オリヴィア・ロドリゴが語る『バービー』への共感、テイラー・スウィフトとの関係
Rolling Stone Japan / 2023年9月25日 20時16分
プロモーションのため初来日中のオリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)。世界中から熱い視線を注がれるなか、20歳の歌姫は2ndアルバム『GUTS』を通してまたひとつ大人になった。ローリングストーンUS版最新号のカバーストーリーを完全翻訳でお届けする。こちらは後編。
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オリヴィア・ロドリゴが大いに語る、20歳の現在地と『GUTS』のすべて
『バービー』への共感、テイラー・スウィフトとの関係
その翌日、私たちは「リトル・ドム」という、ロス・フェリズのイタリアンレストランで落ち合った。ロス・フェリズよりも、ブルックリンのキャロル・ガーデンズのほうがしっくりくるような、昔ながらの雰囲気の店だ。ロドリゴは、フリマアプリで買った赤いプレイドのショートワンピースに白い靴下を履き、黒いローファーを合わせている。「昨日は、いっぱいおしゃべりしたね。いろんなことについて考えた」と言った。
その日、ロドリゴはスヌーズ機能に頼らずに目を覚まし、友人で女優のベイリー・マディソンと一緒にビバリーヒルズのピラティススタジオに行っていた。「お気に入りのワークアウト方法なの。そんなに失敗することもないし、自分よりも年上の女性たちがいるピラティススタジオが大好き。いかにもセレブ向けって感じのピラティススタジオで知り合いにばったり会うのは最悪。そう考えただけで不安になる」
円形のブース席に通されると、ロドリゴはダイエットコーラを注文し、私に右側に座るようにと言った(ロドリゴは、生まれつき左耳に難聴を抱えている)。冗談で『素晴らしき哉、人生』(1946年)でジェームズ・スチュワートが演じた人物みたいだと言うと、この映画を見ていないと正直に認め、「自分でもわからないけど、1970年より前の映画が観られない」と言った。「脳がついていかないの。昔のハリウッド俳優って、どうしてあんな発音をするんだろうってずっと不思議だった。オードリー・ヘップバーンやケーリー・グラントの『ダーリン!』の言い方とか。現実世界の人は、あんなふうに言わないよね」
だが、1970年以降の映画は大好きだという。Letterboxdという映画好きのためのアプリのアカウントも持っている。先日、映画を2本観たそうだ。ひとつは父親と行った『オッペンハイマー』。もうひとつは、ニコラス・ケイジ主演の1983年の青春映画『ヴァレー・ガール』。「ニコラス・ケイジの初主演作なんだけど、不思議なくらいセクシーなの」と感想を言った。ケイジが義手のハンサムなパン職人を演じている『月の輝く夜に』(1988年)を勧めると、忘れないようにとスマホにメモし、「私の好きなタイプかも」と言った。
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グレタ・ガーウィグ監督の『バービー』にも感銘を受けたという。実際、数回にわたるインタビュー中も何度かこの映画に触れていた。「『バービー』の悪口を聞くたびにげんなりする。最高のフェミニズム映画なのに。私自身、女性に生まれて本当によかったと思う。女性を性の対象や悲劇のヒロインとして描かずに、ここまで女性にフォーカスした作品は、いままでなかったと思う。バービーというかっこいい女の子が主人公の、前向きでとてもいい作品だと思った」
『バービー』の話題になったので、デュア・リパについて質問すると(デュア・リパは『バービー』にカメオ出演している)、ロドリゴの表情がさらに明るくなった。「次のアルバムが本当に楽しみ。待ち遠しいな」と言い、2021年のグラミー賞での圧巻のパフォーマンスに言及した。『Future Nostalgia』(2020年)の2曲を歌い、ステージ上で早着替えを披露したときだ。「本当にすごかった。うっとりしながらTVを見ていたのを覚えてる。タイトでクリーンな、最高の演出だった。みんなの努力の賜物なんだろうな。私にはとてもじゃないけど無理」
ロドリゴは、ポップスターよりもシンガーソングライターでありたいと願っている。ロドリゴにとっての”アイドル”は誰かと尋ねると、子どものころにロードにインスパイアされたと明かした。「ラジオで『Royals』を聴いたときのことを覚えてる。『どんなものであれ、自分の感情は歌の題材になるんだ』って衝撃を受けた。失恋だけが歌の題材じゃないんだって思った。ロードは、郊外で生きる15歳の自分と喪失感を歌っていた」。ロードの歌は、当時カリフォルニア州にあるテメクラという小さな町で暮らしていた10歳のロドリゴの心に響いたのだった。
もうひとり、忘れてはいけない人物がいる。テイラー・スウィフトだ。ロドリゴとスウィフトの間には、いったい何があったのだろうか。駆け出しの頃、ロドリゴはいち早くスウィフトを「自身にとってのインスピレーション源」と称賛していた。「彼女に対して、いつも尊敬の気持ちでいっぱいです。彼女のすべてに感銘を受けたからこそ、シンガーソングライターとしてのいまの自分があると思っています」と、2021年3月に司会者のライアン・シークレストに語っていたほどだ。同年、ロドリゴとスウィフトは手紙を交わし、スウィフトが『Red』(2012年)制作中に身につけていたのとよく似た指輪がロドリゴにプレゼントされた。2021年5月、ふたりはブリット・アワードで対面を果たした。
だが、その年の夏にはふたりの関係が少し複雑になった。ロドリゴは、『SOUR』の収録曲「1 step forward, 3 steps back」(スウィフトの「New Years Day」の一部がサンプリングされている)のクレジットにスウィフトと共作者ジャック・アントノフの名前を入れ、その後に「déjà vu」が続く(スウィフトの「Cruel Summer」にインスパイアされている曲で、同曲の共作者セイント・ヴィンセントがクレジットに加えられている)。スウィフトが”盗作”だと迫ってクレジットを要求したかどうかは明らかになっていないが、一部のファンはふたりの間に確執があると憶測した。本誌のインタビュー企画でアラニス・モリセットと対談した際の「いじわるな女たち」に関する話題や、ロドリゴとスウィフトが目も合わさなかった2023年のグラミー賞、スウィフトが「Eras」ツアーの南米公演のオープニングアクトにロドリゴの”宿敵”サブリナ・カーペンターを起用したことなど、あらゆることがふたりの関係性を裏打ちしているかのようだった。ロドリゴのファンの中には、「vampire」が実はラブソングではなく、スウィフトとの確執を歌った曲であると思い込んでいる者もいるほどだ。
ミートボールと野菜の入ったスープを飲んでいるロドリゴにスウィフトとの件をぶつけてみると、ロドリゴは一瞬黙り、「私は、誰とももめてない」と静かに言った。「私は至って冷静。何事も自分で解決する。私が話すのは、母親と4人の友人だけ。この話は、もうこれで終わり」と言い、次のように補足した。「SNS上には陰謀論があふれてる。だから私は、宇宙人関連以外の陰謀論は見ないようにしてる」
2021年8月には、これも『SOUR』の収録曲である「good 4 you」のクレジットにパラモアが書き加えられた(訳注:「good 4 you」とパラモアのシングル「Misery Business」の類似性が認められたため)。これについても、ロドリゴは詳しく語らなかった。「あれは予想外だった。当時はすべてが混乱していて、私もまだ駆け出しで何もわからなかった」と言った。パラモアからクレジットを要求されたかどうかは不明だが、「この件にはあまり関わっていない。制作チーム同士の問題だから、私に訊かれても困る」という答えが返ってきただけだった。
アーティストとしての経験を積んだロドリゴなら、どのように”盗作疑惑”に対応するだろうか。若手アーティストにクレジットを求めるのか、それともエルヴィス・コステロのように気にしないのか(ロドリゴの「brutal」がコステロの「Pump It Up」に似ていると、盗作疑惑が持ち上がったことがあった)。「私個人としては、(クレジットを求めるようなことは)しないと思う。でも20〜30年後のことはわからない。私にできるのは、自分で曲を書き、自分でコントロールできることに集中すること」
私たちは、ミートボール入りのパスタとチキンのパルメザンチーズ焼きをシェアする。ロドリゴは、ウェイターが伝票を持ってくる前に2杯目のコーラを注文し「ローリングストーンさん、ごちそうさま!」と言った。
素顔のオリヴィア・ロドリゴ
ディナーを終え、私たちはロス・フェリズ界隈を散歩した。ロドリゴの少し後ろにタトゥーの入った強そうなボディガードがついている。ロドリゴだって、望んでボディガードをつけているわけではない。「ひとりで散歩するのが好き」と言った。「でも、いつもそんなことをしていると怒られるの。マネージャーに『ひとりでほっつき歩かないでください。必ず、誰かをつけるように』って言われる。ひとりきりで不安に思ったことはないんだけどね。でも、実際は危険なのかな。わかんない。でも、何よりも身の安全が大事だから、仕方ないよね」
ロドリゴは、ブランチスポットとして知られる店を指差した。「昔、ここで嫌な相手とデートしたことがある。自分が誰かにとって嫌なデート相手だったことってあるのかな。そうだったらいいな。大混乱をもたらすことが人生の目的なの」。アイスクリームショップに立ち寄り(ロドリゴは、コーンに乗ったハニーバニラを選んだ)、フランクリン通りを下る。そうしながら、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011年)の飛行機のシーンのセリフを言い合った(訳注:飛行機が怖い主人公のアニー[クリステン・ウィグ]が酔っ払ってパニックになるシーン)。
「私のスコッチあげる。この量なら十分効果があるはずだから」
「エコノミー席のほうが連帯感を感じられる」
「飛行機の翼の上に植民地時代の格好をした女の人がいる!」
私たちは、犯罪がテーマの人気ポッドキャスト番組に登場したロス・フェリズ殺人事件の現場を探すが、5キロ先だと知って断念した。そこで、未解決のロングアイランド連続殺人事件や先日マリブ・ビーチで発見されたドラム缶の中の遺体について話し、母親から聞いた怖い話を交換した。私の母は、ジョージア州サバンナのホテルで真夜中に花嫁の格好をした幽霊を見たことがあるという。ロドリゴの母親は、ロドリゴが幼少期を過ごしたウィスコンシン州の家で見知らぬ男性を見たそうだ。その男性は、地下室のほうに降りて行った。「10年間、誰にも話したことがなかった。おばあちゃんはこう言ったの。『家があるのはいいことだよ。男の人が地下室で亡くなったおかげで、この家を安く買えたんだから』って」とロドリゴは言った。
「ごめん! なんか死の話ばかりだね」と言い添えた。
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こうしたものに惹かれる理由は、ハリー・ポッター愛のせいだとロドリゴは考える。11歳の誕生日にホグワーツから入学許可証が届かなかったときはがっかりしたそうだ。そんなロドリゴは、魔法や魔術が大好きだ。小学生の頃は、放課後になると大きな釜に葉っぱや水を入れて「ハリー・ポッターごっこ」をして遊んでいた。
当時、ロドリゴの母親のジェニファーさんはその学校で教員をしていた。父親のクリスさんはセラピストだ(父親は、”セラピストの娘だから/彼を治してあげられるかも”という歌詞が含まれている「get him back!」をまだ聴いていない)。ロドリゴは、13歳のときにホームスクーリングをはじめた。『やりすぎ配信! ビザードバーク』に出演するため、ロサンゼルスに引っ越したのだ。「そのせいか、社会的スキルが欠けている気がする。私はひとりっ子で、勉強は家でしてたから、そういうスキルが昔から欠けてるのかもしれない」
当時のロドリゴがスターに夢中になった瞬間が一度あった。ロサンゼルスの映画館で女優のヴァネッサ・ハジェンズに会ったのだ。「本当にびっくりした。私も彼女も、フィリピン系なの(訳注:ロドリゴの父親はフィリピン人)。だから、共通点があってかっこいいと思ってた」。その後、ロドリゴはハジェンズと同じ「ハイスクール・ミュージカル」シリーズに抜擢された。ロドリゴは『SOUR』以降もこのシリーズに出演し続けた。先日収録を終えたばかりのシーズン3が最後となる。
さまざまなことを乗り越えたロドリゴだが、イタリアンレストランでの会話を含め、まだまだ消化できていないこともある。スティーヴィー・ニックスのように75歳になってもヒット曲を歌い続けるのか?と質問すると、「大きな問題を提起してくれた」と笑いながら言った。「でも、次回までに必ず答えを見つける。だからスケジュール調整、よろしくね」
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オリヴィア・ロドリゴが大いに語る、20歳の現在地と『GUTS』のすべて
From Rolling Stone US.
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オリヴィア・ロドリゴ日本公式HP:https://www.universal-music.co.jp/olivia-rodrigo/
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