラズマティックスが大好きなの!
—今度の来日公演はどのような内容になりそうですか? 抱負と共にお聞かせください。
日本でプレイするのが待ちきれないよ。みんなのエネルギーを感じたいし、みんなが楽しくて自分らしくいられるような時間を作りたい。自分達もその一部になれたらと思ってる。みんなで意識をぶっ飛ばして、ただただ汗だくになれたら最高だね。そして日本を見て、日本の文化や食べ物、人々を知りたいと思ってる。日本へ行くのは初めてだから。
Amyl and the Sniffers Japan Tour 2023
2023年9月6日(水)東京・渋谷クラブクアトロ
2023年9月7日(木)大阪・梅田Shangri-La
OPEN 18:00 / START 19:00
前売:¥6,000(スタンディング、ドリンク別)
詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=3905
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