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BLUE ENCOUNTが語るバンドとしての命題、"前向きだけどせつない"最新曲

Rolling Stone Japan / 2023年9月27日 18時0分

BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNTが、シングル作品『アマリリス』をリリースした。表題曲は、TVアニメ『MIX MEISEI STORY 〜二度目の夏、空の向こうへ〜』オープニングテーマで、美しくセンチメンタルなギターが印象的なサウンドとなっている。2度目の日本武道館公演、アメリカで開催されたアニメイベント「Anime Next」への出演などを経て、どのように楽曲制作に向かい合っているのか、その変化や本作の誕生についてなど話を聞いた。

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―コロナ禍を経たうえで、BLUE ENCOUNTとしてライブをしている感触や見え方はどうでしょうか?

高村:コロナ禍を経てなのかは分からないですが、ライブ中のマナーについての話しはSNS上などで見ますよね。難しい問題だよなと思いつつ、全員の問題を解決するのはできないとも思っていて。よっぽど何かが進化しないと無理でしょうし、答えは無いものだと思っています。

江口:モッシュやダイブなどの話題も持ち上がりますけど、結局それはコロナが流行る前からあった話題ではありますよね。ダイブとかしてほしくないお客さんもいれば、暴れたいお客さんもいらっしゃって、そこは変わってないんじゃないのかなと。やってる側からすると、モッシュやダイブをしているお客さんを見ているのは見ていて爽快ではありますし、ホールの座席ありの会場でライブをやるのも僕らは好きなので、お客さんそれぞれがその日楽しめるように楽しんでもらえればと思ってます。

田邊:そこらへんはいまも昔もルールを作ってはいないので、「いつもの感じに戻ってきたな」という感じですね。ステージに立ってる人間としては、モッシュやダイブとかではなく、一緒の空間・時間のなかで音楽を歌えてる、楽しめているという事実が、なによりもライブの醍醐味で。それが戻ってきたことが何よりも嬉しいという気持ちが強いです。

―2月には自身2度目となる日本武道館公演がありました。BLUE ENCOUNTにとってコロナ禍以降の新しいスタートになったんじゃないでしょうか。

田邊:そうですね。武道館で、主催ワンマンライブでの声出しを解禁したんです。一発目の歓声を浴びた瞬間……「これによって僕らは生かされてたんだな」と感じて。無観客ライブや配信ライブ、マスクしてみんな何もしゃべらずに楽しんでもらうとか、創意工夫をしてやってきましたけど、やっぱりあの歓声に勝るものはなかったんです。だからといって"昔の自分たちに戻った"というものではなく、この尊い存在(ファンのみんな)をもっと良い景色に連れていきたいという展望に変わったんですね。「もっといろんな場所で、この人たちと俺らの音楽を通して一緒に歌っていけたらな」という作り手としての感覚を掴んだことが、武道館ライブ以後の制作意欲にも繋がったんです。

―「制作意欲につながった」というのは、ファンの皆さんを新しい場所に連れていくための新たな武器、新たな楽曲への制作へ繋がっていったということでしょうか?

田邊:おっしゃる通りです。その後にベースの辻村がアメリカで活動をしたいということで、新しいスタイルでバンド活動をしていくことになったわけですが、僕らは日本とアメリカそれぞれに違った拠点で活動していくことになりました。僕ら以外にもさまざまなロックバンドが色んな形で制作活動していますが、なんにせよミュージシャンたるもの一番大事なのは「曲」じゃん?という話しになったんですよ。

―なるほど。

田邊:それに、どこからでも音楽を耳にすることができる現在の世界のなかで、自分たちの音楽をいかにみんなに聞いてもらえるか?一発で聞いてもらえる曲を作れるか?という話にもなったんです。今までだと「ライブで映えてないとダメ!」とか「CDショップで注目されるには?」みたいなことを考えてましたけど、一個一個未来にも残っていくもの、一つの作品としてリスナーの耳に届けたい気持ちがより強くなってます。妥協なく、考え込むくらいに作っていきたいという気持ちがほんとに強くなっていて、今までは聞いてもらいたいお客さんがロックシーンの人たちだったけれども、そこがまるで変わった感じがします。



―そうなると、制作にかけてる時間はやはり長くなってますか?

田邊:長くなってますね。前までは1日に20曲くらいたくさん作って、メンバーに聴かせるみたいなことをやってたんですよ。いまは「自分がいま作らなくてはいけない曲」「作るべき曲」がなんとなく分かるようになったんです。ご一緒するタイアップ作品とか、ライブで感じたことを込めたいとか、どういう方向性にしたいかが見えてきたので、その部分だけをメンバーに聞いてもらうようになりました。今までだととにかく全部聞いてもらったりしていたんですけど、自分のなかで作りたいものが明確になったからこそ、そこに力をより注げるようになったなと思います。

―江口さんや高村さんは、今までと楽曲制作のアプローチやプロセスなどが変わったことで、自分の演奏が変化した部分はありますか?

江口:自分は昔から与えられた時間ギリギリまで使わないとアイデアが出てこないタイプなので、個人的にはそこまで変化はないですね。田邊が聴かせてくれるデモ音源は、昔に比べればしっかりまとまってるものが多くなりました。リスナー視点で言えば昔みたいにバラバラな曲をたくさん作ってくれるのも嬉しくて、同じようなタイプのデモばかり聞くと飽きてしまう部分があったり、違った曲があるとそれぞれ違って聞こえる部分もあるので、悪い話しではないんだよと伝えたいですね。

田邊:そうなんだ、オッケーオッケー。じゃあもう作り方は元に戻しますね(笑)。

(全員大笑い)

高村:みんな以前よりも個人でもやれることが多くなって、選択肢がいっぱいあるんです。なので、「この曲とこの曲、8割くらい一緒じゃない?」と思える曲でも、僕にとっては全然違う曲になる芽がみえていて、デモ音源や選択肢を絞ったなかで作業を進めていったほうが、よりいい曲が作れるんじゃないかな?と感じることが多いんです。この方向性をやりつづければ、どんな曲がきても「こうだ!」とアンサーを出せるようになると思うし、近道になるんじゃないかなと。

田邊:なるほどね。いやぁ、バンドはむずかしいなぁ~(笑)!

―辻村さんがアメリカに行かれたあとはどのようにコミュニケーションをとってますか?

田邊:じつは一昨年くらいから各メンバーともに遠隔で作業をすることが多いので、彼からは演奏フレーズなどを送ってもらって制作はしてます。なので「アメリカに行ったから密にコミュニケーションをとろう!」という感じではなく、「制作スケジュールこうなってるけどどうする?」から始まり、彼の意見を吸い上げつつやってます。出会ってかれこれ16年くらいなので、「いまそっちの天気どう……?」みたいなことをいまさら毎日聞くのもちょっと違うじゃないですか(笑)。

江口:一時期辻村がまだ日本にいたころ、「最近なにが好き?」みたいなのを教え合うみたいなモードにしようってことあったよね? 高村と辻村はそういうのを都度都度やりあえるんですけど、ぼくと田邊はそういうのが出来ないタイプなんですよ(笑)。

田邊:そういえば、今回MVの収録をしにいったとき、辻村に「これ最近好きなんだよね」って話しをしたら、彼も同じものが好きでしたね。なので「あ、良かった。じゃあ変に話すのはやめよう」と思って、本当は長めのミーティングをする予定だったところを、短めのミーティングで終えたくらいなんです。4人ともバックグラウンドは違いますけど、好きになるものはやっぱり一緒なんだなと思いました。



―今回MVで辻村さんに会いに行くという内容になりましたが、どういった経緯でこのMVを撮影することに?

田邊:ニュージャージー州のアニメイベントに出演してライブをすることになったので、「だったらアメリカで撮影しないか?」となったのがキッカケでした。「いいねいいね!やろう!」となったは良いものの、内容どうしようか?と意見を出し合った結果、「辻村に会いにいく」「スタジオに入って4人で音を出してみる」という内容になったんです。実はこのライブイベントでは辻村が参加できないということも決まっていて、彼と一緒に何かするという点でもいい案になってよかったと思います。

―ドキュメンタリーになっているシーンと台本を基に撮影しているシーン、色々混ざっているなと思いました。

田邊:MVのなかに現地の子供とハイタッチしているシーンがあると思うんですけど、あれはカットがかかった後の待ち時間に、撮影をずっと見ていた親子連れがいまして、その子が意を決してこっちにやってきたときのカットですね。監督さんがそういうオフカットもすごく撮影してくださってて、そこも随所に使われてますね。



―さきほども話しにあがりましたが、アメリカでは『Anime Next』というアニメイベントに出演されました。日本の雰囲気との違いをふくめて、実際に出てみてどのように感じましたか?

高村:やっぱり熱狂的でしたね。声援というか叫びに近い声が地鳴りのように響いてて、ジャンプをしていても「そんなジャンプする?」ってくらい本気で飛び跳ねてるんですよ。人それぞれの楽しみ方を思う存分している、「ウソの無い気持ち」みたいなのが伝わってきましたね。

江口:僕はまず、こんなにたくさんの人が聴きに来てくれるのかという驚きが大きかったですね。最初は100人くらいなのかなと思ってたんですよ。

高村:そうそう。会場には当初席が用意されていて、「まぁこれくらいだよな」という風に僕らも感じてたんです。ただ、開演時間になってもスタッフさんが呼びに来ないのでどうしたんだろう?と思ったら、「お客さんがあまりにも居すぎて全員入らない。30分待ってもらえないか?」と慌てて僕らに声をかけにきたんです。30分ほど押してステージに出ていったら、観客がオールスタンディング状態で待ってたんですよ。

江口:約1200人くらいが集まってくれていて、「こんなにいるんだ!?」という驚きがデカかったですね。そんな状況で、先ほども話しましたけどお客さんのリアクションが一つ一つ大きくて、それが塊となって飛んでくると地鳴りみたいになってきました。

田邊:いただいた尺が90分ほどだったんですけど、アニソンを中心にしたセットリストではさすがに時間が足りなかったんです。そこでタイアップ楽曲じゃない曲もやろうとなって、日本でもまだライブ演奏していなかったシングル曲「有罪布告」とアルバム曲の「...FEEL?」の2曲をやろうとなったんです。さすがにアメリカのアニメファンも僕らのオリジナル曲までは知らないだろうし、「どれだけ棒立ちになるだろうか」と思ってたんですけど、かなり反応が良かったんです。僕はてっきり、「アニソン」という知っているものに対して大きなリアクションを飛ばしているんだと思ってた。でも、実はそうじゃない。本当に良いものに対して、良いとリアクションをしてくれているんだなと分かったんです。なので、「最後までしっかりやらないとアメリカの人たちをファンにできないぞ」とかなりの使命感に駆られましたね。そのおかげで、日本では気づけなかった強みや改善点が瞬時に分かって、とても実りが多かったライブにもなりました。

―アニメの主題歌やタイアップ楽曲の影響は非常に強いとは思いますが、BLUE ENCOUNTというバンドを想像以上の場所へといざなっている感触はありますか?

田邊:ライブを終えた後にサイン会を開催したんです。めちゃくちゃファンの人が残ってくれたんですが、アニメイベントということもあってかかなりの方がコスプレをしてくれて、拙いながらも日本語を使って話しかけてくれたりしたんです。たぶん、僕らが普通にやってきてライブをするだけじゃこんな光景は生まれないわけで、アニメというものがこの人たちの人生になってるんだなと分かりました。クオリティ高いコスプレをしているファンの方がたくさんいて、「この子、家でどんな子なんだろう?」とか日本では中々そう思わなかったことも頭をよぎりましたね。自分たちが頑張って作った曲の先に、他の人の人生が確実に乗っかっているということ。それが、こうしたアニメ関係のお仕事で知ることができた大切なことだと思ってます。「アニメのおかげでここまで来れた」ではなく、「こんな奴らの音楽を聞きに来てくれてありがとう」の気持ちで、彼らと握手していました。



―今回のシングル「アマリリス」は、あだち充さんの漫画『MIX』を原作にした『MIX MEISEI STORY 〜二度目の夏、空の向こうへ〜』に起用されています。どういった流れで制作が進んでいきましたか?

田邊:僕はタイアップのお話をお受けさせてもらったときは、基本的に原作を深くまで読み込まないようにしています。くわえて物語には大事なメッセージやテーマがあると思うので、それを自分のなかで読み解こうと思っています。

―読み込むのではなく、読み解くんですね。

田邊:そうですね。自分から見たこの作品はどんな景色になるかを書き出して、そこからわーっと曲を作り、歌詞も仮でつけて、作ったデモ音源をメンバーに色々聴かせていく感じで作っていきます。今までも同じような流れで作ってきました。作品の背景や登場人物1人1人に入りこみすぎず、俯瞰からみたテーマ性を大事にして、作品を好きなみんなに聞いてもらうにはどうすればいいか?と考えて作ってます。今回の『MIX』に関して言えば、主人公の周りを取り巻く仲間や家族の存在があるから、2人は夢を追いかけることができる物語だと思ったので、そちらにフォーカスを置いて楽曲を作っていました。

江口:ぼくはそもそもあだち充さんのファンで、人生の中でも一番好きなマンガが『H2』なんです。こうして『MIX』の楽曲を担当させてもらって非常に嬉しいですね。夏×青春×スポーツという題材を描かれるのが非常にうまいので、この曲もかなり意識しました。

田邊:身近なところにあだち先生のファンがいたので、今回は江口からかなり勉強させてもらいました。

―歌が終わったあとのアウトロのキラキラ感がとても印象的ですね。

田邊:あそこ、僕自身めちゃくちゃ好きで、完成したやつを聴いたときに「ここだけで泣けそうだな」と思えちゃったんですよ。今回大事にしたのは、"前向きだけどせつない"というところで、そこを何とか具現化したくて頑張ったんですけど、今回はすごく欲しいところに手が届いた!と思えるフレーズでしたね。じつはプロデューサーさんとこの部分に関して色々と話し合いをしていて、このバージョンではない別バージョンをおススメされたんですよ。でも「いや、これ以外にするなら拗ねて帰ります」みたいなやりとりをするくらい僕が突っぱねて、色々と対話をして折衷案となったのが、いまのアウトロのフレーズですね。

―一方で「ghosted」ですが、こちらはどういった着想から制作されたんでしょうか?

田邊:渡米するタイミングでカップリングの曲をいれようという話しをしていて、ニュージャージーでのイベント出演を終えて、ニューヨークを散策しているときにちょうどアイデアが湧いてきたんです。実はニューヨークに滞在しているだけでも4~5曲くらいアイデアが浮かんでて、それを1つ1つをデモ音源にして、メンバーに聴かせて一番反応が良かったのが「ghosted」になりました。元々ポップパンクも大好きで、最近中々やってなかった曲の作り方ができたと思います。一癖あるメロディだけども、歌詞を入れてみるとJ-POPっぽいところもあったり、不思議な曲になったなと思いました。

江口:最初にデモを聴いたときは他の曲を個人的には推していたんですけど、メンバーやスタッフさん含めて「ghosted」に投票していて、そのあと作業していくうちに好きになっていった曲ですね。

―合議制や投票で決めても、どうしても違和感は残るものですよね。

田邊:ぜんぜんありますよ。皆が選んでいるけど、僕が選んでなくて、「これホントにシングルにする?」みたいなことになったりとか(笑)。

江口:多数決で決めたものは、とりあえずプリプロまで進めちゃおうというのが暗黙のルールなんですよ。今回もそれに従って進めたら、意外と良かったなと僕が気付いたパターンですね。

田邊:最後の最後までテンポをどうするか迷ってましたね。実際に歌ってみて速すぎると思ったので調整しました。めちゃくちゃテイクを重ねて録って、その都度聞いて自分で判断をしてというのは、久々にやりましたね。

―武道館公演あり、アメリカでのライブもあり、シングル制作もありと様々お聞きしましたが、BLUE ENCOUNTの今後の活動で思い描いていることはなんでしょうか?

田邊:今年はいろいろな制作が激化している1年なんですけど、2年前に『Q.E.D』でアルバムツアーをしたときは、ライブハウスでライブをしても元気がほとんどなくて、「来てくれてありがとう!」というだけで、本当に閑古鳥が鳴いている状態だったので、全国にライブツアーを回って色々と見ていきたいですね。あと、みんなで集まって来年について話すタイミングが最近あったんですが、「アメリカにすぐにでも行きたい」「向こうのライブハウスで何回かできないか?」という話題も上がってます。日本でもアメリカでも、いまはどういう活力で街やライブハウスが回っているのかを、僕らがもう一回垣間見ることで何か生まれるものがあるんじゃないのかなと思ってます。「いま人生における最高なものを作っていく」というのがいまは僕らの命題になっているので、よりインプットの多い1年になるとは思います。じつは2024年は結成20周年、メジャーデビュー10周年になるんですが、「10周年だから祝ってよ!イエーイ!」という感じではなく、10周年だからこそ「次に向けてのパワーアップ」にしたいですね。


<リリース情報>

BLUE ENCOUNT
「アマリリス」
配信中
https://BLUEENCOUNT.lnk.to/amaryllis



▪︎初回生産限定盤(CD+DVD)
価格:¥1800(税込)
品番:SECL-2916〜17
※アニメ絵柄ワイドキャップステッカー付き
-CD-
1. アマリリス
2. ghosted
3. アマリリス(Instrumental)
4. アマリリス(TV size)
-DVD-
1. アマリリス -Music Video-
2. 「MIX MEISEI STORY 〜二度目の夏、空の向こうへ〜」 Opening Non-Credit Movie
3. ブル散歩 -ニュージャージー編-



▪︎通常盤
価格:¥1200(税込)
品番:SECL-2918
-CD-
1. アマリリス
2. ghosted

Official HP:https://blueencount.jp/

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