ROTH BART BARON × Safeplanet 日本とタイ「孤高のバンド」が語り合うコラボの裏側
Rolling Stone Japan / 2023年9月26日 17時45分
10月18日に新作『8』のリリースを控えたROTH BART BARON(ロットバルトバロン)が、タイのバンド、Safeplanetをフィーチャーした先行シングル「BLOW」をリリースした。どちらもインディー・シーンで独自のサウンドを追求してきた孤高のバンドであり、他のバンドとコラボレートするのは初体験。両者はどんなところに惹かれあい、どのように曲を作り上げていったのか。現在、ベルリンと日本を往復しながら音楽活動をしているロットの三船雅也。そして、Safeplanetのメンバー、AことAlien(Vo, Gt)、Yii(Ba)、Doi(Dr)にリモートで話を聞いた。
ーロットとSafeplanetは、いつ頃から交流があったのでしょうか?
三船:2019年の朝霧JAMにSafeplanetが出る予定だったのが台風で中止になっちゃって。その前日、彼らが東京でライブをやったときに共演したのが最初ですね(10月11日、新代田FEVER)。
ーその時、お互いに相手のことは知っていました?
Yii:DoiがYouTubeでロットを見つけて好きになって、それでみんなで聴くようになったんです。
三船:僕は知らなくて、彼らのライブの対バンとして声をかけてもらった時にチェックしました。タイのバンドとは何度か共演したこともあるし、タイのフェスに出たこともあったんですけど、Safeplanetは僕が知っているバンドより下の世代なんですよね。彼らの音楽を聴いて、南国のバンドなのに南国っぽさを感じさせない美しいメロディーだなって思いました。自分たちが作っている音楽にも近い気がしたんですよね。
Doi:僕らもロットを聴いて自分たちと近いと感じました。ロットはいろんな音がとてもいい感じで組み合わさっている。そこが僕らと似ているなって。だから日本で共演できるのが楽しみだったんです。
ーロットと通じる多彩な音楽性は、Safeplanetにとって重要な要素ですか?
Yii:そうですね。僕らがバンドを始めた時、タイでそういうバンドはいませんでした。だから、自分たちがやったら面白いんじゃないかと思ったんです。今も意識的にいろんな音楽性を取り入れています。
三船:僕らがタイのフェスに参加した時(2016年のBIG MOUNTAIN MUSIC FESTIVAL)も、彼らのような音楽をやっているバンドはいなかったですね。。だから彼らの曲を聴いた時はオルタナティブに感じました。日本にも僕らのようなバンドは少なくて、ずっと孤高のバンドと言われていましたけど(笑)、そういうところも彼らと共通しているかもしれませんね。
ー孤高のバンド同士で共演だったんですね。ライブでの思い出は何かありますか?
三船:朝霧が中止になったこともあって、Safeplanetを見たいお客さんがなだれ込むようやってきて。お客さんが楽しそうに彼らの演奏を聴いている姿が印象的でしたね。
Doi:ロットのライブの音がすごく良かった。あと楽屋裏で好きな音楽の話をしたら、共通するバンドがいっぱい出てきて盛り上がりました。
三船:そう! すごく話があって楽しかったね。その時に強烈なインパクトがあったから、ずっと交流が続いたんだと思います。ライブの後もインスタで繋がって近況報告をしていたんです。それで「何か一緒にやりたいね」って言っていた矢先にパンデミックになってしまって。でも、僕らも彼らもパンデミックの間にすごく成長できたと思います。僕らはいろんな新しいチャレンジをして注目を集めるようになったし、彼らもタイでブレイクして。
Alien:僕らも同じように感じていました。だから今回のコラボレーションを通じて、お互いに成長したことを実感できたのは嬉しかったです。
「BLOW feat. Safeplanet」MVはSタイ・バンコクのスタジオで撮影。監督は両バンドともつながりのある映像作家・写真家のdomuが担当、Safeplanetの照明チームなどタイの映像クルーにより撮影された。
ーそのコラボレーションがロットの新作『8』に収録される「BLOW」ですね。三船くんはなぜ、この曲をSafeplanetとやりたいと思ったのでしょうか?
三船:曲ができた時、メロディーの感じが日本語っぽくないって思ったんです。ちょっとアジアっぽい気がしたんですよね。その時にふと、Safeplanetが持っている美しさとかサウンドスケープみたいなものが、この曲を彩ってくれるんじゃないかと思ったんです。そして、思えばロットは南の国に向き合ったことがないんじゃないかとも思って。そういう音楽に挑戦するなら、その相手にSafeplanetはぴったりなんじゃないかと思ったんです。
ーそれでデモテープを彼らに送った?
三船:そうです。そしたら、僕が書いたメロディーに対してAが新しいメロディーを書いてくれた。「BLOW」は2つのメロディーが交差する曲なんですけど、Aが書いたメロディーはいい意味で僕の予想を裏切るものでした。Safeplanetらしさを感じさせながらも新しさもあって、曲に新鮮な「ブロウ(息吹)」を吹き込んでくれました。
Alien:三船さんのメロディーを聴いたら自然にメロディーや歌詞が浮かんできたんです。それで僕の家にメンバーが集まって、いろいろ試しながら曲を作り上げていきました。
三船:曲のテーマみたいものは伝えてあったんですよね。こういうテーマでこういうメロディーなんだけど、あとは思いつくままにやってみない?って感じで投げたんです。僕が自宅(ベルリン)でエレキギターを弾いて歌ったデモを彼らに送って、タイでできたものを東京でレコーディングするという、音が何千キロもの旅をして生まれた曲なんです。
ー東京でのレコーディングは、どんな風に行われたのでしょうか?
三船:Safeplanetの3人がセッションして作り上げたアレンジを東京に持ってきてもらって、スタジオで一緒にレコーディングしました。その翌々日に予定されていた「BEAR NIGHT 4」(ロット主宰のライブイベント、今年はASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文 、a flood of circle・佐々木亮介 などが参加した)に彼らに出てもらうことになっていたんです。スタジオでのセッションでは、「こんなベースラインはどうだろう」とか「新たにギターソロのパートを作って入れてみたらどうだろう」とか、Aがいろんなアイデアを出してくれて、その場でいろいろ試しながらレコーディングするという和気あいあいとしたクリエイティブな現場でした。思えば、こんな風に別のバンドとレコーディングするのは初めてだったかもしれない。彼らは日本のスタジオは初めてだけど、物怖じしないで自分たちが良いと思うことにどんどんトライしていましたね。たった一日だけでしたけど、すごく楽しかったです。
Yii:海外でのレコーディングは初めてだったので、とても刺激的な体験でした。レコーディングエンジニアが2人もいることに驚いたりして。
Alien:そう。レコーディングの段取りとかタイとは違ったのも興味深かった。
三船:日本人は細かいよね(笑)。
Yii:タイも細かいところは細かいけど、日本では全員が自分の役割を意識して、それをテキパキとこなしているのがすごいなって思ったんです。
三船:Safeplanetの3人もバンド内で役割分担ができていて、Yiiはエンジニア兼アレンジャーみたいな感じで全体を見ていました。レコーディングのセッションの時、Aは僕に「いい歌だった?」「いい演奏だった?」って聞いてくるんですけど、全体のバランスについてはYiiに聞いていましたね。
Yii:僕らはこれまで誰かと一緒に曲を作ったり、コラボレートしたことがなかったんですけど、三船さんは経験豊富で勉強になりました。オタクで機材のことも詳しいし。
三船:Yiiにオタクって言われたくないよ(笑)。Yiiもすごい機材オタクなんです。Aはギターのオタクで変なギターばっかり買ってるし、僕らはオタクというところでも繋がってる(笑)。
ーオタク仲間(笑)。というか、好きなものに対して強いこだわりを持っているということですよね。Safeplanetは普段はどんな風に曲を作っているのでしょうか?
Alien:最初の段階では3人それぞれにアイデアを持ち寄って自由に試してみるんですけど、そのなかから一番バンドにあったものが見つかったら、メロディーは僕とDoi。MIDIやプログラミングはYiiが担当することが多いですね.
Yii:今回、ロットと一緒に曲を作ってみて、作り方も似ているなって思いました。だからすごくやりやすかったです。
インディー精神と音楽に対する純粋さ
ー「BEAR NIGHT 4」で、Safeplanetはフロントアクトを務めただけではなくロットと「BLOW」を共演しました。一緒に演奏してみていかがでした?
Yii:これまで日比谷の野音にどんなバンドが出ていたのか調べてみたら、X-JAPANとかすごいバンドが出ていることを知って緊張しました(笑)。演奏してみたら機材も音も良かったし、ロットとの共演ではバックアップしてくれたミュージシャンの演奏もうまくて楽しかったです。
三船:ライブで別のバンドと共演するのも、この曲を演奏するのも初めてだったので、いろんな気持ちが錯綜して頭の中はカオスでしたけど(笑)、すごく刺激的な演奏でしたね。
Alien:でも、リハーサルを1回やっただけで、あれだけの演奏ができるなんてすごいと思った。
三船:サポートしてくれるバンド・メンバーはみんな素晴らしいミュージシャンで、いつも彼らには助けられています。そういえば、バンド・メンバーで通し練習をやっていた時に、Safeplanetがアレンジしたデモテープが届いて、それをメンバー全員で聴いたんです。そしたら、「すごい! 全然違う曲になったね」ってみんなが驚いて。その時に「これは良い曲になるな」って確信しました。
Alien:よかった!(笑)。レコーディングの時、三船さんもメンバーもみんな情熱的に曲に取り組んでいて、その熱が伝わってきたんです。だから僕らもすごくやる気が出ました。
「BEAR NIGHT 4」(今年7月16日、東京・日比谷公園野外大音楽堂にて開催)のアフタームービー
ーロットもSafeplanetも、自分たちが自由に創作できる場所を作り上げてきたバンドだと思います。どちらもメジャーなバンドに負けないくらいに幅広い活動をしながら、デビュー以来インディーで活動を続けている。自分たちの手で何かを作りあげる、というインディー精神は大切にしていますか?
三船:日本だと、社会が理想にしているものに自分を合わせないと認められない。それを取っ払って、自分の音楽を鳴らすっていうミュージシャンは絶滅危惧種になっていて、口では言うけど実際にできている人はほとんどいない。そんななかで、僕らは同じことを考えている仲間を集めて、自分たちがやりたい音楽、やりたいことができる場所を作り上げてきた。それが結果的にインディーということになったんじゃないかなって思います。
Alien:僕たちは一度もレコード会社に所属したことがないんです。音楽のクオリティを最優先に考えているから、3人で物事を決めていきたい。クオリティがよければ、みんな聴いてくれると思うんですよね。これまでにレコード会社に入る機会もあったけど、レコード会社のクリエイティブ面のクオリティが信頼できないと難しくて、今まで信頼できるレコード会社と出会ってないんです。それに契約するとお金をいっぱい取られるし(笑)。
三船:確かに(笑)。メジャーにはメジャーの良いところもあるんだろうけど、インディーで良かったなって思える瞬間は、仲間と「BEAR NIGHT」みたいなイベントをやれた時とか、Safeplanetとこうやってコラボレートできた時ですね。それは企業から売れるために提案されたアイデアではなく、自分たちが作りたいってことを実現したわけだから。
「BEAR NIGHT 4」にて、ROTH BART BARON × Safeplanetの共演(Photo by Daiki Miura @shotby_dm)
Yii:ファンと一緒に企画した自主イベントを、日比谷の野音でやるなんてすごいです。ファンに愛されているなって思いました。
三船:PALACE(ロットがファンと作り上げたコミュニティ)のみんなと交流していると、みんな楽しいことをやりたいと思っていることがわかるんですよ。単純なことだけど、人は楽しいことをやれば嬉しい。でも、多くの人たちは、その単純なことを犠牲にして生きているんですよね。僕はそれが我慢できなくて社会から飛び出して音楽を作っている。それはSafeplanetも同じだと思うんですよね。
Doi:三船さんとバンド・メンバーはどんな大変な時でも、すごく楽しそうに仕事をやっている(笑)。それがとても印象的で、自分もそれくらい楽しみにながら仕事をやりたいなって思いました。
三船:Safeplanetとのコラボレートは本当に楽しかったよ! PALACEのプロジェクトも、アーティストとのコラボレートも、いろんな価値観や美意識に出会えるのが刺激的で、毎回いろんなものを受け取ることができるんです。
ー今回、Safeplanetからはどんなものを受け取りました?
三船:音楽に対する純粋さ、ピュアネスかな。彼らは常に音楽のことを考えているし、大きな目線で今何が必要なのか考えてる。この間、「BLOW」のミュージックビデオを撮りにタイに行った時、Aが「SafeplanetのTシャツを着ている人を見かけたら絶対話しかける」って言ってたんです。彼らは自分たちをサポートしてくれている。そのことに対するリスペクトを惜しまないって。それを聞いて電撃が走ったんです。そういう気持ちって、僕がPALACEでやっていることと近い。これからも、自分たちの活動を支えてくれる人たちへのリスペクトを大切にしなきゃなって改めて思いましたね。
ROTH BART BARON
「BLOW feat. Safeplanet」
配信:https://rothbartbaron.lnk.to/BLOW
ROTH BART BARON
『8』
2023年10月18日リリース
※LP / ZINE”BEAR MAG vol.3~PHOTO BOOK":11月8日(水)リリース
予約:https://rothbartbaron.lnk.to/8_RBB
ROTH BART BARON TOUR 2023-2024 『8』
2023年11月4日(土)宮城・仙台 darwin
2023年11月12日(日)京都・Club METRO
2023年11月18日(土)石川・金沢 DOUBLE
2023年11月19日(日)静岡・浜松 space-K
2023年11月21日(火)東京・下北沢 ADRIFT
2024年2月4日(日)愛知・今池 THE BOTTOM LINE
2024年2月11日(日)熊本・早川倉庫
2024年2月12日(祝・月)福岡 BEAT STATION
2024年2月18日(日)大阪・心斎橋 BIGCAT
2024年3月1日(金)北海道・札幌 cube garden
2024年3月2日(土)北海道・札幌 モエレ沼公園 ガラスのピラミッド
2024年3月3日(日)北海道・札幌 モエレ沼公園 ガラスのピラミッド *三船SOLO
2024年3月17日(日)東京・渋谷 Spotify O-EAST
ツアー詳細:https://linktr.ee/rothbart%20baron
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