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レックス・オレンジ・カウンティ、爆発的な合唱に包まれた1夜限りの来日公演を総括

Rolling Stone Japan / 2023年10月11日 17時0分

Photo by Ryo Mitamura

日中はまだまだ暑いが、半袖だと夜風が少し肌寒く感じる10月5日の木曜日。レックス・オレンジ・カウンティ(Rex Orange County、以下ROC)ことアレックス・オコナーの5年ぶりとなる来日公演が東京・豊洲PITで行われた。3年前に予定されていた単独での来日公演はパンデミックによりキャンセル。今回は2018年のサマーソニック以来の来日である。

【ライブ写真まとめ】レックス・オレンジ・カウンティ来日公演(全10点)

今回のツアーでサポートアクトに抜擢されたのはグレントペレス(Grentperez)というシドニーのシンガーソングライター。2001年生まれのフィリピン系オーストラリア人で、近年その抜群のポップセンスで人気を集めている。当日はスリーピースのバンド編成で開演時間ぴったりに登場。日本を訪れたのは初めてだというグレントペレスだが、オーディエンスにROCの名前をコールさせたり、スマホのライトをつけさせたり、なぜか深呼吸させたりと、相互にやり取りしながらユーモアたっぷりのハートフルなステージを披露した。人懐っこいメロディに陽気でキュートなキャラクター。21歳の時点でここまで自然体で人々を楽しませることが出来るのは並大抵のことではないし、確実にファンを増やしたに違いない。


Photo by Ryo Mitamura

グレントペレスの堂々たるパフォーマンスから30分後、待ちきれないオーディエンスから「アレックス! アレックス!」というコールが何度か自然発生したのち、遂にROCが登場。1曲目は2015年の1stアルバム『Bcos U Will Never B Free』の冒頭を飾る「Rex (Intro)」だ。当時16歳のROCが自分らしくありたくても、その自分とは一体何なのかが分からずにいるという出口のない複雑な感情を歌った曲である。月と太陽を模したキャラクターが大きく描かれた幕が上がると、サックス、ドラム、ベース、ギターのバンドメンバー4名が現れ、性急なエイトビートの上でベースが唸りを上げる。『Apricot Princess』(2017年)収録の名曲”「Television / So Far So Good」だ。明らかに会場のボルテージが上がり、破裂せんばかりの歓声と合唱が巻き起こる。ROCが「こんにちは!」と日本語で挨拶をし、続けて『Pony』(2019年)収録の「10/10」へ。強烈に低音が増幅されたキックが鳴り響き、ライブでしか味わえない大震動に身を任せる。続いて最新作『WHO CARES?』(2022年)からミドルテンポの「AMAZING」が繰り出された。4曲目の時点でこれまでの4枚全てのスタジオアルバムから1曲ずつ演奏するという、キャリアを総括するような内容だ。

ROCが「みんなこの曲は知ってるかな?」と尋ねると、アルバム未収録の「Sunflower」を歌い始める。イントロだけでフロアは爆発的な悲鳴に包まれ大合唱が起こっていたのは、いくら観客に外国人が多かったとはいえ、衝撃的な光景だった。他にも「Uno」や「Edition」などのアルバム未収録曲でもオーディエンスの盛り上がりは衰えることがない。「THE SHADE」でのコールアンドレスポンスや、「4 Seasons」では歌詞の「LA」を「Tokyo」に言い換えるなど、ROCもご満悦の様子だ。


Photo by Ryo Mitamura


Photo by Ryo Mitamura

幕が下りてバンドが一旦隠れると、ここからはROCによるソロでの弾き語りコーナー。ピアノの伴奏のみで披露された「Always」は、オーディエンスは自然とスマホでフロアをライトアップし、親密な空間を演出する。「Happiness」や「Untitled」といった『Apricot Princess』収録のドリーミーな人気曲でゆるいムードを保ち、「Corduroy Dreams」では口笛も吹きつつ、弾き語りコーナーを終える。簡素なセットだからこそ抜群の安定感を誇るROCの声の輪郭が際立つ幕が上がるとバンドセットの再開である。「全てのエネルギーを出しきれ!」と煽り、最新作のダンサブルなリードシングル「KEEP IT UP」でオーディエンスをダンスフロアに連れていく。ステージにはいつの間にか6つものミラーボールが煌々と輝いている。「まだまだいけるよね!」とさらに煽って突入した「IF YOU WANT IT」では全員がジャンプしてフロアを揺らす。その勢いのまま演奏された「Never Enough」や「Best Friend」は、混乱しきって収拾のつかない心情をぶつけた曲である。多くの若いファンがROCに共感を寄せる理由の一端が見えるパフォーマンスだった。ベニー・シングスとのコラボ曲「Loving Is Easy」ではステージが虹色の照明に彩られ、続く「Its Not the Same Anymore」で大団円を迎える。しかしもちろんこの日のオーディエンスは黙っちゃいない。「ワンモアソング!」という大歓声に応えてROCは華麗に再登場。最後にしんみりと「Pluto Projector」を歌い、また日本に戻ってくることを宣言して一夜限りの特別なショーは幕を閉じた。


Photo by Ryo Mitamura


Photo by Ryo Mitamura

この日最もマジカルな瞬間だったのは「Best Friend」の後半部だったと、会場にいた人々は口を揃えるに違いない。曲の途中で演奏を一時停止し、ここにいる人々の記憶の中にしか存在しない光景を作り出すためにオーディエンスに携帯をポケットにしまうよう呼びかけたのだ。こうして実現した光が充満した空間で、目の前の音楽だけに没頭する。かつては当たり前だったはずのその体験は筆舌に尽くしがたいものがあった。

帰りに周囲を見回すと、多様なバックグラウンドを持った人々が集まっていたのだなと改めて感じた。終演後にBGMとして流れるSZAの「Kill Bill」を口ずさむ声があちこちから聞こえてきたのも新鮮な感覚だった。ステージをバックに記念撮影する若者グループの多くは英語以外の外国語を話すアジア系の人々だったし、欧米圏の白人らしき人々の他にもヒジャブを被った女性も複数見かけた。この日、ROCは一流のエンターテイナーとして見たことのない景色を何度も見せてくれた。そしてそれはこの一夜限りのオーディエンスと共に作り出した景色でもあるのだ。


Photo by Ryo Mitamura


〈セットリスト〉

1. Rex (Intro)
2. Television/So Far So Good
3. 10/10
4. AMAZING
5. Sunflower
6. Face to Face
7. Uno
8. Edition
9. THE SHADE
10. 4 Seasons
11. Always
12. Happiness
13. Untitled
14. Corduroy Dreams
15. KEEP IT UP
16. IF YOU WANT IT
17. Never Enough
18. Best Friend
19. Loving Is Easy
20. It's Not the Same Anymore
21. Pluto Projector

セトリプレイリスト:https://sonymusicjapan.lnk.to/tokyosetlistRS

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