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英アンドリュー王子の売春疑惑に再びメス、性犯罪者エプスタインの犠牲者たちが証言

Rolling Stone Japan / 2023年9月10日 21時35分

アンドリュー王子(MAX MUMBY/INDIGO/GETTY IMAGES)

8月21日に米A&Eで放映された最新ドキュメンタリーは、エプスタインが女性や少女に故エリザベス女王2世の息子アンドリュー王子と売春させていたという疑惑に再びメスを入れた。

【動画を見る】犠牲者たちの赤裸々な証言

2019年8月、性的人身売買容疑の裁判を控えたジェフリー・エプスタイン被告は、刑務所内で不可解な死を遂げた。右腕だった女性ギレーヌ・マックスウェルは、性的人身売買に加担した罪で禁固20年を食らった(警備の緩い刑務所では密告の心配もない)。それからというもの、エプスタインと関わりのあった富と権力をむさぼる悪名高き小児性愛者どもの周りには、いまも疑念と混乱と怒りが立ち込めている。正義はいまだ果されていないようで、ビル・クリントン、ビル・ゲイツ、ドナルド・トランプといった世の実力者は、21世紀最悪の性犯罪者に挙げられる人物との関わりを弁明する必要には迫られていない。

エプスタイン関係者が報いを受ける姿にもっとも近い例といえば、2019年にニュース番組『BBC Newsnight』が英国王室アンドリュー王子と行った、かの有名なインタビューだ。思わず顔をしかめるインタビューは、A&Eで放映された最新ドキュメンタリーシリーズ『Secrets of Prince Andrews』の中核を成している。

「BBCと王室が絡むと、必ず誰かがクビになります」。当時番組の司会だったエミリー・メイトリスはドキュメンタリーでこう語り、「まさかそれが王子だとは思ってもいませんでした」と付け加えた。

8月21日、二部構成で放映された3時間ドキュメンタリー『Secrets of Prince Andrew』は、特ダネインタビューを手がけた『BBC Newsnight』の撮影班、王室関係者やアンドリュー王子の友人、元政治家、エプスタインの犠牲に遭ったヴァージニア・ジェフリーさんの弁護人デヴィッド・ボイズ氏とシグリッド・マコーレー氏、同じくエプスタインの犠牲者で元モデルのリサ・フィリップスさん他多数のインタビューが盛り込まれている。残念なことに、2003年のヴァニティフェア誌に華々しく掲載されたエプスタインの特集記事を利用して、あまたのドキュメンタリーを手がけたジャーナリストのヴィッキー・ワード氏や(ただしガーディアン紙も指摘しているように、ワード氏は2011年にヴァニティフェア誌のブログで「意外にもエプスタイン氏を悪く言わず」、彼の性犯罪を「性的悪ふざけ」と書いている)、エプスタインの多くの犠牲者たちの弁護を引き受けたリサ・ブルーム氏(2016~17年にかけて、性的不適切行為の疑惑にまみれたハーヴェイ・ワインスタイン氏に法的助言をしたことのほうが有名)のインタビューも登場する。ここは是非ともジュリー・K・ブラウンを出してほしかった。

ドキュメンタリーは時間軸を行き来しながら、アンドリュー王子の関係者が2018年以降、『BBC Newsnight』のプロデューサーだったサム・マカリスターとインタビュー実現に向けて交渉した様子を振り返っている。当初関係者は、王子が運営する慈善団体「Pitch@Palace」をプロデューサーに売り込んでいたが、エプスタイン関連の質問には度々「NG」を出していたためBBC側が見送った。アンドリュー王子の恵まれた王室生活もざっくりと語られている。エリザベス女王の2番目の息子として生まれたアンドリュー王子は「スペア」、すなわち王位継承権第2位で、そのため素行が怪しくなっていった――ハリー王子も同じく王位継承第2位だが、こちらのほうは品行方正なイメージを保っている。王室海軍で戦ったフォークランド戦争から帰還すると、アンドリュー王子は一部の人々から「英雄」とみなされ、そうした名声を利用してモデルや女優と浮名を流し、タブロイド紙からは「好色アンディ」とあだ名された。

スペアだったアンドリュー王子は年間24万9000ポンド(チャールズ王と比べれば微々たるもの)の手当てをもらい、不分相応な暮らしをしていた。そんな中、著名人や富豪らとつるんでいたマックスウェルと出会ったことで、望んでいた豪華な生活(あるいは取り巻き?)を手に入れた。アンドリュー王子はマックスウェルからジェフリー・エプスタインを紹介され、エプスタインを通じてビル・クリントンに紹介された。『Secrets of Prince Andrew』では、エプスタインとマックスウェルが英国王室の地所バルモラル宮殿とサンドリンガム宮殿に、アンドリュー王子の客として招かれた経緯が語られている。2人はウィンザー宮殿で行われたプライベートの誕生会にも出席し、王室メンバーにも紹介された。アンドリュー王子が貿易特使の公務で海外訪問した際には、納税者の税金でエプスタインも同行した。エプスタインはアンドリュー王子の元妻サラ・ファーガソン侯爵夫人の借金も肩代わりした。とある人物の話では、エプスタインは一度こう漏らしていたそうだ。「自分よりも性欲の強い人間が1人だけいる。アンドリューだ」。



バッキンガム宮殿の元報道官ディッキー・アービタ氏(すごい名前だ)いわく、「(エプスタインが)アンドリューの客として招かれたというのは、おそらくプライベートの行事でしょう。つまり、アンドリューは女王から招待の許諾を得ていたことになります。女王は、子どもたちがOKなら大丈夫、と信用していたのでしょう。1990年にエプスタインを知っていた人などいたでしょうか? アンドリューはエプスタインにすっかり夢中でした。彼は魅惑の休日も、ヨットも提供してくれる。女の子もあてがってくれるのですから」。


2000年2月12日、フロリダ州パームビーチでトランプ氏が所有するマー・ア・ラーゴのパーティにて 左からメラニア・トランプ氏、アンドリュー王子、グエンドリン・ベック氏、ジェフリー・エプスタイン(DAVIDOFF STUDIOS/GETTY IMAGES)

2008年、エプスタインは児童に売春をあっせんした容疑で有罪を認め、司法取引に応じて世間を騒がせた。ただし警察当局が36人の少女(大半が未成年)に事情聴取を行ったところ、みなエプスタインから性的虐待を受けたと供述した。エプスタインは13カ月の刑期を務めた後、まんまとニューヨーク社交界に復帰した。

インタビューに応じたタブロイド新聞記者アネット・ウィザーリッジ氏は、2010年12月にニュース・オブ・ザ・ワールド紙から電話を受け、アンドリュー王子がニューヨーク市にいるとのタレコミ情報を得たと語った。ウィザーリッジ氏はカメラマンに電話し、一緒にアッパーイーストサイドにあるエプスタインの邸宅に向かうと、英国王室の警備隊が家の外にいるのを目撃した。ウィザーリッジ氏とカメラマンは邸宅の前で張り込みをした。

「その間、若い女の子が1時間半か2時間半おきに、入れ替わり立ち替わり中に入っていきました。2人ずつ入っては1人出てくるといった感じでした」と、ウィザーリッジ氏はドキュメンタリーで語っている。

翌日現場に戻ってみるとアンドリュー王子とエプスタインが家を出るところで、2人の後を車で街中尾行した。最終的にカメラマンは、おしゃべりしながらセントラルパークに連れだって行く2人の姿をフィルムに収めた。写真は「アンドリュー王子と小児性愛者」という見出し付きで一面を飾った。

写真を見たヴァージニア・ジェフリーさんは怒りにふるえた。エプスタインの性的人身売買の犠牲者だったジェフリーさんは、その後メイル・オン・サンデー紙とのインタビューに応じ、2001年にアンドリュー王子と撮った写真について語った。マックスウェルと並んで立つ王子が17歳のジェフリーさんの腰に手を回している、あの写真だ。ジェフリーさんは後日裁判で、17歳の時にエプスタインからアンドリュー王子と売春させられたと主張した。

「ヴァージニアさんは無理矢理アンドリュー王子とセックスさせられました。本人の意志とはまったく関係なしにです」と、ジェフリーさんの弁護人シグリッド・マコーリー氏はドキュメンタリーで主張した。「彼女は大人2人から、アメリカ国内だけでなく海外でも売春させられていました。丁重に客と性交するよう要請されると、彼女は応じるしかありませんでした。悲しいかな、彼女の場合はかなり頻繁にそうせざるをえなかったのです」。

最終的にジェフリーさんはアンドリュー王子を訴えた――王子はしばらく召喚状配達人をかわしていたが、結局印籠を渡された。2022年に王子は民事訴訟で訴えられ、1200万ポンド(1630万ドル)でジェフリーさんと和解した。


ジェフリー・エプスタイン、ギレーヌ・マックスウェル、アンドリュー王子などから暴行を受けていた10代のころの写真を掲げるヴァージニア・ロバーツ・ジェフリーさん(MILY MICHOT/MIAMI HERALD/TRIBUNE NEWS SERVICE VIA GETTY IMAGES)

そして問題の『BBC Newsnight』のインタビューだ。インタビューを担当したエミリー・メイトリス氏は直前に「恐怖で」気分が悪くなったそうだが、プロらしく目の前の王室メンバーの本性を暴く姿からは想像もできない。インタビューの間アンドリュー王子は顔をしかめ、口ごもりながら、ジェフリーさんに会った記憶はないと主張した。自分は汗をかかない体質なので(少なくともインタビュー当時は汗ダラダラだった)彼女の話は嘘だ、一緒にナイトクラブで踊ってから性的行為に及んだという夜はピザ・エクスプレスにいた、とも主張した――この2つの弁明で、王子は物笑いの種になった。

インタビュー中、アンドリュー王子と関係者はうまくかわしたと思い込んでいたようだ。というのも、メイトリス氏も回想しているように「王子は話し続けました。ご満悦なようすでした」 マカリスター氏いわく、王室側近も「最高の出来だ」と語っていたそうだ。

1週間後、アンドリュー王子は公務を解かれた。後に女王は王子の役職と称号を剥奪した。



『Secrets of Prince Andrew』でもっとも心を揺さぶられるのは、リサ・フィリップスさんが登場する場面だ。元モデルのフィリップスさんもエプスタインの犠牲に遭った1人だった。2000年、彼女はトルトラ島でモデルの仕事を予定していた。撮影で一緒になった別のモデルが、隣の島を所有する面白い友人がいるから一緒に行こうと誘った。向かった先は、今では「小児性愛島」と呼ばれるリトル・セントジョーンズ島。ふと気づけば、フィリップスさんは「20代前半か10代後半」ぐらいの大勢のモデルと一緒にエプスタイン主催のディナーに出席していた。アンドリュー王子はちょうど島を出るところで、ディナー客に別れを告げているようだった。フィリップスさんはやがてエプスタインにほだされ、「かどかわされて」「マッサージという口実のもと」「性的虐待を受けた」そうだ。

「私の話はアンドリュー王子で始まり、アンドリュー王子で終わるような気がします」とフィリップスさんはドキュメンタリーで語った。


2020年7月1日、ロンドンのショーディッチ地区に描かれたアンドリュー王子の壁画(GUY SMALLMAN/GETTY IMAGES)

『Secrets of Prince Andrew』の終盤、フィリップスさんはアッパーイーストサイドにあるアプスタインの邸宅を久しぶりに訪れ、「身の毛もよだつ」経験だったと語った。

「彼を悪く言いたがらない友人を大勢知っています」とフィリップスさん。「気持ちは理解できます。私もずっと、15年以上も抱え込んできましたから。いざ口にしてみたら、あまりにも激しいトラウマでした。他の人のように黙ったままでいればよかったと思ったほどです……時々、声をあげなければよかったとも思います。気づくといたたまれない気持ちに襲われるんです」。

フィリップスさんは、親しい友人に起きた事件が理由でドキュメンタリーに応じることにしたと説明した。友人の名前は明かさなかった。

「声をあげることにした一番の理由は、私の親友――彼女を悲劇が襲ったからです」と、ドキュメンタリーでフィリップスさんは打ち明けた。「ある夜彼女の家に立ち寄ると、いきなり泣き崩れました。『どうしたの?』と訊くと、ジェフリー(・エプスタイン)の家にいたときにアンドリュー王子と部屋に行くよう言われたそうです。それで部屋の中に入り、王子とセックスした。それがすむと部屋を飛び出したそうです」。

フィリップスさんはさらに続けた。「ジェフリーがやれと命じたんです。同意の上だったかもしれません。性的暴行ではなかったかもしれない。彼女も立派な大人でしたしね。多分当時は19か20、おそらく19歳だったと思います。ああいう状況では、同意の上かどうかわかりかねます。どう判断すればいいかわかりません。ただ、心に傷は残りました。あれ以来、彼女はまったく別人になってしまった。彼女の人生は完全に狂ってしまいました」。

この一件の後、フィリップスさんはエプスタインと口を利かなくなった。最後に、自分が聞いた話を本人に直接問いただした。

フィリップスさんによると、エプスタインはこう言ったそうだ。「人の弱みを握っておくのはいいことだよ」。

「彼は大勢の実力者の秘密を握っていました」とフィリップスさん。「王子には自分の行いの償いをしてもらたい――関わった他の大勢の男たちにもです」。

関連記事:性犯罪者エプスタイン被告の自殺を招いた「重大な過失」とは? 米

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