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麻薬中毒、性的暴行、SMプレイ、カニエの元カノが暴露した波乱万丈な日々

Rolling Stone Japan / 2023年10月23日 6時40分

Photographs by Richie Shazam

女優でモデルのジュリア・フォックスが、真の姿を暴いた最新自叙伝『Down the Drain』を上梓した。同書を軸に彼女の人生について振り返る。

【写真を見る】SM女王として人気を集めた、ほぼ裸のジュリア・フォックス

この日筆者はジュリア・ロバーツの同伴役だった――少なくともそんな雰囲気だった。場所はクリントンヒルズ、ブルックリン・クイーンズ高速道路の高架下にひっそり佇むスパ「Body by Brooklyn」。薄暗いVIPルームで、2人ともふわふわのパイル地のバスローブを着ていた。泡風呂にはバラの花びらがこれでもかと浮かべられているが、おそらく入ることはないだろう。待ち合わせから1分半ほどが経過し、いざマッサージを受けようという段になって、彼女は私に水着のトップスを脱ぐようしぐさで示した。

「ちょっとあなた、それは脱がなきゃだめよ」。極左ポッドキャストの司会者を思わせる抑揚のない低いトーンにドリュー・バリモアのような南カリフォルニア系の陽気をにじませて、母音を伸ばす独特の話し方で彼女は言った。「水着の上から背中をさすってもらうつもり?」。

確かにその通り。私はワンピースの水着を着ていた。フォックスに寛いでほしかった――というのもあるが、彼女がカンヌでガラス製の透明ビスチエを着用していたのを見たばかりだったのと、自分が産後1年経っていないというのもあり、彼女の前でボディラインをさらすのは自虐行為だと思ったのだ。私の配慮に彼女は感激し、理解を示してくれた。「あなたに最高のマッサージ体験をしてもらいたいのよ」と彼女は言った。

最近のフォックスには、休息や回復もひと苦労だ。彼女は様々な顔を持つ。モデルであり女優であり、(例の拡散動画によれば)映画『アンカット・ダイヤモンド』のジョッシュ・サフディ監督のミューズであり、インフルエンサー。世界的有名なラッパー兼ユダヤ人差別主義者の愛人として、Carboneレストランに足しげく通っていたこともある。そして2歳半の息子を持つ母親で、このあとも託児所にヴァレンティノ君をお迎えに行く。待ち合わせた時も、また違う顔で登場した――ディーゼルのキャップに、フリンジのついた白いショートパンツとDsquared2のストーン付フラットシューズ、3人の中東女子ボディビルダーの写真入りTシャツといういで立ちで、髪は鮮やかなダークレッドに染めていた(とんでもなくイカしてる。いや、実際フォックスは何を着てもお似合いだ)。

10月、フォックスはさらに別の顔を持つことになる。自叙伝『Down the Drain』の筆者としての顔だ。春巻とパッタイを囲みながらフォックスから聞いた話では、息子のヴァレンティノ君が週に2日、元恋人のピーター・アルテミエフと面会する「嵐の状態」で書いた本だそうだ。子どものころは作家になるのが夢だったそうだが、中学の時に英語教師から作文を読み上げられ、クラスメートにからかわれたのをきっかけに断念した。「自分の気持ちを人に話しちゃだめ、まわりの評判はきっとよくないから」と、本人は当時の心境を振り返る。「あの時ダメ出しだされたせいか、私の中で封印したの」。

『Down the Drain』を読むと――行く先々でフォックスがどんな話題でも会話に加わるのを見ているせいか――気持ちを表に出したがらなかった時期があるとは想像しがたい。彼女は散らかったアパートをTikTokで紹介したり、麻薬中毒や売春の過去を公然と口にしたり、Interview Magazine誌で前述のカニエ・ウェストとロマンスを記事にしたりと(もっとも自叙伝の中にも書かれている通り、記事は見かけとは裏腹に暴露とは程遠かった)、いわば暴露の女王だ。

「真実に対処できないのは、自分の責任」だと彼女は言う。この点、『Down the Drain』は期待を裏切らない。麻薬の過剰摂取、歴代のヤク中恋人との虐待的な関係、流産、性的暴行、育児放棄、意地悪なライバル女王のロッカーに排便したことなど(厳密にはロッカーで排便したわけではなく、トイレでいたしたブツを掬い取った)、ぞっとするような話が盛りだくさんだ。

だが実際のところ、世間で知られているフォックスのイメージは、『Down the Drain』の人物とはまるで別人だ。コンドームを模したチューブトップ、著名人との浮名、物憂げな瞳――これらは鎧であることをフォックスの自叙伝は明らかにしている。世間(大半は男性)がつい自らの欲望を投影してしまう若さと色気と美貌を備えた女性が、そうした連中に抗うためのひとつの術なのだ。

「パフォーマンスです」と言うのは、長年の親友でフォックスのスタイリストを務めるブリアナ・アンダロア氏だ。「子どもを養わなきゃいけないんですよ? 子どもに住む家を与えてやらなきゃいけない。自分がやるべきことをやる、それが私たちのメンタリティです。人生ずっとそうでした。サバイバルのメンタリティです」

フォックスはニューヨークシティの代名詞的存在なので、ニューヨーク以外の場所で暮らしている姿は想像がつかない。雑草がはびこるこの街で、彼女はいわば希少な蘭だ(たとえお尻の部分に穴が空いたラテックスのカウボーイパンツを履いた希少種だとしても)。だが実はイタリア生まれで、6歳まで母親と祖父の元で暮らしていた。その後ニューヨークに移り住み、風来坊の父親と暮らした。



「男たちに好かれて、とことん甘やかされたかった。代償がついて回ろうと気にしなかった」

フォックスは幼少期について、邪魔者扱いされてほったらかし状態だったと『Down the Drain』で書いている。祖父の家でTVを見ながら砂糖をライターであぶって飴を作ったり、父親が仕事でいないときには自室にこもり、猫のトイレで用を足していた。「間違いなくめちゃくちゃな子ども時代だった」と本人。「でも今は自分も親になって、前より理解できるようになった。父が向いてなかった部分とかね。父は自分が正しいと思ってたことをしてただけなのよ」。弟とイタリアで暮らす母親にはそこまで寛容ではない。「母はものすごく神経質で、ものすごく冷たい人。(親になってからは)なんでも母とは真逆のことをするようにしてる」。

親元を離れると、フォックスは誰からも指図されずに成長した。アッパーイーストサイドの高級百貨店で万引きし、中学生で早くも麻薬やセックスの味を覚えた。

『Down the Drain』によれば、フォックスは物心ついたときから性的対象として見られていたそうだ。11歳の時、クスリでハイになって26歳の男性といちゃついた。学校の廊下を歩けば上級生の男子から身体を触られ、いいケツだと褒められるのが自慢の種だった。「私たちにとっては生きのびることがすべて」の生活だったとアンダロア氏も言う。「ただ腕を組んで、いつも一緒でした。言葉も交わすことなく、視線をかわすだけで良かった。悪だくみとイカサマで絆を深めあっていました」。

『Down the Drain』はいろいろな意味で、対象化をテーマにしている。そしてそれに伴う精神的代償と、反抗と妥協を繰り返しながら世間を渡り歩こうとするフォックスの苦労。「私はずっと『かまってちゃん』だったのね」と本人は言う。男性からの承認欲求に飢えた女性のことだ。「イケてる美人になりたかった。男たちに好かれて、とことん甘やかされたかった。代償がついて回っても気にしなかった。(代償として)自分をたくさん否定し、自分にたくさん嘘をつくことになったけど」。

すぐにフォックスは、美貌がたくさんの可能性の扉を開けてくれる一方で――「おかげでいろんなクラブに出入りできました」とアンダロア氏も言う――暗黒面に落ちる可能性があることも学んだ。14歳の時、彼女は初めて大恋愛を経験する。本の中では「エース」と呼ばれる麻薬ディーラーは精神的にも肉体的にも虐待男で、彼女の跡を付け回し、脅迫状を送り付けた。当時フォックスと同居していたアンダロア氏も痛ましい関係の目撃者で、その時の影響が後遺症として尾を引いていたという。「そういうトラウマは、その場ではすぐに対処できないんです」とアンダロア氏は言う。「トラウマには波がある。今日、明日、1か月後は大丈夫でも、いつトラウマに襲われて影響を受けるか分からない」。


DRESS BYПОЛИНА МИЛАЕВ

当時フォックスは虐待を自分のせいにしていた。「あの時のことを思うとものすごく恥ずかしい」と本人。「女性が虐待の状況におかれると、たいがいはこう。『あんな風になるまでほっといたなんて、自分はバカじゃない?』って。多分そこが一番辛いかもね、ずっと頭から追いやってきた傷を再び掘り起こさなきゃいけないんだから」。最終的に、彼女はストレスで精神病院に入院した。

フォックスが昨年、世間から誤解された有名女優アンバー・ハードの支援に回ったのも、そうしたエースとの経験があったからだ。当時他のセレブは誰一人彼女の肩を持とうとしなかった。慌てた知人はやめておけと電話したが、フォックスは居ても立ってもいられずハードを擁護した。「友人には『いつかきっと流れが変わるわ』と言った」と本人。「そうなのよ、私は自分が正しいってピンときて確信したら、他人が何と言おうと気にしないの」。

10代も後半に差し掛かると、フォックスはSMの女王としてキャリアをスタートした。自叙伝によれば、挿入の必要がなく、「男嫌いの経験」もあったので、自分に向いていると感じたそうだ(彼女はじょうごを使うという斬新なアイデアも考案した。潔癖症の読者はこの部分を読み飛ばしていただきたい)。「どのみちモノとして扱われるんだもの」と彼女は当時の心境を振り返る。「だったらそれを利用して、自分のものにした方がいいじゃない?」。

フォックスはSM女王の仕事を気に入っていた。何年もセクシュアリティを利用された末に、それを武器にして金を稼ぐ術を見つけたのだ。「自分はクズだ、何の価値もないっていう考えに陥っていた。周りから『君はきれいだよ、最高だよ』って言われ続けても、私の耳に入るのはお金という言葉だけ。誰より依頼が殺到するようになって、顧客の数も一番になった。数字として、目に見えるようになった。それでやっと信じるようになったの」と本人。「自尊心を取り戻すのにすごく役に立ったわ」。

彼女がこれほど成功した理由は一目瞭然だ。フォックスの人柄は温厚だが驕ることなく、物腰も豊かだが鼻につくところもない。それと同時に高尚な雰囲気も漂う。めったに笑わず、自分の時間を費やすのにふさわしい相手かどうかを見極めようとするかのように、青い瞳で瞬きもせずにじっと見つめる。「内心はすごく温かみがあって、優しくて、愛情を惜しみなく注ぐ人です」とアンダロア氏。「でも外見はすごく激しく、冷酷ですよね」。こうした部分が、ある種の男性にとっては征服欲をかき立てられ、たまらなく魅力的に映るのだろう。彼女にしてみれば必要にかられて身に着けた資質だ。

「いつもそんな風に直感が働くの。よくあるのよ、『なんて悪人かしら』と思って、友だちは違う意見でも、後々になってやっぱり悪人だったって分かって、『だから言ったじゃない』っていうことが結構ある」と本人。「都会で暮らしていると自分1人だから、ある意味余計に目を光らせなきゃいけない。人の顔色を窺って、行間を読んで、裏の真意を汲み取らなきゃいけないの」。

20代でフォックスはダウンタウンのパーティの常連となり、当時付き合っていた恋人から金銭的支援を受けて、アンダロア氏とファッションブランドを運営していた時期もあった。ちなみにその恋人はSM女王時代に知り合った裕福な年配の男性で、自叙伝ではアントワンという名で登場する。フォックスいわく、ものすごくストレスを感じた時期だった――自分や友人の生活が恋人との関係にかかっていたからというのもあるが、アントワンから「プペ(フランス語で「お人形」の意味)」と呼ばれ、彼が求める役を演じることに精神的に疲れたからだ。

えてして年配の男性は、「若くて自由奔放、快活で、冒険好きで、魅力的で、若さにあふれ、エネルギッシュ(という女性像)を頭の中で思い描き、それを私に投影した」とフォックスは言う。「実際、私は飾り立てられた操り人形だった。もちろん、向こうの期待を壊すわけにもいかなかった。そんなことしたら、自分の得にならないもの。それで精神がすり減るまで、役柄になりきるってわけ」。

最終的にほころびが見え始めた。本の中にも書かれているように、他の男性との浮気が発覚し、アントワンとの関係は終わりを告げた。彼女は友人とともに路頭に迷うことになった。「彼女は猛スピードで大人になって、なんとか自立し、身を粉にして生計を立てるしかなかった」と言うのは、当時彼女と同居していた親友で、モデル兼フォトグラファーのリッチー・シャザム氏だ。「その度に彼女はいつもなんとかしていた。文字通り、いつも解決策を見つけていました」。

ファッションブランドをたたむ前、フォックスは貯金の大半をはたいて別の男性とクラブに投資した。その男性とはクラブでの暴力事件がきっかけで破綻した。フォックスは公の場でその男性を非難したが、アンバー・ハード同様、交際仲間から「村八分にされ、痛い目に遭わされた」そうだ。「どこに行ってもみんなが私の噂をして、あの子はクレイジーだとか、嫉妬心に狂ってデマを流しているんだとか言われた」(ちなみにその元恋人はニューヨークポスト紙に弁護士を通じて声明を発表し、容疑を否認している)。



シングルママになるって心に決めていた。男たちはなんでもダメにするって学んでたから

その後フォックスはニューヨークを離れ、一時的にルイジアナに移住した。頻繁にヘロインを服用するようになり、旧友との連絡もまばらになった。「私も茫然としました」とアンダロア氏は言う。「彼女がいつか目を覚まさなくなるんじゃないかと心配でした」。ニューヨークで落ち合って億万長者のプライベートジェットでマイアミに行こう、という友人の誘いに、彼女は二つ返事で飛びついた。機内で睡眠薬を盛られ、匿名の富豪から性的暴行を受けたと『Down the Drain』には書かれている。彼女はこの一件を警察に通報しなかった。「警察に通報して、自分のために声をあげたらどうなるか分かりきっていたわ」と本人。「できることは何もなかった。唯一まともだと思われた道は、何もなかったかのようにふるまうことだったの」。

2019年、フォックスは映画『アンカット・ダイヤモンド』でブレイクした。アダム・サンドラー演じる自堕落なダイヤモンド仲買人の小悪魔的な恋人ジュリアという役柄で、これ以上ないほど最高のタイミングだった。サフディ兄弟が彼女のために書いたというこの役は、年配男性が彼女に投影した「狂気的で茶目っ気たっぷりでイカした女性」というイメージにピッタリ当てはまるようにも見える。だがフォックスによれば、演じながら少しずつ現場で形作られていった役柄だという(例えば別れのシーンでは、彼女の発案でジュリアがサンドラーのアパートを破壊することになった)。映画のヒットで、彼女は文字通り一夜にしてスターの座に上り詰めただけでなく、これまでめったになかった経験を味わった。見た目以外の部分で評価されたのだ。「あの映画で自分が認められた気がした」と本人も言う。

だが『アンカット・ダイヤモンド』の成功は諸刃の剣でもあった。映画の公開と同じタイミングで、友人のジャンナが薬物の過剰摂取で死亡した。『Down the Drain』にもあるように、フォックスはサンドラーとのラブシーン撮影前夜にジャンナとオキシコドンを吸っていた。それが一転、映画の宣伝をしながら友人の死を悼むという状況に置かれたのだ。「みんな私にいろいろ話しかけてくるけど、私の頭の中は別のことでいっぱい」と彼女は当時を振り返る。「ある意味、そのほうが良かったのかも。公の場に出て仕事しなきゃ、って風に気を紛らわせることができなかったら、ドン底まで落ちていたかもしれない」。

ジャンナが死亡する以前、フォックスはサボキソンという依存症治療薬のプログラムを受け、ジャンナにも勧めようとしていた。彼女は依存症からの回復についてもオープンに語っている。「サボキソンについてもっと話したいし、いろんな人に知ってもらいたい。依存症治療薬については偏見があるようだけど、大勢の命を救ってくれる薬なのよ」。

だがそうしたオープンさが仇になったこともあった。アジーリア・バンクスは昨年Instagramで彼女の麻薬歴を批判し、息子のことを「ヤク中の赤ん坊」呼ばわりした。「うだうだ言いたいなら結構、あなた方みたいな人がいるからみんな治療を受けられないのよ」とフォックスは言う。「私が先陣を切らなきゃいけないなら、仕方ないわね」。

『Down the Drain』にも書かれているが、カニエ・ウェストはフォックスが麻薬中毒の過去を隠していたと責めたそうだ。ウェストは元妻のキム・カーダシアンからそのことを訊かされたという(フォックスはカーダシアンと直接言葉を交わしたことはないが、ウェストと交際する前から「彼女のファンだった」そうだ。元夫婦の破綻を目の当たりにしたことについては、「あの時の状況を俯瞰で見るのは壮観だった」と語っている)。

短命に終わったフォックスとウェストの情事をタブロイド紙で終始追いかけていた人には朗報だ。『Down the Drain』にはラッパーとの関係について書かれた章もあり、ウェストは「アーティスト」として登場する。フォックスはウェストのことを本に書くのをためらった。「みんなそこにばかり注目するでしょ。でも、触れないわけにはいかない気がしたの。私にとっては大事な転換期だったから」。

『Down the Drain』にはウェストとの波乱万丈な交際が包み隠さず書かれている。大晦日にマイアミで出会い、ホテルからホテルと渡り歩いて公の場に姿を見せた。ウェストは彼女の服装にOKを出し、ボディラインにケチをつけ、豊胸手術を受けさせようとまでした。本人いわく、ウェストとの交際は完全に純愛だったという。最初のデートはUnoや辞書ゲームに興じ、身体に触れあうのはカメラが回っている時だけだった。「(性的なことは)一切なかった」と本人も言う(フォックスはユダヤ人ではないが、交際中は反反ユダヤ主義的なところは一切見当たらなかったという。ウェストの話題は主に音楽プロジェクトやカーダシアンと間の問題だったという。「他のみんなと同じように、私もびっくりした」と本人。「なんだか狂信者か何かみたいだった」)

あの当時、フォックスは息子の父親が自分たちに無関心で、ろくに支援もしないことに腹をたて、Instagramで「ろくでなし」と非難したが(現在は良好な関係を築いているという)、ウェストも元妻に同じことをするつもりだったそうだ。「だんだ関係が変わっていって、私を使って別れた奥さんとヨリを戻すみたいな感じになった。1カ月しか続かなかったのもそれが理由ね」。例のInterview Magazine誌の記事に関しては、フォックスも『Down the Drain』で主張しているように、ほとんどがウェスト側の命令で書かれたでっちあげだそうだ。「フラグ」だと最初に感じたのはその時だったそうだ。「状況がやっと飲み込めて、こんなのに関わりたくないって思ったの」。

ウェストとの交際がキャリアにもたらした恩恵や、名声がもたらしたチャンスについて、フォックスは目を輝かせながらこう語る。「たくさんお金を稼げたわ。すごかった」。だがこの時期フォックスのスタイリストを務め、破局後もウェストと仕事を続けていたアンダロア氏によれば、フォックスは「精神的にダメージを受けた」そうだ。メディアからは有名人キラーとか玉の輿狙いというレッテルを貼られ、そのことが息子に悪い影響を与えるのではとも思い悩んでいた。「母親になってなかったら、もっと長く引きずっていたかもしれない」と本人。「以前の私だったら、これもチャンスだわ、利用しましょうと思っていたかもね。母親になった今は、前より自分に厳しくなったわ」。

母親になったことが、フォックスの指針になったとアンダロアは言う。「彼女には母親であることが一番なんです。結局、彼女にとって本当に大事なことはそれだけ。他のことはどうでもいい」。現在フォックスとヴァレンティノ君は、シャザムが恋人と暮らすアップタウンの線路沿いのアパートで暮らしている。フォックスいわく、「映画の『スリーメン・アンド・ベイビー』みたいな感じ。ただ私たちの場合、女性とゲイと性別不詳者だけど」。

毎日車でヴァレンティノ君を託児所に預け、手料理で夕飯を共にし、夜は『マジック・スクール・バス』や『それいけ、わんちゃん!』を観ながら眠りに落ちる。「いつもジュリアは母親らしいなって思います」とシャザムは言う。「彼女にとってはヴァレンティノが最優先なんです」。時にはみんなでトンプキン・スクエア公園に行ったり、セレブ仲間のエミリー・ラタコウスキーと出かけることもある。だが週2日の父親との面会以外は、フォックスが女手ひとつで子育てしている。

「自分はシングルママになるだろうなっていつも思っていた。自分にもそう言い聞かせてた」と本人。「長年の経験で、男どもはなんでもダメにするって学んだからね」



従来の共同親権という形にはとくに興味がないという。セレブ専用出会い系アプリRayaにも登録はしているが、めったに利用はしない。「どこにセレブがいるの?って感じ。今のところ投資家とか金融系ばっかりよ」。人生の大半でセックスを武器にせざるを得なかった彼女は、これまで同様、今もセックスにはほとんど興味がないそうだ。「プラス面よりもマイナス面のほうが多いでしょ――相手と親密にならなきゃいけないし、相手を自分のスペースに受け入れるとか、そういうことがついて回る」と本人。「経験上、セックスはすべてをダメにする。もしくは、全てをややこしくする。今の私の生活にはそんな余裕はないわ」。

実際のところ、彼女はこの先も予定が盛りだくさんだ。アップサイクル・ファッションをテーマにしたリアリティ番組では制作に携わり、は司会も務めることになっている。端役ながら、2021年の映画『No Way Out』で一緒に仕事をしたスティーブン・ソダーバーグ監督の次回作で不動産業者として出演し、最近撮影を終えたばかりだ(サフディ兄弟とは今も連絡を取り合っているが、近々一緒に仕事をする予定はないそうだ。「アダム・サンドラーとまた映画を撮っているけど、私にはお声がかからなかった。仕方ないわね」)。

また彼女が脚本を書いた映画も現在制作中だ。2人の若い女性がパパ活の男性をうっかり殺してしまうというストーリーで、つっこんでいえば、家族からの支援を断たれた若い女性が、世の中を渡り歩くためにどこまでできるかがテーマだと本人は言う。「いい車に乗っているお金持ちのパパがいて、その車を欲しがっている女の子が何らかの決断をし、一生涯それを背負って生きていくことになる。そんなところかしら」(オフレコだが、インタビューでは主役にしたい女優候補の話題も持ち上がった。多くは語れないが、いかにもジュリア・フォックス風で、常識離れしていて、同時に完璧な女優だそうだ)。

アンダロア氏の言葉を借りれば、これまでの人生で「サバイバルのメンタリティ」を身に着け、この先も活用し続ける女性にとって、脚本家デビューは願ったり叶ったりだ。『Down the Drain』にもそうしたメンタリティが如実に表れている場面がある。フォックスはマイアミビーチで、有名ラッパーのパーティにウェストと出かけていた。挑発的なダンスを踊っていたことをウェストの仲間からたしなめられ、しょんぼりしていたフォックスは、ウェストの姿を求めて「パーティドレスとブラジリアン豊尻手術の海」を見渡した。そこにいた女性たちは「みんな出世のタイミングを狙って、わざわざ背景に溶け込んでいる。あの子たちはパーティのお飾り、きれいだと言われる飾り物。私はそんなのもうこりごり。すでにチャンスはもらったし、いまさらモノ扱いされたくない。情緒不安定な男のエゴの原動力にされるのはまっぴらだわ」。

この文章を書いた時、あるいはウェストと付き合っていた当時、彼女をお人形扱いした老年のフランス人富豪アントワンを考えたか、とフォックスに尋ねた。彼女自身もいくつか相違点を感じていたそうだ。「前にも一度選ばれて、あらゆる恩恵を受け、その後全部失ったんだっけ(と考えていた)」と本人。「幸せにつながらないってことは自分でもわかっていたのね。1周回ってスタート地点に戻った感じ。待って、また同じ道を辿れって言われてるわって。でもそうじゃない。こんなことしなくても私は生きていける。私はもう大丈夫よ」。

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