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サム・ウィルクス&ジェイコブ・マンが語るデュオとしての哲学、ルイス・コールや長谷川白紙への共感

Rolling Stone Japan / 2023年10月5日 18時20分

Photo by Roman Koval

ベーシストのサム・ウィルクスとピアニストのジェイコブ・マンは、LAジャズ屈指の実験的ミュージシャンとして、ルイス・コールやサム・ゲンデルとの活動でも大きな存在感を放ってきた。YAMAHA DX7やRoland Juno-106といった日本産シンセサイザーの名機を駆使してクリエイティブなサウンドを作り上げた2022年の共演作『Perform the Compositions of Sam Wilkes & Jacob Mann』を引っ提げ、10月25日(水)東京、26日(木)大阪、29日(日)横浜のビルボードライブで来日公演を行う彼らに、お互いの関係性と音楽的ルーツを尋ねた。

※ビルボードライブ公演のチケットプレゼント実施中、詳細は記事末尾にて


左からジェイコブ・マン、サム・ウィルクス(Photo by Roman Koval)


―そもそも二人はどのように知り合って、どうして一緒に演ることになったんですか?

ジェイコブ:出会ったのはお互いに南カリフォルニア大学の音楽学校に通ってた時で、当時の僕はピアノ、サムはベースを勉強してた。最初は好きな音楽を通じて意気投合して、在学中に色んなバンドで一緒にプレイしたんだ。でも、本当の意味で友達になったのは一緒にノワーのツアーに参加したのがきっかけだった。ノワーのライブバンドでは世界中を周って、ホテルの部屋をシェアしたりして。その頃じゃないかな、一緒にプレイし始めたのは。

サムは昔からずっと(二人の演奏を)全て録音してるんだけど、アイデアを録音しては数年寝かせて、また録っては寝かせてを繰り返して、アルバムに取り組み始めた頃には10年来の友達みたいになっていた。共に色んなバンドとのツアーを経験したことで、二人に共通した音楽的言語が確立されたんだ。

そうこうしていたらサムのほうに、ロンドンのThe Jazz Cafeからデュオでの出演オファーが届いたので、「お互いの曲を少しずつやればいいよ」ということで受けることにしたんだ。そのギグに向けての準備をしていくうちに、新曲もたくさん出来上がっていった。当時のアイデアの多くが曲となって、『Perform the Compositions of Sam Wilkes & Jacob Mann』に収録されている。その後の数年間で、二人で作曲や編集を重ねて、2021年頃からアルバムとして仕上げていったんだ。

サム:もともと僕は在学中MD(音楽監督)になりたかったから、バンドを作るという立場にいることが多かったんだ。ジェイコブと初めて共演した時、腕がいいってことは瞬時にわかったから一曲参加してほしいとお願いして、2回目にはすでにスタイルやテイスト、音楽的才能、技能を含む全てにおいて絶対的に信頼できるって確信していたよ。そこから一緒にプレイする機会が増えていった。LAのクラブでジャムセッションをしたり、ノワーやルーファス・ウェインライトと共演したりね。

ちょうどその頃、ちょっとした話し合いになってね。今でもはっきり憶えてるよ。あるR&Bシンガーと共演した時、演奏後にブライアン・イーノの話になったんだ。そこで「俺たちさ、二人で一緒になんかやるべきじゃない?」って話になったんだ。ギグでの共演がデュオに繋がって、今度はLAでライブしようとなって、それも大成功して……という感じで、今のスタイルに至るまでにはかなりの時間を要したんだ。

そこからコロナ禍に入って、アルバムを作る計画が浮上した。パンデミックは同じ部屋で顔を合わせた環境で、二人の性格と友情にフィットしたプロセスで作業することを可能にしてくれた。プレッシャーもなく、純粋に楽しんで作ったことで『Perform the Compositions of〜』が生まれたんだ。



―これまでに特に研究してきたミュージシャンを教えてください。

ジェイコブ:僕にとって一番大きい存在はハービー・ハンコック。アコースティックからエレクトリックまで、彼が手がけてきた多種多様な音楽はどれも本物で、僕の音楽人生においてずっとインスピレーションを与えてくれている存在だよ。特に好きなアルバムは……すぐ思いつくのは『Sunlight』。あとは『Mr. Hands』『Fat Albert Rotunda』『Empyrean Isles』『Maiden Voyage』とかね。

サム:僕はとにかく音楽を聴くんだ。部屋を見てもらったらわかるけど、まるでレコード屋だよ。ベーシストに絞って答えるとレイ・ブラウン。長年ずっと研究してきたから。もちろん、他にもたくさんいるよ。ジェイムス・ジェマーソン、チャック・レイニーとかね。オスカー・ピーターソン・トリオの『Live from Chicago』は大好きなアルバムで、ベースがレイ・ブラウンで、ドラムがエド・シグペン。僕の中では一押しの作品だよ。あと、ソニー・ロリンズの『Way Out West』も素晴らしい。ドラムがシェリー・マンで、ベースはレイ・ブラウンだね。

あとは最近、アントニオ・カルロス・ジョビンに夢中で研究しているんだ。ジェイコブも同じように研究してた頃があるから、「ジョビンのアルバムで好きなのは?」って聞いたら、『Terra Brasilis』と言ってたよね。1980年にリリースされたジョビンのキャリア後期の作品だけど、クラウス・オガーマンが長期プロジェクトとして手がけた最後のアルバムで、とにかくアレンジが素晴らしいんだ。





―これまでに特に研究してきたコンポーザーは?

ジェイコブ:その質問には分けて答えたいと思う。一方がコンポーザー、もう一方がアレンジャーとオーケストレーターでね。例えばアレンジャーで何人か挙げるとネルソン・リドル、ヴィンス・メンドーザ、クラウス・オガーマンが好き。

コンポーザーだったら僕にとってもジョビンは大きな存在だね。あと、素晴らしい歌詞と曲とを掛け合わせるという点で言うと、スティーヴィー・ワンダーは達人だと思うよ。歌を形作るという意味でね。ジャズで言うとビル・エヴァンス。彼はマイルス・デイヴィスの最初のクインテットにも素晴らしい楽曲を多数提供したことで知られているよね。あと、作曲家のカテゴリーにもハービー・ハンコックを加えたいね。

サム:ジェイコブが挙げた名前には僕も同感。そこに大事な名前を付け加えるとすればギル・エヴァンスだね。僕らにとってアレンジャーとしての大きなインスピレーションだ。あとアレンジャーとして、個人的に大ファンなのはチャールズ・ステップニー、アリフ・マーディン、クインシー・ジョーンズ。彼らを研究することで、オーケストレーションやアレンジメントなど、曲が最高の作品になるよう貢献している姿を目にするのはすごく刺激になる。特にアリフ・マーディンは、最高のセッション・ミュージシャンたちを一同に集めて、彼らが本領発揮できる環境を整える素晴らしいコントラクターで、そのプロセスを学ぶだけですごく刺激になる。僕の人生に大きな影響を与えてくれた人物の一人だ。

作曲で言うと、僕はソングライターとかリリシストも大好きで、リリシストではジョニ・ミッチェルの大ファンだ。あとは、さっきも言ったようにジョビンだね。ミュージシャンとして彼の音楽を聴くということは、まるで無限に栄養を吸収しているような感覚なんだ。もう一人、最近また改めて研究しているのがチャーリー・パーカー。彼の作曲は僕に言わせるとすごくサイケデリックなんだよ。メロディーのセンスはなんというか、すごくパワフルで言葉では表現できない。僕はトラディショナルなジャズも勉強してきたし、数えきれないほどの楽曲を聴き込んできたけど、彼みたいな表現や作曲をするミュージシャンには出会ったことがないよ。あとはセロニアス・モンクもずっと研究してきた。


ルイス・コール、サム・ウィルクス、ジェイコブ・マンの共演パフォーマンス(2018年)

―ビートメイカー、トラックメイカー、プロデューサーだと誰が挙がりそうですか?

ジェイコブ:サムと僕が最初に意気投合したのはJ・ディラ、クエストラヴ、ディアンジェロ、いわゆるソウルクエリアンズのサウンドだったんだけど、2010年頃からLAに住むようになってからはフライング・ロータスやサンダーキャットといったブレインフィーダーの音楽をすごく聴くようになった。あとは僕らの友人である、ルイス・コールとジェネヴィーヴ・アルタディも。

サム:あの2人がどれだけ大切な存在かは語りきれないよ。あと、僕らにとって大切なプロデューサーといえばマッドリブだね。

ジェイコブ:ブライアン・イーノも僕たちにとって大きな存在だよね。曲作りにおいて一味違うひねりがあるんだ。雰囲気を創り出すスタイルというか。

サム:その流れでいうとダニエル・ラノワも加えたいな。こういう質問にパッと答えるのは難しいね。川の中に手を突っ込んで触れたもの全部を掴んでるみたいだから(笑)。要するに、僕たちに影響を与えたアーティストは数知れないってことだよ。

限界を超えるための哲学

―あなたたちの音楽は、即興がかなり大きな比重を占めるものだと思います。即興と作曲の関係についてはどう考えていますか?

ジェイコブ 大学時代に、僕はヴィンス・メンドーザ(ジャズ作曲家/編曲家、ビョークやジョニ・ミッチェルなどのオーケストレーションも手掛けている)に師事して作曲のレッスンを受けていたんだけど、初めて彼の家に行った時に聞かれたんだ、「ジャズにおける作曲と即興の違いはなんだ?」って。それで僕は、「即興はその場で作るもので、作曲は完璧にするために時間をかけて作り込むものですよね?」と答えた。そうしたらヴィンスに「違うよ、この二つは全く同じものだ。作曲家のように即興で演り、即興演奏家のように作曲すべきだ」と言われたのさ。この言葉に僕は「ちょっと待って、即興しているかのように作曲をするっていったい……?」って考え込んでしまった。でも、そこから(ヴィンスの答えを)「アイディアをすぐに却下しないで、とりあえず流れに任せて完成させてみて、出来上がった段階で初めて判断する」ことだと解釈することにした。そのやり方なら、沸き上がった創造力を遮断せずに済むんだよね。

僕とサムは音楽をそうやって捉えることにしているし、共作での作曲もこのアプローチで取り組んでいる。アルバムの曲の多くは「即興で生まれた種」からスタートして、それが様々な制作過程を経て、最終的にはより磨きがかかったものとして完成したわけだけど、元々は2人の即興から偶然生まれた「単なるひらめき」から始まったものばかりなんだよ。だから僕はヴィンスが言っていた通り、作曲と即興は同じだと思っている。

―ヴィンス・メンドーザからは、他にどんな影響を受けたのでしょうか?

ジェイコブ:彼からは作曲する際に既成概念にとらわれないで考えることを学んだ。曲を書く時に特定のサウンドを目指した書き方はしないようにも教えられたね。まずはそういう考えを捨てて、自分の頭に浮かんだことを書き留める、つまり自由で流れるような「即興的な作曲」をするよう言われたよ。彼の音楽を聴けばそれを感じ取ることができる。ヴィンスに師事する前は、どうやったらマイルスやハービーみたいな曲が書けるだろうって考えにとらわれていたんだ。でも、彼のおかげでそんな障壁が取り除かれて、自分自身のアイデアに意識を向けることができるようになった。



ジェイコブ・マン・ビッグバンドのパフォーマンス映像。サム・ウィルクスやルイス・コールも参加(2018年)

―2人とも楽器の選択やエフェクター、ペダル、ミックスなども含めて、音色や音響、テクスチャーへのこだわりが強いと思います。そのこだわりについて聞かせてください。

ジェイコブ:それはサム的な質問だね。

サム:楽器を演奏する者にとって、最も重要なのは音色とダイナミクスだと思う。でも、全ての楽器には限界がある。僕の場合でいうとベースという楽器の特性上の限界を超える方法として、エフェクトをかけることで時にはベースからシンセサイザーのようなサウンドを生み出したり、ギターとかキーボードのようなハーモニックな性能を引き出すことができることを発見したんだ。

エフェクトとかソニック(音響)が音楽の一部になっている時に生まれるトーンへの僕のこだわりは、まず第一に僕が純粋にサウンドを愛しているから。第二に自分の頭に浮かんだアイデアを実現したいんだけど、楽器自体の限界で出ない音域があったり、同時に弾くのが不可能な音符の数がある場合に、音楽的な必要性からその手助けをしてくれる手段として。そして、もうひとつは純粋にサウンドを体感するって意味で。

これはジョン・ケージを研究して始めた頃にわかったんだけど、環境音も韻律のないサウンドも、リズムを刻んだサウンド、あるいはトーンやピッチが確認できるサウンドも、どれも全て音楽なんだよね。それって僕にとってはすごく刺激的な考えなんだ。



―あらゆる「音」を音楽として捉えていると。

サム:だから、単にピッチやリズム、ハーモニーだけじゃなくて、僕にとってはソニックの要素も大切なんだ。そもそも楽器への触れ方一つをとっても、それによるエネルギーやダイナミクスがメロディーだけじゃなくて、曲自体や、その曲の全体的なフィーリングなどのあらゆる面でその曲に影響を与える。だから、それについてはベーシストとして自覚しているし、強く意識している。だから僕は演奏だけじゃなくて、ミックスやレコーディングの方法にも強い関心を持っているんだ。

僕は録音芸術、特に50年代〜80年代に録音されたレコードのサウンドに夢中なんだけど、その理由もそこにある。近年、録音されたアルバムを聴いても音響的に同じ感触が得られなかったことに僕は疑問を抱いていた。昔のアルバムがなんでそんなに素晴らしいのか、その理由は、録音の過程で素晴らしいサウンドに到達していたから、過度のミックスは不必要だったからだとわかったんだ。腕のいいミュージシャンを集めて個別にマイクを繋ぐか、そのまま直でうまく録ればいいんだよ。そうすることで、その部屋のエネルギーをしっかりととらえることができる。それが良いレコードの音なんだよね。

さっきも話したように、ジェイコブと一緒に音楽を作り始めた頃、自分が本当に目指しているのはプロのMD(音楽監督)だった。大学時代はベースを演奏することよりも、アレンジとかオーケストレーション、大小問わずアンサンブルのリハーサルの仕方を学ぶことに重きが置かれていた。自分はポップの世界で働くことになるだろうと思っていたからね。それで、アーティストの持っているビジョンを(演奏者に)伝達して、アルバムの音をライブで再現するために必要なものは何なのかを解明するため、いろんなスキルを身につけたんだ。その経験から、ソニックを学ぶことで、自分が好きなアレンジのもつサウンドには何が存在していて、それを自分が取り入れるには何が必要なのかを理解することにもなったし、どんなサウンドがうまく行って、どんなサウンドは失敗するのかに気づくうえで最高の学びになったんだよね。

―特に研究したエンジニアは?

サム:ビートルズのレコーディング・エンジニアだった、ジェフ・エメリックとケン・タウンゼントはすごく好きだよ。あとルディ・ヴァン・ゲルダー、彼は言うまでもなくブルーノートやインパルスのカタログを手がけたことで知られているよね。それと名前は知らないんだけど、『Kind Of Blue』が録音されたCBS 30th Street Studioのエンジニアもすごくいいよ。ざっと数人挙げたけど、いいリストじゃないかな。

シンセの可能性を引き出すために

―『Perform the Compositions of〜』ではDX7やJUNO-106がたっぷり使われています。即興演奏家として、こういったヴィンテージのシンセサイザーを使うことの意義を聞かせてください。

ジェイコブ:Junoは僕、DX7はサムがすべて弾いている。面白いのは何曲かで(鍵盤奏者の)僕がJunoでベースラインを弾いて、(ベーシストの)サムがキーボードのパートをDX7で弾いてるんだけど、色々アイデアを出し合いながらやってたらたまたまそうなったんだよね。



―お互いの役割が逆になってる曲があると。

ジェイコブ:Junoって僕にとって万能なんだけど、同時にすごくシンプルな楽器なんだ。デジタル・メニューはなくて、ノブとフェーダーだけで全てをコントロールするしね。僕自身はそのパラメーター内でうまくやっていると思うし、色々いじってると無限の可能性があることがわかる。僕はJunoをオーケストラのメンバーの音を再現するのに使うのが特に好きなんだ。例えば、「はいクラリネット、はいフルート、次はストリング・セクション」という風にね。ドラム・ループの一助となるパーカッションのサウンドを作るのも好きだ。即興と作曲で言うと、シンセサイザーを弾き始めた時、自分が扱ってるのはもはやメロディーやハーモニー、リズムだけじゃないってことに気づいた。向き合ってるのは自分が出すサウンドの実際のソニックだったんだ。使ってるパッチそれぞれは、その瞬間に色んなタイプの作曲や即興にひらめきを与えてくれる。それによって自分の固定観念に縛られずに新たな領域を模索する手助けをしてくれるんだ。

サム:僕の周りで、ジェイコブのように自分の楽器を深く理解している人はほとんどいない。彼がJunoから引き出す無限のカラー・パレットだけで音楽を作っていくのは本当に驚くべき光景だよ。

一方で、僕が使っているYamaha DX7はすごく複雑で、FMシンセシス(FM合成)によって無限の音色を合成できるんだけど、実はマニュアルをちゃんと全部読んでないんだ。コロナのパンデミック中に読破しようとはしたんだけどね。僕が持ってるのはダニー・エルフマンが使ってたDX7で、Craigslistで買ったんだけど、最高にクールなサウンドを出すことができる。それに、僕の師匠パトリース・ラッシェンがくれた80年代のカートリッジがあるから、おもちゃを与えられた子供みたいに色んなサウンドを試すことができるんだ。

それぞれ聴き比べると全然違うんだけど、DX7はすごく滑らかでJunoでは出せないハーモニックでソニック(音響的)なコンテンツを提供してくれるからいい組み合わせになる。逆にDX7にはJunoのようなサウンドは出せないから、僕たちは音響的にも協働作業ができるんだ。

―ちなみに、パトリース・ラッシェンからはどんなことを学びましたか?

サム:彼女からは多くを学んだよ。彼女はいつも「自分の偉大さのレベルは、どれだけ準備するかで決まる」と言っていた。その格言は僕にとって音楽に関してはもちろん、人生についての基礎にもなっている。あとはアレンジやレコーディングのこと、仲間やコラボレーターたちとのプロとしてのコミュニケーションの取り方も学んだ。彼女の作品を聴くだけでも多くを学んだよ。ファンキーでかっこいいんだ。



―続けてサムに質問ですが、様々な楽器を演奏するあなたにとって、エレクトリック・ベースはどんな役割を担っている楽器ですか?

サム:自分で作曲を始めた頃、僕がワクワクしたのはベースでは出せないサウンドだった。シンセサイザーにどっぷりハマっていて、特にキーボードで作曲するのに夢中だった。コードにすごくこだわっていて、2年くらいそうやって音楽を作ってたんだけど、その間にベースと距離を置いたことで、よりクリエイティブになることが出来た。というのも、ベースに関してはかなりの時間を練習に費やしてきたわけだけど、その過程で音楽のことだけを考えるというより、テクニックに意識が行ってしまっていたんだ。一方で、キーボードを使って作曲することで、シンセとかサンプラーでいい感じのソニックに到達できると、それは言葉にできないほどエキサイティングなことだった。だから僕の最初のアルバム『Wilkes』にはエレクトリックベースはほとんど登場しない。このアルバムのベース・パートのほとんどはMoogを使ってる。

でもギグとなると、演奏したいのはベースなんだよね。そこから、どうやったらこの楽器で自分の求めてるサウンドを出すことができるんだろうって考えるようになった。ノワーとの共演でシンセ・ベースを導入したこともあったけど、サム・ゲンデルと共演し始めた時に、彼の伴奏は自分一人でできることに気づいたんだ。それでペダルをどんどん増やしたりすることで、僕の中のベース・プレイヤーとしての魂が自分のなかで大きな割合を占めるようになった。

今は自分の中での位置付けがまとまった気がする。ベースと強い繋がりを感じるし、練習もすごく楽しくて、以前のようにテクニックだけじゃなくて音楽を感じることができる。昔はもどかしくなって他の楽器に気移りしたりもしたけど、そんな時期を経て、今では共同体という感じだね。



―お二人の作曲に映画音楽やゲーム音楽の影響はありますか?

ジェイコブ:うん。二人ともジョン・ウィリアムス(スターウォーズなどで知られる映画音楽の巨匠)は好きだね。伝説のコンポーザーで、指折りのメロディーメイカーだと思う。あと、ジブリ映画の音楽を手がけた久石譲、彼の音楽も素晴らしいよね。

サム:僕は安藤浩和の『大乱闘スマッシュブラザーズ』のサントラが大好き。めちゃくちゃファンキーで、特にオープニング・メニューのシンセ・ベースがすごいんだ。あと、マーク・マザーズボウもいいね。彼はディーヴォのメンバーなんだけど、映画音楽の優れたコンポーザーでもあるし、ゲーム音楽も手掛けている。彼が作った『クラッシュ・バンディクー』の音楽も好きだな。あとは『ロード・オブ・ザ・リング』も大好きで、その音楽を担当したハワード・ショアも素晴らしいね。

―サムは長谷川白紙のBrainfeeder第1弾シングル「口の花火」にも参加していますよね。そこでの演奏について教えてください。

サム:初めて聴いた時、「うわ、すごい!」って思った。依頼が来たのはツアー中で、最初の3/4だけ聴いたんだけど、これはいいものができるぞって思った。すごく楽しみだったよ、今まで聴いたことないタイプのサウンドだったからね。白紙はハーモニーも音響的にもすごくユニークな才能を持っている。それから準備し始めて、残りの1/4を聴いたら、これがメチャクチャ複雑で、予想外だったからちょっとパニクって、演奏できるか不安になったよ(笑)。

物凄く複雑な音楽なんだけど、それなのにすごく美しくて、自然な流れを持っていて全ての動きが音楽的。そして、覚える過程でメトリック・モジュレーション(元のテンポを変えることなく、違うスピードで演奏しているように聞こえる技法)がかなり使われていることに気づいて、「これはすごいな!」って思った。

レコーディングはZoomでやったんだけど、かなり楽しかったよ。自分のベースラインを書くとき、もともとの曲調に忠実かつシンプルに演奏するバージョンと、それから僕のクリエイティビティが存分に発揮されたバージョンが浮かんだ。だから、僕のベース・パートは2つあって、それらがほぼ同時に頭から最後まで入っている。白紙の曲を覚えることでミュージシャンとして腕が上がった気がするよ(笑)。



―今度、来日公演がありますが、改めて二人でやりたい音楽を言語化すると、どういうものになりそうですか?

ジェイコブ:リミットレス。

サム:シンフォニック。

―日本でのライブはどんなものになりそうですか?

ジェイコブ:カッコイイ。

サム:タイトなアレンジ、即興。鍋とかフライパンも使うかもしれない。

―(笑)ちなみに、渋谷にあるTangleっていうバーを憶えていますか?

サム:Oh my god! お気に入りのバーのひとつだよ。オーナーは2人ともすごくいい人たちなんだ。自分たちでDJをやってて最高。日本に行くのを楽しみにしているよ。(日本語で)ありがとうございます、どうぞよろしく。


サム・ウィルクス&ジェイコブ・マンのライブ映像


サム・ウィルクス&ジェイコブ・マン来日公演
2023年10月25日(水)ビルボードライブ東京
開場17:00 開演18:00 / 開場20:00 開演21:00
サービスエリア¥7,900-
カジュアルエリア¥7,400-(1ドリンク付)
▶️詳細・購入はこちら

2023年10月26日(木)ビルボードライブ大阪
開場17:00 開演18:00 / 開場20:00 開演21:00
サービスエリア¥7,900-
カジュアルエリア¥7,400-(1ドリンク付)
▶️詳細・購入はこちら

2023年10月29日(日)ビルボードライブ横浜
開場15:30 開演16:30 / 開場18:30 開演19:30
サービスエリア¥7,900-
カジュアルエリア¥7,400-(1ドリンク付)
▶️詳細・購入はこちら


【チケットプレゼント】
サム・ウィルクス&ジェイコブ・マン

10月26日(木)にビルボードライブ大阪、10月29日(日)にビルボードライブ横浜で開催される来日公演の1st / 2nd Stageに、Rolling Stone Japan読者2組4名様ずつご招待します。

【応募方法】
1)Twitterで「@rollingstonejp」と「@billboardlive_o」(大阪)「@billboardlive_y」(横浜)をフォロー
2)ご自身のアカウントで、下掲のツイートをリポスト

【〆切】
2023年10月12日(木)
※当選者には応募〆切後、「@billboardlive_o」「@billboardlive_y」より後日DMでご案内の連絡をいたします。

【チケットプレゼント横浜】
サム・ウィルクス&ジェイコブ・マン

10/29(日)ビルボードライブ横浜
1st/2nd 2組4名様ずつご招待

@rollingstonejp @billboardlive_y をフォロー
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▼詳細は以下リンク先の記事末尾にてhttps://t.co/qbDloZCgDS — Rolling Stone Japan (@rollingstonejp) October 6, 2023

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