スクリレックス、ペギー・グー、ボーイズ・ノイズらが音楽愛で彩った「ULTRA JAPAN 2023」
Rolling Stone Japan / 2023年9月21日 18時15分
2014年に初開催されて以来、都市型ダンスミュージックフェスをリードする存在であり続けてきたULTRA JAPANが、この2023年9月16日(土)、17日(日)の2日間、TOKYO ODAIBA ULTRA PARK(お台場ULTRA JAPAN特設会場)で開催された。パンデミック期の開催中止(2020年、2021年)を乗り越え2022年に再開、今回はMAIN STAGE、ULTRA PARK STAGEのみならず、ハウス・ミュージックやテクノの息遣いを伝えるRESISTANCEも4年ぶりに復活(2019年のRESISTANCEは単独イベントとして行われた)し、計3ステージ構成で大勢の来場者(今回は18歳以上が入場可)を熱狂させることになった。
【写真を見る】来場者のファッションスナップ
開催初日となる9月16日のMAIN STAGEには、DJスネイク、アクスウェル Λ イングロッソ、ハードウェル、そして初来日公演となったエンドレス・サマー(サム・フェルト+ジョナス・ブルー)といったビッグネームたちが登場。以下本稿では、9月17日の来日アーティストを中心にレポートを進めていきたい。無数のLEDパネルを組み合わせ、頭上中央にはULTRAの巨大ロゴを乗せたMAIN STAGEの豪快にして華やかな佇まいは、何度目の当たりにしても圧倒させられる。
東京拠点のDJ/プロデューサー・デュオであるBopCornが、宇多田ヒカル「First Love」〜ONE OK ROCK「Wherever You Are」〜スマッシュ・マウス「All Star」(元ボーカリストのスティーヴ・ハーウェルがつい先日他界した)というエモーショナルなトラック連打で締め括った後、MAIN STAGEには米コネチカット州出身のケニー・ビーツことケネス・ブルーム3世が登場。ヴィンス・ステイプルズや、英ロックバンドのアイドルズの作品プロデュースで名を上げ、昨年には初のソロAL『Louie』でも良質なヒップホップ・ビーツを披露していたのだが、フレディ・マーキュリーのコール&レスポンスで賑々しく幕を開けたDJはダブステップあり、ブレイクビーツあり、ダンスホールレゲエありといった、恐ろしくボーダーレスなミックスに。終盤にはヤー・ヤー・ヤーズ、ジュニア・シニア、ダフト・パンク、カニエ・ウェストといった、彼自身のリスニング遍歴を曝け出すようなトラック群で歌声を誘った。
脳髄から覚醒させるようなビキビキのジャーマン・エレクトロで、鋭角なバウンス感を生み出してゆくのはボーイズ・ノイズである。21世紀エレクトロの立役者の一人として今やベテランのような安心感さえ振りまいているが、今夏届けられたスクリレックスとの共作曲「Fine Day Anthem」も織り交ぜながら、その強靭なビートと刺激的なサウンドは衰えるところを知らない。ファイアーボールが吹き上がるステージを駆け抜け、最後にはカナダのシンガーソングライター、ファイストの美声が伝う「My Moon My Man」リミックスで深い余韻を残していった。
ボーイズ・ノイズ(©ULTRA JAPAN 2023)
ボーイズ・ノイズ(©ULTRA JAPAN 2023)
狂乱そのものをきっちりデザインし制御してみせる懐の深さ
日が沈んで涼しい風が吹き込む18時25分、MAIN STAGEエリアがみるみるうちに来場者で埋まってゆく。韓国出身のDJ/プロデューサーであるペギー・グーは、ファッション・アイコンとしても広く知られる人気者だ。とはいえ、名門レーベルも注目するその音楽性は、キャッチーで煌びやかなハウスを軸としつつ、研ぎ澄まされたビートの美意識を宿している。アーティストネーム「구(グー)」を意匠化したアーティストロゴがLEDを埋め尽くすさまも可愛らしく、音楽スタイルの流行に捉われない、徹底して自身の嗜好を貫き磨き上げる姿勢には惚れ惚れとさせられた。今年届けられたシングル曲「(It Goes Like )Nanana」も、見事オーディエンスの大合唱に。
ペギー・グー(©ULTRA JAPAN 2023)
ペギー・グー(©ULTRA JAPAN 2023)
さあ、この日のMAIN STAGEでアンカーを務めるのは、今年『Quest For Life』『Dont Get Too Close』という2作のアルバムを携え完全復活を果たしたスクリレックスだ。母を失うというこの上ない悲しみを体験し、一時は音楽活動を休止していた彼だが、見るからに精悍な顔つきで2015年以来となるULTRA JAPANのステージに帰還を果たした。美麗な旋律のイントロから「Leave Me Like This」へと持ち込み、腹に響くベース音をぶん回しながら「RATATA」を浴びせかける。頭上の巨大なULTRAロゴの真ん中にはスクリレックスのアーティストロゴが浮かび、フレッド・アゲインやフォー・テットと共作した「Baby again..」では、自ら卓上に乗り上がって視界一面のスマホのライト点灯を促す。
スクリレックス(©ULTRA JAPAN 2023)
スクリレックス(©ULTRA JAPAN 2023)
瞬く間に狂喜乱舞の光景を生み出し、今日へと至る自身のアンセム群を惜しげも無く連発するDJになったが、それはただ無軌道でアナーキーなスリルではなく、狂乱そのものをきっちりデザインし制御してみせる懐の深さを感じさせるものだった。激流の高速ダブステップと化すJack Ü「Where Are Ü Now」や、凶悪極まりないドロップへと叩き込む「Summit」、ケンドリック・ラマー「HUMBLE.」のリミックスや宇多田ヒカルとの「Face My Fears」と、クライマックスに向けて完璧なハイライトを構築してゆく手捌きの素晴らしさが、今回のスクリレックスのプレイには感じられたのである。
RESISTANCEのレジデントDJを務めてきたニック・ファンシウリのファンキーなテックハウス、アシッドハウスの広い裾野を描き出すようだったサシャ&ジョン・ディグウィードの名タッグ、そしてこの上なく質実剛健なロコ・ダイスと、ベテランDJたちが挙ってダンスミュージックの歴史と今を体感させるリレーも素晴らしかった。ただビッグアンセムで盛り上がるばかりではない。ミュージシャンたちが自ら見つめ直した音楽愛を、研鑽された技術で表現する。そんな個性が伝える現代的なダンスミュージックの広がりを実感した開催であった。次回ULTRA JAPAN開催(2024年9月14日、15日)も、早々にアナウンスされている。
サシャ&ジョン・ディグウィード(©ULTRA JAPAN 2023)
ロコ・ダイス(©ULTRA JAPAN 2023)
©ULTRA JAPAN 2023
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