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フォール・アウト・ボーイが語る、YMOと久石譲からの影響、アルバム再現ライブをやらない理由

Rolling Stone Japan / 2023年9月1日 18時40分

フォール・アウト・ボーイ:左からピート・ウェンツ(Ba)、パトリック・スタンプ(Vo, Gt)(Photo by Masato Yokoyama)

サマーソニック東京のMARINE STAGEで熱演を繰り広げたフォール・アウト・ボーイ。最新アルバム『So Much (For) Stardust』は、バンドの「過去」と「今」と「これから」を結びつける潤滑剤のような作品だったが、ライブの方も激しいポップ・パンク・アンセムからメロディアスなロックまで、普遍的な魅力を帯びたバンドであるということをあらためて見せつけた。

【写真を見る】サマソニでのフォール・アウト・ボーイのステージ

プレスエリアに現れたパトリック・スタンプ(Vo, Gt)とピート・ウェンツ(Ba)。写真を見れば分かるように、パトリックはハードコア・バンド、ロス・クルードスのTシャツを(指摘したら嬉しそうに「シカゴのバンドだしね!」と反応してくれた。※フォール・アウト・ボーイもシカゴ出身)、ピートはナパーム・デスのTシャツを着用していた。テイラー・スウィフトが「好きな作詞家はピート・ウェンツ」と公言しているように、アメリカのエモ・カルチャーを語る際、絶対に欠かせないバンドの一つがフォール・アウト・ボーイだが、当事者である彼らはその影響力にはまったく興味がない様子で、ファンとしてはこのままマイペースで活動を続けてほしいと思うのだった。

ー2019年以来のサマーソニック出演ですね。コロナ禍を挟んでのサマソニ出演になったわけですが、久しぶりの日本でのライブ、いかがでしたか?

パトリック:想定していたとおりのライブができたんだ! こんなことめったにないんだけどね。日本のオーディエンスはとても特殊だと思う。「日本でのライブはどうだった?」っていつもみんなから聞かれるんだけど、うまく説明できないんだよね。それはここに来て、実際に経験しないとわからないと思う。エネルギーのギブ・アンド・テイクが起こってるような気がするんだよ、うまく言えないけど。


©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.


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ー今年3月にリリースしたアルバム『So Much (For) Stardust』について、 日本のことを思って書いた曲があるとMCでピートが話していましたが、どの曲のことですか?

ピート:「The Kintsugi Kid (Ten Years)」は、日本にいる時に感じたことを歌った曲で、タイトルからも明らかだよね。「The Kintsugi Kid (Ten Years)」は「I Am My Own Muse」と、タイトルトラックの「So Much (For) Stardust」をつなぐ曲になってる。パトリックが曲を書いたから、あくまで僕の解釈だけど、音響的なランドスケープが、どこか日本のことを思い出させるんだ。



パトリック:日本からはいつも影響を受けているけど、とくに今回のアルバムでは顕著だね。サウンドからは認識できないかもしれないけど、かなりイエロー・マジック・オーケストラの影響を受けていて、彼らのシンセサイザーのサウンドを意識してる。このアルバムでは、シンセサイザーをたくさん使ってるわけじゃないけど、じつはシンセサイザーで作り始めた曲が多いんだ。イエロー・マジック・オーケストラが使っていたのと同じシンセサイザーを買って、そこから曲を作っていった。あと、僕はスタジオジブリの映画の大ファンで、作曲家、久石譲の音楽が大好きなんだ。ただただ美しく、ゴージャスな音楽。ストリングやオーケストラのホルンのアレンジをしてる時、彼のような、心に訴えかけるサウンドを作りたいって思った。もちろん、僕の音楽は彼の音楽とまったく違うけど、とにかくトライしてみたかった。とくに「The Pink Seashell」では、彼の音楽を聴いたときの感覚を呼び起こそうとしたんだ。



ーフォール・アウト・ボーイにとって2023年はデビュー20周年なんですよね。「20th Anniversary Tour」と題して、1stアルバム『Take This to Your Grave』全曲演奏とかやってもよさそうなのに、このタイミングで気合いの入った新作『So Much (For) Stardust』をリリースし、ライブでもガンガン演奏するところが最高だなと思いました。

ピート:一番大切なことは、自分が正しいと思う姿勢を貫くことだと思うんだ。若い時からずっと大好きなパンク・バンドがいて、彼らの姿勢は一貫してた。デヴィッド・ボウイやザ・クラッシュなんかは、以前の面影をまったく感じさせないくらいにスタイルを変えて、それをきっかけに離れていくファンもいたよね。でも、歳をとってからアルバムを聴き返した時、当時は気に入らなかったけど、いま聴けば良い曲だなって自分自身の変化を振り返ることもできたりする。過去を祝うようなことって恩着せがましく感じるし、それはフォール・アウト・ボーイらしくない。僕らは作品を作り続けていて、失敗もすればうまくいくときもある。たとえ、うまくいかなかった作品があったとしても、「まあ、そういうこともあるだろう」って思うんだ。なかには、「すごく良かった」って言ってくれる人もいるしね。自分が好きなアーティストを見ても、好きなアルバムもあれば、嫌いなアルバムもある。それは当たり前のことだ。僕らはいつも、過去の作品にチャレンジするような作品を作っているし、もちろん気に入ってくれたら嬉しいけど、評価されることだけが音楽を作る理由じゃないんだよ。

パトリック:ああ。結成20年を祝うためにアルバムを作ったり、過去の曲を披露するアニバーサリーをしたりっていうアイデアは好きじゃない。理由はいくつかあって、1つ目は、過去の曲はいつもローテーションに入ってるから、演奏しなくなることはない。2つ目は、ピートも言ったように、新しい音楽を追い求め続けることが、20年前から変わらない僕らの姿勢なんだ。それから外れるようなことは、正直じゃないというか、自分たちに嘘をつくようなことになるというか、なんて言えばいいんだろう…….。

ピート:スティーヴン・スピルバーグが『E.T』のPart.2を作らなかったようなことだよね。

パトリック:そのとおり! 自分たちに正直であり続ける、それが僕らの純粋な姿なんだ。


Photo by Masato Yokoyama


Photo by Masato Yokoyama





僕らのゴールは、メタリカのような存在になること

ーあなたたちがバンドを始めた頃、”エモ”ってまだマイナーな存在でしたよね。音楽の特定のジャンルを指す言葉だと思っていたら、今ではみんな日常会話でも普通に使ってますし。

パトリック:「エモ」っていう言葉の意味は、ものすごく変わったよね。僕らがバンドを始めたシカゴではエモが浸透してたけど、いわゆる、僕らのようなサウンドは歓迎されなかった(笑)。キャップン・ジャズや、ブレイド、ザ・プロミス・リングみたいなバンドが、当時「エモ」といわれるバンドだったんだ。僕らの音楽がどのジャンルかなんて、考えたこともなかったな。なにかメロディックな音楽を作りたかったんだ。僕らはハードコア・バンドだったし、かなりヘヴィだった。だからといって、れっきとしたハードコア・バンドだとも思ってなかった。僕はいつもメロディックなものを求めてたから。もちろん、ハードコアは大好きだし、演奏するのも好きだった。でも、僕がサポートで歌うと、「お前の声は可愛すぎる」ってよく言われたんだ(笑)。で、僕らがやりたい音楽をやってたら、いつのまにか「エモ」って呼ばれるようになった。もし、意図的にやっていたとしたら、失敗してただろうね。つまり、ハッピーなアクシデントなんだ。そりゃあエルヴィス・コステロみたいになりたかったけど、当時の僕はアース・クライシスしか知らなかったからね(笑)。僕らなりにやっていった結果なんだ。





ピート:たとえば、誰かに何かを説明する時、名前があることで会話ができる。何かについて話すための名前だ。ただ、その意味が漠然としすぎてることもあるよね。まったく異なるものが「エモ」っていう言葉でまとめられてるけど、その理由は誰も答えられない、みたいな。前までは、その言葉に制限をかけられているような気がして不満だったけど、今は、そういうもんだって思ってるよ。ジャンル名でプレイリストが作られたりしてるし。でも僕らのゴールは、メタリカのような存在になること。たとえば、母や友達に「メタリカってどんな音楽?」って聞いたら、きっと「そんなの、メタリカはメタリカだ」だって答えるよね。彼ら自身が彼らを説明する言葉になってる。スピード・メタルのバンドで、4人組のバンドで...... なんて説明する必要がない。ガンズ・アンド・ローゼズもそうだ。それが僕らのゴールだね。そういう、名前がすべてを語るアーティストは百万といるよ。

ー僕はピートと同じ40代なんですけど、約20年前、まだメジャーデビューする前、渋谷のクラブクアトロであなたたちのステージを観たことを思い出しました。そして今も現役で走り続けている姿を見て、ハードコア/エモを好きで聴いてきた自分としては、とても励まされました。

パトリック:僕もだよ! まるで日本で育ったみたいだ。アメリカ、イギリスでも数多くのライブをしてるけど、日本もそのうちの一つなんだ。君が言ったみたいに、ほんとに小さいライブハウスからスタートして、だんだんと大きな場所でできるようになって...... そして今がある。ステージに立って、みんなが歌う姿を見られるなんて。ほんとに、ここまで来れたんだなって感じたよ!


Photo by Masato Yokoyama



『So Much (For) Stardust』
フォール・アウト・ボーイ
ワーナーミュージック・ジャパン
発売中
https://japan.lnk.to/FOB

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